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【人】 ウユニ私はひどい提案をしたと思う。 貴方を利用します、 と言っているようなもの。 勿論利用されるのは構わなかったし 例えば家事とか、私にできることを頼まれるのなら こなすつもりでいたし、たとえ頼まれなくとも、 何かの形で貴方へ恩を返すつもりでいたの。 (73) 2022/08/11(Thu) 0:05:38 |
【人】 ウユニ 数年たっても秘密を守っていたのは そう、最後の線引きのつもりだった。 花咲病のことは、 これだけは、知られてはいけない。 知ってしまえば、病を背負わせること、 私の心に踏み込ませることと同じだと思うから。 彼のためだから、そうやって言い訳して ずっと言わなかった。 (77) 2022/08/11(Thu) 0:10:54 |
【人】 ウユニ*** 私は、弟妹の世話をしていたこともあって 家事は一通り、できるつもり。 掃除は特に、出来るだけ積極的にしていたの。 何故かって? 見たことのない花弁が いつも床に落ちていたら不自然でしょう? だから花咲病の痕跡を残さないように、と 出来る限り、私が使う部屋、 出入りする部屋は綺麗にしていた。 彼が触れて欲しくない物には触れないように 入ってもいい場所、触ってもいいものは 事前に確認していたから。 彼の気を悪くするようなことはしなかった… そのはずだけれど、どうだったのかしらね。 秘密を明かした後も、習慣づいてしまったものを 変えられなかった、というのはまた別の話。 (78) 2022/08/11(Thu) 0:48:45 |
【人】 ウユニ普段はそうやって家事をするだけではなくて。 街に出て、布を買ってきては 服や帽子を作って、 店に持ち込んで買い取ってもらう。 私はそんな風に生活にかかるお金を賄って。 住まわせてもらっている対価のつもりで 貴方へと稼ぎを渡そうとしていたけれど… 受け取ってもらえなかったのなら、 家のどこかに纏めて置いたままにしていたでしょう。 (79) 2022/08/11(Thu) 0:50:28 |
【人】 ウユニ裁縫が得意だとは彼にも伝えていたから。 彼の服のボタンが取れていたり ほつれていたりするのを見つけたときは 「それ、直しますよ? そのままだと着づらいでしょう?」 と言って、服を直そうとしたこともあった。 また、ある日には。 (80) 2022/08/11(Thu) 0:50:58 |
【人】 ウユニ「売り物にするには作りが甘くて。 もしよければ、貴方に貰って欲しいんです。」 と、もっともらしい理由をつけて 貴方にひざ掛けを作って渡そうとしたこともあった。 竜胆の刺繍飾りがついた、 充分売り物になりそうな、ひざ掛け。 (81) 2022/08/11(Thu) 0:51:29 |
【人】 ウユニ住まう場所を提供してくれる彼に 何かを返したい、そんな思いを形にした贈り物。 「使わないのなら、私が使いますし 無理に、とはもちろん言いませんから。」 押し付けるのは本意ではなかったから。 そう付け加えて、差し出したそれは 受け取ってもらえたんだったかしら…?* (82) 2022/08/11(Thu) 0:55:05 |
【人】 サルコシパラまたしばらくすれば 今度はウユニは自ら生計を立てる術を 身に付け、その手腕を発揮する。 裁縫が得意という言葉に嘘偽りなく。 確かにその力は本物だった。 なんと頼もしいことだろう。 そんな感心を抱くサルコシパラには 彼女の稼ぎを貰おうなどという発想などなく。 (85) 2022/08/11(Thu) 8:15:44 |
【人】 サルコシパラウユニがサルコシパラに稼ぎを 渡そうなどという時には仮面越しにも 伝わるほどの拒否感を滲ませて。 「それはあなたのものです。 もし私に渡そうなどというのなら 私は今すぐあなたの為に服を買います。」 なんて言って冗談交じりに 淑女が着るようなドレスのカタログを 見せたりもしたことだろう。 (86) 2022/08/11(Thu) 8:16:23 |
【人】 サルコシパラ幸せな日々というものを サルコシパラは日々感じるようになった。 ウユニの存在はそれだけ大きく。 次第にサルコシパラに強い感情も芽生えて。 それでもこの関係をより深めなかったのは 彼女が病に侵されているという事実が 頭の中にあったからだ。 (89) 2022/08/11(Thu) 8:19:25 |
【人】 サルコシパラウユニから病気のことを告げられた日の夜 サルコシパラは珍しく夜更けになっても 眠りにつかないまま自室にいた。 部屋が複数あるサルコシパラの自宅では リビングの他にサルコシパラの部屋と ウユニの為の部屋、そして空き部屋があり 夜は特段の用事がなければ 互いの部屋に入ることも滅多に無い。 脳裏によぎるのはもちろん ウユニの抱えている病のこと。 彼女の家族でありたいと願う者として 病のことを知るのは責務だと サルコシパラはそう考えていた。 (91) 2022/08/11(Thu) 8:39:15 |
【人】 ウユニ 貴方が私にどんな服を選ぼうとするのか 興味はあったけれど、そんなことを言えば 本当に買いかねない雰囲気すらあったから その想いは心に秘めていたの。 (94) 2022/08/11(Thu) 17:15:08 |
【人】 ウユニ 見ないふりをしていると 本当に鈍感になってしまうものなのかしら。 貴方がもしかしたら遠慮するかもしれない、なんて 不要な気を回して、 受け取ってもらえなくとも構わない、 そんな気持ちでいたのに。 貴方が大切に使う、って受け取ってくれると 心が弾む。あなたが喜んでくれることが たまらなく、嬉しいんだもの。 (96) 2022/08/11(Thu) 17:20:37 |
【人】 ウユニ病のことを打ち明けた日の夜。 私は、少ない自分の荷物の中から 小さな手帳を取り出して、読んでいた。 当てもなくふらふらとしていた頃。 花咲病について調べて、 わかったことをまとめた手帳。 貴方の目には決して触れないように 外出するときには、肌身離さず持って行って 家にいるときは鞄の中へとしまっていた。 (98) 2022/08/11(Thu) 17:49:03 |
【置】 ウユニ・花咲病に罹った者は身体に花が咲く。 ・最後には大きな花弁となり死んでしまう。 ・感情が昂ること、人としての自我が薄くなると 病の進行が早くなってしまう。 ・時間が経つと進行が早くなる。 ・治療法 有効な治療法はない。 花弁を食べると伝染する。 誰かに感染すと…… (L0) 2022/08/11(Thu) 17:52:28 公開: 2022/08/11(Thu) 17:55:00 |
【人】 ウユニ綺麗な字で箇条書きに綴られた項目はそう多くない。 それだけ、わかっていることが少ないという事。 私が知らないこともまだあるかもしれない。 最後の方の文章は一度書いて、その上から 線を引いて消してしまった。 誰かに感染すくらいなら 死のうと思っていたから。 (99) 2022/08/11(Thu) 17:53:14 |
【人】 ウユニ 何度読んでも書いてあることは変わらない。 ふ、とため息をついて、手帳をもとの場所に戻すと 明かりを消して、ベッドに横になった。 (100) 2022/08/11(Thu) 17:53:56 |
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