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【人】 従業員 ルミでも、わたし……今まで人と上手くいったことなくて。 その人もね、半年くらい前まで恋人がいたりしてたし " 今は "全然関わりもないくらいなんだけど。 ……けどね、その人以外好きになれないの。 ……わたし、友達もいなくて、親も頼れないから 将来どうしようって……一人の家が心細かったの。 こんな格好だと余計に、人の目も厳しいし……。 [ これは全部嘘じゃない。 実際問題、わたしは人と関わるのが下手だから。 他の店に行った痕跡を見るたび裏切ったと思い込んで、 いつもと違う匂いがすれば他の女だと怒りだして。 愛される錯覚を得るために営業を頑張れば 同じ店の女の子から距離を置かれるばかり。 夜の女だと馬鹿にされたことだってある。 傷が増えるたびに、彼との時間だけを思い出して、 二度とあんな時間は来ないのかと不安になって。 ] (22) 2024/05/07(Tue) 19:08:14 |
【人】 従業員 ルミ────お兄さん、そろそろ効いてきた頃じゃない? [ 体内に取り込んだ毒は、あたたかな血に混じり巡る。 もう指先から力が抜けるくらいは起きたかな? 大丈夫、怖いお薬じゃないからさ。 少し思うように動けなくなってしまうだけ。 ] (23) 2024/05/07(Tue) 19:11:26 |
【人】 会社員 雷恩[季節は夏に差し掛かり、部屋のエアコンは稼働していない。 なのにどこか冷える心地がする。 心が鳴らす警鐘を、罪悪感が打ち消そうとする。] ……悪いな。 手当の間くらいは待てるけど、 俺が帰った後の方がゆっくり確認できるか。 [ありがと、と受け取ったコーヒーは白を混ぜた薄茶色。 マーブルを作る要素に、頼んだミルク以外が入っているなんて 見た目からはわからない。] (24) 2024/05/07(Tue) 21:34:12 |
【人】 会社員 雷恩ごめんごめん。 てかあんなにちっちゃかったのに覚えてるルミが すげーんだって。 [それだけ彼女にとって当時交わした会話は少なかったのだと 学校でも家でも会話の絶えない生活をして個々の会話を 忘却の海に流す男は想像できない。 ルミの記憶力が良いと感心して謝った。] 許して!このとーり! な? [他の誰かにもやっているから身についたままの謝罪。 合わせた手よりも頭を低く下げて、ちらりと上目で伺う。 それを懐かしんでくれると期待する程度には 無神経な男だ。 いっそそこで失望してくれた方が双方にとって思い出を 綺麗なままで残せたかもしれない。] (25) 2024/05/07(Tue) 21:34:44 |
【人】 会社員 雷恩ルミ………… [少女の瞳が昏く曇った気がした。 実家を出て、仕事を得て、金に困っていなくても 彼女の心はまだあの公園で無償の愛を求めているのかもしれない。 学校は卒業する日が来るし、親はふつう自分より先に死ぬ。 どんな相手だって、四六時中そばにいることなんて出来ない。 それを普通に育った人間は肌で覚えることができるけれど、 「かわいそう」フィルターのかからない目で寄り添われた経験に 乏しい故に、恐らくルミはその「ありえない」愛を求めているのだ。 役目のある間だけ近寄る相手を拒否する彼女に そういうものだと諭すのは不可能だ。 せめてこれからの人生で、彼女を満たすものに出逢えたら良いのだけれど。 それを探す為に、通信制高校を自費で卒業するだけの 頑張りを続けられたのだったら良いのに。] (26) 2024/05/07(Tue) 21:35:12 |
【赤】 会社員 雷恩[白雪姫が齧った毒林檎は、喉に引っかかっていたから 死に至らなかった。 齧って咀嚼して、細胞となったやさしさは、 死を迎えられるのだろうか。] (*8) 2024/05/07(Tue) 21:35:49 |
【人】 会社員 雷恩……うん、うん、そっか。 「そのひとじゃなきゃ」って人がいて、 半年前まで恋人がってことは、今はいないんだろ? まず関わりを作って意識してもらうのとかは? [「半年前」のキーワードにも反応せず、 意味のないアドバイスをする。 関りのない相手に恋をしたことがないので 薄っぺらいだろうなとは思っていても、 こういう「相談」に単なる共感ではなく「解決策」を 示したがるのが生物学上の男の生態らしい。] (28) 2024/05/07(Tue) 21:37:12 |
【人】 会社員 雷恩? は? 「聞いてきた」? え、好きな人って俺の知り合い、 qわせdrftgyふじこ?! [何が起こったかわからなかった。 「効いて」が「聞いて」だと思う鈍感さを後悔する間もなく。] (29) 2024/05/07(Tue) 21:38:16 |
【赤】 会社員 雷恩[体幹にはそれなりに自信があった。 自分よりも華奢な女の子にちょっと押されたくらいで 簡単に倒れてしまうだなんて。] え、 なに、 ルミ……? [何故自分の目は天井を捉えているのだろう。 すぐに起き上がろうとして、 上手く力が入らないことに気づいた。 一気に血の気が引く。 唇が震えるのはわかるが、身体に震えは伝わらない。 もはや自分の身体は自分の支配下にないことは 明らかだった。 そう知覚すると、上手く言葉すら出て来なくなった気がする。 なんで、と上手く言えただろうか。*] (*9) 2024/05/07(Tue) 21:38:44 |
【人】 従業員 ルミ……ふふ。 仕方ないな、許してあげる。お兄さん。 [ ────この時だけは、ね。 懐かしさに緩む頬と、憎らしさが胸を打つ。 ちらりと上目でこちらを伺う様は わたしが絆されると信じて疑わないみたいだ。 そう、あんなに小さい頃の想い出に固執する方が きっとおかしくて、馬鹿だよね。 お兄さんにとっては家族との会話より些細で短くって ──すぐ忘れてしまえるものだったのに。 お祭りの光を見て、私を思い浮かべもしないんでしょう あの時甘すぎると言って渡してくれたりんご飴。 懐古の海に沈めることに躊躇いがない貴方。 ] (30) 2024/05/07(Tue) 22:28:02 |
【人】 従業員 ルミ[ どんな人だってずっと片時も離れず、なんて出来ない。 けれど、不可能でも" そうありたい "と思うのが、 それを出来る限り伝える努力をするのが愛じゃないの? 見知らぬ愛を探そうと思える人間なら良かった。 そうすれば貴方を傷付けることも無かったのに。 でも、一度味わった愛が欲しかった。 どうしても忘れられなくて、手離せなくて、 ──誰に何を言われたってこれは戀だった。 愛されないなら、二度と交わらないくらいなら わたしの恋はここで散って その先で死を迎えるの。 ] (31) 2024/05/07(Tue) 22:28:16 |
【人】 従業員 ルミ無理だよ。 [ わたしはひどく落ち着いた声音でそう返した。 何の確証があって、と言われるかもしれない。 ] ────そんな希望、とっくに捨ててる。 [ 力になろうとはしてくれているのだろう。 けれどその解決策は有効性を失って、 今や毒を巡らせる以外になくなってしまった。 間抜けな声を上げる彼に、思わず無邪気に笑う。 ] (32) 2024/05/07(Tue) 22:28:21 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の身体は、呆気なくやわらかなソファへ沈んだ。 起き上がらない様子を見て、「やっとだ」と小さく呟く。 そのまま足の怪我なんて無いように彼の上へ跨って、 顔を見下ろし、両頬に手を伸ばした。 ] " なんで "? どっちを聞きたいのかな。 身体が動かない理由? わたしがこんなことした理由? ……上手く喋れなくて怖いよねぇ。 でも大丈夫、わたし、お兄さんのことなんでも分かるよ [ わたしはキッチンのシュガーポットを指差した。 多少でも首が動かせるなら見えるだろうけれど、 見えなくても持ってきてあげるつもりはない。 ] (*11) 2024/05/07(Tue) 22:29:13 |
【赤】 従業員 ルミじゃーん! あれ、歌舞伎町で買えちゃう" 魔法のお薬 "だよ! ……あ。人体に害はないから大丈夫、安心してね。 わたしがお兄さんにそんなことするわけないもん だから、大人しくしてて。 ──────……悪いことを考えてたの、 わたしでごめんね? [ でも、と続けて口を開く。 彼の反応は視界に入れているけれど、 どんなものであれ、止める気はなかった。 指差すために離した手を再度彼の頬へ宛がう。 伝わる体温はあたたかい。 ] (*12) 2024/05/07(Tue) 22:30:06 |
【赤】 従業員 ルミでも、お兄さんが──、ッお兄さんが悪いんだよ。 待ってたのに。 あの公園で、あの場所で、ずっとずっとずっとずっと ずっと────待ってたのに。 わたし、友達じゃなかったの? どうして黙って消えていったの? 捨てたの? 逃げたの? ──そのまま忘れたの? わたしには嫌だって言った呼び方、 どうせ他の女には許したんでしょう!? ねえ、 わたしはずっと待ってたのに!! (*13) 2024/05/07(Tue) 22:30:33 |
【赤】 従業員 ルミ[ ぜえ、と肩が揺れる。 言いたいことだけ好きに言い散らかして。 言葉にするたびに、理性的な自分が叫んでいる。 ] ………………わかってるよ、わたしも お兄さんが公園に来続ける義務なんかない それでも、仕方ないで済ませられる恋でもないの、 [ 許してくれなくて良いよ。 最初から許されるなんて夢も見てないから。 頬を名残惜し気に数度撫ぜて、手を離す。 ] (*14) 2024/05/07(Tue) 22:31:19 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の腰のベルトに指を伸ばし、かちゃ、と音を鳴らす。 どうすればいいかなんてもう知ってる。 だって、わたしも貴方も、子どもじゃないんだから。 肌と体温を重ねた夜くらいあるでしょう? ] ……ごめんね、お兄さん そうだ。前の彼女の顔でも浮かべててよ。 かわいい人だったね、──同僚だっけ? [ どうして今までの恋人たちが貴方から離れたか、 ──……わたしは全部知ってるよ。 バックルを外して、チャックを下ろす。 そうすれば瞬く間にズボンくらいは下ろせちゃうな。 触れた熱はきっと、大きくなるどころじゃないかもね* ] (*16) 2024/05/07(Tue) 22:31:43 |
【人】 会社員 雷恩[たとえばここで彼女の機嫌を損ねたとして、 普段関りのない、連絡先も知らない者同士、 子どもの頃の友情に終止符を打って帰れば終わる関係だ、 許しを乞う必要はない。 なのに手を合わせたのは、赦してくれるという甘え。 彼女の甘えを受け止めることなく大人になったのに、 誰かに甘えることを覚えている男は罪深くも 同じ所作をして。] あー良かった。 他にも忘れてそうだけど、話してたら思い出すって こともあるかも。 [そうしてまた許せと言わんばかりに予防線を張って。] (34) 2024/05/07(Tue) 23:15:41 |
【人】 会社員 雷恩[恋をしていると打ち明けた顔は確かに 歳相応のはにかんだ少女のものだったのに、 その相手と関わりを持てば良いというアドバイスを 一蹴する表情は酷く大人びて見えた。 単に恋に臆病になっているとかそんなレベルではない諦念。 相手は死んでしまったのかとか見当違いの予想を立てて、 またどう言葉にしようか迷った隙に倒された。] (35) 2024/05/07(Tue) 23:16:23 |
【赤】 会社員 雷恩[ひゅ、と喉が音を立てるのを聞いた。 自分の身体から出た音だとは信じられないくらいに か細く頼りない音だった。] 、 や、、め…… [抵抗の為に力を入れようにも、身体の動かし方を 忘れてしまったかのように動けない。 脳内はこんなにも冴えているし、心臓は動いているのに。 上手く動かせない分、恐怖の涙も浮かばないのが まだ助かった。 この期に及んでみっともない醜態を晒したくない自分がいる。] (*17) 2024/05/07(Tue) 23:17:27 |
【赤】 会社員 雷恩[指さしに反応して僅か首が動く。 キッチンのインテリアによく調和したシュガーポット。 その中身を聞いて込み上げる吐き気に歯を鳴らす。] ぅそ、 だろ、 [身体の自由を奪うと聞いて真っ先に思い浮かぶのは 睡眠薬だが、自分には意識はある。 その時点でメジャーなはたらきを持つ薬ではないと言えるのに 人体に無害だなんて到底信じられなかった。 だがそれを指摘したところで状況は変わらない。 現実問題、上手く身体に命令が行き渡らない感覚がある。] (*18) 2024/05/07(Tue) 23:18:08 |
【赤】 会社員 雷恩[自分の中では「薄れていった関係」でも、 彼女にとっては「切られた関係」だったのか。 ここに至るまでも、彼女は自分の解釈を大事にしていた。 今、口が上手く動かせて何か理由を言ったところで 彼女は納得しないだろう。 クラス替えで疎遠になる友達もいる、 SNSでフォローしあった頃には頻繁にリプを送っていても 1年も経てば日常ツイートはスルーするようになる、 そんな一般的な話をしたところで、 「雷恩お兄さんがルミを捨てた」とルミが結論づけているなら 何も変わらない。] (*19) 2024/05/07(Tue) 23:18:56 |
【赤】 会社員 雷恩[きっとこの再会も仕組まれていたのだと漸く合点する。 そんなにも恨まれていたとは知らず、のこのこついて来て―― 殺される、のだろうか。 胃液が内臓を巡る音も聞こえるのに、上手く吐けない。 仰向けに寝かされているから、今吐いても 吐瀉物が喉に詰まって窒息死間違いなしだろうが。] (*20) 2024/05/07(Tue) 23:19:25 |
【赤】 会社員 雷恩る、 み、 [それは果たして恋なのか。 ルミが思うならそうなのだろう。 言葉の通じる相手ではないなら、言葉の自由を 奪われていて好都合だったかもしれない。 対話を試みて絶望することはないから。 麻酔と異なり、触覚は残っているようで、 ベルトを外す時に一旦締められる苦しさに 顔を顰めた。――感覚では。] (*21) 2024/05/07(Tue) 23:20:15 |
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