人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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到着:片連理 “椿”

【人】 片連理 “椿”

[陽は地の果てに落ち
 空に夕暮れの名残
 月明かりはなく
 星々はささめく
 枝を踏み蔓をくぐり

 引き寄せられた人影が在るのは、果たして現か]
(16) 2023/02/28(Tue) 23:00:12

【人】 片連理 “椿”

 
『できれば君には、ヒトとして生きてほしい』
 
(17) 2023/02/28(Tue) 23:00:55

【人】 片連理 “椿”


  ごめんなさい
  貴方の願いは、叶えられそうにないのです
 
(18) 2023/02/28(Tue) 23:01:53

【人】 片連理 “椿”

[在ってはならないのだとわかっていても
 在り方を変えることはできない。

 どれだけ生を願っても
 じきに終わりはやってくる。

 ただこの手の中の罪を見つめ
 うずくまるだけの日々

 ——とうの昔に、答えは出ているのだけれど。]**
(19) 2023/02/28(Tue) 23:02:51
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a4) 2023/02/28(Tue) 23:11:38

【人】 片連理 “椿”

[気がつけば湖のほとりに座っていた。
すっかり日は暮れて、遠くにゆらめく夕焼けの残り火も東からやってきた暗い青にやがて塗りつぶされようとしている。青に沈んだ世界に時折緩やかに風が吹き、湖面にさざなみが揺れる。

まるで夢の世界だ、と彼女は思う。
一体ここがどこなのか、どうやってここまでやって来たのか、さっぱり思い出せなかった。今より以前の記憶は黴臭いアルバムに挟まった古い写真のように色を失い、擦れてぼやけている。

もう随分まえから、夢の中にいるように現実感が乏しかった。もしかしたら、実際に夢を見ているのかもしれない。ほんとうの自分が今どこにいて何をしているのか、あるいは生きているのかすらもあやふやで、何ひとつ確かなものがないというぼんやりとした不安だけが確かに存在している、そのように思われた。]
(40) 2023/03/01(Wed) 0:10:26

【人】 片連理 “椿”

『できれば君には、ヒトとして生きてほしい』

[きょうだいであり、友人であり、恋人であり、また自分自身でさえもあった同胞の遺した最期の言葉が、今も耳の奥にぼんやりと残っている。

 “人狼“と呼ばれる、ヒトの道を外れた生き物。
 獣ともヒトともつかない、同族喰らいの化け物。
 それが、今の彼女の本質であった。

 ヒトが、あるいは獣が“人狼”となるためにはいくつかの異なる機序が存在するが、彼女の場合は自業自得とも呼べるものだった。

 かつて神仙を目指した修行者が、己の精神の瑕疵を完全に削ぎ落とすべく魂を“磨き上げる“秘術を用いた。しかしそれは不完全なものであり、彼の魂は自身が望む高潔と、捨ててしまいたい俗悪とに引き裂かれた。しかし、高潔であるはずの彼は、切り捨ててしまった部分のあまりの大きさに、対して残された自分のあまりの小ささに慄き、己こそが欲深くあさましいものであったと悟った。彼はその罪を悔いて、一度は滅しようとしたもう一人の自分を憐れみ、これを庇護して今度こそはと深く愛した。

 しかし、傷を受けた魂は二度と元には戻らず、彼らは極めて不安定で不完全な連理の存在として、また、ただしい魂を羨み、妬み、求めるあまりにヒトを喰らう怪物となって、ゆえにヒトの世を離れ隠遁の暮らしを続けていた。]
(59) 2023/03/01(Wed) 4:08:13

【人】 片連理 “椿”

[傷ついた魂は引き裂かれたその箇所から徐々に風化してゆく。彼らはやがて半ば眠ったような状態で夢現の狭間を漂いながら、少しずつ魂を磨り減らし、長らく彼女を護り愛した片割れも遂に力尽き、彼女ひとりを遺して砂のごとくに消えてしまった。

 彼女は片割れの言葉通り、ヒトとして生きることを試みた。しかしそれは叶わず、結局またヒトを喰らって、失意のうちに取り残された。自分に残された時間がそう多くはないことはわかりきっていた。

 彼女は最後に、これまでに出会いほんの僅か心を交わしたひとびとに逢いたい、と願った。隠遁の暮らしの中でも人との関わりが全くないわけではなかった。夢か現か定かではないが、彼女は友の一人に逢いに行った。彼もまた魂に傷を受けたひとりで、それでもなお強く、美しく生きる姿を、彼女は愛していた。盃を交わし、思い出を語り、ついに呪いに打ち克ったという彼を眩しく思い、それを成せなかった自分を戒め、別れは告げぬままにそっと彼のもとから去った。その記憶は風化する魂と共にすでに薄れつつあったが、温かなものが彼女の中に残った。

そして今、彼女は水辺に座っている。ここがどこかはわからない。しかし、なぜここにいるのかはわかっている。もう一人の友に逢いにきたのだ。]
(60) 2023/03/01(Wed) 4:09:15

【人】 片連理 “椿”

[彼女はゆっくりと立ち上がり、マントの埃を払ってから、目深に被っていた頭巾を外す。

 露わになった彼女の長い髪は、黒の間のあちこちに白が混じり、遠目には銀に見える色合いであった。しかし、その老婆のような髪の下の目鼻立ちは幼い娘のようにも見え、どこか歪さを覚える相貌に感じられるだろう。

 少し離れたところを歩く人影に向かって、彼女は手を振った。まだはっきりと顔も見えない距離だが、それが彼であることははっきりとわかった。以前に逢ったのがどれくらいまえなのかはもうわからない。彼女の時間の感覚はすでに失われている。なんとなく懐かしさを覚えるほどには時間が経っているような気もする。

 ふと、そういえば以前少しの間を共に過ごしたときにはこの頭巾を外して見せたことはなかったかもしれないと思い出す。それでも彼は自分のことに気がつくであろうと、なぜか確信が持てた。彼女は待ちきれず、彼の元へと駆け寄った。]


  お元気そうですわね、楓様。


[楓、というのは仮の呼び名だ。彼の本当の名を、彼女は知らない。彼女の方は椿、と名乗ったような気がする。これも、本当の名前ではない。たまたま頭に浮かんだ花の名を口にしただけだ。そもそも、彼女にははじめから名前などなかった。片割れとの間ではお互いを区別する必要はなかったから、ただ複数形で「わたしたち」とだけ呼び合っていた。]


  きっと、お会いできると思っていましたの。


[椿は右手を差し出し、微笑みを浮かべる。
 通り抜ける風が、肌に心地よかった。]**
(61) 2023/03/01(Wed) 4:56:10
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a9) 2023/03/01(Wed) 7:34:38

【人】 片連理 “椿”

[自ら握手を求めておきながら、触れた手が己の知るものでないことに少し驚いた。
 一瞬だけ、目を丸くして彼の手を見つめ、しかしその温かさに安堵を覚えて、両の掌で慈しむがごとくに包みこみ、琥珀の色をした目を見上げた。こんなに穏やかな光を湛えたひとであったか、記憶は定かではない。目の前にいる、かつてと同じ気配のする彼がそうであるのなら、過ぎしあの日もそうであったのだろう、と空白はそのままにして今を受け入れる。]


  ——あれから。


[その言葉には、ゆるく首を傾げた。
 さて、これまでどうしていたのだか。別の誰かに、逢いに行ったような気がする。それももう、遠い日のことのように全てが色褪せて、靄がかっていた。]


  ええ、ええ。息災にしておりました。


[問われれば何か思い出すのかもしれないが、今はそれだけを口にする。
 そうして、なぜ自分はここにいるのか、という、頭の中にぼんやりと反響する疑問とその答えをもう一度繰り返す。]


  逢いたかったのです、貴方に。
(84) 2023/03/01(Wed) 10:08:44

【人】 片連理 “椿”

[きっとなんの答えにもならないであろう言葉を嬉しげに転がしながら、椿は彼の手を引いた。]


  では、参りましょうか。


[どこへ?
 その答えを、椿は持っていない。ただ足の向くままに歩き出す。
 彼には椿が導くように見えるだろうか?
 向かう先にはいくつかの木造の建物。以前にも、そんな場所にいたような、そうではなかったような。いずれにせよ日は落ちたのだ、闇に飲まれるまえに灯りの下へと辿り着くのが良い。]
(86) 2023/03/01(Wed) 10:09:48

【人】 片連理 “椿”

  ええ。ですから、逢いに来たのです。

[椿はそれだけ、答えた。彼女自身にも、何が起こっているのかはよくわからない。願いがあり、それが叶ったという、それだけだ。

 実のところ、楓から受け取ったカードは片割れが大事に持っていた。が、あのあとすぐに、片割れはもう椿については行けないほどに弱ってしまっていた。自分の目の届かないところに一人で行かせたくなかった彼は椿をどこにも行かせず自分の元に留め置いた。それで結局、カードは椿の手には渡らないままになった。だから、彼女がこの場所にたどり着いたのは、一種の奇跡のようなものなのかもしれない。

 椿は楓の手を引いて、湖とは逆の方向へと歩いてゆく。特にあてがあるわけでもなかったが、点在する建物の方へと向かう。]
(113) 2023/03/01(Wed) 15:31:48

【人】 片連理 “椿”

  鍵、ですか?


[歩きながら、楓が数字の刻まれた板のついた鍵を椿に見せた。椿はその鍵と、先にある建物とを見比べて、にこりと笑う。]


  よかった、歩き出してはみたものの、行くあてもなく困っていたのです。


[困っていた、というのはほとんど嘘であるが、あてがないのは本当だ。もしあの建物の中に入れないのであれば、どこか夜露を避けられる場所を探してそのままさすらうつもりだった。せっかく会えたというのに、夜の森で二人して獣にでも襲われてしまったら元も子もない。楓にとってみれば現実味のない奇妙な出来事ではあっただろうが、もうすでに長いこと夢の中に生きているような椿にしてみれば、このくらいのことは日常に起こりうることだ。だから、ことさら不思議がることもない。]
(114) 2023/03/01(Wed) 15:32:33

【人】 片連理 “椿”

  ここですね?


[先程見た鍵の番号と同じ番号の記された建物を見つけると、椿は楓から離れて小走りに建物に近づいていった。

 三角屋根の質素な丸木小屋だが、家族連れが住むにも問題ないほどには大きい。二階建てで、屋根の高い位置に窓が見える。さらに屋根裏部屋があるかもしれない。右側は広いテラスになっていて、そこに小さな丸いテーブルと、椅子がいくつか並んでいるのが見える。

 椿は入口の前の短い階段を上り、扉についた窓から中を覗き込んだ。中は広いリビングになっているようだが、ここからではまだよく見えない。窓に張り付いていた椿は楓を振り返り、早く開けてくださいまし、と言わんばかりに目を輝かせた。]**
(115) 2023/03/01(Wed) 15:33:34

【人】 片連理 “椿”

 
  ——お腹が空きましたわね?


[寝室の入口で、椿が声をあげた。
 白いマントはリビングで脱いできた。
 今の彼女は、袖も裾も長いクラシカルな黒のワンピース姿である。
 楓が振り返ったなら、彼女は両手を後ろ手に組んだ姿勢で、ゆるりと首を傾けた。背中まである長い髪が、垂直を保とうと僅かに揺れる。化粧気のない地味な相貌の彼女であったが、唇だけがまるで紅を差したかのように赤くつやめいていた。]


  何か、作りましょうか。
  冷蔵庫にもちゃんと食材がありましたのよ。
  使って良いのよね、きっと。
  何かリクエストはあるかしら?


[微笑みのかたちに保たれたままの唇で、彼女はそう続けた。“空腹“の語は、彼女にとって文字通りの意味でしかない。]**
(141) 2023/03/01(Wed) 19:10:31

【人】 片連理 “椿”

[寝室を出てすぐ目の前はちょっとしたホールになっていて、一階のリビングと同じように柔らかそうなソファとローテーブルが置かれていた。右手が階段になっていて、玄関の真上が吹き抜けになっている。

 椿は洒落た螺旋の階段を降りていく。鋭角の中央を避けて、端から慎重に。二階から一階までぐるりと一周するだけなのに妙に緊張してしまうのはなぜだろう、と、椿の思考はあらぬ方向に飛躍する。]
(188) 2023/03/02(Thu) 2:21:32
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a18) 2023/03/02(Thu) 2:45:50

【人】 片連理 “椿”

[階段を降りて正面、つまり玄関の真向かいにはバーカウンターつきのキッチン。右にリビングと、その先、今はカーテンの閉まった大きなガラス戸の向こうはウッドデッキに続いている。左奥にバスルームと洗面所、手前には手洗いだ。

 カウンターの左から奥のキッチンへ入ると、小さな二人用の丸いダイニングテーブルが置かれていて、その先がバーカウンターと垂直になる形で小さなシステムキッチンになっている。

 椿は奥の冷蔵庫を開けて、食材を取り出していく。楓が寝室に上がったときに一度物色しているから、迷いはない。]

  ほら見て素敵、ラムがあるわ。
  これを焼いて、あとは野菜をコンソメで煮て……


[それから、ふと振り返って楓の方を見る。]


  男の子には、バターグラッセの方がいいかしら?


[問いかけて、椿は悪戯めいて微笑んだ。
 もちろん、目の前の彼はきちんと大人だ。]
(205) 2023/03/02(Thu) 4:28:36

【人】 片連理 “椿”

  とりあえず、人参の皮を剥いて輪切りにしてくださる?


[椿は手際良く用具を並べてから、肉を焼く用意を始めている。
 時には王に傅く従者のように、時には年の離れた弟に接する姉のように、その容姿と同じく、椿の言動には不安定さがある。自身では別段意識しているわけではないのだが、存在の不確かさがそこに表れているのかもしれない。]

  お肉の焼ける音って、しあわせですわねえ。
  お料理は人間だけにゆるされた営みだわ。だから、好き。
  ……わたくしは、あまり上手ではないのですけれど。
  あの人の方が、得意だったわ。

[しばらくして、そんなことをぽつりと呟いたりもする。]**
(206) 2023/03/02(Thu) 4:29:39
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a19) 2023/03/02(Thu) 4:30:45

片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a20) 2023/03/02(Thu) 4:56:11

【人】 片連理 “椿”

  そうね……、そうかもしれません。
  人間にしては、ちょっと変わっているでしょう?
  あ、バター取ってくださる? お砂糖は……こっちにあるわね。

[切ってもらった人参を小鍋に入れながら、まるで世間話のような口調で呟く。小さなキッチンは二人で立つには随分と狭い。聞き慣れた彼の声は耳に心地よく、椿は歌い出しそうな上機嫌で、手際よく料理を進めていく。

 フライパンに蓋をして、火が通るのを待つ。その間にまな板と包丁を片付けて、皿を用意する。肉が焼けたら皿に移して、同じフライパンで簡単にソースをつくる。そんな日常の光景に、およそ日常とはかけ離れた会話が挟まって、奇妙な緊張感が漂う。]
(227) 2023/03/02(Thu) 11:34:51

【人】 片連理 “椿”

[人間ではないような。実際、その通りだ。初めから、人間と呼んでいいようなものではなかった。

 椿はバターで煮た人参も皿に乗せ、肉にソースをかけた。それを、側の小さな丸テーブルに乗せて、カトラリを用意する。カウンターに用意されていた小さな丸いパンの入った籠はテーブルの中央へ。]
(228) 2023/03/02(Thu) 11:36:14

【人】 片連理 “椿”

  いただきましょう。
  ええ、とても人間的な食事だわ。


[これくらいの人間のふりならいつでもできる。
 多分、できるはず。]


  そう思いませんか、楓様?


[やや自嘲気味に、椿はそう口にする。
 それが、彼の耳にどう響くかはわからないけれど。]**
(229) 2023/03/02(Thu) 11:36:50

【人】 片連理 “椿”

  美味しい。


[小さく切った肉を口に入れる。
 さほど料理の腕がいい方ではない椿ではあったが、素材が良いものだったのだろう。シンプルに焼いただけの肉は素直に美味いと感じた。]**
(250) 2023/03/02(Thu) 16:26:43
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a24) 2023/03/02(Thu) 20:58:01

【人】 片連理 “椿”

  せっかくのお食事が冷めてしまいます。
  食べましょう、楓様。


[顔をぱっと上げて、椿は微笑みを見せた。]


  また、明日も何か作ります。


[彼は“誰かに料理してもらうなんて初めて“だと言った。
 であれば、自分にできることはこれくらいだ。]
(318) 2023/03/03(Fri) 10:58:53

【人】 片連理 “椿”

  明日は何がいいかしら。
  ハムエッグかしら、ゆでたまごかしら、オムレツかしら。
  オムレツ……は、たぶん焼けないわ。スクランブルエッグにしましょう。
  菠薐草のソテーを添えて、ヨーグルトに苺のジャムを乗せるわ

[先に食べ終えた椿は、冷蔵庫の中をあらためて物色しながら歌うようにひとりごちている。
 “扉を閉めろ“のブザーが鳴って、ようやく両開きの扉をぱたりと閉じ、振り返る。]

  召し上がったら、お皿は流しに置いててくださいな。
  他のお部屋も、見てきますわね。

[そう言って、自分の皿を流しへと運び。]*
(348) 2023/03/03(Fri) 15:07:05
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a25) 2023/03/03(Fri) 15:08:05

【人】 片連理 “椿”

[リビングのソファに引っ掛けた上着を取って、ウッドデッキに降りてみた。

 外は涼しい風が吹いている。実に過ごしやすい気候だ。
 しかし、一体今がいつの季節なのか、どうにも特定し難い。
 楓に初めて会ったのは冬だったような気がするが、時間の感覚が曖昧な椿にはあれからどのくらいの時間が経っているのか、よくわかっていない。ここに来るまでに見た木の葉の様子はどうだったか思い出して見ようとしたが、それももう記憶に靄がかかったようになってよく思い出せはしなかった。

 デッキには階段がついていて、ここから直接外に出られるのだが、一歩外に出た先は、恐ろしいほどに暗い。
 遠くにぼんやりとした明かりのようなものが見える気はするのだが、少なくともこの建物の周りは随分暗い。まるでそこだけを切り抜いて闇に貼り付けたかのようだ。

 階段を下りるのはやめて、デッキをぐるりと一周しただけで室内に戻る。今度はもう一度階段を上がって二階へ向かった。ホールにはリビングにあるのと同じ、やわらかそうなファブリック地のソファが置いてある。三人掛けほどだろうか、ゆったりとした大きさだ。

 寝室の中も覗いてみる。ベッドが三台並んでいて、どれもきっちりアイロンのかかったシーツで整えられている。まだ使われた形跡はない。

 上着を部屋の隅にある外套掛けに掛けて、奥の梯子を上る。屋根裏は部屋というよりは物置で、壁際にローチェストがいくつか並んでいる。中には衣類とタオル。便利ね、と呟いて、そこから数枚を選んだ。]
(372) 2023/03/03(Fri) 20:49:33

【人】 片連理 “椿”

  お皿、洗ってくださったの?
  ありがとうございます、わたくし、やりましたのに。


[カウンターの向こうから、椿が身を乗り出している。
 先程までとは違って、赤くて太いボーダー柄のワンピース姿に変わっていた。
 サイズが少し大きいようで、袖は折られているし、裾は踝を超えて床ぎりぎりまでの長さがある。ふわふわとした素材で、首元にはフードもついていた。
 グレーの髪はタオルに包まれて頭頂にまとめられており、項の後れ毛くらいしか見えておらず、肩のあたりにはまだほんのりと湯気が漂っている。]


  シャワーも使えるみたいですわね、
  お着替えも用意されていますのよ、
  屋根裏に色々と。ご覧になるといいわ?


[にっこりとして、椿は天井の方を指差した。]**
(373) 2023/03/03(Fri) 21:02:10

【人】 片連理 “椿”

  いってらっしゃいまし。


[転ぶなよ、の声にはワンピースの両脇を摘んで持ち上げ、舞台役者がするようなお辞儀をしてみせた。

 一人になってから、湯を沸かして棚で見つけた茉莉花茶を淹れた。
 濃いめに淹れてから水を足して少しぬるめの温度に調節する。
 このやり方は片割れに教えてもらった気がする。よく、寝るまえに二人で茶を飲んだ。
 いつでも緊張状態だったわけではない。落ち着いた日々もそれなりにあったはずだ。それがいつ崩れるか予想がつかなかっただけで。あらためて、過ぎた日を懐かしく、寂しく思う。

 大きな花柄のマグカップを持って、二階のホールへ移動した。大きなソファの端に座る。思った通り、やわらかくて座り心地がいい。

 楓に対しては、今はできるだけ楽しげに、人間のように振る舞おうと努めてはいる。
 どうやっても愉快ではない話をしにきたのだ、そうでないときくらいは楽しい方がいい。椿には椿の目から見たものしかわからないし、そうでなくても気分が目まぐるしく変わってしまうから、楓がどう感じているかについては想像することも難しいのだが、椿の方は楓を好ましく思っている。彼は飾らず、真っ直ぐで、強い。そういう部分に、素直に憧れを感じる。たぶん、以前もそうだった。

部屋着がふわふわで、茶が温かくて、だんだんと瞼が重たくなってくる。
やがて椿はそばのローテーブルにカップを置いて、ソファの肘掛けにもたれてうとうとし始めた。]**
(389) 2023/03/03(Fri) 22:23:08

【人】 片連理 “椿”

[声がする。
 慣れた声だ。
 
 夢の入り口に立つ彼女には、その声が音として聞こえていても、何を言おうとしているのかが聞き取れない。目も開けられない。喉が重たくて声も出せない。代わりに、右手をひら、と振った……つもり。

 大丈夫、わかっている。貴方が言うのなら、たぶん、ただしい……]
(396) 2023/03/03(Fri) 23:49:09
片連理 “椿”は、メモを貼った。
(a26) 2023/03/03(Fri) 23:52:34

【人】 片連理 “椿”

[目覚めたのは明け方だった。
 何か夢を見たような気がするが、漠然としたかなしさが残るだけで、中身を思い出すことはできなかった。

 身を起こして、そこでやっと自分がベッドで眠っていたことに気がついた。
 長い髪をかきあげて、ぼんやりとあたりを見回す。反対の端のベッドに気配がある。

 椿はおそらくはまだ眠っている楓を起こさないようにそっとベッドから抜け出して、足音を立てずに扉の方へ向かう。把手を回すと軋みの予兆があり、一度手を止めてから慎重に、ゆっくりと扉を開ける。外から流れ込むひやりとした風に逆らうように隙間に身体を押し込めて、最小限の動きで再び扉を閉めた。

 ひと仕事終えて小さくため息をつき、椿は忍び足で階下へと向かった。]**
(426) 2023/03/04(Sat) 10:39:38

【人】 片連理 “椿”

[冷蔵庫にベーコンを発見して、小さくカットしたベーコンを菠薐草と共に炒める。卵はたっぷりのオリーブオイルでサニー・サイド・アップに。ヨーグルトは少し迷って、混ぜずにざっくりと器に移し、その上に苺のジャムを乗せた。]


  やればできるのだわ。


[満足げに頷いて、リビングのローテーブルに皿を運ぶ。
 食事をするには少々高さが足りない気もしたが、せっかく一面が広いガラス戸になっているのだから、外の見える明るい場所での食事も悪くはない。
 ついでに茉莉花茶も淹れて、トレイにポットとマグカップをのせてそれもリビングへ運んだ。カップに茶を注ぐと。花の香りがふわりと漂う。

 まだ赤い縞模様の部屋着を着たままの椿はソファに腰掛けて、楓が降りてくるまではマグカップを抱えてぼんやりと外を眺めている。]**
(442) 2023/03/04(Sat) 13:49:38