人狼物語 三日月国


221 Pledge ~sugar days~

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視点:


【人】 田臥 志麻

── *** ──

[───そんな、蜜月は今もまだ続いている。
 
 贈られた浴衣に袖を通すことに慣れた今でも、
 着付けは威優に任せたままだったり。
 弟からのLINEに翌朝になってから気づくほど、
 威優とベッドの上で溺れたりして。

 威優の三週間の長い長い出張も終えた今、
 志麻は────、ダイニングのテーブルに
 テキストを広げて文字の羅列とにらめっこしている。

 試験は来週末。
 問題への予測も出来ているし、9割近くの正解率を
 自己採点では出しているから多少余裕はあれど、
 日が差し迫るとのんびりとくつろいでも居られない。

 専属の家庭教師が、様子を見に来るまでは、
 一人、ワイヤレスイヤホンを耳に付けて
 お気に入りの洋楽を流しながら、
 シャープペンシルをノートに走らせていた。*]
(0) 2023/08/28(Mon) 20:59:27

【人】 田臥 志麻

[イヤホンを付けていても、
 周囲の環境が聞こえるくらいの音量にしかしていない。

 音楽に重なるように威優の声がすれば顔を上げ、
 風呂上がりの彼に、んー……、と。
 返答とも唸りとも取れる相槌を打つ。

 威優よりも帰宅が早い志麻も、
 彼より先にシャワーを済ませていた。

 風呂から上がった後も、浴衣を身に纏ってしまうと
 ついつい、だらけそうになってしまう為に
 外出にも使えそうなシープボアのカーディガンと
 ボトムスのセットアップを着ている。

 一緒に風呂に入りたい気持ちはやまやまあれど、
 ただ一緒に浸かって、だけで済ませられる気はしない。]
(5) 2023/08/28(Mon) 22:34:23

【人】 田臥 志麻

[自身に合わせてくれた威優のサポートもあり、
 ページの進み具合は順調といえば順調だ。
 複数ページについていたメモ付きの付箋も今は
 随分と減って、ノートの厚みも薄くなってきている。

 彼が手書きで書いてくれた付箋は、
 もう見ずとも答えられるが、捨てられないまま
 纏めてエシレのクッキー缶に詰め込んでいた。]


  ……順調といえば順調。
  暗記ものは概ね覚えられたと思うし、
  引っ掛けに躓くほうでもないから。

  ……お、サンキュ。


[暗記する方法はひたすら書いて覚える方が性に合っている。
 その話をすれば、数回読めば覚えると言った威優には、
 出会った時のように、わぁ……♡と、感嘆を零してしまった。
 このときばかりは地頭の良さに少しばかり嫉妬する。]
(6) 2023/08/28(Mon) 22:35:01

【人】 田臥 志麻

[濃茶色から甘い香りがする。蜂蜜だろうか。
 一口、口に含めばふわりとアルコールが広がって。]


  ……あ、これお酒だ?
  うまい。


[蜂蜜の甘さにほっとして表情が緩む。
 両手でグラスを包み込みながら、
 ストレッチ代わりに頸をぐるぐると回しつつ。]
(7) 2023/08/28(Mon) 22:35:13

【人】 田臥 志麻

 
  ほんと、焦ると計算する時にミスりそうでさ。
  どうせ仕事じゃパソコン使うんだし、
  試験でも計算機使わせて欲しい〜……。


[不安、というよりも半ば愚痴めいてしまう。
 ちなみに英語も、法律も。
 仕事で必要な箇所に集中的に絞って覚えた。
 地理だけは好奇心が勝って得意分野となったが。

 いずれ秘書室に就くのであれば、
 英語は必須になるだろう。
 今の会社でも使わないわけではなかったが、
 スキルレベル的には格段に上がっていくだろう。*]
(8) 2023/08/28(Mon) 22:36:29

【人】 田臥 志麻

[威優の地頭の良さは出会ったときから感じていたが
 生活を共にするようになり、家庭教師を任せた頃から
 より強く感じるようになった。

 勉強法が違うのはもちろん、要点の纏め方や
 教え方も相手に分かりやすく手法を変えている。
 地頭だけでなく性格由来のものも多分にあるだろうけれど。

 彼の好感が持てるところは能力をひけらかさらない点だ。
 ここまでくれば妬むどころか尊敬を覚えてしまう。

 まだ直接上司と部下の立場になったわけではないが、 
 威優なら間違いなく上司として、夫として、誇れるだろう。]


  そっか。
  最初は見慣れない単語ばっかりだったけど、
  新しいこと覚えるのって結構好きだから
  調子が上がってくれば勉強も楽しいよ。


[肩肘張らず、強がらなくてもいい。
 そんな環境下の中で集中できるのは有り難い。

 それは他でもない威優が与えてくれたものの一つだ。]
(12) 2023/08/29(Tue) 1:07:55

【人】 田臥 志麻

[こうして手渡してくれるさりげない労いも
 心が温まる心地で表情が緩む。]


  ホットミルクはたまになら嬉しいんだけど、
  実はちょっと甘過ぎて苦手。
 
  ああ、でもミルクにも蜂蜜入れるな。
  どうしても甘いものが欲しいときとか。

  これはちょっと苦味もあって好きだな。
  ……嬉しい。


[いつから用意してくれていたのだろう。
 大げさでもない、優しい励ましが心地良い。
 こくん、ともう一口飲めば、
 紅茶の奥に蜂蜜独特の癖が広がった。]
(13) 2023/08/29(Tue) 1:08:12

【人】 田臥 志麻

[電子機器は脆い。故障すれば自力で解決する他ない。
 威優の言い分も最もだけれど、小さく唸った。]


  そりゃそうなんだけどさー……。


[と、項垂れつつも続いた言葉には
 ぱっと表情を明るくしてマジ!?と声を弾ませた。
 とはいえ来週末に迫った試験に間に合うかは別の話。]


  んー?教えること?


[冷えたグラスを頬に添えて涼みながら、
 軽い調子で答えつつ、隣の威優を見遣った。

 「先生」の響きに、ふと悪戯めいた案が浮かぶ。]
(14) 2023/08/29(Tue) 1:10:21

【人】 田臥 志麻

[威優と話し始めた頃にワイヤレスイヤホンは
 外して、脇に寄せていた。
 今はスマホから細やかな音量の洋楽が流れている。

 試験箇所のお浚いはとうに二順している。
 追い込みと言っても切羽詰まった程じゃない。

 だったら、今必要なのは──、]


  ……じゃあ、
  
『格好いい専務を骨抜きにする方法』

  教えてくれる?

  威優せーんせ



[隣の"教師"に視線を合わせて、にやりと笑う。
 グラスを頬に当てたままあざとく小首を傾ければ、
 ガラスの中の氷がカランと、揺れた。**]
(15) 2023/08/29(Tue) 1:12:14

【人】 田臥 志麻

[試験勉強中のコーヒーの差し入れは、
 どちらが決めたわけでもないのに威優の役割となった。

 その時間を目安に休憩を入れる。
 一度のめり込んでしまえば集中は切れることはなく、
 威優が隣りにいても目の前の問題集に
 意識が向いて、浮ついた気分にはならずに済んでいた。

 もしコアントローを出されていたなら、
 喜んで口にしただろう。
 コーヒーとオレンジは相性がいいから。

 スナック菓子などは最近は食べない。
 代わりに、勉強の合間の糖分補給のために
 チョコレート掛けのオレンジピールや、
 ドライフルーツを常備していることを
 キッチンにも立ち始めた威優なら知っているだろう。]
(20) 2023/08/29(Tue) 17:48:06

【人】 田臥 志麻

[試験までの家庭教師役が終わっても、
 日常会話が通じるぐらいまでの英会話は引き続き
 教わるつもりでいる。
 そのことはまだ本人には確認していない。]


  ん、じゃあその時は威優の分も一緒に。


[美味しいと感じたものを二人で分け合うのも、
 二人で暮らし始めて当然のようになってきた。
 
 蜂蜜の香りがするお酒のように、
 威優との会話は酩酊感があって癖になる。]
(21) 2023/08/29(Tue) 17:48:22

【人】 田臥 志麻

[世界で30億再生も流された結婚式の定番のラブソングが、
 70歳になっても君を愛していると歌っている。

 「先生」よりも詳しいと指摘された生徒は、
 反応に笑いながら、少しだけ口を尖らせた。]


  だーめ、威優は今「先生」なんだから、
  オレにちゃんと教えてくれないと。


[取り上げられたグラスを視線が追いかける。
 間接的なキスでときめいているのが可愛らしい。
 ふふ、と思わず声に出して笑い。

 添えられた手の甲に甘えるように頬を寄せる。]
(22) 2023/08/29(Tue) 17:48:42

【人】 田臥 志麻

[今まで海外に大して興味が湧かなかったから、
 英語も学校で教わった程度の知識しかなく、
 英会話となれば実践での使い方の違いに驚いた。

 まずはヒアリングからを意識して、
 映画は字幕版を見るように意識し、
 普段何気なく聞き流していた洋楽も
 意味を調べるようになれば曲に深みが出てくる。

 不意に威優から投げかけられる英語での呼びかけに
 最初は「Please say it again」ばかりを
 繰り返していたときもあった。]


  今日はもう止めとこっかな。 
  マンゴーのドライフルーツまだ残ってるよ。


[一度途切れた集中力を再び湧き起こすより、
 時間を置いたほうが気分転換にもなる。
 
 短い夜の貴重な時間、
 威優と共に居られる時間も、作っておきたい。]
(25) 2023/08/29(Tue) 21:29:07

【人】 田臥 志麻

[ふと威優が歌詞の一部を口にした。
 プレイリストに入れていたお気に入りの一曲。
 彼も気に入ってくれたなら、嬉しいけれど。]


  毎日君に恋してるってやつ?
  聞いてると落ち着くんだよね、この曲。


[彼が口にしたフレーズを和訳で繰り返し、眼を細める。
 翻訳するまで意識していなかった音楽は、
 つい口から溢れてしまうほどの愛の歌だった。

 「先生」を強調し続けていれば、
 生徒の悪ノリに威優が乗ってくれる。]

  
  先生の教え方が上手ければね?


[などと、挑発めいた言葉を口にして。]
(26) 2023/08/29(Tue) 21:29:25

【人】 田臥 志麻

[英会話を話すときには無理に単語を探すより、
 知っている英語で会話を続けられるように。

 威優にそう教わってからは随分と気が楽になった。
 知識量とのしての単語はまだ足りないけれど
 伝えたいことを優先する為に、
 ボディランゲージや表情を変えてみたり。
 
 時には食事中は日本語禁止にして遊んでみたりもした。
 苦戦しつつも伝わったときの嬉しさを覚えてからは、
 英語でのコミュニケーションも増えている。]


  そう?
  じゃあお酒だけもうちょっと飲もっか。

  ……サンキュ。
  

[気にせず食べてもいいのに。と勧めるけれど
 この台詞は大抵の場合威優が言うものだ。
 何しろエンゲル係数は高いのはオレの方なので。

 テキストを片付ければ威優が後片付けを手伝ってくれる。
 つくづく気の回る男だと感心してしまう。]
(30) 2023/08/30(Wed) 3:00:09

【人】 田臥 志麻


[英会話の中で確認し合ったのは、日常会話だけではない。

 ベッドの上で試してみた日本語禁止は、
 喘ぎが演技じみていて、普段の喘ぎの方がいいと
 クレームをすぐにもらって腹を抱えて笑った。

 自身も威優の言葉をオートで脳内変換するのに
 時間がかかり、そんな余裕もないので、
 10分と続かなかったのもエピソードのひとつになっている。]

 
(31) 2023/08/30(Wed) 3:00:48

【人】 田臥 志麻

[毎朝毎夜のように交わすキスはまだ忘れる間もないくらい
 威優の愛の味を覚えている。
 今し方もその味を味わったばかりだ。

 70歳になるまでには知らないことなどないぐらいに
 威優の全てを知りたい。

 何で悦ぶのかも、どこが好きなのかも。
 どうされると嬉しいのかも、全部。]  
(32) 2023/08/30(Wed) 3:01:16

【人】 田臥 志麻

── 式に向けて ──

[海外旅行に行ったことは一度もない。
 興味がなかったという点も理由の一つではあるが、
 他にも理由は二つある。
 
 一つは仕事で多忙な両親の為に
 年の離れた弟を一人放っておけなかったこと。
 もう一つは、旅行先で偶発的なヒートに
 見舞われたときの対処法が思いつかなかったこと。

 懸念材料を理由に足が遠ざかっていたけれど、
 その二つは威優がいとも簡単に取り除いてくれた。
 彼との日々の英会話も重ねてきた今では、
 実際に試したいこともあり積極的になっている。

 初めてのパスポートはつい先日手に入れた。
 記載されている名前は自身の名字も
 今では威優と同じ大守に変わっている。]
(37) 2023/08/30(Wed) 22:03:17

【人】 田臥 志麻

[転職に合わせて籍も入れたものの、
 披露宴やメディア自体にはまだ発表されていない。
 新しい職場はモラルがある人達ばかりで、
 口の前に戸を立てずとも
 自身の立場は対外的に漏れていないようで感謝しか無い。

 入社したばかりなのに休暇も申請受理されて、
 今から上等なお土産を考えるばかりだ。

 その旅行でのメインであるウェディングドレスの準備は、
 旅行準備よりもずっと前から始まっていた。
 
 威優に連れられて大守系列の服飾メーカーに赴き、
 全身のサイズを測られた後は、
 生地の素材や、デザイン、全て。
 一からオーダーメイドで作るという。]
(38) 2023/08/30(Wed) 22:03:43

【人】 田臥 志麻

 
  ……一度しか着ないのに?
  既存のものでもいいけど……、


[と、最初は戸惑ったものの威優の考えは違うらしく、
 最終的には良いドレスを着たい気持ちを
 上手く唆されて首を縦に振っていた。

 マーメイドドレスや、ミニドレス、Aライン。
 どれもメディアで見たことがある憧れのデザイン。

 レースやドレープがたくさんついたものもあるが、
 自身の見た目的にはシンプルなものが
 似合うのではないかと思い至り、
 デザインよりも、生地に拘っていくようにした。]
(39) 2023/08/30(Wed) 22:04:11

【人】 田臥 志麻

[フィッティングルームの前に並ぶ、
 数百着以上のドレスの間を、渡り歩いていれば
 目移りしてしまう。
 女性用の服、ましてやドレスに関しての知識もない。
 一生に一度、と反芻しつつ。]


  ……色は白一色、が、いい。
  トレーン?を長くするなら
  デザインはすごくシンプルなやつで
  あと……、

  やっぱり、ちょっと照れくさいから、
  ヴェールで顔隠したい……



[ウェディングドレスは憧れが詰まっている為に、
 はしゃぐ気持ちもあれば、
 腰が引けてしまう思いも、少し。*]
(40) 2023/08/30(Wed) 22:05:18

【人】 田臥 志麻

 
  プレ……、なに?
  コルセットも着るの?ガーターも?

  
ガーターベルトはなんかエロい感じがする……。 



[そんなもの弟の漫画でしか見たことがない。
 下着と合わせると良さそうだなという邪念が過りつつ、
 いやいや、と首を振った。

 説明を聞きながら自身よりも前のめりになって
 威優が意欲的に聞いている。
 まるで威優が着るみたいだ、と笑いつつ。

 ヒールは履き慣れないのでフラットシューズに。
 可愛らしいレース素材の透けているものを選ぶ。
 
 ヒールを履いて同じ目線になるのもいいが、
 威優を見上げる角度が好きだから。]
(44) 2023/08/30(Wed) 23:20:49

【人】 田臥 志麻

[ありのままの姿を好きだと言ってくれたから、
 胸元もそのままに。
 白を選んだら威優も賛同してくれる。]


  うん、長い方がいい。
  靴がレースっぽいものだから、
  ヴェールもレースを足して……チュール?
  光が反射するのはいいかも。


[威優の手が伸びてきて頬を撫でる。
 人前だとどうにも面映ゆくて視線を伏せてしまう。

 こんな状態でメディアの前に出る頃には
 対応できるだろうか。
 以前ならもっと慇懃無礼な態度を取れていたはずなのに。

 威優の所作一つにこんなにも心が跳ねる。]
(45) 2023/08/30(Wed) 23:21:17

【人】 田臥 志麻

 
  あと、……どこかは一つ。
  威優とお揃いがあると、嬉しい。


[ウェディングドレスとタキシード。
 作りや素材も違うだろうから、そういった注文が
 罷り通るかは分からないまま口にする。

 もし無理な注文であれば、
 薬指で光るものが同じであるからそれも問題ない。]
(46) 2023/08/30(Wed) 23:21:48

【人】 田臥 志麻

[オーダーメイドというものは
 何から何まで自分で決められるらしい。

 威優が普段着ているスーツも確かそう言っていたか。
 だから、慣れている部分があるのかもしれない。
 こちらは初めての体験に戸惑いつつも、
 一緒に悩んでくれる人が居たから胸を撫で下ろせた。

 初めて尽くしのことに質問を重ねながらも、
 希望を汲み取ってくれるところが嬉しい。

 式場も自宅でもタブレットを二人で駆使しつつ、
 絞っていき、何度か相談した上で
 彼が指し示した資料を横から覗けば、
 ガラス張りの教会の写真が目に飛び込んでくる。]
(47) 2023/08/30(Wed) 23:22:37

【人】 田臥 志麻

 
  どれ? ……へえ、綺麗だな。
  夜なら海に来る人も少ないだろうし。

  式が終わったあと、砂浜歩けるかな?


[子供のような提案をして少しはしゃいでしまう。
 十字架まで続くヴァージンロード。
 夜になれば南半球の満天の星も見れるだろう。

 聖域に相応しい場所で、愛を誓えるのなら。
 それは夢にまで見た光景だ。*]
(48) 2023/08/30(Wed) 23:22:54

【人】 田臥 志麻

[コルセットと聞けば中世の女性が苦しそうに
 着ているのが印象深いから、耳にしたときは
 "痛いのでは?"という想像が真っ先に浮かんだ。

 威優と自身の話を聞いていたスタッフが、
 ご覧になってみますか?と声をかけてくれたので、
 少し挙動不審になりつつ、はい、と頷いた。

 普段履いているランジェリーは
 全てネット通販で購入している。

 だから女性の前で女性ものの衣類の話をするのは
 今回が初めてだったりする。

 少数精鋭のスタッフに絞ってくれているとは、
 威優から聞いていたがまだ気恥ずかしさが残り
 声をかけられた時も咄嗟に、
 傍に居た威優の裾を掴んで背中に隠れてしまった。]
(54) 2023/08/31(Thu) 2:38:07

【人】 田臥 志麻

[少し二人の時間があった後、
 何種類か広げられたコルセットもガーターベルトも、
 正直、「可愛い」と思わず声に出そうになるほど
 興味を惹かれてしまった。

 やはり威優は自身好みを知り尽くしている。
 これが似合う、と提案されたものは
 どれも頷いてしまうもので
 正直に言って、早く着てみたくてそわそわした。

 シューズも、小物から一つずつ決まっていく。
 自分たちで選んだものが細部まで拘られて。
 ヴェールに選ばれるチュールも
 派手過ぎず上品な光沢に近く、好ましい。]


  うん、良いと思う。
  オレもそっちの方が好き。


[オーダーメイドに関しては格段に詳しい威優に
 まるで光源氏に育てられていく若紫のように、
 彼の好みに育てられている感じがする。]
(55) 2023/08/31(Thu) 2:38:56

【人】 田臥 志麻

[シルクサテンのリボンと同じタイ。
 シンプルな肩口に「可愛い」と「好き」が増えて、
 威優とお揃いになる。
 ポケットチーフとヴェールも重ねれば、
 お揃いがもう一つ。

 彼が出したアイデアに、
 みるみると瞳を大きくして輝かせ。]


  それがいい。
  どっちもしたいっ。

  ははっ、最高。絶対可愛くなる!


[借りてきた猫だった表情が破顔する。
 こくこくと頷いて賛同を示し
 浮わついた心を抑えきれずに手を取ってはしゃぐ。

 重ねた手に嵌っている「お揃い」のリング。
 大好きな瞳と同じ色をした石がきらりと煌めいた。]
(56) 2023/08/31(Thu) 2:39:24

【人】 田臥 志麻

[ブーケは花の種類が分からないから
 色を決めてから、選ぶことになった。

 白いウェディングドレスに映えるように、
 「可愛い」の代表のピンクの花がいいと告げて、
 可愛らしくなり過ぎないように
 ピンク合わせる色にはクールな青系統を選ぶ。

 白いチャペルに白いウェディングとタキシード。
 ブーケは夜に輝く差し色になるだろう。]


  南十字星、初めて見るな。
  夜の海ってちょっと怖いイメージあるけど、
  灯りがない分、空見上げたら星がたくさん見られそう。
  

[威優と出会ったのは夏の頃。
 オーストラリアに行く時期にはちょうど、
 あちらが夏と同じ暑さぐらいの季節。

 きっと、出会った頃を思い出すだろう。**]
 
(57) 2023/08/31(Thu) 2:39:48

【人】 田臥 志麻

[仕事として接してくれている女性スタッフたちは
 例え可笑しいと思っていても
 プロだから態度に出すことはないだろう。

 Ω性の男性であっても大半は揃えてタキシードを着る。
 披露宴の時に自身も対外的に着るみたいに。

 LGBTやトランスジェンダーの問題は今や、
 公言しても蔑まれることは少なくなってきているが、
 志麻が消極的なのはそういった根本的な問題以前に、
 骨格が細いとはいえ女性的な丸みのない成人男性である
 自身が可愛いものを着ても似合わないのでは、
 と、誰よりも自分自身が思ってしまうからだった。]
(61) 2023/08/31(Thu) 21:28:04

【人】 田臥 志麻

[威優の可愛いを切っ掛けに視線が上向けば、
 接してくれる女性スタッフたちの表情も良く見えた。
 話を親身に聞いてくれる様子は決して嘲笑うものではない。
 そう気づいたら、随分と気持ちが楽になった。
 最初から拘っていたのは自身だけだったかも知れない。
 そう思えば、少しずつ相談に前向きになれた。

 二人で一から作っていくウェディング。
 ドレスから小物、式場、時期まで。
 たった二人だけで挙げるために。

 話が進んでいくにつれて一生に一度のものが、
 最高になると確信していく。

 リボンのアプローチも一度じゃなくて、
 正式な発表の場でも「お揃い」に拘れるように。]


  そうしたい。
  
  挙式の気持ちを持って披露宴に挑めるなら、
  緊張しないで済みそう。


[もう一つの予定が組み込まれるからには、
 素材選びはまた慎重になりハードルが上がりそうだ。]
(62) 2023/08/31(Thu) 21:29:57

【人】 田臥 志麻

[「愛情」が意味として含まれる花々達の中に
 「かわいらしさ」と「信じ合う心」が含まれる。
 
 自身が選んだピンクに、彼の好みを足せば
 「恋の誓い」が生まれた。
 互いに初めての恋を知った二人によく似合う。]


  知ってる?
  星座の中で一番輝く星って"α星"って言うんだって。
  南十字星には二つもあるらしいよ。


[十字架の前で愛を誓った後、見られるであろう
 夜空の十字に思いを馳せる。
 その中には、威優と同じ意味を持つ星がある。
 
 自身の中でもたった一つだけ、
 誰よりも輝く一番星が────すぐ傍に。*]
  
(63) 2023/08/31(Thu) 21:30:31

【人】 田臥 志麻

[威優が居なければ相談もまともにできないまま、
 既製品でいいと言っていたかもしれない。

 「志麻さま」と呼ばれ続ける中で、
 たった一度だけ「ご新婦様」と言いかけた
 スタッフが恐縮して名前に呼び替えた。


 「大丈夫です、呼びやすい方で。」


 と、照れくさいながらもそう答えられるくらいには
 余裕も生まれて、打ち解けていく。]


  無理。
  リボン見たら絶対ニヤけちゃうもん。

  その時は一緒に笑って。


[どんな思い出になっても
 威優となら良い思い出になることは間違いないから。
 挙式も、披露宴も、笑顔で迎えられたら良い。]
(68) 2023/09/01(Fri) 1:46:26

【人】 田臥 志麻

[街灯が綺麗に並ぶ中を手を繋いで歩く帰り道。
 海の近くのように星は見えないけれど、
 その代わりに冬のライトアップが美しい。]


  Ω星はないんだ。

  オメガ星雲ってΩの形をしたやつならあるけど。
  星雲は星じゃなくて、塵やガスの集まり。

  ああ、でも恒星の光を反射するんだよ。


[冬の空気に冷えていた手が彼の手で暖かくなる。
 自身の星はなくとも、一番星の。
 彼の光を受けて、光ることなら出来るだろうか。]
(69) 2023/09/01(Fri) 1:46:35

【人】 田臥 志麻

── 来たる挙式当日 ──

[初めての海外に戸惑いながらも、
 現地の天気は心を映し出すように晴れやかで。
 一人前の食事の量の多さに感動しながら、眠った翌日。

 最終調節のためになんどか試着を重ねた
 完成されたドレスをお披露目するときがきた。

 ウェディングドレスを着るのなら、
 素っぴんとは行かない。
 ドレスに見合うようにメイクを施されて。
 ベイスメイクはもちろんのこと、
 薄いのチークにマスカラ、色づいたピンクのリップ。

 鏡の中の白いドレスにメイクをした人物は
 まるで自分じゃない、ドラマの中の人みたいだ。

 憧れていた『お嫁さん』の形になっている。
 想像していたよりも遥かに美しく、
 立派なドレスを纏っていた。

 メイクを施された後も、
 鏡の前から離れられずに入れば、ノックが響く。]
(70) 2023/09/01(Fri) 1:47:00

【人】 田臥 志麻


  どうぞ。


[威優かと思い、促して扉の先を見てみれば。
 威優と共に、父の姿がそこにあった。

 みるみる志麻の目が見開かれていく。]


  ……と、うさん……、?

  え、なんで。
  ……えっ、……


[二人だけと聞いていたからその姿を見たときは、
 本当に驚いて、咄嗟に声も出なくて。
 説明を求めるために父と現れた威優を見つめる。]
(71) 2023/09/01(Fri) 1:47:17

【人】 田臥 志麻

[彼の前では穏やかな父がにこやかに笑顔を浮かべて、
 綺麗だね、と感極まったように呟くから。]


  そ、それは威優の言うやつだろ……!?


[嬉しいけど、……
嬉しいけど!

 混乱と照れ臭さと嬉しさでつい親子の素が出てしまう。
 だって二人きりだって!言ったから!
 その台詞は威優から先に聞きたかった。
 
 その父から母と弟も一緒に来ていることを伝えられ、
 更に困惑を広げながらも、
 最終的には威優の方へと眉尻を下げて。]


  
こ、こんなの……聞いてない……、



[と、気恥ずかしさを浮かべながらも。
 複雑な表情を浮かべて、花嫁とは思えぬ動揺を見せた。**]
(72) 2023/09/01(Fri) 1:48:17

【人】 田臥 志麻

[エステもマッサージも綺麗になる為の準備。
 一人で受けるのではなく、二人で施術を受けたから、
 気分も楽ですっかり気持ちも解れていた。

 その時も威優は全くいつも通りに話していたのに
 裏でこんな下準備をしていたとは驚かされた。

 「連れてきてくれてありがとう、威優くん」
 なんて、嬉しそうに感謝を伝える父。

 父の傍らに立った威優が、
 期待していた言葉を口にする。
 (しかもさらっと奥さんって言った!)]


  …………〜〜〜〜〜ッ、

  あー、もうっ……!
二人共ありがとっ!



[ヴェールを下ろした後では
 乱雑に髪を掻き乱すこともできない。
 頬に触れるのもメイクを崩してしまいそうで。
 二人の視線から逸らすみたいに顎を逸らして
 上を向く天に投げかけるみたいにお礼を告げた。

 そうしないと瞳がまた潤んでしまいそうだったから。]
(77) 2023/09/01(Fri) 21:35:51

【人】 田臥 志麻

[バージンロードの意味は威優の口から語られるまで
 調べたことはなくて、初耳だった。

 ドラマや映画ではそのシーンを何度も見てきたけど。
 父親役の人と腕を組んで、
 新婦が新郎の元まで送り届けられる意味。
 それは、家族のバトンを受け渡す意味があるのだろう。

 ────家族から新しい家族へ。

 そのバトンをちゃんと受け取りたいと
 考えてくれた威優と、役目を担ってくれる父に。
 堪えていた涙腺がまた瓦解しそうになってしまって。
 唇を噛み締めて二人の話を聞き、
 彼らの言葉が途切れた後、
 自身の返事を待つように少し沈黙が、落ちた。]
(78) 2023/09/01(Fri) 21:36:35

【人】 田臥 志麻

[今日は笑っていたいから。
 深く、息を吐きだして感情が落ち着くのを待つ。

 それから、二人を見て。]


  ……威優のところまで、
  父さんが、エスコートしてくれる?


[頷く代わりに目尻に皺を作ってみせれば、
 やっぱり、少しだけメイクが崩れてしまった。]
(79) 2023/09/01(Fri) 21:36:51

【人】 田臥 志麻

 

  母さんも、莉久も呼んで。

  ……うちの家族が来るなら、
  威優のお義母さんも呼べばよかったな。


[最後は威優にそう言って笑った。

 赤く燃えていた空が夜空に変わっていく。
 青と緑に囲まれた中で白いチャペルが一層映える。

 立ち上がると威優と拘った
 トレーンの刺繍が綺麗に床に広がった。*]
(80) 2023/09/01(Fri) 21:37:23

【人】 田臥 志麻

[二人だけの挙式にしたいと言ったのは、自身の方。
 威優もその意図を汲み取ってくれていた。
 
 人に見られるのが恥ずかしいというところから
 始まった挙式への準備。
 二人で作り上げてきた計画は
 ウェディングドレスの素材から式場、
 どれもこれも拘って選んできたものだった。

 威優が「可愛い」と言ってくれたことは、
 己を卑下していた自己肯定にも繋がる。

 当初からの計画が二人で、だっただけに。
 家族には見せることはないと思っていたけれど。

 いざ目の前に家族が現れたなら、
 見て居て欲しいという想いに繋がっていく。

 苦労や心配をかけてきた自身が、
 自ら選んで番となった人と手を取り合っていく瞬間を。
 小さい頃からの夢であった
 「およめさん」になった姿を──。]
(86) 2023/09/01(Fri) 23:16:10

【人】 田臥 志麻

 
  わかった。
  威優とオレが一番気に入ったやつを送ろう。


[長男の門出の涙につられて涙腺が緩んだ
 父の背中を撫でて微笑む。

 威優と父を送り出したら、
 母と莉久が入れ替わりでやってきた。

 メイクを直してもらいつつ鏡越しに莉久と視線が合えば、
 父と全く同じセリフを口にしたので
 また笑ってフェイスパウダーがよれそうになった。

 フラワーボーイなんて出来るのか?と揶揄えば、
 威優から聞いたのだろう役目を誇らしげに語る。
 
 「威優さんの元に辿り着くまでしっかり護るよ」

 庇護の対象だった弟からそんな言葉が出てくるのが感慨深い。]
(87) 2023/09/01(Fri) 23:16:51

【人】 田臥 志麻

[元の唇がほんのりと色づくくらいのピンクのリップ。
 最後に仕上げてもらえば、鏡に映るのは最高の自分。

 祭壇で待つ彼の隣に立っても恥じない姿で、
 胸を張っていられるようになりたい。

 母が目の前に立ち、ヴェールを両手に取った。


 「志麻、夢が叶って良かったわね」

 
 レース越しに見える母が口にしたその言葉に、
 覚えていたのかと僅かに目を見開いた。]

 
  ……もう、メイクを直したばかりなのに。


[外で待つ威優と父を、
 更に少し、待たせることになってしまっただろう。]
(88) 2023/09/01(Fri) 23:17:41

【人】 田臥 志麻

[荘厳な音と共に扉が開けば、
 真っ直ぐ続いていく真っ赤なアイルランナー。
 莉久が散らしていく「清め」の花が絨毯に落ちる。

 隣に立つ父と目線を合わせ、
 腕を添えて、一歩、一歩、進んでいく。
 人生を歩んできたみたいに。
 
 十字架に近づけば母の姿が見える。
 また、震えそうになる唇を引き結んだ。

 愛している家族に見守られながら、
 愛しい番の元へ、導かれて。
 祭壇の前、白いタキシードに身を包む威優と目が合う。]
(89) 2023/09/01(Fri) 23:17:53

【人】 田臥 志麻

[自身の人生の数だけの歩幅を歩む。
 
 十九歩、二十歩、  ──まだ藻掻いていた時期。

 二十一歩、二十ニ歩、──妥協を知った。

 二十三歩、     ──全てを諦めたようとした。


 威優が少し立ち位置を変える。

                そして──、]
(93) 2023/09/02(Sat) 1:53:51

【人】 田臥 志麻

[少しだけ足を止めて、目を見合わせて微笑む。
 レースの手袋に包まれた手を彼の腕に添えて。

 二十五歩、二十六歩、その先も。

 これからの人生のように、威優と並んで歩いて。
 
 たった三人しかいない参列者。
 静謐な空気の中で、儀式が行われていく。

 威優が誓いを立てれば、自身の名前を呼ばれた。]


  "Will you love him, comfort, hornor and keep him
so long as you both shall live?"
(94) 2023/09/02(Sat) 1:55:10

【人】 田臥 志麻

[同じ方向を向いて、同じ言葉を並べて。
 神に誓いを立てる。

 十字架の奥に海から顔を出す月が見える。

 いつかの日にも見た丸い形をした満月が
 太陽の代わりに、細やかな明るさを齎していく。

 神父の言葉が終わり、彼と向かい合う。
 威優の手がヴェールを持ち上げれば、
 倣って視線を上げ、愛おしい翠緑の瞳を見つめた。

 少し、潤んでいただろうか。
 気づきはしたけれど、自身も同じくらい。
 それ以上に、視界が滲んでいたから笑うだけに留める。]
(97) 2023/09/02(Sat) 21:12:48

【人】 田臥 志麻


 
  オレも、──愛してる。


[何度もつっかえた言葉を、
 今はもう澱みなく伝えられる。

 距離が狭まっていくのに、そっと瞼を下ろして。
 誓いのキスを交わす。]
(98) 2023/09/02(Sat) 21:13:14

【人】 田臥 志麻


[月が海から完全に顔を出して、空に浮かぶ頃。
 教会を出て、ガーデンを歩く。
 夜でも写真が撮れるように照明が点いている。

 家族との記念写真を威優に促され、]


  ……うん、そうだな。
  せっかくだし。


[頷いて両親と弟に声をかけた。
 三人とも笑顔で喜んでくれた。

 ブーケを手にしたままアーチの下に立つと、
 傍らに母が、その隣に父が。
 そして、自身を挟んで反対側に弟が立つ。
 
 プロのカメラマンが撮ろうとする前に、
 莉久がスマホでも撮りたい!と新郎である
 威優にお願いしに行ったことには、
 こらっ!と兄の顔をして叱った。]
(99) 2023/09/02(Sat) 21:14:04

【人】 田臥 志麻

[少し気恥ずかしい、一生に一度の記念写真。
 何枚か納めた後は、家族の代わりに威優が喚ばれる。

 スマホを威優から受け取った莉久が、
 ちゃっかりカメラマンの横を陣取り、
 自身もカメラマン気取りでレンズを構える。


 「ほらもっと、威優さんの傍に寄って。
  新婚らしく、ほっぺにちゅうとかする?

  大丈夫、ここ海外だから!」


 ポーズまで指定してくるはしゃぎっぷりに、
 呆れながらも、誓いのキスとは違う写真用は 
 些か嬉しさよりも、照れ臭さのほうが前に立つ。]
(100) 2023/09/02(Sat) 21:14:17

【人】 田臥 志麻

 

  ……ごめん、莉久が浮かれてる。


[隣に立つ威優を見上げつつ、
 指定通りに隣の距離を詰めながら、
 何とも言えない表情を浮かべて眉根を寄せる。

 
 「せっかくだからリングも見せて!」


 更にもう一つ、注文がついた。]


  お前ね……プロの人に任せなさいよ。


[言いながらも注文に答えるように、
 左手を胸元に持ち上げながら。*]
(101) 2023/09/02(Sat) 21:17:38

【人】 田臥 志麻

[撮影会は弟の注文のお陰で賑やかになった。
 
 お姫様抱っこは自宅でもされているが、
 人前で、しかも家族の前とあっては
 さすがに照れが勝ってしまう。

 けれど、腕の中で暴れたらドレスを汚してしまいそうで、
 莉久を睨みつけながら渋々大人しくした一場面もあった。

 翌日からは家族は観光に回るという。
 ガイドも威優が手配してくれていたらしく
 それならば、と安心もした。]
(105) 2023/09/02(Sat) 22:17:38
 




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