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【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワ「……あのさ、 この町の──夜景が見たい。 いちばん高い所から、二人でさ。」 自分達が出会って、関係を育んで、 生きていた景色が見たい。 カメラは置いてきたから、 レンズの代わりに、自分の目で。 「この校舎あんま高くないし 灯りも少ないけど……まあ、 ギラギラしてるよりは綺麗だと思う。」 最期の、デートの誘い。 自分から何か切り出すのは、数えられる程しか無かったから さいごくらい、自分から。 「……深雪と見たいんだ。」 そっと君へと、手を差し出す。 屋根の登り方なんて知らないけれど 少しだけ格好付けるくらいは、させてくれ。 (-155) 2022/07/12(Tue) 21:06:37 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカああ、少しずつ、いつも通りが戻って来た。 君が隣に居て、こっちを見てくれて、笑い掛けてくれて。 ちょっとずるい言葉を掛けても、気恥ずかしくたって ちゃんとこたえてくれるから、つい君の優しさに甘えてしまう。 少し背伸びをする君が、どうしようもなく愛おしくって。 たったそれだけの なんでもなくて、かけがえのない日々。 「………あは、じゃあ、…このままでも、いいのかな。」 「…うん。俺、夏彦が居ないとだめみたい」 寂しがり屋だから、を免罪符にして、図々しく誰かの傍を陣取って。 毒にも薬にもならない言葉を吐く事なら、いくらでもできるけど。 努力は下手で、取り柄は無くて、得意な事は人に甘える事、くらい。 結局はそんな人間だ。 また甘えてしまっていいのかな。 なんて、今更なんだろうけど。 (-181) 2022/07/13(Wed) 1:28:58 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカ「いいよ。見に行こう、二人だけで どうせ怒る人なんて居ないから、屋根まで登っちゃおう」 「同じ場所で、同じものを見よう。 嘘のない、ありのままの綺麗なものを見に行こう。 きっと今なら、それがよく見えるから……」 自分達が生きていた事も、想い出も、過去になっていくけれど。 現実はきっと、自分達を置き去りにしていくけれど。 これからは。ずっと変わらずに、二人一緒に居られるから。 ずっと、同じ場所で、同じ今を見ていられるから。 カメラが無くたって、楽しくないから、写真が撮れなくたって。 今を今のまま、切り取る事はできるから。 「………夏彦、」 差し出された君の手に手を重ねて、 ──ぐ、と引き寄せて、不意打ち気味に唇を重ねた。 できるなら、ただ触れ合うだけよりもずっと深く。 理由は単にやり返しておきたかったのと、それと。 今しておかないと、終わりを先延ばしにしてしまいそうだから。 だからきっと、これがちょうどいい。 少ししたらちゃんと仕切り直して、 また格好付けてエスコートしてくれるかな。 (-182) 2022/07/13(Wed) 1:30:22 |
【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワ「──……〜〜っ、!?」 懐かしい唇の感触。目を見開いて、次にぎゅっと閉じて。 ──もっと、と、唇を薄く開いて、控えめに舌を絡めていく。 静かな教室内に似つかわしく無いリップ音を立てて。 「……、ん、」 自分達が付き合って、だいたい一年くらい。深いキス。君と数えきれない程交わした筈なのに、上達しなかった、とぼんやり思う。 ───暫く、そうしていて。 息苦しさに胸を叩いて、どちらからともなく唇を離す。 「……やるなら、やるって、」 ちゃんと言ってよ。なんて、どの口で言うのか。 君をじとりとねめつけて、それでも繋がれたままの手を引けば 「……行こう。 僕が居るから、大丈夫。」 もう離さないから、命を終わらせに。 夢の先へ、向かう為に。 さて。 「や……屋根って、 どう行ったら……良いんだろな。」 (-189) 2022/07/13(Wed) 11:31:08 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカふたりきりの教室に、微かな吐息と濡れた音。 そっと舌を重ねて、優しくその輪郭をなぞって、深く深く。 薄い粘膜同士で触れ合って、誰よりもずっと近くで君を感じられる。 どうしようもない多幸感でじわじわと満たされていく。 それでももっと欲しくなる。 「………あは、」 そうしている内に、とん、と胸を叩かれて。 名残を惜しむようにゆっくりと唇を離して、息を吐く。 いつになっても君の息継ぎは少し辿々しくて、 だからいつも音を上げるのは君が先だったな。 「俺、夏彦と同じ事しただけじゃん」 先に不意打ちしたのはそっち。 なんてのは、子どもの言う屁理屈みたいなもの。 君の様子は想定内で、手を引かれながら、目を細めて笑った。 繋いだ手は、今度はきっと、恋人同士のかたち。 今度こそ──同じ夢を見て、その先へ。 (-198) 2022/07/13(Wed) 14:01:54 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカ「ここ出て右の方の突き当たり、」 廊下の隅、目立たない階段。 普段使われる事の少ない場所だろうし、それはそうだよな。 一度見に行って、そんな事を思ったのを覚えている。 「から、屋根裏に上がれて。 屋根に穴が開いてるみたいだから、 適当に何か積めば屋根の上に出られると思うんだけど」 屋根裏に無造作に積み上がった箱や瓦礫は、 猫にとっては階段のようなものだっただろうけど。 人間が登ろうとしたら、少し頑張らないといけないだろうな。 「連れていってくれる?」 とぼけたふりして先導はせず、 さいごのデートは君に手を引いてもらおう。 だってほら、君達に甘えるのは俺の特権だからさ。 (-199) 2022/07/13(Wed) 14:02:22 |
【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワ同じではない気がする。いつだって君の方が一枚上手だ。 ……なんて言ったところで、水掛論。 「………もう。」 仕方ないな、と独りごちれば 五指を絡めた手を引いて、君の言葉の通りに空き教室を後にする。 「連れて行くよ。 離さないからさ、安心して。」 ここを出て、右の突き当たり。 廊下の隅の目立たない階段。 屋根裏に上がる──前に、音楽室からパイプ椅子を拝借してやった。 足りなければ、瓦礫でも何でもかき集めてやればいい。 「さっきセンパイと来た時、 階段なんて見逃してたな……。」 情けないけれど 君以外見えていない、証左。 さて。 パイプ椅子を引き摺って屋根裏へと登れば、確かに上へと続く穴がある。 ぎし、とパイプの鉄錆を鳴らして踏み付けて、屋根の上──いちばん高い場所へと辿り着くだろう。 君を先導して、手を引いて。 存分に甘やかすのは、僕の特権。 ▽ (-241) 2022/07/14(Thu) 1:15:18 |
ライカは、君を連れて行く。 (a81) 2022/07/14(Thu) 1:15:42 |
ライカは、「足元、気を付けて。」 (a82) 2022/07/14(Thu) 1:16:53 |
【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワ───屋根上。 星空にいちばん近い場所。 落ちてしまわないように、確と足腰へ力を込めて ゆるりと屋根へ腰を下ろす。勿論、君を隣へ誘って。 「……カメラじゃ、 上手く撮れないんだよね、星って。」 電気の灯りが少ない町では 夜空に星々が力一杯煌めいていて、 そうして、大きな月が、僕たちをいっとう優しく照らす。 まるで二人の選んだ夢を、 見守ってくれるみたいだ。 「……綺麗。」 星空、それから君が。 僅かに残る死への恐怖を、全部飲み込んでしまいそう。 「夜景は、見に行った事無かったよね。 夜は……いつも、家で……、だったし…………。」 ……もう少し。 もう少しだけ、デートを楽しませて欲しい。 これから踏み出す一歩は、あまりにも大き過ぎるから。 (-243) 2022/07/14(Thu) 1:17:23 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカ仕方ないな。 隣から聞こえた言葉は期待していた通りで、嬉しくて。 また一つ笑みを零して廊下を行く。一緒だから、大丈夫。 途中踏み台代わりに椅子を拝借して、そうして── 一歩、そして一歩、そしてまた一歩。 ふたり階段を上るたび、少しずつ最後の一瞬へと近付いていく。 屋根裏に辿り着けば、軋んだ音を立てて、また一つ上る。 椅子を踏んで、君が引く手に行き先を委ねて、屋根の上へ。 終わりの先へ辿り着く為に。 (-244) 2022/07/14(Thu) 3:45:30 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカそうして校舎の外へと出てしまえば、 静かな夏の夜の空気は先ほどまでよりずっと澄んだものに感じて 月明かりだって差し込むだけのものよりもっと明るくて。 屋根の上に居る特別感も合わさって、違う世界に来たみたいだ。 「ん……撮るのも忘れちゃいそうなくらい、」 傾きつつある月は、手を伸ばせば届きそうなくらい近くに見えて。 その後ろでは大小さまざまの星がまだ暗い空を飾っていて、 高層建築も少ない土地だから、そんな空が遠くまでよく見える。 君の隣で見るこの景色が、この時間が、ずっと続けばいいのにね。 「きれいだね」 それだけを言って、隣に座る君にそっと肩を寄せた。 ずっとは続かない。この先に行かない限り、それは叶わない。 けれど、けれど、せめて。 記憶の中に切り取る今が、少しでも多くなればいい。 「………あは、いちゃいちゃするのに忙しかったね? 俺は夏彦の事を構う方が好きだし、何より二人きりの時は 普段よりもっと可愛いから。別にいいんだけどね…」 声を潜めて囁くように、ちょっと意地の悪い言い方をする。 レンズ越しじゃない君の月白色の瞳が、 自分だけを見ているのは、事実とっても気分が良かった。 これからもそうなるのだと思えば、 やっぱり諦められそうにはない。まだ少し、時間はあるけれど。 (-245) 2022/07/14(Thu) 3:49:29 |
【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワ君と当たり前みたいに隣り合って、 綺麗なものを綺麗だと、好きなものを好きだと言って まるで普段と変わらないW日常Wを、味わって。 レンズを通さずに見上げた空は、いつもよりも綺麗に見えた。 嗚呼、これから死ぬんだ、なんて。実感は未だ湧かない。 「か、わいいって……僕が………?」 そうして、君のストレートな言葉には、むっと眉を顰める。 可愛がられるのも嬉しいけれど、 他の誰でもない君には、もっと─── 「格好良いとか、頼り甲斐があるとか そういう方が嬉しいんだけど……?」 ……そっとその横顔に、頬に唇を触れさせて 意地悪には、不意打ちで仕返してやった。 ▽ (-278) 2022/07/14(Thu) 20:04:32 |
【秘】 夢の先 ライカ → 夏の雪 ユメカワそんなふうに君と笑い合って、戯れて。 どれだけの時間が経っただろう。 軽口から、意地悪、愛の言葉まで。 伝え合って、何となく互いに言葉が止まる頃。 「………、」 そろそろかな、なんて 誘うように両腕を広げて、君をまっすぐに見据える。 「好きだよ、深雪。 ずっと……一緒に居よう。」 太陽が目を覚ます前に。 行かなくちゃ。僕たちの夢の先へ。 君をこの腕に抱いて、その後はどうしよう。 何もかもに逆らって、空でも飛んでやろうか。 (-281) 2022/07/14(Thu) 20:06:12 |
【秘】 夏の雪 ユメカワ → 夢の先 ライカふたりきりの世界で、今は他愛無い戯れを。 肩を寄せ合って、言葉を交わして、愛を謳って。 かけがえのない時間の中、広がる沈黙は心地良い。 そうして、ふと。 まっくらな、なにも写っていない写真を取り出して。 屋根の端の向こうへ少し腕を伸ばして手放せば、 ひらひら はらはら 風に舞って屋根の下へと落ちていく。 それを暫し眺めた後に、君がゆっくりと腕を広げて。 まっすぐな君の眼を見て、一歩。 「うん。…大好きだよ、夏彦。」 ああ、幸せだ。そっと笑って、誘われるまま君の腕の中へ。 片手を繋いで、そっと身体を寄せて、 「これからも一緒に居よう、ずっと、ずっと……」 「──そのリボンで小指と小指繋いでみたらどうだろう、」 小指、だけじゃ、嫌だな。 そう思って、胸元のリボンを解いて、繋いだ手に結んで。 そうしたらあとの片手は君の背に回して、 「ずっと、離さないから」 ぎゅっと抱き合って、宙を舞う写真達の後を追う。 そのまま、同じ夢の底へ落ちていく。 (-285) 2022/07/14(Thu) 20:53:45 |
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