![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ あの時間が嘘だったかのように、旅は順調だった。 当然のように戦いばかりの日々であっても、自分には“神託の力”があり 仲間を引き入れながら一つ一つ、着実に聖木の根を巡った。 高度な擬態で人里に紛れ、夜な夜な人間を襲う獣人を 狙われそうな村人の家を監視することで発見し、倒して。 砂漠の国では野垂れ死にそうなところを助けられ、 お礼に無償で魔族に拐われた姫を助け出し。 魔物退治は一行にとって日課であり、結果的に多くの人々を救った。 海の国に至る頃には“刃の勇者”の異名だけが既に到着していたらしく。 立派な船を譲渡してもらうことが出来たのだ。 ] (144) 2020/10/23(Fri) 9:44:21 |
![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ ある時、比較的弱い魔物しかいない筈の村で 民が恐怖し家に閉じ籠もる程の脅威であり、 村長が必死に討伐を頼み込んできた巨大な魔物だけが ] 嘘だろ……俺の、見間違えか? あれは、どう見ても [ 描かれた筋書きのイレギュラーだったに違いはない。 ] (145) 2020/10/23(Fri) 9:44:40 |
![]() | 【赤】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ まるで頭髪のようだと思った。 滑らかな銀の毛なみが、頭頂部の長角の間だけ色が変わっていた。 見間違えだと信じたかった。 その部分が乱れると、額に刻まれた紋様が垣間見えた。 黒い痣のような、複雑に描かれた──── ] 違う、魔物に御印があるわけがない……! [ そんな否定は言葉ばかりだった。 生まれたのは、信仰で抑えきれない疑念。 胸の中央、その奥の奥で 今も神託の実が、あの赤い姿で脈を打つ。 魔物の血と人々の称賛を浴びている日々では、 意識から遠ざかっていたその感覚が蘇る。 まだ消えてはいない傷跡が、痛覚を刺激し主張する。 ] (*1) 2020/10/23(Fri) 9:45:01 |