【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ貴方の想像は少し違う。 どちらかと言えば、それは時代による認識の齟齬に近い。 白間コズヱにとっては、どんな生徒も彼女の守るべき生徒だ。 教師が生徒を選ぶなど、あってはならない。これは、ままごとではないのだから。 全員を同時に攫う力が、もしもあったのなら。彼女は躊躇なく使っていただろう。 「……明日香。条件付きの降伏をするなら、足りないものがあるよ」 折ったばかりの小さな枝を数本拾い、中から細い一本を摘む。 「その提案に乗ることで、私に──いや、私達に。 一体どんな利益があるのか、示しておくれ 。」じわり、輪郭が滲んで揺らぐ。 ぱきり、枝を折る。折る。折る。 「必然の出会い? ──ああ、全く都合が良すぎるね。得をするのは生者だけじゃないか……それは頼みですらない、甘えだ。 そして生徒でもない君の甘えを叶える程、私に余裕はない」 置いていきたくないと、何度言われて来たことだろう。 しかし喉元を過ぎれば、熱さを忘れてしまう。何故って、人だから。 「幾度もそんな言葉を聞いたよ。結果は これ さ」呆れたように、吐き捨てたように、少女の抑揚は悪態になっていく。これは教師としてではなく、ひとりの亡者としての想いだから。 ふう、と意図的に深呼吸をひとつ。 ▽ (-4) 2022/07/15(Fri) 2:40:48 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「……他の条件はあるかい? ちなみに、私から出せるような対価は恐らくない。 つまりこの交渉は、君にとってかなり不利だ。無一文から契約を取るような行いだからね」 死者との交渉はまず成り立たない。 死者は支払えるような対価を、基本的に持っていないからだ。 だからこそ、人々は彼らを祓って来た。 「しかしかなり難しいだろうから……。 もしも私が納得する、または心動かされる条件があれば。私から深雪を説得しても良い。 もう全員は諦めろと、諭してみせるさ」 (-5) 2022/07/15(Fri) 2:41:57 |
【秘】 陽炎 シロマ → チャラ男 ウラミチ貴方の偽りの記憶が、陽に焼かれて消えていく。白間梢という少女は、最初からいなかった。 これは貴方達とは初対面の、何ら縁もない亡者である。 「お〜い、裏道〜……」 陽射しから逃げるように、校舎を歩く。 なんとなく、熱そうで怖いから。 彼は成仏してしまったのだろうか。 誰の悪戯か、彼の心臓は止まっていた。考えられる可能性が多過ぎた。ひとまずこちらは保留させておく。 校舎の中を、散歩でもするかのように貴方を探した。 (-6) 2022/07/15(Fri) 10:10:19 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「完璧主義者は当たってるかな。100点は目指すべきなのだから。 寂しがりかと言われれば、私は違うね。深雪は多分そうだけれど」 唯一の存在だけではなく、全員≠求めた生徒を思い返す。 情で動く彼と違い、この少女は実益で動く。 その実益とは、 生者が考える死者の利益ではない。 「失敗で構わない。 未完のままが良い。 未熟だから、楽しいんじゃないか。 そしてね、これもきっと勘違いさせてしまったかもしれないんだが」 長い枝を持ち、ざく、ざく。 枝先で地面を軽く抉った。 ▽ (-13) 2022/07/15(Fri) 17:15:33 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「 謎は謎のままで良い。 私達の物語は続いた方が良いからね。君達からすれば、もう終わっているのだろうけど……私は私として発言させてもらおう」 教師として立つ白間コズヱに、寂しさなどある筈もない。 「私は栗栖に動機を明かすように頼んだけれど、それは決して謎を明かしてもらいたいわけじゃない」 公私混同をする教師など、教壇に相応しくないのだから。 「解き明かしてくれれば、 もしかしたら私を理解してくれるかもしれない と思ったからだ。だってそうだろう?それくらい、私について考えてくれたということだ」 「……だが、まあ、しかし。 そうなった所で、誘いには乗ってくれないだろうとは思っているんだ。 駄目で元々、というやつだね」 ざく。 地面の色が変わる。表面の薄い砂の層が終わり、湿った土が現れた。 「さて。こちらの返事をまとめよう」 切り替えるように、声色も明るくなる。 ▽ (-14) 2022/07/15(Fri) 17:16:24 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイざ、と新たな地面を枝で突く。 丁度、腕を引けば……貴方と少女の間に線が引ける位置だ。 「私達は、語り部を求めない。 ……むしろ要らないね。いたら力を合わせて、敵として排除しよう」 歴史って好きじゃないな。 私達は読み物じゃないのだけれど? 「私達は、終わりを求めない。 成仏なんてもっての他。望む夢は大きく、永遠だよ」 不可能と解っていても、それを目指すのが人間だろう? 「私達が満足できる条件。 ────それは、君達全員の死だ 」隻眼を見据えて、いつも通り微笑んで。 「それ以上、私達に損益しか無い提案をするのなら。君達の都合を押し付けるのなら」 この亡者だって、貴方達生者に自身の都合を押し付けている。それを知った上で、言っていた。 「この話は、おしまいだ」 帝国主義とは。 利益を他から奪い、国を豊かにする思想である。 (-15) 2022/07/15(Fri) 17:17:46 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「何から何まで合わないね……。 現代の話なんて、知ったことじゃないんだ。 今すぐじゃなくても構わないから 、要らないと言っているんだよ。深雪さえ望むなら、これから何度だって迎えに行くつもりさ」 自ら来てくれたのなら、当然嬉しい。 だがそうでないなら、死後わかるまで授業をすればいい。 白間コズヱは、そう考える。 互いに分かり合えなかった対話は、これで何度目だろう。 嗚呼、矢張り。 生者と分かり合う為には、死へ招くしかない。 「不快にさせたならすまないね。 私は現代の、その民主主義的な考え方は……知ってるだけで、わからないものだから」 がり、がり。 地面に線が引かれていく。 しかし教えてくれと言われて、答えないわけにはいかなかった。 私は、先生だから! 線を描く手を止め、口を開く。 ▽ (-18) 2022/07/16(Sat) 12:53:16 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「まず、無理矢理全員を招かなかった理由。 これは簡単だ。私にそこまでの力が無い。 だから、自ら此方に来てもらいたかった。これが期待していたことだね。 そして最後に。 君達を騙して、生者のふりをしていたのは──その方が、此方に自ら来てくれるかと思ったからだ」 これ は、只それだけの為に動いた亡霊だ。身勝手で、自由で、自分の夢を叶える為に手段を選ばぬ愚かな厄である。 「現代じゃ、常に人は満足しているのかい。 ……違うだろう? 満足する為に、日々努力して過ごしている筈だ。勿論、それが叶わないこともある。 和解は双方がそれを望んでからが始まりであり。 片方が望んでいなければ、それこそ無駄な時間となるだろう。 「それはきっと、戦前と同じだよね」 (-19) 2022/07/16(Sat) 12:53:54 |
シロマは、線を引いた。 (a11) 2022/07/16(Sat) 12:54:07 |
【秘】 陽炎 シロマ → チャラ男 ウラミチ「嗚呼良かった、成仏したのかと思ったよ〜……」 少女は最後に会った時と変わらぬ明るさで、貴方の隣へやって来る。 その片手には出席簿があった。 「ねえ君、これから何かしたいことってある?」 ぱらぱら、出席簿を捲る。 名前の書かれた頁を見せながら、貴方に問いかけた。 「何も目的が無いなら…… 私の生徒にならない? だいぶ人数も増えてきてね、賑やかになってきそうなんだ。どうかな」 その声は、誰が聞いても弾んだ楽しそうな声色で。 まるで生きているかのようで。 今日が初対面の少女は、貴方を自身の学級へ誘った。 (-21) 2022/07/16(Sat) 16:02:18 |
【秘】 陽炎 シロマ → 気狂 ネコジマ「おやおや。入学希望かな? ふふ、呼び方はどちらでも構わないよ」 今のところ、自身を素直に先生と呼ぶのは夢川だけだ。きっと彼から話を聞いたのだろう、と考えた。 貴方が抱えた缶を見下ろせば、ふむ、と顎に手を当てる。 「ん〜、元の場所だとまた見つかっちゃいそうだしなぁ……」 それに。 彼等は満足に学校へ行けなかった子供達である。供養もされず、捨てるように燃やされた部落の子供達。 暫し悩んでから、口を開く。 「……きっと学校に行きたかっただろうし。 皆のところにしようか」 (-23) 2022/07/16(Sat) 16:31:31 |
【秘】 陽炎 シロマ → チャラ男 ウラミチ「本当!?ありがとう! 嬉しいなぁ、きっとこれで 鹿乃 も元気出してくれるよ」さて、この少女は司馬鹿乃を『カナ姉』と呼んでいた。 しかし、いつのまにか呼び方を変えていたらしい。 「教室は昇降口の横だよ。 牧夫達がいたところ、覚えてるだろう? あそこで授業をするからさ」 (-24) 2022/07/16(Sat) 16:46:36 |
シロマは、出席簿に名前を書き加えた。 (a14) 2022/07/16(Sat) 16:46:56 |
【秘】 陽炎 シロマ → チャラ男 ウラミチ目を見開いた貴方の反応を見て、少女は気を良くした。 「内容は色々だね。 でもちゃーんと点が取れるように、私が教えるから安心して?」 どうやら先生の手厚いサポートがあるらしい。もしかすると、あまり嬉しくないかもしれないが。 「……あ、席は鹿乃の隣にしておくね。 きっと緊張してるだろうから、裏道が助けてほしいな」 貴方の様子を見るに、きっと大事なことだろう。そう考えて付け足した。 (-26) 2022/07/16(Sat) 20:44:37 |
【秘】 先生 シロマ → チャラ男 ウラミチ「遠足とか、修学旅行もやってみたいんだ。 もし他にもやりたいことがあったら、遠慮せず言ってほしい」 笑顔を見るや、こちらも顔を綻ばせる。 少女の生徒を想う気持ちは本物だ。 その愛が妄執であるだけで。 名前一人分、重くなったような気がする出席簿を抱えた。 嬉しい重みとは、きっとこんな感情を言うに違いない。 「私は……君達の、先生だからね!」 (-29) 2022/07/17(Sun) 11:31:56 |
【秘】 陽炎 シロマ → 気狂 ネコジマ「……んん、花火かぁ。 まあ……、やっても構わないよ。 私は後ろで見てるからさ」 管理状況も悪い建物である。 これから急に保護をしたとしても、もう遅いだろう。朽ちるのを待つだけだ。 それに、この校舎自体に執着があるわけでもない。 「くれぐれも、自分が燃えないようにね。 焼け死ぬのは苦しいから……」 もう己が燃えることは無いと、わかっていても。 炎の雨は、どうしても。 「全員集めるのかい?」 しかし先生が暗い顔をしていては、心配させてしまうかもしれない。努めて平静を装って。 生者、死者、幻……それらを含めて『全員』と呼んだ。 (-35) 2022/07/17(Sun) 15:29:47 |
【秘】 陽炎 シロマ → 気狂 ネコジマ「……そっか。 稔が苦しいのは、私も苦しいけれど……。 君がその方法を選んだとしても、私は止めないよ」 まるで境目をぼんやりと見つめているような子だ、と思った。 両方に足を着けている、と言った方が良いだろうか。 一言で表すならば、『狂い』になってしまうが。 その様に、何だか親近感さえ抱いてしまう。 苦痛だと知っていても尚、選んだとしたら。 貴方の想いは、それ程強いのだろう。 もしくはそれ程に、狂っている。 ああ、来てくれないかなあ。 君のような子にこそ、この いとま で笑って欲しい。「──みんなで一緒にいたい気持ちは、わかるつもりだからさ」 少女はそっと微笑んで、肯きをひとつする。 その横顔は、今までの笑顔とは違って。 ほんの僅かに、憐れみが滲んでいた。 (-40) 2022/07/18(Mon) 12:04:53 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「……ああ、人は何もしなくとも死ぬ。だが、その頃にはとっくに変わってしまっているだろう。それが嫌なだけだよ。 鶏だって、一番美味しい時に絞める。 米だって、炊きたてが一番美味しい。 いつだって、今が一番美しいんだ」 人は変わらないと口にするけれど──そんなものは嘘だ。 今この瞬間の貴方は、今しか存在し得ない。 時代が変われば人も変わる。それこそ、世捨て人として暮らさない限り。 昭和ならともかく、この情報化社会で孤立して暮らすことなど不可能だろう。 変わらない物など、この世にあろうか。 今後について話題に上がれば、「さてね」と他人事のように切り出す。 「邪魔するか否かは生徒達次第だ。 せっかくだし……時代に倣って、私も行きたい場所に行けるようになろうかな。 上手くいくかはわからないが……」 生前は、いきたい時にいきたい場所にいけなかった。 生徒から学ぶことだってあるだろう。 白間コズヱの考える理想の教師は、生徒の意思を汲む大人だ。きっと現代人である彼等から、これから多くを学ぶ。 とはいえ。 停滞の中にある者同士で交わす言葉は、きっと偏っている。 それは既に、彼女が“生徒が望んだ”というだけで全員招こうとしていたことからも明らかだ。 「しかし、ね。生き物は日々変わっていく存在だ」 「──私達はいつでも歓迎するよ。 現実に疲れたら、いつでもおいで」 最後に、まるで実家から貴方を見送るような言葉を添えた。 (-42) 2022/07/18(Mon) 21:59:41 |
【赤】 先生 シロマ……色とりどりの炎が、花を咲かせた後。 どこかで、少女が教鞭を執っていた。 「 鳥飼 。」「 夢川 。」「 司馬 。」「 来家 。」「 山中 。」名前が増え、賑やかになった出席簿を満足気に読み上げる。 その声は隠し切れない程の喜色が溢れていた。 「……ふ、ふふ! すごいなぁ、こんなに沢山! 体育の授業だって色々できるようになるね……!」 前回との違いは、更に名前が増えたことと──最後にもう一名分、空欄があった。 「さて、さて。 もしかしたら、遅刻かもしれないし。少し待っておかないとだ」 欠席かもしれないけれど。 時間は幾らでもある。 時計の針が進まないのだから。 (*1) 2022/07/20(Wed) 23:06:44 |
【赤】 先生 シロマ「……良かった。 『もし待ち切れないから今すぐ行こう』って言われたらどうしようかと思ってたんだ。 私はこの辺りから動けないしさ」 貴方に視線を向けた後、窓の奥を見遣った。 「しかし、矢張り難しかったね。 特に私は皆と昔から友達、というわけでもないから……夜が明けてしまうと尚更」 もしも幼馴染なら、情に訴えることも可能だろう。そう思い 馴染んだ わけだが。白間コズヱは神でもなく、只の少女であった。限界というものはどうしても見えてくる。 ギシ、板が沈む。 教壇の上を、少女の細い足が進んでいく。 ▽ (*4) 2022/07/21(Thu) 11:19:27 |
【赤】 先生 シロマ「……今日は、『待ち切れなくなったら』の話をしようと思ってたんだ」 貴方の頭を、誉めるように撫でて。 「ね、深雪。 車とか用意できそう?バスとかさ。 そういうのがあれば私も移動できるだろうし──修学旅行だって行けると思うんだ」 自ら調達できればするのだが、こればかりはそうもいかない。 生徒の、貴方の力を頼るしか無かった。 「それに」 できる限り多くを望む子供の、 「 皆を迎えに行き易いかと思って。 」夢を叶えてこその教師だ。 (*5) 2022/07/21(Thu) 11:20:53 |
【赤】 先生 シロマ昨夜から明け方。 ほんの数時間だが……思い感じて過ごしたことは、正しく現実のものだろう。 それは自分が、貴方が、ここにいるという証左に他ならない。 たったそれだけの事実が、存在の証拠だ。 「……そう言ってくれると嬉しいよ」 きっとそんな貴方だからこそ、この学級へやって来たのかもしれない。 「まあ、急ぎというわけでもないからね! 初めての課題……うん、校外学習って感じかなぁ」 楽しみで仕方ないのだろう。 普段の落ち着いた抑揚も今は無く、年相応の笑顔があった。 「修学旅行はやっぱり京都かな。 いや、最近は東京なんだっけ。 たしか、すごく高い電波塔ができたんだろう? ……へえ、もう向こうまで車で行けるようになったんだ。 高速……道路?っていうのを使うんだね」 「ああ、寝るのが惜しい! こんなに今夜が待ち遠しい朝は初めてだ……」 (*8) 2022/07/21(Thu) 19:32:36 |
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