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【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ「あんたはよくたって、」 見上げた瞳に翳りを見たのは、逆光のせいだろうか。 ……きっと、違うだろう。 翠の目はあなたを見ている。 学はなくとも、そう鈍くもないのだ。 「――アイだってタダじゃない」 頬へ口付けが降り落ちるそのとき。 少年もまた、あなたへ囁いた。 愛してる、などと。そんなことを言うのはあなたぐらいのものだ。 それは本当であるならあんまりにも過ぎたことだし、そんな価値はこれにはない。 だからすこし、眉を下げた。 促されて、「ん」と短く応える。 受け取った焼きたての串焼きへふうと息を吹き、冷ましながら歩き出す。 「少なくともおれは、何か選べるほど上等じゃない」 (-7) 2022/08/20(Sat) 21:07:52 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c2) 2022/08/20(Sat) 21:21:56 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「あら、私は優しいほうだと思うけど――……?」 笑顔が揃い、並ぶ。 本心をさらけ出したり、心から触れ合ったりしなくても、笑い合うことはできるし、できた。 「私みたいなのに似ないでほしいんだけどね。 はーあ、変なのひろっちゃったなほんと」 大きくのびをするように、そう語る彼女は、母親のようで。 「ふふ、ふ。でしょう? あなたは私を裏切らないし、裏切れない。 そう思っておくから、よろしくね」 あなたに対して遠慮なく笑いかける姿は、恋人のようで。 どの顔がほんとうだったのか、もうわからない。 (-46) 2022/08/20(Sat) 21:56:49 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「楽しみだ」 ────約束が叶うことはない。 言葉と共に咲う。心底楽しみだ、と表情で語る。 男のかんばせに、言葉に、いつだって嘘はなかった。彼が君に嘘をつくことはなかった。誤魔化すことも、はぐらかすこともなかった。 男が家族を心から愛していたことを、きっと君は知っている。 幼なじみである君には一等心を傾けていたことを────ただ愛し与えるのではなく、与えられることを楽しんでいたことを────君は知っているだろうか。 男が繰り返し言った、「君の好きなものが好きだよ」という言葉は、きっと本心だった。 「おや。ふふ、気が合うね?」 両肘をテーブルだか膝だかに置いて手を組む。その上に顎を乗せる。少し横柄で、リラックスした仕草と言葉。 笑みを含んだ声音で、口元を緩めたまま。どうやら揶揄う材料を見つけた目つきで、彼は首を傾げた。 「……へえ。色々」 「色々、ね。……ふうん?」 グラスを受け取る際に上目遣いで君を見る。 「ぜひ、拝聴したいな。ドニ?」 (-75) 2022/08/20(Sat) 22:57:37 |
【秘】 ザ・フォーホースメン マキアート → 家族愛 サルヴァトーレ「それは……おめでたいことですね。 家庭を持てば人は案外変わるものですし、けれど根っこの方はそのままだったりもするでしょう。家族を想う気持ちとか、今までと一緒ですよ」 親愛の籠った笑い方と、小さな円を見れば自然と顔も綻ぶ。 どうか健やかに育ってほしいものだ、とこの頃の島を憂いつつも明るい気持ちが内から湧いてきて。 「ふふ。ギャンブルも、そのままの腕っぷしも、 そこらの輩に好き放題されるほど鈍ってはいません。 だからこそ、なんでしょうね。 きっとうちの賭場の誰かですよ。乱暴な客を搾るだけ搾り取るための方便にオレみたいなのが最適だっただけ」 「……まあそう、悪い気はしません、が」 腹の前で自らを抱くように腕を組む。 嫌悪というよりかは、やはり、気恥ずかしさから来るもの。 (-82) 2022/08/20(Sat) 23:18:17 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー男は家族を愛している。きっと誰よりも。 彼はアルバの名の下に集う全てを愛した。全てに心を割いて本当の家族のように接した。誰よりも彼らを思っていた。 けれどそちら側として身体を許したのは君だけだ。 ぎらぎらと瞳が光を増す。焼き付けるようにゆっくりと瞬くさまは、まるで映画のスローモーション。 ────消える直前の火は、一際強く輝くという。 男は、君の頬に手を伸ばした。 指の背で触れる。右の頬を撫で、それから左の輪郭を同じ優しさでなぞる。 ▼ (-91) 2022/08/20(Sat) 23:43:25 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「ソニー」 形のいい唇が君の名を紡ぐ。男は眉を下げて目を細める。 それは眩しさに目を細める表情に似ていた。 或いは痛みに耐えるようでもあった。 「僕は、君のことも愛しているよ」 すり、と撫ぜる手が後頭部に回る。梳かれた髪が軽い音を立てた。風の音だけが聞こえる。地上の喧騒は届かない。 赤に近い紫の瞳。すみれ色の瞳。燃えるような夕焼けの後の、夜闇の一つ手前の色。 ただ穏やかに誘う色が、何もかもを抱いて包む色が、君を見ていた。 (-93) 2022/08/20(Sat) 23:53:31 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ「そりゃあそうだ」 声に翳りはない。 「僕の愛は金銭じゃないもの。簡単に買えるわけないだろう?」 そういう意味ではないと、無論わかっている。 わかっているから、わからないふりで否定するのだ。 足並みを揃えて歩き出す。歩幅はあまりに違うのに、君と男が二人でいる時、君が置き去りにされることは一度たりともなかった。近くの席は埋まっているようだから、スープの屋台まで歩こうか。 「ああ、またそんなことを……」 苦笑するようでいて、あえて嘆くようでもある、作った声色を大袈裟に。 「上等かどうかなんて、些細なことだよ」 「僕が見たいんだ。君が思う素敵なものに囲まれている君を」 (-94) 2022/08/21(Sun) 0:25:49 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 墓場鳥 ビアンカ「ああ、まったく。そんなふうに笑われちゃ敵わないな」 男は笑顔を曇らせない。自然な、あくまで自然な、飾りですらないように笑いながら、降参! そんな仕草で肩を竦める。恋人同士がじゃれ合うような無邪気でおどけた仕草だ。 「そんなこと言って────可愛い子じゃないか」 「最近はよく食べるようになったね。昔と比べれば、だけど」 君が入る前から男はここにいて。 君が入った頃に男は今の地位について。 だからあの子のこともはじめから知っていた。 少年といる時の君のことを、男は喜ばしく見ていた。 「誓いのキスは必要かい? ビアンカ」 かつ、かつ、と石畳を踏む。 君の好む音が導く先は鳥籠だ。それが、そろそろ姿を見せるだろうか。 (-99) 2022/08/21(Sun) 1:03:46 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ザ・フォーホースメン マキアート「そうだね、めでたいことだ。僕も心から嬉しい」 「今度、子どもに会わせてくれるってさ────泣かせないようにしないとね」 男の気さくさを煩わしく思うものがいないわけではない。 けれどそのまめさは、親しげな様子は、優しげな態度は、概して好かれているようだった。中枢の動きを知らされず、不安を募らせがちな末端には尚更。 サルヴァトーレは、不思議な程に裏表のない男だった。心に引っ掛かりを残さない男だった。ただの善人、或いは兄、親、友人のように大抵の者が思った。そしてその印象を利用する素振りも、一切なかった。 「太刀打ちが出来ることは不安に思わないことにはならないだろ?」 「君が傷つけられでもしたら僕は耐えられない────もちろん、身体だけの話ではなくてね」 その頬はやや紅潮しただろうか。していても、青みを帯びた空間では気づきにくいかもしれない。 男の指先が、擽るように撫でる。 (-107) 2022/08/21(Sun) 1:25:03 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「はは。いつ以来だ? 最近じゃあお互い間が合わなかったもんな。 俺も楽しみが一つ増えたな」 その約束もついぞ果たされなかっただろう。チケットを握る事すらなく。 貴方が自分に嘘偽りを騙る事が無い、という事は薄らと勘付いていた。 ここまで一緒に居ればそれはそうだ。 だから信頼して物を勧めたし、受け取ったし、 気持ちでだってそれは同じ事。信じていた。 だから、貴方が繰り返し言ったその言葉もその通りに受け取っていたのだろう。 期待や望みは突き放すけれど、愛は素直に受け取る男だった。 「…………はぁ。まあ」 「サヴィにならいいか……」 軽い溜息が一つ。それから、緩い笑みを浮かべた。 気が抜けている時の笑みだ。 探られているとも取らず、警戒の一つもないのだろう。 グラスの中のワインをくるりと回して、 「ほら、乾杯」と風情も雰囲気もなくグラスを差し出し傾けた。 それから一つ口を付け、そのまま話す。 「あいつを拾ったのは俺だからさ」 「あるだろ。なんか、その。責任って奴とかが」 「……拾ったからには大事にしたいんだよ。大人まで」 「それに、」 視線が花の栞へと一瞬向いた。 「いや。姪に似てる……それだけだ」 (-113) 2022/08/21(Sun) 1:47:50 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「そうだねぇ。僕も、見なければいけない相手が増えたし」 「────もちろん幸福なことだ。家族が増えるのは。……けど、ふふ」 楽しみが増えた、と君の言葉尻。そこを捕まえて、男は気分を良くしたようだった。 片眉を上げて口の端を持ち上げる。前傾していた身体を伸ばし、背もたれに遠慮なく体重を預ける。それから君を真っ直ぐ見据えて、見せつけるように足を組んだ。喉で笑いを転がして問う。 「僕が恋しかったかい、ドニ?」 君が恋しかったよ、と。 普段なら、その言葉を吐くのはこちらの方。寂しいのは自分の方で、会いたいのは自分の方で、愛したいのは自分の方だ。それを、男はよくわかっている。 ささやかな乾杯が行われるのであれば男も従うだろう。丸みのあるボディを軽く触れ合わせれば小さく音が立ち、透明な液体がグラスの中で踊った。その液面が静まる前に、君と同じように一つ口を付ける。気に入ったらしく、満足そうに頷いた。 「ああ。……そうだったの。道理で君に懐いてる」 「そりゃあ、可愛いわけだ。大切にしてあげなきゃね」 ▼ (-120) 2022/08/21(Sun) 3:25:43 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド合点がいったともう一度頷く。それからもう一人の子どもの方のことを思い出した。 アルバファミリーは横の繋がりを大事にする、家族のようなマフィアだ。だからだろうか、拾った拾われたがとかく多い。それ自体はほかのマフィアでもありうる話だが、拾われる側が本当に子どもであることが多いように思う。大抵はもっと年齢がいった半グレのような連中が、使い捨ての即戦力として連れてこられるものだ。 家族が増えることは男にとって好ましい。だからじわりとした満足げな心地のまま君の言葉を聞いて、その視線の先を同じに追った。 「へえ。それは」 「さぞかし可愛い子だったんだろうね」 ワインをもう一口。 緩やかな相槌は話を促すだろうか。閉じてしまうなら、それはそれで。 (-121) 2022/08/21(Sun) 3:27:52 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「……なんだよ。ズルい聞き方するな。当然だろ」 「お前もだろうが」 悪戯な問いには拗ねたような言葉を返す。 少し苦笑を浮かべて、わざとふいっと視線を逸らした。 それでも、『当然だ』とは言うのだ。 完全に気を許せる相手というのは少なく、 一緒に居て気が楽なのはやっぱり貴方だから。 カチン、と控えめで軽やかな音。 ワインの味を気に入ったであろう様子を見て、 当たりだったなと自分ももう一つ口を付ける。 「俺なんかに拾われちまってさ。もっと幸せになれたんじゃないか、アイツ」 「出来る事はやるよ。やってるつもりなんだけどな」 「……可愛いよ。そりゃそうだ。俺のあげた花にいちいち喜ぶ」 なんとなく困った様な、この話題がむず痒いような。 頭を掻いて、もごもごとした語り口はそのままに。 ……昔から、貴方の前では会話の端々に 自分を卑下するようなことを言う時があった。 自分への評価が低いのも昔からだ。 平素はそんな素振りも見せないが。 「あ〜あ……巻き込まれないといいんだけどな」 ルチアも、あいつも、お前も。 ふとポツリと零した呟きは、今起こっている事に対してだろう。 その呟きに自分は含まれていない。 (-135) 2022/08/21(Sun) 11:03:07 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「もちろん恋しかったさ。当然だろ?」 なぞるように言葉を返す。小気味いい笑いが零れる。 「素直で可愛いね、ドニ。おいで」 言って、男は腕を軽く広げた。左の手首に巻かれた時計が室内灯の光を弾く。光を吸うような重い色の衣服を纏った男の身体で、唯一明るい色をしているのがそれだった。嫌味のないゴールド。 「大切なものが出来ると、欲が出るものだね」 「幸せにしてやりたいんだ。いくらあげても足りない。もっと幸せになってほしい、苦しまないで笑っていてほしい────」 男は家族を愛している。 だからだろうか、愛を語る時彼は少し饒舌になった。自分の愛を示すように、或いは確かめるように、間違いを探すように。それは語るようでも独り言のようでもあった。 不器用に言葉を紡ぐ君に向けられる目は優しい。慈愛に満ちた赤みの紫。 「今度、ルチアの顔をよく見てご覧」 「悲しい顔をしていたら、足りない顔をしていたら────言っておあげよ。愛してるって。抱きしめて、花のひとつでもあげて」 「……いいや、君だと頭を撫でるくらいが関の山かな? あは」 こんな風に、と君の髪を撫ぜる手つきは普段より少し乱雑だった。君のそれを真似たつもりなのだろう。 ▼ (-137) 2022/08/21(Sun) 12:09:11 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「全くだよ。誰が死んでも僕は悲しい」 「家族を失うのは、辛いからね」 誰が死んでも僕は悲しい。 昨日見た顔がいない。今朝会ったやつがいない。そんなことは、日常茶飯事だ。誰かがいなくなれば新しい誰かがやってきて、その誰かも結局またすぐいなくなったりする。この社会の常だった。 だから男の言葉は甘い。 ────甘い。 (-138) 2022/08/21(Sun) 12:12:35 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「子ども扱い」 文句を一言。 けれどその仕草を拒む事も無く、 グラスを置いて広げられた腕に納まった。 少し預けた体重が体温を伝える。 「愛してる、ねえ」 「本当に、欲だらけだよ。何事も無く居て欲しいもんだが、 そんな訳にも行かないだろ。こんな所に居るんじゃあさ」 「……そんくらいは出来るけどよ」 じと、と貴方の顔を見た。くしゃりと撫でられた髪を整える。 いつもこうやって、なんだか貴方には敵わない。 せめてもの抵抗に、肘で軽く小突いた。 「俺は、……お前みたいに優しくないから 誰でもなんて言えないけどさ」 「本当に嫌なんだよ、今。……はあ、やる気出ねえな」 「…………」 「俺は巻き込まれる気がするんだよな」「はは」 なんとなく、なんとなく。そんな気がする。 (-139) 2022/08/21(Sun) 13:02:09 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド男の手が衣服の上から肌を撫でる。大きく、性別なりに硬いその手のひらで、指先で、素肌に触れられたこともあった。腰、背中、肩、項。 「恋人扱いの方が好みかい? ハニー」 笑みを交えて耳元で囁く。耳朶に軽く口づける。整えた端からまた乱す。 こうやって言葉で、態度で、体温で、男はいつも愛を伝えた。後から後から絶え間なく溢れ続けるものを注ぐように、そうしていないと死んでしまうかのように。 「伝えるべきことは伝えるべき時に伝えなきゃ。そうだろ?」 「家族なんだから追い出せやしない。でも、いついなくなるとも限らないんだから」 男は確信している。君があの子を愛していることを。 「騎士でいるのもいいけれど、王子様に掠め取られてから後悔しても遅い」 その形が、内容がどうであっても、愛であると。 男もまた、君を愛おしむ。 「────……」 「やっぱり、張り合いがない? 彼がいないと────」 (-141) 2022/08/21(Sun) 15:12:08 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「そんな事言って……っ、おい。悪戯が過ぎるぞ」 撫でられるまではまだ大人しくしていたが、耳朶に口付けられれば 背筋を伸ばして少し身を離した。 こんな男とっ捕まえて何がpiccolinoだ、と貴方の額を指で突く。 その上げた手のまま、わしゃわしゃと今度はこっちが貴方の頭を撫でて。 「誰が追い出すかって。……そうなる時は、アイツが自分から離れて行ってからだよ」 「でも、まあ、何も言えなくなる前に、言っておきたい事は」 「……言わなきゃかあ。面倒臭い」 掠め取っていくのが王子ならまだかわいいものだ。 今は、死神に奪われるかもしれないのだから。 そしてそれは今に限らず今までもで、これからも。 だからアベラルドは、この世界の事はやはり好きじゃなかった。 家族は好きだ。それを脅かすのが、本当に嫌なのだ。 脅かされた過去がある故に。 「……見えてたゴールが目の前から急に無くなっちまったみたいだ」 「結局、敵は他の誰かさんが獲ったって訳さ。じゃあさて、 俺はこれから何をしましょうか、って思ってな」 「どうせ今までと変わらないんだろうが。はは」 元々気力の多い方ではない。快活な方でも無ければよく喋る方でもない。 けれど貴方の目には、やっぱりそういう風に見えるのだろうか。 実際、活力は前より無い。宙ぶらりんな気分が、 もともと投げやりだった性格をさらに助長させているようだった。 (-147) 2022/08/21(Sun) 17:37:54 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「でしょう?」 ふふん。 そんな声が聞こえそうな笑顔とともに、あなたの降参を認める、とばかりに頷く。 くるくると変る立場。組織としての立ち位置、男女としてのまぼろし。 自然なような、不自然なふるまい。 けれどその幻想が、あやふやな真実としてふたりの間でかたちをつくる。 「どうだか。ガキは嫌いなの。 はーあ、どうやって放り出せばいいんだろうか」 4年前。ファミリーの傘下に娼館に身を寄せた彼女は、身を売ることになれた様子だった。 ――いや、それしか知らないかのようだった。 彼女は何かを失って、この街へと追い立てられるように逃げてきたのだ。 その何かを、ゴミ捨て場で拾った少年との日々で取り戻していた。 そんなことは、一言も言わないけれど。……あなたが見る限りは。 「いらない。 そういうのはもうこりごりなの」 横を見上げて、べ、と舌を出して。 「男との約束なんて、誓たってしょうがない。 ──守れるかぎり、守ってくれたら、それでいい」 かつ、かつかつ。 ほんの少し足を速めて、鳥籠を背に振り返る。 「ありがとう、トトー。……エスコートはもうおしまい」 (-149) 2022/08/21(Sun) 18:05:26 |
【秘】 花で語るは ソニー → 家族愛 サルヴァトーレクリスティーナのための兵となった時、青年はまだチンピラあがりのごろつきでしかなかった。 それが、何かの折に伝手を辿って推薦されたのだ。勧めてきたのは、孤児院だった。 ノッテの私腹を肥やし、人員を育てるために作られた、およそまともなばかりではない施設だ。 施設へと預けた両親の情報から、血筋についての断定が為され今こうしてメイドマンとして属している。 敵対する組織の庇護下から逃れてきた人間がどれだけ、好意と信頼に値するのだろうか。 「……オレも。 みんなの役に立てるよう、頑張りたいよ」 触れる手を振り払ったりはしない。心地よい人の熱を受けて、細めるように瞼を緩め。 火の着いた煙草を灰皿に立てかけるように片手を机に預け、残った体はもう一歩相手の方へ。 自分よりもずっと高い位置にある肩に額を預ける。くったりと体重が掛けられた。 声にも、目にも、嘘があるわけではないのに。 身の内に秘めた何かは、誰にも言おうとしない。きっと、これからも。 「ありがとう、サルヴァトーレさん」 (-171) 2022/08/21(Sun) 20:47:25 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレうそつき。 子供だと思って、すぐにはぐらかす。 少年はウインナーを齧り、咀嚼し、飲み下す。 「そういう話じゃないって、わかってるだろ」 「金は使えばなくなるし、気持ちだって他人に向けりゃ目減りする」 「余計なもんまで拾わなくていいって言ってんだ」 なんて、そんなことをいくら言ったって。 「それでも結局、あんたはおれみたいなのも構うんだろうけどな」 歩幅が違うように、住む世界だって違うのだ。 それなのにあなたは少年を置いていくことはないし。 無視することもないのだろう。 「素敵なものに囲まれるって言うならさ、」 「おれは結構、もう十分だと思ってるよ」 「何でもかんでも施されなくったって、あんたと話ぐらいはできるし」 「選り好みできるような立場じゃないけど、」 「選ぶのはあんまり得意じゃないけど、」 背が低い分、ずっと短い脚で。 歩幅を広げて、大きく一歩。 「今こうやってあんたと歩いてるのは、ちゃんと、おれが選んだことだ」 (-173) 2022/08/21(Sun) 21:09:50 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c23) 2022/08/21(Sun) 23:41:28 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 永遠の夢見人 ロッシ【3日目:夜】 男は、家族を愛している。 その想いに揺るぎはない。その想いに嘘はない。その想いに果てはない。 例え自分が裏切られていようと、騙されていようと、隠されていようと、嘘を吐かれていようと、 傷つけられようと、憎まれようと、疎まれようと、嫌われようと、嗤われようと、 殺されようと、 男は家族を愛している。それだけが、真実だった。 それだけが、真実だ。 それだけが、真実だから。 男が情報を望んだことはない。 男が戯言を聞いたことはない。 男が迷言を欲したことはない。 (────あの子は) こと切れる意識の隙間で可愛いあの子のことを思う。 (あの子は、何を────) 男は、家族を愛している。 だから望んだ。朦朧とする思考の間際に手を伸ばした。 探ったのでもなく、疑ったのでもなく、勘繰ったのでもなく、怪しんだのでもなく、 ただ知りたいと、 最期に 望んだ。ジェイドの瞳を持つ彼の、指先や襟元から香る僅かな甘さが、行き過ぎた気がした。 (-188) 2022/08/21(Sun) 23:42:11 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c24) 2022/08/21(Sun) 23:42:29 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 永遠の夢見人 ロッシ/* こんばんは。 ソニーくんの情報をいただきたく参りました。 @ソニーくんのロール(役職) Aソニーくんの所属(ファミリーや組織) 死の間際の走馬灯、白昼夢、末後の夢ということでお願い出来ませんでしょうか。 一度の夢につき情報は一つという決まりがあるなら、@を優先して教えていただきたいです。 (-190) 2022/08/21(Sun) 23:43:19 |
【秘】 永遠の夢見人 ロッシ → 家族愛 サルヴァトーレ/* 御機嫌よう、運営です〜〜! 急に縦長の秘話がいてびっくりしました。びっくりさせるなありがとう。家族を愛している男よ〜〜〜〜〜。 一度の夢で望む情報の個数に制限はありませんが、望まれた情報が向こうのPL様に確認の要る内容である為、お返事は強い筋肉の描き方様から返答があり次第とさせていただきます。 運営も夜は眠りますから、「情報をもらわないと眠れねぇぜ!」はせずに、ごゆっくりお休んでお待ちくださいませ〜〜! (-194) 2022/08/22(Mon) 0:14:04 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 永遠の夢見人 ロッシ/* お返事、ご対応ありがとうございます。かしこまりました。 正座してお待ちしております。 (-195) 2022/08/22(Mon) 0:18:47 |
【秘】 情報屋 ロッシ → 家族愛 サルヴァトーレそれはあの子ではなかったけれど、 あの子のことを教えてくれた。 覚めぬ眠りに落ち切る前、生死の狭間の夢の中、 あなたの 最期の 望みは叶えられたのだった。/* 強い筋肉の描き方に確認を取って来ました。 伝えてOKとのことなので置かせていただきます。 @樹木子 Aアルバ です。お納めくださいませ〜〜 (-204) 2022/08/22(Mon) 1:39:19 |
【秘】 ザ・フォーホースメン マキアート → 家族愛 サルヴァトーレ「心配いらないのでは? 誰に対しても分け隔てなく、穏やかに接する貴方なら」 ずっと昔から知っているわけではないが。人の心の内に入り込んで、暖かくするような言葉選びと振る舞いはこんな仕事をしている最中では役に立つことは多いだろうし、けれど彼はそれを無暗に鼻にかける様子はなかった。愛することは当然で、その結果は誇ったりするものではないと。 表情を疑われ。裏の裏まで探られ。“賭博”を除けばいつも嘘偽りなく振舞っているはずなのに、と苦心している自分としては、好ましく想うどころか皆そうであったらいいとさえ思うほどであった。 「身体の以外なら……それこそ、ご心配には及びません。 オレはいつでも、どんなことがあっても楽しくやらせてもらっていますよ。全ては、家族のためになることですから」 やや紅が灯った頬の上を指先が滑る。照明や、あるいは酒によるものだと誤魔化されてくれていればいい。人目も少なくなって、やはり甘えるように擦り寄った。 (-210) 2022/08/22(Mon) 2:14:46 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 永遠の夢見人 ロッシ末後のあえかな息を吐く。 ぬるく乾いたそれが魂を奪い取っていく。飲みすぎた頭が酒浸るように思考がずぶりと溶けていく。自然に漏れた吐息はあまりに弱々しく、最早空気を揺らすことすらなかった。 けれど、そこに感情が乗っていたとしたなら。 まずそれは安堵だったのだろう。 (────ああ) そうだ、愛しているとも。 間違いなく、後悔なく、迷いなく、愛しているのだ。 何者であれど。何処に所以を持てど。如何な秘密を持てど。 愛しているのだ。────いるのだ。 望みはひとつ叶えば次の欲が出る。未練と寂寥が顔を出す。 この手が夢だけでなく、彼にも届けばいいと僅かに願った。 蕩けた頭ではそんな想いも直ぐ溶け出して霧散していった。 (-214) 2022/08/22(Mon) 3:15:09 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ(愛してるよ) (愛してる────) きっとおしまいのその時まで、男は。 いつまでも幻影に手を伸ばしていたのだろう。 (-213) 2022/08/22(Mon) 3:15:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド身をよじるのではなくほんの少し離す。小突くのではなく指で突く。それだけなのだから君も甘いものだ。確かにそこにある信頼を受け取って男は目を細めた。 男の髪は年齢にしては柔らかい。薄い色は加齢や疲労のためではなく生来のものだと君は知っている。むしろ愛する家族に囲まれていて、健康的に艶めいているようにすら見えた。 再会した頃はこうではなかった気がする。 「そんなことを言ったって」 撫でる手を捕まえ、今度は手首にキスを。 「君は素敵だよ、ドニ。どれだけ変わったって、一目で君だとわかるくらいに」 出会ったのは高校生の頃。 少年期の一年は長い。どころか一月でさえ。彼らは一つの春、一つの秋で驚異的な変貌を遂げて成長する。ぴかぴかの顔をして入学した少年少女は、卒業する頃にはそのかんばせに大人の片鱗を宿しているものだ。 当時のふたりにそう関わりがあったわけではない。少なくとも密に連絡を取る仲ではなかった。そんな時期を越して五年以上の空白があった。それでも彼は君を見つけ、君は彼を見つけた。 『運命的だと思わないか?』 男が君を口説いた最初の文句は使い古されたような言い回しで、それでも妙に似合っていたものだ。 変に草臥れたような雰囲気と整った容姿のアンバランスさが古き良き常套句を体現したようだった。疲れているのかと君が問うていたなら、彼は素直に答えていただろう。「まさか。むしろ健康になったくらいだ────」 ▼ (-227) 2022/08/22(Mon) 10:24:27 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「僕が代わりに言ってあげてもいいけどね」 手を撫ぜてくっくと笑う。面倒くさいと言いながらも心を否定しない君の様子を愛おしんでいるらしかった。ほら見ろ、と言わんばかりに。 「それじゃダメだろう。君だってあの子の笑顔を見たいはず」 「あの子だって、君から言ってほしいはず────」 よく笑う男だった。 その全ては家族への愛に満ちていた。揶揄うことこそあれ、馬鹿にしたことなんて一度もなかった。 手が手を撫でている。あやすように、宥めるように、 引き留めるように。 「墓でも掘り起こしに行くかい。付き合うよ」 「気が済むまで、僕が周りを見ていてあげる」 もちろん君は、そんな形での報復は望まないのだろう。 けれどほんの少しでもそれを望むなら、きっと男は言葉通りにした。 手を引いて墓場に向かい、或いは朝が来るまで、君が妨げられぬように守ったはずだ。 ひとえに、君への愛ゆえに。 (-228) 2022/08/22(Mon) 10:36:26 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ/* 現実逃避でスプシ見てみんな可愛いねしてた みんな可愛いねフフ ヴェルデくんとソニーくん身長1センチしか違わん フフ ソニーくんちっちゃ ちっちゃ なあ ほんまに24歳か? (-261) 2022/08/22(Mon) 15:41:15 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー君が何者であれど。何処に所以を持てど。如何な秘密を持てど。 男は君を愛しているのだ。 かつて敵対組織の庇護下にあったとしても、いつか男の傍を離れていくのだとしても。今君が家族であるのなら、それだけで男は君の全てを愛しただろう。これはそういう男だった。 そしてそれを、君が知らないはずもなかった。 それでも告げなかったのは見栄だったのか、怯えだったのか、或いは信頼だったのだろうか。 そのいずれだったとしても、きっと。 それを男が知れば、眉を下げて言ったのだろう。 「そうか。僕が足りなかったね」────…… 君が弱音を零せば、男は朝まで君を抱いていた。 君が涙を零せば、それが止むまでに頭を撫ぜた。 君が一言呼べば男はどこまででも駆けつけたし、 君が袖を引けば何をしていても振り向いたろう。 君が傷だらけだったなら男は自分の肌を切り取って与えただろうし、 君が渇くなら、飢えるなら、その肉を分けることさえ厭わなかった。 ほんの少しでも求めたのなら、きっと全てに応えてくれた。 受け入れるのではなく能動的に、何もかもを与えてくれた。 全て夢物語だ。何一つ叶わなかった。 男は愛することだけは何より得意で、 隠しごとを見抜くことは苦手だった。 ▼ (-264) 2022/08/22(Mon) 16:29:28 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「十分だよ、よく頑張ってる」 預けられた体温をしっかりと受け止めその背を抱く。 上背のある男に対し、君は長身とは言えない。どうしたって目線を合わせるには君が顎を上げるしかなくて、けれどその差は抱き締めるのに都合がよかった。 知った手が髪を撫でる。首筋、耳から頬、背中。落とされるキスは慈しむそれであり、労いの意味も込めて。 「ああ、もう……」 「トトーだってば。それじゃ他人行儀じゃないか」 毎度の嗜めるような声音。 「一番に、自分の身体を大切にね。君がいなくなってしまうのが一番寂しい」 「何か欲しいものはないの? 何かあげたいな。それとも、久しぶりにドライブでも行こうか」 (-265) 2022/08/22(Mon) 16:32:57 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ思い返せば、貴方に対して大きな拒絶をした事はあまり無いように思える。 指通りの良い髪を、なんとなく指で掬って、梳いて。 また、離して。 些細だろうが、過去との差異はやはり気に掛かるものだ。 それが貴方にとってどんなもので、どんな理由なのか、 アベラルドはまだ知らない。 それが、なんだか引っかかっていた。今もだ。 「言ってろ。……サヴィも見た目はあまり変わらなかったな。 雰囲気は変わったけどさ。本当に……」 縁は知らぬ間に繋がり、固くなっていくものだなと思った。 運命だと言われたとき、まあ、確かにそうかもしれないな、とも思った。 こんな事もある。あるのだ。 自分を知る者が居て、酷く安心したことを覚えている。 アベラルドはと言うと、やはりそんなに変化があった方ではない。 高校を発ち、一人で暮らして、ここに来るまでの間の事は誰にも話していないけれど、それでもアベラルドは変わっていなかった。 重ねた年月の分は、そりゃあ人並みには変わっているけれど。 強いて変わったと言うのならアルバファミリーに入ってからだろうか。 疲れているのはきっとこっちの方だ。 手首にキスをされたって口だけで振り解きもしない。 貴方から受け取る愛は心地良い。 変わらず与えられるそれに、浸っていたかった。 ▼ (-266) 2022/08/22(Mon) 16:41:15 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「なんでだよ。それはまたなんか……違うだろ」 「分かったよ。言うから。言うから……」 掴まれていない方の手を、降参とでも言うように上げた。 撫でられるまま、やっぱりそれは振り解かれずに 貴方の気が済むまで続けられるのだろう。 「無理だよ。だって俺、墓の場所知らねえし。 探るにしたって、ノッテの奴らに変に思われたくない。特に今は」 「……いいんだ。死んじまったもんは仕方がないだろ。 俺がやろうと思ってたのに、本当に余計な事─────」 不意に。 撫ぜられていた手を強く握り返した。 「………………………………」 それなのに、何も言わない。 ふと視線を遠くにやって、何かを考え込むかのようだった。 手ばかりが強く握られている。…………引き留めるかのように。 (-267) 2022/08/22(Mon) 16:55:13 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 墓場鳥 ビアンカ「煩わしいようなら、僕が面倒を見てあげようか」 きっと君は頷かない。 「出て行きたくなれば、勝手に出て行くさ。寂しいけど」 つい、と細めた目を街路に走らせる。鋭いものではなく、懐かしむような色をしていた。 寂しいよ、というのは男の口癖のようでもあった。誰かが巣立つ時、彼は決まってそう言う。心からの祝福を贈り、与えられる限りの贈り物を与え、最後の抱擁と口付けをして、眉を下げてはにかんで。 寂しいよ、寂しいね、寂しくなるね。 いつだってその口の端には、家族に対する愛慕が滲んでいた。 幼げな仕草を見て緩めた頬は、同じ形。 「なら、この誓いは僕の胸に秘めておくとしよう」 「……ああ、そう」 男の歩幅は広く、歩みは遅い。それは君が足を速めてなお、いや一層、緩慢になったように見えた。 「楽しい時間は早く過ぎるね。残念だ」 こつ、こつ。 君のそれより幾分低い音が鳴って、止まって。 「じゃあビアンカ、約束通り、夜に」 「オルサキオットのチョコラータを買ってくるよ。みんなで分けるといい」 (-270) 2022/08/22(Mon) 17:24:14 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ君は聡い。淀みなく紡がれる言葉に、危うく感心するところだった。少し目を見開いて、それからウインナーの先を齧る。そうしながら黙って君の言葉を聞いている。 君は聡い。 それは子どもには不要な聡明さだった。 そうあらねばならなかった道程を思う時、男はいつも少し、眉間に皺を刻むのだ。 子どもは無償の愛に溺れていればいいものを。 何の不安も知らずに笑っていればいいものを──── 金の髪が陽の光を弾く。 よそ見をした男の煙草がそれを焦がさないように、さりげなく押し返して歩いた。 滔々と流れゆく君の言葉に耳を傾けて、その言葉を聞いた。 眩しさに目を細めたのは、きっと昼時の明るさのせいではない。 ▼ (-275) 2022/08/22(Mon) 18:08:18 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ「……ああ」 「そうか。……大きくなったね」 口にした言葉はなんだか滑稽でもあった。 君が本当に幼かった頃を、男は知らない。せいぜい季節が二回りした程度の時間は、長い付き合いとは言い難い。 それでも男はまるで赤子の頃から知っているような手つきで君に触れたし、生まれた頃から傍にいるような慕わしさで君の名を呼んだ。 「そう言ってくれるなら何よりだよ、ヴェルデ」 君はまだここにいる。 君もいつか大人になる。 それがとても嬉しくて、 同時に少し寂しいのだ。 (-276) 2022/08/22(Mon) 18:16:31 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「そうかな? 僕は元々こうだろ」 己の過去と比べられる度、男はいつもそう言った。 隠すような仕草はない。誤魔化すような違和感はない。本人が、心からただそう信じている────そんな風に。何もおかしなことはないというように言った。 今も昔も、この男の笑顔は変わらない。 ……こうも振りまくものだったかという疑問が残るけれど、作っているようにも見えないはずだ。 愛撫にも満たない触れ合いで親愛を示す。男は君を抱くことに遠慮しなかったが、そう毎度そればかりを好む性質ではなかった。今日は気分ではないのだろうか、ずっと生ぬるい触れ合いを続けている。 「Bravo.」 手を撫でていた手が再び頭へ。そうやって何度も、何度も、刻むように示す。目を細めながら、君の言葉を聞いているのだ。 冷静な君の言葉。 死体と言えど、いや死体だからこそ、それは相手のものである。マフィアの所有物に、プライドの象徴に、安易に手を出すものではない。誰だってわかっている。 わかっていて、男は口を開く。 「うん」 開いて。 力を込められた手首に視線がつ、と動いた。君の視線をなぞって、もう一度手首に。 「……」 君は口を開くだろうか。 それとも、こちらが先に? (-291) 2022/08/22(Mon) 20:10:02 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「そうかな……」 またいつもの返事だ。 その返事を聞く度に、少し貴方を案じるような気持ちになる。 ……何を案じればいいかもわからないけれど。 そして結局、貴方がそう在るのであればいいか、と落ち着くのだ。 これも、いつもの思考。 なんで褒められるんだ、と言いたげな顔をした。 こうも撫で擦られていると犬にでもなったような気分になる。 今日はあまりやり返すことも無い。 ▼ (-309) 2022/08/22(Mon) 21:32:17 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ手首に込める力は緩めない。 ただ、遠くにあった視線は貴方へと再び戻って。 「お前」 「なんでこの世界に来た?」 ようやっと口から出た言葉は、唐突ともとれる問だった。 「………勿体ないな。つくづく思うよ。 俺の周りの奴らがこんな所に居なければ、こうやって神経擦り減らして命の無事を、毎日祈ることも無い」 「自分からこんな所に来ておいて言う事じゃあないけどさ」 「向こうのボスが死んでから、薄々気付き始めたんだ。 俺って恨みがましいんだって。」 「思うんだ。何もかも、なんだか憎たらしいよ」 滔々と小さく溢れる言葉の最後は、ほとんど吐き捨てるようだった。 何もかも後手に回り、手を伸ばしても届かず、 掬おうとしては指の間から零れ落ち。 そんな気分をずっと味わっているような気がする。 今この状況が自分の精いっぱいだった。 それが今崩れそうなことが、何よりも嫌で。 『家族』が向けられる銃口や刃に脅かされずに、 普通に暮らしてくれればどんなにいいだろう? (-310) 2022/08/22(Mon) 21:33:09 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルドいくら触れ合っても傍にいても信頼しあっていても、心の中の全てを知りあうことは出来ないのだ。 だから、必要以上に詮索しない君の姿勢はきっと賢い。そうしていればきっと、不要な疑いや争いが生まれることもなかった。 男は君を真っ直ぐに愛している。 結局、それだけはどう足掻いても真実なのだ。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 男は君の目を真っ直ぐ見ている。 男は君の声を真摯に聞いている。 「……」 「どう」 「だった かな……」 それが、 初めて、乱れた。 それでも。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 ▼ (-348) 2022/08/22(Mon) 23:44:16 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルドほんの、束の間。 束の間の、空白。 すぐに、消える。 消えて。 「どうしたの、ドニ。……怖いことがあったのかな」 「聞かせて御覧。僕に教えて?」 いつも通りの元通りだ。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 男は君の目を真っ直ぐ見ている。 男は君の声を真摯に聞いている。 (-349) 2022/08/22(Mon) 23:44:57 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「本当にわからないのか?こんな所に来た理由が?」 貴方の瞳を見つめたまま。 その瞳は揺れていて。 貴方の腕を掴んだまま。 その手は少し震えていて。 「怖い事なんか今まで沢山あった。 『家族』が死ぬのも脅かされるのも誰かの勝手にされるのも 俺は全部怖い。怖かった」 「だから殺して回ってた。俺たちの邪魔になる奴ら、 消す必要のある人間、俺は必要なら全員、」 堰を切ったように早口で話し始める。 その声すら少し震えている。 殺しが一番楽だった。引き金を引けばすぐ終わる。 相手は必ず自分たちの敵で、容赦をする必要もないと言われた者たちばかり。 後腐れも無い。気に病む必要も感じなかった。 アベラルドが選んだ、一番『面倒臭くない』仕事だった。 「俺が藻掻いてもお前らが俺の知らない所で死ぬのが怖い」 「奪われんのがもう嫌だから、俺は奪う側に居るのに、」 「……なあ。俺、おかしいこと言ってるか?」 これだって結局は愛の一言に帰結するのに、 なんでこんなに貴方と違うのだろう。 ▼ (-364) 2022/08/23(Tue) 1:03:44 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「お前が知らねぇ奴に奪われるんなら俺が先に奪ってもいい」 「…………」 「いや」 そこでやっと手を離した。 (-365) 2022/08/23(Tue) 1:05:36 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「ヤ」 一言だけ、微笑って。 赤い舌が、悪戯気にまた揺れて。 「ちゃんと送りだして、カタギに戻してやらないと気持ち悪いったら、ないでしょう」 ビアンカは、寂しい、なんてめったに言わなかった。 あなたが口にするならば、それを慰めるように抱擁するし。 ――商売中は、寂しい、会いたかった、と何度も言ったけれど。 本当の意味での寂しさを、口に出すことはなかった。 それが多分、彼女がここで生きていくために必要なことだったのだ。 ↓[1/2] (-377) 2022/08/23(Tue) 4:23:09 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ↓ 「そうして。 ……ん、……うん。 まあまあ楽しかったよ」 靴音が止まる。 彼女は微笑う。 楽しい時間は、早く過ぎる。 たとえそれがまぼろしでも、それを確かめるすべなどない。 ――だから、やっぱり。ビアンカは、そのくだらないまぼろしが、 「はあい、よろしく。 ──……愛してまあす」 わりと。自分自身ほどには、きらいじゃなかった。 わざとらしくそう言って、手を振った。 ――あなたが去るまでは、そうしている。ここは、店の前だから。 彼女は娼婦だ。 望まなくても、苦しくても、寂しくても辛くても──……そう生きてきたことを否定できるほど、器用な女ではなかった。 [2/2] (-378) 2022/08/23(Tue) 4:23:51 |
【秘】 花で語るは ソニー → 家族愛 サルヴァトーレ思えば、どうしてこんなことをしたのかなんて。 先走った愚か者、背信に狂った裏切り者が誰かなんて。 言葉にしてもよかったのかもしれない。あの会議の場でも。どこでも、なんでも。 "マウロ"と呼ばれた男が誰に殺されたのか。組織の益にならないとわかっていて、なぜ。 誰のせいでもない。男は己自身の我意と傲慢によって、地獄の底まで落ちるのだ。 本当は誰かが止めてくれることを望んでいたのかもしれない。 本当は誰かに裁かれることを望んでいたのかもしれない。 けれどももう、たらればでは意味がない。 友人も、追う背中も、連れ立つ小さな手も、見守る瞳も、全部一度に失って。 見据えるべき明の金星さえ失った男はいずれ、自分自身さえ手放してしまうだろうから。 みなが貴方という傘の下に身を丸めて体を寄せ合う、その中に在れたなら。 ひょっとしたら、誰のことも失わずに済んだのだろうか? 「……うん」 寄せられる唇の柔さ、体温の暖かさ。優しさの帳の中に隠れるようにして、口を閉ざす。 丸まってあやされる子供のようだ。抗うこともなく、腕の中で目を閉じて。 己が組織の中で用立てる為に、その体はしっかり鍛えられたものだったけど。 それでも、どこかで立ち止まってしまったままのような面立ちはあどけないままだ。 「ドライブがいいかな……車の中でするの好きだから。 ……ね。もうちょっとだけ甘えてても、いい?」 首筋に頭を擦り寄せながら、煙草を手にしていた手は火口を灰皿に押し付けて手放される。 ほんのすこし、最後のひととき。貴方が居なくなってしまうその前までは。 短い安寧に身を委ね、失われるものがないようにと願い続けているのだろう。 全部手遅れだ。 (-381) 2022/08/23(Tue) 7:20:59 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド揺れる瞳も、震える腕も、男は静かに受け止めていた。 濁流のような言葉も、それでもまだ震える声も、男は静かに受け止めていた。 いて。居て。 君の言葉が途切れた頃、ようやくその頬に手を伸ばす。それから。 色の薄い唇を、君のそれに重ねた。 時が止まったように感じたかもしれないし、与えられる人の体温が不快だったかもしれない。 或いは、それとも。 離れたのは君が拒んだからかもしれないし、男が自分からその身を離したからかもしれない。 或いは、それとも。 どうあれ男は君に口付け、それから微笑った。 「随分と熱烈な告白をするじゃないか。誰に教わったの?」 「妬けるな、少し」 笑っている。 それは、少し。あまりにも。 「僕は死なないよ、ドニ」 ────滑稽だった。 人はいつか死ぬ。いずれ死ぬ。必ず死ぬ。誰だってわかっている。ここじゃ子どもだってそれを知っている。 それなのに男は、心から信じているように言うのだ。当たり前のように言うのだ。まるで陳腐な映画の主人公のような朗らかさで。 「君たちを愛しているから」 男の言葉はいつも甘い。 ────甘い。 ▼ (-386) 2022/08/23(Tue) 10:41:55 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「だからね、ドニ」 咲う。 「欲しいならいつでも言えばいい。いくらでもあげる」 酷く滑稽で、愚昧だ。 思えば男には欲があまりなかった。 食欲だとか、性欲とか、そういったものは人並みにある。辛いものは苦手で甘いものが好き、なんて選り好みはするし、ワインだって赤よりは白が好き、だと零すけれど。何かを欲しいだとか、足りないだとかと、強請ることはなかった。 ただいつも与えた。際限なく与えた。 与えられるものをいつも探していた。 欲しいものなんてなかったのかもしれない。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 ただ、愛だけがある。 (-387) 2022/08/23(Tue) 10:44:15 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c30) 2022/08/23(Tue) 10:45:48 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ放した手が自分の頬に触れて。 少し下がった顔が貴方に向いた時唇に伝わる感触で、口付けられたと分かった。 やっぱりそれは跳ねのけられずに受け入れられて、唇が離れていくまではそのままだ。 唇が離れた時の、「死なない」と言われた時の、 「いくらでもあげる」と言われた時の、その笑顔を見た時の、 自分の顔は。 一体どんなに情けない顔をしていたか。 「お前はそうやっていつも」 「俺の欲しいものをくれるよな」 小さい声。 「お前は? 奪われてもいいって言ってんのか?」 「嫌じゃないのかよ。お前、他にも大切な事とか、あるだろ」 「大切な人も、ものも」「あるだろ」 今までだってそうだ。与えられるだけそれに甘えてきた。 自分が貴方に与えられたものは、貴方がくれたもののどれだけを返せただろうか。 昔から、大事なものを大事にするのが苦手だ。 ただ揺らがずにそこに在って、愛を配る貴方の姿が酷く眩しい。 「……俺もサヴィみたいになれたら」 「こうはならずに済んだかな」 真似して笑ってみたって、やっぱりそれも、滑稽だろうか。 (-402) 2022/08/23(Tue) 12:24:38 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド/* こんにちは。 続きを送る前に、時系列の確認だけしてよろしいでしょうか。 こちらが話しかけたのは一日目ですから、現在の時間軸は 【一日目:夜】 であると認識しております。死亡は 【三日目:夜】 ですから、少し時間が空くと思っていて(この晩はひとまず平和に終わって)よろしかったでしょうか。もうこのまま殺すという感じなら、話し始めたのも三日目だということにしてもいいかと思います。 (-408) 2022/08/23(Tue) 13:30:36 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ/* こんにちは!私もその認識でいます! この場は一度閉じて、後日迎えに行って殺しましょうという事にしようと思っています。 なのでこの場ではとりあえず何も起こしはしませんね! (-409) 2022/08/23(Tue) 13:38:23 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー男は家族を愛している。 愛する家族を、この世全ての残酷さから守りたかった。 降りかかる痛みを一つ残らず取り除いてやりたかった。 そうするにはきっと愛するだけではきっと足りなかったのに、 こんなところに繋ぎ止めておくのは一番の間違いだったのに、 男はそれでも愛だけを与えて、与えて、与え続けた。 それしか知らないように。 それだけが呼吸のように。 祭りの活気が地上から立ち上る。熱となって空気を揺らめかす。陽光が周囲に金色を振り撒く中、柵の極近くで隙間なく身を寄せ合う二人の姿は、どこか接吻にも似ていた。 「もちろん、僕のソニー」 いつだって、彼は君を愛おしんでいる。 「あそこは少し、僕には狭いんだけど────」 「いいよ。少ししたら車を回そうか。それとも、今日もお仕事?」 我儘にも満たないそれに少し笑った。首筋に空気が通って震える。長い指が髪を撫ぜる。愛してる、囁きが降る。 この温度を、君はいつまで覚えていられるだろうか。 いつまでも、彼は君を愛おしんでいる。 (-413) 2022/08/23(Tue) 15:13:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「奪うだなんて、面白いことを言うんだね、君は。僕の心はもう君のものだって言うのに!」 「……奪わなくたってあげるさ。君になら、なんだって」 甘い。 甘い。 酷く、甘い。 言葉を吐く口元は、柔和に弧を描いている。 「僕はね、ドニ。君たちを愛してる」 「だから大切な人も、ものも、全部あるのさ。ここにね」 わかるかい、と瞳が問いかける。言い聞かせるように覗き込む。アメジストの双眸は君から目を離さない。君だけを見据えて逃がさない。 触れた頬から男の体温が伝わる。周囲の空気は冷えているわけではないのに、その手はなお熱い。肌の下には、確かにあたたかな血が巡っているのだろう。 「……なんて顔をするんだい」 眉を下げて目を細めるそれだって、一つの笑みの形ではあるのだ。 俯く君の顔を、さらりと流れた髪が少し隠した。それを丁寧に分ける男の手つきは、怒られて隠れてしまった子どもを探す親のそれに似ていた。 「まったく君は、僕を捕まえておくのが上手いね。今夜は少し話したら帰るつもりだったのに」 「君が君でいてくれて、僕がどんなに嬉しいか────」 (-418) 2022/08/23(Tue) 16:19:30 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ/* いい感じの紫の宝石調べようと思ったんですけど アメジストの石言葉、「誠実」「心の平和」「真実の愛」らしい ぴったり (-420) 2022/08/23(Tue) 16:28:03 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ自分には、それが本当にどこまでも、どこまでも甘く感じて。 本当に許された気になってしまう。いや、許しているのだろう。 自分は責めて欲しいのだろうか。受け入れて欲しいのだろうか。 それすら考えるのが怠惰になるほど、貴方に与えられるものが甘くて。 絡め取られている気分になる。 スノーホワイトの髪が貴方の手に分けられて揺れる。 なんだか少し恨めし気な視線が、その間から覗いた。 けれどその表情は、薄く笑んで。 「変われないのは得意だからな」 「……お前の心が俺のものなら」 「付いて来て貰うよ。……地獄まで」 一つ、深く息を吸い込んで。 「明後日。迎えに行く」 「いいかな」 そう伝えた。 あの路地に、夜に来てくれないかと。 そう伝えて、また、手を握る。 「サヴィ。……悪いなぁ」「よかった」 貴方にしてもらったように、手首にキスをする。 「お前の命を貰えたら、俺は何にも寂しくないよ」 「俺と一緒に居てくれるんだ」「よかった……」 (-421) 2022/08/23(Tue) 17:45:35 |
【秘】 どこにも行けない ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ少年は懸命に、あなたの隣を遅れないよう歩く。 それでも結局、守られていることも、わかって。 だから。 たとえ共にした時間が短かろうと。 生みの親よりずっと、あなたの方が家族だった。 「……なんだよ、それ」 くすぐったそうに少し、肩眉を上げる。 あなたを見上げて、吐息をひとつ。 「サルヴァトーレ」 「あんたホント、そんなことばっか言ってさ」 「人のことばっか見てて、自分のこともちゃんと見てんのか、……心配なんだよ」 それは、そうと自覚してのことではなかったけれど。 少年は確かに、あなたに『愛』を返そうとしていた。 (-450) 2022/08/23(Tue) 20:13:51 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「明後日ね。空いてるよ」 こちらは緊張した風でもなく、やっぱり笑っている。 場違いな程いつも通りに笑っている。 「……」 「ああ、非番はその次か……」 そんな、緊張感のないことすら口にしてみせるのだ。 「どこにも行かないよ、僕は」 「ここ以外のどこに行くって言うのさ」 君からのキスを享受する。 親鳥から飛び方を真似たような、親猫から獲物の取り方を習ったような、そんな君の愛し方。歳はひとつしか違わないのに男は君をよく可愛がったし、君は男によく甘えた。 二人でいる時々は逆転もしたけれど、概ねその関係は変わらなかった。 それから、君が満足する頃。 「ドニ」 男は、何度目かのその名を呼んで。 君に、今度は深く口付けるだろう。 (-451) 2022/08/23(Tue) 20:17:22 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ「ああ。……はは。行けないかもなぁ、二人で」 それは残念だな、と合わせたように暢気に言う。 「分からないだろ。何があるか、どうなるかも」 「な」 貴方の事は信じている。 絶対に貴方は裏切らないし、どこにも行かないと。 でもそれでも、放しがたくて。 これが貴方の真似なのはそうだ。そして貴方よりも拙いものだろう。 それでも伝えようとするとき、愛したいと思う時、自分は貴方の真似をした。 身近にある、一番明確な愛の形だったから。 「ん? …………、あ」 名前を呼ばれればまた貴方の瞳を見て。 再び重ねられた唇と差し込まれる舌に、薄く口を開けて答えた。 貴方の気が済むか、こちらの気が済むまで、きっとそれは続く。 ……やっぱり、甘い。 (-457) 2022/08/23(Tue) 20:41:28 |
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