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【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 「おいで」と呼ぶ声に応えるように胸にぼすりと飛び込んで くふくふと笑いながら抱きついた。 互いの体温も、熱も忘れ、汗も乾いてしまった肌の 違う温度が少しだけ悲しくて、 馴染むまではとギュッと抱きつく。 乾いた汗の臭いと時間の経過した精液の饐えたにおい。 好ましい香りなはずはないのに ふたりの臭いが混ざっていると思えば 洗い流してしまうことが惜しいとすら思う。 ] おふろ。また一緒に……? お湯入れるのはもうやだからね。 さっき、ウォシュレットで軽く流したし。 それで十分じゃない……? 誠丞サンの、ゆびとか、いれられたら。 俺、きっと……またしたくなっちゃうし。 (*2) 2022/05/28(Sat) 22:44:52 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 流石に抱き上げて欲しいわけじゃないので 張り付いて体重を軽く預けたままだが 自分の足でちゃんと立って移動する。 きっと普段使わない筋肉を使ったのであろう股関節が やべー違和感を醸しているけれど立てないほどでもない。 裸のままで風邪をひかせるつもりはないらしい。 風邪なんかひきそうもないくらい調整された空調だけど。 まだ幼い頃、雪の日に遊びに行こうとする俺を 靴とコートを洗ってしまったと使えなくするやり方で 引き止めた母を思い出していたのに。 どうやら服は取り上げられないらしい。 素っ裸で過ごす趣味があるわけではない。 空調が完璧だろうとそれとはべつに肌寒さを感じる。 だから服を与えられることは願ってもないことなのに 物足りなさを覚えてしまうのは何故だろう。 もっと束縛してほしいのに、と。 ] (*3) 2022/05/28(Sat) 22:45:29 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 自分でもよくわからない鬱憤を晴らすように 風呂場で散々煽って甘えて誘いまくったのに 『多少の悪戯』程度で済まされてしまった敗北感に 不貞腐れながら彼のベッドメイクの腕前を鑑賞する。 機嫌がよければ手伝っても良かったけれど 『多少の悪戯』程度で軽くのぼせかけているので 手伝いを申し出ても断れてしまいそうで 彼が慌てて探してきた飲み物で水分補給しつつ黙っておく。 暇な間に病室の物色を始める。 手の届く範囲のところからはじめて、 だんだん離れたところまで。 入院時に度々世話になっていた慣れた個室よりも 随分と広い部屋の中を 好き勝手に歩き回るほど、隣でくっついている時より 彼の意識も視線も向けられることに 気付いてからは探索に夢中になった。 ] (*4) 2022/05/28(Sat) 22:46:44 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威ん〜……これといってとくには。 あ。そうだ。 誠丞サンが何を食べたいか、知りたいな。 一緒に食べてくれるんでしょう? 誠丞サンのすきなものをたべたい、一緒に。 [ 一緒に食事をして、一緒に寝起きして 好きなだけセックスに溺れて ずっと二人きり。 なんて素敵なんだろうと思う。 けれど、同時に、彼はどこまで耐えられるだろうかと思う。 疲れて壊れてしまわないかな、少し前の俺みたいに。 だから少しでも自由を与えてやろうと 好きなものを用意しに行く時間と 好きなものを食べる自由を提案する。 少しくらいの自由は与えてやりたいと思うんだ。 自由なのに戻ってくる方が より満ち足りた気持ちになれる気がして。 ] (*5) 2022/05/28(Sat) 22:47:29 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 母と同じように閉じ込め押さえ込むやり方を取ることに 嫌悪感や罪悪感を抱く彼の心の内など知る由もなく 俺自身は、むしろそれを与えて欲しいとさえ思っていた。 だって、自由なんか望んじゃいなかった。 今更そんなもの与えられたって持て余すだけだ。 その愛され方しか知らないから その愛され方以外だってきっとあったろうに その愛され方以外取りこぼしてきてしまったから そうやって愛されないと不安で、不安で。 気まずそうに見せられた不信と同義の愛情の形に 正解と教えるみたいに目を輝かせて、頬を染めた。 掴まれた腕から力を抜く。 拒む意志なんか欠片もないと表明するために。 拒む理由なんてない。 だってこれで繋ぐってことは 絶対に外しに戻ってくるって約束の証だ。 ] (*6) 2022/05/28(Sat) 22:48:04 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威それがひつようなら。 いいよ。誠丞さんが決めて。 俺の主治医はあなたなんだから。 [ 彼の不信に信頼で返して 望んでいたくせに、容認するみたいな言葉を紡ぐ。 彼が赦される事を望んでいるように見えたから。 愛して、愛されて、ただそれだけなのに。 何も悪いことなんてしてないのにな。 何時か彼も慣れてくれたらいいのにな。 俺を閉じ込めようとするその執着に。 ] さみしいから、はやくもどってきてね? [ 俺には余計でしない不必要な自由を奪う拘束を 恍惚に染まった眼差しで見つめてから 甘えた声で、見送る彼に強請った。* ] (*7) 2022/05/28(Sat) 22:48:25 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 質問には質問が返って、けれど勝手に完結した。 如何やら聞かれても困るらしい。彼も困っているのだろうか? 問題を出された時と同じだけ少しだけ悩む素振りを見せる。 即答したっていいけれど少しくらい頭を使う振りをして。 困るほど難しい事もないのに。 簡単なことだ。必要なのはただひとつ…… ] 『おれのことがすきだから』? [ 俺のことが好きだから嫌われるかもしれないことを意識し 俺のことが好きだからそれでもなお行動したんでしょう? 必要なのはただひとつ。 そこさえ揺らがなければ俺はなんだって受け入れるのに。 『どうして』だと思う? そう尋ねようとして、困られても困るのでやめた。 簡単なことなんだけどね。 けれど彼にはそう単純でもないのだろう。 ] (*13) 2022/05/31(Tue) 1:43:20 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 危険なものとそうでないものの判別が付いた上で 危険なものでさっくり派手に肉を切り裂いた前科が 生々しく左腕の上に刻まれているからこそ 彼が幼子相手のような不安を抱くのも尤もだろう。 むしろ幼子よりも厄介だ。 目を離した隙にまた何かしでかすと思われている。 彼から与えられる過干渉とも取れるその心配が 嬉しくて、楽しくて、堪らない。 悪さをして気を引きたい幼子のような幼稚さだと 自覚は多少はる。自覚だけは。 ] はぁい。 [ 呼びかける声にいい子のお返事を返して 素直に大人しく彼のもとへともどる。 けれど彼が他に意識を逸らせばまたふらりと離れた。 気にかけてくれさえすればいいこにしているのだと 彼に教え込むために繰り返す。 きっといずれ疲れさせてしまうんだろうな。 普通はそうだ。 ずっと気が休まらないなんて精神が疲弊してしまう。 そう思うのにやめようと思えないのを 今は浮かれているからだと自分に言い訳をする。 たしかに彼の意識が自分に向いていることを確かめる作業が 楽しくて、嬉しくて、たまらなくて。 ] (*14) 2022/05/31(Tue) 1:45:06 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 『母親』という生き物が『子』に向けるのと同じだけの 熱情を向けてほしいと願うのはきっと酷なんだと思う。 母がそうだったからといって同じ愛し方を 親子ではない関係を望んだ彼に彼に求めるのは 違うことくらいは頭ではわかっている。 けれどそれ以外は上手く受け取れなくて 与えられないと不安で与えられると嬉しくて 俺がほかを覚えるのが先か 彼がこれに慣れてしまうのが先か ……どちらでもない可能性を考えるのが少し怖い。 俺が疲れて母から逃げ出そうとしたみたいに 彼もいつか疲れて 俺からまた逃げ出してしまうんじゃないかって… ] (*15) 2022/05/31(Tue) 1:46:05 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 慣れない手つきで嵌められる手錠を 外しに来るのは彼だとは思う。 本当に? 自分が罰される為に第三者に見せようとするかもしれない あの日みたいに突然姿を消すかも知れない。 考え始めると不安で押しつぶされそうになるから 今は考えることを投げ出した。 ] ふふっ、俺が「わるいこ」だったことなんかないって 早く思い出してね、せんせぇー。 [ 買い物の最中店先に置き去りにされる犬の気分だ。 そう思い浮かんで。 彼に愛玩されるペットになれたらどれだけ幸せだろうと 幸せな夢に浸ることで、投げ出しても、消えてくれない 不安な気持ちを紛らわせた。 ] (*16) 2022/05/31(Tue) 1:46:25 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ …───まるで時間が止まっていたみたいに。 彼が視線を逸らした瞬間と寸分違わぬ姿勢で待っていた。 一人の間、すっぽりと人形みたいに抜け落ちていた表情に 喜色をぱっと灯して、顔を上げる。 いいこにしてたから褒めてとねだるより先に 与えられたご褒美に幸せそうに頬を染めて はにかんで笑って同じ口づけを返した。 ] おかえり、誠丞さん。 ………あ〜…なるほど。 さては食に拘りがないな? ありがと。 なんでも食べれるよ。好き嫌いないし。 [ そもそも最近味覚も食欲も大分まともに機能しているか 怪しかったことは黙っておく。 言えば心配をしてもらえるだろうけれど 今はこれ以上心労を増やすのも気の毒で。 違和感はあれどもう痛みもあんまり気にならない 自由な左腕でサンドイッチの具を確認していれば また慣れない手つきで拘束が解かれる。 ] (*17) 2022/05/31(Tue) 1:48:32 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ ちゃんと戻ってきてくれた実感と あと何度ちゃんと戻ってきてくれるかという感傷とが 頭の中でぐちゃぐちゃになって 信じていないのはどうやら彼だけではないらしいと 今更に納得して、受け入れた。 ] べつに、つけたままでもよかったのに。 [ 信じられないのなら、何時までだって。 疑ってくれて構わなかった。 疑う分だけ信じようと悩んでくれていると思えば 俺にとってはそれは幸福でしかないから。 彼にとってもそうだろうか。 普通は違うだろうか。 ポーズじゃなく、本当に少しだけ悩み逡巡 してから 躊躇いがちに口を開いた ] つけたままなら、外しに戻ってきてくれるでしょ。 その間だけは、いなくなったり しない、って…… (*18) 2022/05/31(Tue) 1:51:11 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ ああ、違う。縛り付けたいんじゃないんだ。 その手で外しに戻って来いと強要しているようなものだ。 いや、違う。縛り付けてしまいたいんだ。 なら正しいのだろうか?或いはもっと罪悪感を抉る? そんなひどいことはしたくない。 そんなひどいことすらゆるされたい。 考えが纏まらなくなって慌てて早口に遮った ] ごめん。なんでもない。 よし、食べよう!いただきまぁっす。 あ、そういえばこういうの食べるの久しぶりかも。 [ 無理に浮かれた声を作ってサンドイッチに手を伸ばした。 なんか吐きそうだな。 大人しくしていた食欲はすっかり情緒と同じだけ乱されて 折角彼と一緒の食事なのに食べる気がまるで起きない。 けれどそんな状態で笑顔で食事をすることには慣れていた。 いっそ吐けばいいのかな。 これから飲み込むサンドイッチと一緒に 思ってることぜんぶ。 けれど嫌われたくないんだ。 彼のように嫌われでも行動を起こすなんて事できなくて 好きだなんて簡単な感情だけじゃどうにもならない 単純ではない葛藤の苦味を、コーヒーで流し込んだ。 ] (*19) 2022/05/31(Tue) 1:53:24 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 正解ではあるが正論ではないらしい。 たしかに道理には外れた行為だ。 好きだからといって強要すべきではない。 けれどそれを相手が望んでいるのなら それで問題ないと思うけれど。 望んでいることが伝わっていないわけではないだろうに。 俺が従順なふりをして逃げ出す機会を伺ってるとか そういう疑いを彼が持っているようには見えないと思う。 俺もこの状況を望んでいることは伝わっているはずだ。 ……男に抱かれて散々感じて善がってみせてまで そこを疑われているとは考えたくないとも言うが。 ] どうでもいいの? 俺は幸せじゃないと「うっかり」しちゃうのに? どうせへたくそなんだから 無理に悪者になろうとしなくていいのに。 どうせなら幸せにする方に無理してよ。 例えば……そうだな、 幸せにするから一緒に生きて欲しい。 くらい言えたら、及第点かなぁ。 (*25) 2022/06/02(Thu) 1:06:39 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 『どうでもいい』ならば 好きな相手をわざわざ不幸にしたいとか そういう特殊な性癖でもないだろう。 嫌われる覚悟で攫ってくるくらいに 嫌われたままでも構わず囲おうとするくらいに 俺を好きなら、俺が幸せな方がいいだろうに。 そこを言葉にすればいいのに馬鹿みたいに不器用なのが 彼らしくて、愛おしく思えてしまう。 どうしようかな、赤点の告白だけど。 それが彼らしさであり愛おしさを感じてしまうなら 俺にとっては満点の告白なのかもしれないと思い直す。 そもそも告白でもなんでもなくただの補足なのだけれど 余りにも真剣に見えたから、 そう聞こえても仕方あるまい。 ] (*26) 2022/06/02(Thu) 1:07:04 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威俺は、誠丞さんの幸せはどうでも良くないから。 誠丞さんがそれで幸せなら、……いいよ。 俺も誠丞さんが「好きだから」。 [ ちょっと照れくさいけれど目を逸らさずに受け止めて 真面目な声で答える。 なにやってんだろう、こんな状況で。 いい大人が二人揃って。 けどこんな状況にならなければ お互い言葉に出来なかったのも事実だから、 思うだけで、何も言えない。 ] (*27) 2022/06/02(Thu) 1:07:20 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 刃物なんか見つけたって、どうせ死ねやしない。 正気でなくとも縫い合わせれば問題ない程度だった。 なのに未だ彼が刃物に怯えているとは知らないから 何も持って戻らないことを確認されていると気付いた時点で 何か持ってもどるべきか少し考えたけれど 興味を惹かれるものはこれといって見当たらなかった。 無論自分のではなく、彼の、だ。 彼が何に興味を惹かれるか見当がつかなかったせいもある。 従いはするが止めず繰り返したことを指摘するような 少し険のある言葉に、思わず笑う。 どうやら彼にとっては「いい子」ではなかったらしい。 そりゃそうだ。彼の前でだけは素の自分でいられたから。 生意気で可愛げのない子供だった自覚は、ある。 今も過去も、それを全部許したのはあなただけだった。 今も過去も、それを全部曝け出せるのはあなただけだ。 ] ……「いい子」じゃない俺はきらい? [ なんとも幼稚でひどく馬鹿げた問いかけだった。 自覚はあったけれど、許されたくて、受け入れられたくて せめて目一杯可愛い子ぶっておこうと 可愛い女の子がやれば可愛らしく見えそうな あざとい所作を試みる。 自分で笑いそうになった。耐えた。 ] (*28) 2022/06/02(Thu) 1:09:35 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ どこにでもありそうなサンドイッチを裏返す。 ラベルに書かれた製造者で地域が特定できるかと思って。 遠く移動しているのか、 案外近い場所なのかに興味はあった。 俺から離れれば彼はすぐにでも元の生活に戻れるのか 冷蔵庫の中とか生ゴミとかちゃんと片付けてきてるのかな。 割と突発的だった気がするので少しだけ気懸りで。 好きなものがないなら今からでも俺のために探してきなよ。 そう言いたいのに、今はまだまだ言えない。 その距離はまだ少しだけ怖くて。 これから先いつまでになるかはわからない入院期間を 四六時中一緒にも居られないだろうから いずれはそうなるだろうことはわかっている。 けれど今はまだ考えたくなくて、頭の端に追いやった。 ] (*29) 2022/06/02(Thu) 1:10:17 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ ほんの少し溢した本音は、案外あっさり許容された。 ほっとして、何故だか泣き出したくなって ごまかすためにサンドイッチにかぶりつく。 相変わらず味はよくわからないし よくわからないせいで気持ち悪くて吐きそうだけど 何故だか美味しい気がしてくるから単純なものだ。 手錠で遊ぶばかりで一緒の食事を始める気のない彼の口に 食べ掛けの齧ってない反対側の鋭角を差し出せば その手が捕まりもう一度拘束される。 何を始めたのかと思うだけで これといって抵抗は見せず見守っていれば ベッドの手摺ではなく 今度は彼自身と繋ごうとしているのが見えた。 それはいい。お互い絶対に離れられない。 そう思うのに、そうじゃないのに、と思って…… ] (*30) 2022/06/02(Thu) 1:11:43 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威えぇ……どうせ手に金属嵌めるなら もっとロマンティックなのがよかったなぁ。 [ 俺の手で拘束して欲しいという。 言っていることはわかる。 俺だってそうされたいと願うからこそ 拒まず受け入れているのだから。 つながる先の右手で受け取って、 自由な左手で彼の手をとって望むままに左手に…… 付けようとするふりこそしたが指示通りにはせず にんまり悪戯っ子の笑みで笑って 彼のではなく自分の左手に拘束を。 ささやかな金属音で左右の手首が繋がった。 仏頂面を顰めるくらいはするだろうかと 彼の顔色を伺って反抗の代償の気配を探った。 ] (*31) 2022/06/02(Thu) 1:12:01 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ そうじゃないと彼が指摘しだす前に 座る彼の膝を、よいしょと跨いで 繋がった両手の間に彼の頭を通した。 金属の玩具でもロマンティックかどうかは定かではない 指に嵌めるやつでもなくて 両腕と、体重を以て彼を拘束する。 距離が近くなったついでに、ご機嫌取りも兼ねて ちゅ、と可愛らしい音を立てて唇を啄んで じゃれつくように鼻先を彼の鼻梁に擦りつけた。 ] うん、こっちのほうがいいや。 直接繋ぐより、動けないでしょう? これなら誠丞さんはどこにもいけないし 俺から目を離し様もないよね。 ふふ、けどちょっと、流石に…… このまま食事を続けるのは、馬鹿みたいだねぇ。 [ けどまぁいいか、馬鹿でも。 もう外面よく優秀でいる必要もなければ 今は他に誰の目もなのだいし。 多分俺には馬鹿になるのが必要だ。 きっと真面目すぎる彼にも。 馬鹿みたいにいちゃついて馬鹿みたいに幸せでいれば 不安でいる必要性も忘れてしまえるかもしれない。 ] (*32) 2022/06/02(Thu) 1:16:25 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威たしかに今はまだ、不安だけど。 こんなのに頼らなくても…… ちゃんと信じられるようになるから。 なりたいんだ。誠丞さんのこと、信じられるように。 なれるまで、一緒にいてくれるんでしょう……? [ 疑問でも確認でもない断定させるための、 してくれると信じきって甘えた語尾で、問う。 けれど返事なんてどうせ決まっているとばかりに 返事を待たずに 食事の続きを強請る為に 雛鳥みたいな態度で口を開けた。 強請ったのは勿論食事の続き、サンドイッチだ。 なのに距離感のせいでサンドイッチでなく 口付けを強請ったみたいに見えてしまったかもしれない。 そうなるかな、とは思ったけれど どちらかといえばそっちの方が欲しかったので、 勘違いすればいいのに、なんてささやかな悪巧みを。* ] (*33) 2022/06/02(Thu) 1:20:51 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威んー……俺の理解している限りでは 「治療の為に転院した」だけ、じゃなかった? 人の道なんて外れてないし 何も問題なくない? だからさ…… 俺は誠丞さんと一緒にいられるだけで割と既に幸せだけど それじゃ満足できなるかもしれないし 先のことはわからないけど、努力するよ。 同性愛なんてまだ…… 世間には受け入れられないことも多いだろうし 俺は身体的なハンデはあるし なんなら無職なのに今は家事も出来ない役立たずだけど。 ………俺でよければ、喜んで。 [ やり直しの告白には及第点を超えた満点の笑顔を。 我ながらなかなかの不良債権で 彼を幸せに出来るなんてこっちだって思えない。 けど努力を積み重ねる事は得意なんだ。知ってるでしょ? 彼も一緒に努力してくれるのなら きっと大丈夫だって 何時になく楽観的に前向きなことを考える。 ] (*40) 2022/06/02(Thu) 9:44:53 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 彼の生徒だったあの日語って魅せた パフォーマンスの夢の話よりも 今の方が余程夢みたいな話だとは思う。 努力って何を如何?とか 漠然としすぎていて具体性がゼロだし。 けれど、ふわふわの曖昧な夢を語るのは 誰もが納得出来る根拠に基づいた手順で固めた 誰もが思い描く理想を謳ったあの頃よりずっと楽しかった。 今度こそ、本当にそうなりたいと心から思える はじめて俺自身で描いた目標だったから。 ] (*41) 2022/06/02(Thu) 9:45:32 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ あざといぶりっこな所作はあっさり受け入れられて それはそれで計算通りだけど羞恥は加速し 意味もなく叫びだしたい気分になる。耐えるけど。 頭を撫でて触れてくれる手も今は嬉しいよりも どうしても気恥ずかしいが優って 今までみたいに擦り寄ることもできない。 ] せんせぇーはさ、おれのこと、なんでもゆるしすぎだよ。 [ あの頃からそうだったから。 ついあの頃の呼び名に戻る。 じとりとした視線を向けるのは今度はこちらの番で けれど不機嫌はポーズだけで照れが滲むばかりなその視線に 彼を責める強さはない ] (*42) 2022/06/02(Thu) 9:46:36 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 別段媚びようと努力したわけでもないのに 本心から、可愛い子ぶってるみたいな台詞が溢れた。 遅れてふと自分で気付いて。 恥ずかしさに襲われる。耐えた。 ……と思ったが今度は耐え切れなかったので。 普通に、あああああ゙!!!とか癇癪を起こしたみたいに かき消す為の唐突で無意味な声を上げてひとり悶えた。 ] (*43) 2022/06/02(Thu) 9:47:30 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威[ 彼が派手に暴れれば、傷口にも触れる金属が擦れ 痛みを訴えることになっただろうけれど 控えめな確認のおかげでその手間も省けた。 幾らでも抵抗できる拘束に律儀に囚われる彼に 満足気な笑みを浮かべて返した唇を 望んだ通りに彼の唇にたべられた。 甘ったるい口付けに、彼に移って、唾液に溶けて戻ってきた サンドイッチの塩味を僅かに感じて その色気のなさが、何故だか この行為が特別なものなんかじゃなく 日常の延長のように思えてきて、嬉しくて、胸が熱くなる。 ] 誠丞さんも、疲れたら休んでいいからね。 だいじょうぶ、挫折しても何度だってやり直せるから。 生きてる限りは、何度でも。 だから、一緒に頑張ろうね。 [ とりあえず今はまだ繋いどいていいから 手始めに冷蔵庫とか整理してきなよ。 そんな現実的な指摘をするのは今じゃなくてもいいだろう。 彼と一緒に、これから先を努力しながら歩む 幸せな夢に今くらい酔いしれていたって 今は、ふたりのことを誰に咎められることもない。 ] (*44) 2022/06/02(Thu) 9:47:51 |
【赤】 入院中 阿出川 瑠威ふふ、じゃあ「もっと好き」になってもらえるよう頑張ろ。 俺も、いろんな誠丞さんを好きになりたいから これからもたくさん、おしえてね、誠丞さんのこと。 [ 誓う口付けを幸せそうに受け止めた後に 可愛らしさを装った所作でそう答えて…… 始めたばかりの食事を投げ出して 不自由な彼を、欲望を剥き出しにして押し倒した。 甘やかすばかりの彼はきっと受け入れてくれるだろうと 甘え切った可愛げのない態度で、彼の愛を貪るために。* ] (*45) 2022/06/02(Thu) 9:48:03 |
【人】 入院中 阿出川 瑠威── 後日・「孤島病院」正面入口前 ── 見て!すっごい綺麗な青空!! 散歩日和じゃん!! [ 久しく見る晴天の広がる空に 思わずはしゃぐ心を落ち着けるため 心地よい風を浴びて、深呼吸を。 子供みたいに今にも駆け出してしまいたい衝動はあれど ひとりで駆け出したりせずに、彼を待つ。 まだ俺を信じられない彼のために手を差し伸べる。 金属で繋ぐよりもこっちの方が余程いいでしょ、って しっかりと指を絡めて、互の手のひらを重ねた。 彼はまだ怖がっているだろうか。 けれどきっと一緒に努力してくれるはずだ。 彼もまた努力の人だから。 ] (23) 2022/06/02(Thu) 9:57:14 |
【人】 入院中 阿出川 瑠威[ 好きな相手には幸せになって欲しい。 そのために、二人きりの夢の城から一歩踏み出す。 ……のは、まだ今日じゃないけれど。 この手を離さなければ 彼と一緒なら、どこへでも行ける気がした。* ] (24) 2022/06/02(Thu) 9:57:39 |
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