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【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥あまり手の入っていない、雑木林の中を分け入って少し。 今はもう、誰も参る事の無い、寂れた神社。 その高欄に腰掛けて、一人ふらふらと足を揺らしていた。 何かが欠けているような、輪郭の不明瞭な感覚。 「……ああ、そっか」 「あの人は来てくれなかったんだ。」 ぽつりと零して、それでもいいと思い直した。 今は来なかった。けれどいつかは来るのだから。 「それに、キミが来てくれたんだものね?」 欠けているものがそれだけのはずがないのに。 (*0) 2021/08/14(Sat) 21:04:09 |
【人】 少年 編笠「………?」 夢の中。 誰かの別れの言葉を聞いたような気がした。 ちょっとノスタルジーに浸りすぎかと首元を掻いた。 アカネの言う通りだ、田舎ってやつは 郷愁で否応なしに俺達の心を押しつぶしてくるらしい。 まあでもそれが幻聴だったとしても、虚空に呟いた。 「……ああ、またな」 布団で上半身を起こしたまま誰に言ったわけでもない言葉は、 今日も変わらず高い朝空に、 誰にも聞かれることなく消えていった―――――――― (0) 2021/08/14(Sat) 21:18:58 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥「誰だって、楽しい時間はずうっと続いてほしいはず」 「でもねきっと、それってみんなで居るから楽しいんだ」 「ねえ、みんな!」 「 みんなは誰と遊びたい? 」「アタシ達、きっとみんなが連れて来てほしい人を連れて来るよ」 「一番に遊びたい人を呼んで、それからいろんな事をして遊ぼう」 「──いつまでも!」 (*1) 2021/08/14(Sat) 21:24:47 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥/* という事で本日の墓下のお二人に襲撃先のアンケートなのじゃ! とは言っても妾、黙狼どのの襲撃先は自由にしてほしいと思っておるからの だから絶対に連れて来る事ができるとは言えないのじゃけど、 妾一人で決めてしまうのも勿体無いから是非お聞かせ願いたいのじゃ! あくまでも参考にしたい程度のものじゃから ロール的にはこの人が居てくれたら嬉しいな、くらいで あまり気負わず答えてくれると嬉しいなのじゃ! 妾、このままみなを連れて来れるかの〜!? (*2) 2021/08/14(Sat) 21:26:09 |
【置】 花守──夢を、夢を見た。 薄ぼんやりと映る景色のなか。 手入れのされていない雑木林。 寂れた木造の建物。 独りぼっちが。 迷いびとに甘い夢をみせて。 優しく包み込んで。 寂しくないように。 そう囁いて。 此処こそが自分達の還る場所で。 いつまでも、どこまでも居ていい場所で。 きっとまだ迷い込んていないみんなも、来たがっている。 だからみんなを…… それから……それから…… 「…………ぼんぼこ、ぼん?」 (L0) 2021/08/14(Sat) 22:04:10 公開: 2021/08/14(Sat) 22:30:00 |
天のお告げ(村建て人)は、メモを貼った。 2021/08/14(Sat) 22:45:00 |
【人】 学生 涼風 季節外れの雪を纏う。 艶めく白に、金の流水文様を走らせて。水辺に咲くのは紫苑の花。引き締まる黒の帯には蝶々が舞い、涼しげなガラスの帯留めが腹部を飾る。 御端折りを出すのに苦労したけれど、工夫さえすれば着丈が合わない着物も着れるものだ。 姿見に映る自分の姿。着物を崩さぬよう身を寄せて、鏡の向こうの己に触れる。 にこり。 紅を乗せた唇の端をほんの少し持ち上げて。 さらり。 髪に差した簪を揺らすように小首を傾げる。 一枚隔てたガラスの向こうで、母親が優しく微笑みかける。……微笑みかける真似をする。 病に倒れ、母と自分を混同するようになってしまった父の為に真似していたから母の真似事をするのは得意だった。 けれど、今この時は父の為ではなく。 父が母の為に仕立ててくれた、誕生日の贈り物。それを着る前に亡くなってしまった、母の為に。 ▼ (1) 2021/08/14(Sat) 22:52:04 |
【人】 学生 涼風「日舞なんて、本当に久々だから。間違っていても許してね、母さん」 目が覚めるほどの紅色を差した唇から溢れる柔らかで涼しげなそれ。いくら見た目が性別の垣根を塗りつぶしてしまうものだったとしても、はっきりと男のものだとわかる声だった。 四日目。まだ気温が上がる前の清廉な朝の空気が静寂と共に辺りを包む頃。 母親の仏壇がある部屋の真ん中で、恭しく一礼をして母から習った舞を踊り始める。 きっと、これは誰かがくれたきっかけなのかもしれない。やさしいやさしいゆめなのかもしれない。 だって、そうじゃないと説明がつかないのだ。 どうして、この着物がここにある? ──この着物は、母が亡くなった時に父が処分してしまったのに。 (2) 2021/08/14(Sat) 22:53:22 |
【人】 影法師 宵闇「────♪」 鼻歌を鳴らしながらあぜ道を練り歩く。足取りは軽い。 ギター <都会の象徴> を置き去りにしてまるで少年時代に戻ったみたいに。夏風になったみたいに。 「昨日は海、楽しかったな。今日はなにして遊ぼうか、」 「ずっとここにいて欲しいんだろ、なあ、田舎のかみさま」 ──なにかに、呼ばれている気がする。 ──だれかに、呼ばれている気がする。 ずっとここにいて、こっちで遊ぼう、って。 誰だろう、幼い時の自分? いつもつるんでた、記憶の中の友人? ずっと一緒にいた、古ぼけたピアノに魂でも宿ったかな。 向日葵畑に迷い込んだような 夏祭りではぐれたときのような、そんな不安もなくて。 この田舎に来た時から、実は知っていたのかも。 だってこんなに居心地がいいのだから。 泡沫みたいにふ、と宵闇に溶けてゆく迷子か 使命を忘却の彼方に置き去りにした導き手か なんにも知らぬまま男は、影のように田舎の風景に溶け込む。 (3) 2021/08/15(Sun) 0:43:57 |
(n1) 2021/08/15(Sun) 1:06:25 |
【置】 おかえり 御山洗がば、と体を起こす。汗だくの顎から伝った汗が布団にぱたと落ちた。 頭が痛む。汗のかきすぎだろうか。夏の暑さが皮膚を締め上げるようだ。 流れ落ちていく汗の感覚を意識が追って、時間を掛けて夢と現実が選り分けられていく。 深呼吸して喉を通る息の冷たさが、まるで水を流し込んだかのように思える。 「……」 張り付いたシャツを引き剥がして空気の通り道を作る。腹が冷えそうだ。 腕に触れ、肘の内側に触れ、皮膚と手の平の間の空気を追い出すようにぎゅうと握りしめた。 恐れている。怖がっている。何より自分が、いやになる。 自分がいる場所はここではない。もう、ここに自分の居場所なんてのはないのだ。 帰ってきてよかった。帰って来なければよかった。全部、そのまま忘れてしまえばよかった。 (L1) 2021/08/15(Sun) 1:15:43 公開: 2021/08/15(Sun) 1:15:00 |
御山洗は、怯えている。 (a0) 2021/08/15(Sun) 1:15:51 |
【人】 学生 涼風【四日目 早朝】 線香とい草の匂いに包まれた部屋に、ぱさりと乾いた音がする。 纏っていた着物の下から現れたのは真白の肢体。肉付きは薄く、されど女のようなしなやかな曲線を描いている訳ではない。陶器製の人形めいたその体は、確かに男の形をしていた。 母への手向けの舞を踊った後。着物を畳み、手早く洋服を身につけて。仏壇の前に正座する。 「……こうして母さんの実家できちんと話ができるとは思わなかった。 そもそも、私はずっと勉強ばかりしていたから、拝む事さえきちんとしなかった親不孝者として怒られてしまうかな」 語りかける写真には自分と同じ顔がある。けれど慈しむようなその微笑みは、自分と似て非なるもの。 視界が狭くなっていた自分では、こんな笑い方できるわけがない。 「母さん。私は元気でやっているよ。少し話をしようか。あのね……」 …… …… …… ▼ (4) 2021/08/15(Sun) 3:07:18 |
【人】 学生 涼風>>4 滔々と語る言葉に相槌を打つ者などいない。けれど、少年は決して報告を止めるつもりなどなかった。 失われていた家族との時間がたまらなく愛おしかった。例えそれが相手が既に死んでいたとしても、今ここにいる場所が夢幻のようなところであっても。 「……」 身の回りに起きたことを少しずつ話して、途中ではたと気付く。 道を選ぶのが嫌で、夢と向き合うのが嫌で、甘く優しい思いしかないこの場所にずっといたかった。 でも。それでも。 この永遠にいてしまったら、夏の思い出に浸り続けてしまったら。 成長を喜んでくれた母に、今なお共に生きている父に、報告するものが無くなってしまう。 「それは…………寂しいな」 (5) 2021/08/15(Sun) 3:08:59 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥歪だらけで矛盾だらけ。 今居る『アタシ』はこの村を愛していたあの人の その面影を滅茶苦茶に継いで接いで作った張りぼてだ。 自分も嘗てはそうだったけど、もうそんなふうには居られない そう言って捨ててしまったものを、もう一度拾い集めて。 自分に自信が無いから取り繕う。 自分はこの場所がそんなに好きではないのかもしれないと そんな不安を塗り潰す為に人の殻を借りる。 借り物だらけで不格好、そんな一人ぼっちの王様だ。 (*3) 2021/08/15(Sun) 3:28:40 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥それの何が悪いというのだろう? 人はいつか絶対に、誰もが見て納得するような きれいな形に収まらなければならないのだろうか? きれいな形になれない人は、決して存在してはならないのか? ああ都会では確かにそうだった、でもここではそうではない。 どんなに不安定で不格好でも、今こうして ここに立つ事ができているのだからいいじゃないか。 この場所で、こうして変わらずに在り続ければ きっと、何も憂鬱に思う必要なんて無いはずだ。 それを正しくないと切り捨ててしまえるのは、 歪で正しくないその支え無しでも立てるから。 欠けた四角形、正しい形を失った自分達は─ (*4) 2021/08/15(Sun) 3:36:35 |
【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥「………あれ?」 雑木林の中、ふっと現実に引き戻された、ような錯覚。 失ったものなんて、無いはずだ。 思い出の中そのままの村があって、 成長こそすれど、その優しさは何も変わらない皆が居て。 皆の中の、自分の知らない一面が顔を覗かせるのは 彼らが何処か遠くへ行ってしまったようで怖かった。 それでも変わらない一面もあって、だからそれで良かった。 自分にだって、変わった所が無いとは言わない。 けれど、歪な支えに頼らなければ立って居られないほど 何にも代えがたいものを捨て去ってしまった覚えなんて無い。 その上で今、 自分の傍に無いものと言えば 姉の存在 くらい で、 (*5) 2021/08/15(Sun) 3:38:38 |
【人】 髪置4日目 朝 「今日も……遊びますか!」 今日は楽しい楽しい夏祭りの日! そんな日に遊ばないなんてありえないことだ。 なんなら祭りの前に一遊びするまである。 髪置にとって祭りの日とはそういうものであり、 手加減などもっての外だった。 (6) 2021/08/15(Sun) 3:43:55 |
【置】 髪置「祭りだからってはしゃぎ過ぎだろ」 「お祭りなんだからみんなに合わせようよ」 「髪置くん、私達と一緒にいても楽しくなさそうなんだもん」 そんな言葉をかき消していた囃子の音も、 もう聞こえなくなってしまった。 (L2) 2021/08/15(Sun) 3:49:43 公開: 2021/08/15(Sun) 6:30:00 |
【人】 学生 涼風 四日目。早朝、母親と会話をした後の時間。 今日はお祭りがあるらしい。百千鳥とは浴衣を着て一緒に行く約束をしてある。折角再会したのだから、自由行動の時間にでもなったらあとでふらりと髪置の家に行って声をかけにいくのもいいだろう。 でもその前にやる事をやらないと。遊んだら没頭してしまうから、先に友人への葉書を完成させなければ。 「葉書、おばあちゃんに出してもらったはいいけれど。書きたいものが多すぎるな……」 百千鳥の姉に伝える内容をしばらく考えてみたものの、なかなかまとまらない。 帰省する前に取った連絡では何を話していただろう。遊ぶ事、百千鳥の面倒を見る事、夏祭りの事、将来の事……よく話題に挙げていたものを中心に書けば彼女も満足するだろうか。 ▼ (7) 2021/08/15(Sun) 4:11:45 |
【人】 学生 涼風 ペンを持つ手が止まる。 「…………」 そこだけ記憶が抜け落ちたかのように、或いは初めからなかったように。 帰省する前に取った連絡の内容が思い出せない。 「……どうして」 鞄の中からスマートフォンを取り出して恐る恐るあちこちを探る。 普段よりも遥かに画面を叩く勢いが強いことにも気付かない。たんたんたんと音を鳴らし、いくつものアプリを起動する。立ち上がる前の準備時間さえももどかしかった。 「…………無い」 無い、無い、無い。 メールも、電話も、その他の記録にも。 どこにも"都々良 呼子鳥"の痕跡が見当たらないのだ。 そんな筈はない。だって、自分は確かに彼女と話を──。 「ほら、行くよ!いつまでもそんな所でぼーっとしてないの!」 ほら、思い出せた。彼女の声が聞こえてくる。 ああ、でも、どうして? ──どうして今のものではなく、昔の声しか思い出せないの? (8) 2021/08/15(Sun) 4:15:32 |
【見】 天狼の子 夜長>>3:146【三日目】百千鳥 行ったことがないのなら、自分が案内出来るだろうか? 自身が大人の今の内なら、百千鳥に何かをできるだろうか?……といったことを考えたが、夜長が帰りのボートをひっくり返して鬼走と一緒に海水まみれになったのは記憶に新しい。この件に関しては考えただけで終わった。 「……ありがとう、モモチ。 他の場所もまた、探してみようと思います」 こっくり、頷いて。あなたをまっすぐに見ていた。 この後あなたは、夜長をあの賑やかな中に引っ張って行ったかもしれないし、漁小屋の方の秘密基地に案内してあげたかもしれない。どんな時間を過ごしたにしろ、それは"あの夏の日の思い出"になるようなもので。 それでもって、今日の最後の言葉は「また明日」だった。 (@0) 2021/08/15(Sun) 6:01:27 |
夜長は、百千鳥が眩しい。 (t0) 2021/08/15(Sun) 6:01:32 |
【置】 巡査部長 鬼走【数年前 某――年 鬼走家】 鬼走の住居に雪子一家が遊びに来たとある日。 他人の家は物珍しい物なのか、表情は父親とまるで変らないものの子供特有の好奇心を覗かせる晴臣に好きに中を歩いていいと伝えていた時の事だ。 「興味があるのか」 少年が足を止める時は何かを見つけたと言う事。 視線に目を移して「ああ。」と納得したように呟く。 「どうせ壊れている物だ。 それ以上壊す心配もないから好きに触っていい」 年齢の割に渋い選択とも思ったが、同年代の子供よりは遥かに大人びているのを見て来たのを思うと違和感はない。村の当時の年下達を思う度、「雪子の遺伝子もある筈なのにどうしてここまで」と言いたくなる程に彼は父親似だった。 「親父の仕事は時間を計るのが大事だった。だからお袋がよく計る為にして使っていたのを、2人が元気な時はよく見ていた」 視線の先には針の動かなくなった懐中時計。 病弱だった母が亡くなった直後は整理する時間も金も、心の余裕もなかった故に長らく置いておかれた数多の私物。最近になってようやく回収できた物。やや困惑する様子を見て手に乗せてやった。顔はそこまで変わらないものの嬉しそうな反応は存在している。ここがまだ父親と違う可愛げだろうか。 「持って帰るか?」 (L3) 2021/08/15(Sun) 8:53:48 公開: 2021/08/15(Sun) 9:00:00 |
【置】 巡査部長 鬼走【数年前 某――年 鬼走家】 一般的な人間は、そんな形見に近い物を幾ら壊れているからと言って持って帰るかの問いに頷かない。それは幾ら大人びている晴臣と言う少年も同じだった。 そしてその反応も当然だと鬼走も理解はしている。だから、他に一人にしか語った事のない話を、少しずつ語り始めた。 これは贈り物で父と母の「家族の物」であったこと。 昔、母が入院し二人きりの時に落として壊してしまったこと。 時計屋に持っていけば技術的に直せない訳ではないが高額で、 当時は入院費などもあり直せないまま今日を迎えたこと。 他にも幾つか深く聞かれた上で、本当に問題ないのかと尋ねられた。勿論問題はない。あるなら提案はしない。それに事実、問題もないのも本当なのだ。だって自分にはもう、 「──家族ができた」 (L4) 2021/08/15(Sun) 8:59:38 公開: 2021/08/15(Sun) 9:00:00 |