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【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ同じように入院している誰かさんのように 何を言っているんだ? と首を傾げたり、緩やかに閉まっていく扉に足を挟む、ことはない。 素直に病室内に入り、ベッド際へと近づいていく。 「はは、俺はデートをしていただけだよ」 嘘、とも言えない。 その詳細までは言えないが、確かに彼女とデートをした。 女性を誘うには些か、 いや、かなり色気のない場ではあったが。 そうして、怪我のことを問われれば、 落ち着きを見せた表情からパッと切り替え笑って。 「デートに心が弾み過ぎてね、ついうっかり 階段から足を踏み外してそのまま転がってしまってね……」 いやぁ、君も気を付けた方がいい。 男は笑顔のままそう付け足して、傍にある椅子に腰掛けた。 これは嘘。しかし必要な嘘だった、と考えている。 誰を守るためか、誰を隠すためか。 そんなことは、どうだっていい話だ。 (-339) 2023/09/30(Sat) 19:51:42 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 月桂樹の花 ニコロ「会うのは平気だ、どうせいつになっても変わらん。 ただお前が励ましてやればいいんだよ」 ただ知ってると知らないでは気遣い方は変わるだろう、と。 貴方が貴方らしくいるのが誰かの救いになることは自分が良く知っている。 現にこうして自分達も仲良く話せているのだから。 「……無理やり引っ張ってない、ねえ? 心中までしそうだったやつが言っても説得力はないな。 俺にも警戒心を見せてきてた奴が何を言ってるんだか。 相当な感じだったぞお前らは、今はぼこぼこにされて気が抜けてるのかもしれんが」 今は力が抜けたか? と笑いかけてやって。そのまま外に運び出す。 車に乗せれば病院に行くだけ。あとは自力でやれ俺は帰る、と言いながら。 「そんなの早々いるわけねえだろお。 だからなー、高望みするなってことだ。簡単にできやしない。 それでもいつかそんな日は来るって望むぐらいで丁度いい」 「お前も早くそうなって俺を安心させてくれえ」 (-340) 2023/09/30(Sat) 19:59:27 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-339 「デート、ですか。 まぁ良いですけどね、相手は美人でした?」 あなたが【A.C.A】の人間だったことは聞いている。 それでも男はあなたへの態度を変える気はなく、今もたったひとりの先輩だと思っていた。 そのあなたがデートだと言ってはぐらかすならば、それは詳しく聞かないほうが良いということなんだろう。 それでも怪我の方については、明らかに嘘だとわかってしまった。 そんな、笑顔で心配させまいとする下手くそな嘘だ。 デート相手よりも気になる事だったけれど、そう言われるとやっぱり、あまり追求はできない。 「それはあまりにも不用心が過ぎるでしょう……。 言いたくないってことなら、深く聞かないことにしますけど……もう少し後輩にも心配させてくださいよ」 男は何も知らない。 あなたと同じように、自分が教育係を務めた後輩がその怪我を負わせたこと。 行方不明となって、その捜査も手打ちになってしまっていること。 その他も、全部だ。 (-341) 2023/09/30(Sat) 20:04:04 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[11:00] バンはやがて川沿いの工場街へと至る。観光資源の豊富な島の中でここは比較的静かだ。 防音設備のしっかりと考えられた無機質な建物が並んでいるのは当たり前で、 車の出入りのあることも、なんら不思議を覚えるものでもない。 バンは町工場めいた小さな企業の並ぶ一角へと吸い込まれていく。 そこは男にとっても見覚えのある場所だった。自分が取引の際に使っていた場所だ。 薬で眠らせ、深い夢の中へと送り出した子供たちを引き渡す場所。 ――ここで子供たちは人の形を失くし、島外へと分かたれていく。 腕で押しても上背のある身体はほとんど動かず、何度か蹴り込んでようやく動いた。 車に乗った時に拘束されたそのままの状態で手術台に座らせられ、 まず手始めにと聞かれたのはなんの意味も成さない問いだった。 警察にはどれくらいのことを話した、と。回答は簡易だった。 全て、だ。取引先の場所、運び込まれた先や関わった人間の個人情報。 今手が回っていないのは一人とて逃さず捕まえる策を練っているからだろう。 「今更お前たちが焦りだしたところで何の意味もないだろう」 そう平然と良い連ねた男の腹に靴裏が叩き込まれる。 肺の底を縮められたような悲鳴と共に体をふたつに折り、寝転ぶように横に倒れ込む。 見下せる位置に引きずり降ろされた男の顔に、腹いせの拳が何度も叩き込まれた。 素手が傷つきにくいよう、周りに並べられた工具へと凶器は入れ替わっていく。 目の前の男を痛めつけたところで自分たちの損失は戻ってこない。 それでも、湧き上がった怒りをぶつけずにはいられないのだろう。 #BlackAndWhiteMovie (-342) 2023/09/30(Sat) 20:09:46 |
【鳴】 L’ancora ロメオ>>=8 「いや〜、人間心変わりってするもんだよ。 きっかけさえありゃあ人間なんでもするんだね。 猫用のおやつはあるから分けてやるよ。んじゃな」 ぴ、と電話の切れた音。 さて、とりあえず顔を洗わなければ。 適度に取っ散らかった床も片付けて、それから…… ◇ 「はあい、はいはい、はーい……」 近所のガキみたいだな、なんて思わず笑みが零れる。 早足で玄関まで行けばすぐに扉を開いた。 貴方に会う時はいつも髪を結んでいたけれど今日はそのまま。 勿論眼鏡もかけていなかった。 「入んな〜。飲み物、用意してるから」 扉を開け放ち貴方を家の中へ迎え入れる。 ロメオの家は一階建てのこじんまりとした家で、それほど部屋は多くない。けれど物が少ないから少し広く見えるのだった。ガラスのローテーブルを挟んで一人掛けの白いソファと椅子代わりにもなる大きなクッションが置いてあり、窓際には白猫が丸まって眠っていた。 「近所の店にマリトッツォ売ってたから買ってきたわ。 これ二人で食べよ」 心なしかそわそわと嬉しそうにおやつの用意をしながら、 「好きなとこ座んな」と促した。 (=9) 2023/09/30(Sat) 20:11:42 |
【秘】 Commedia ダヴィード → 法の下に イレネオそれはこの一連の事件から数週間が経ってからのこと。 男はいつもより少し重い昼食が入った紙袋を持って、狭い路地裏を歩いていた。 「買っちゃったなあ〜…… 誰かに会えればいいんだけど」 お気に入りの店が貼り出していた期間限定商品のチラシに、 『本日最終日!!』の文言が上から貼られていたものだから。 さてどこで食べようか、また公園にでも行こうか。 街を歩いている間に知り合いでも見つければ、 押し付けて一緒に食べてもらえばいい。 そんなことを考えながら、近道に入った路地裏でふと地面を見る。 拭われた形跡のある、古い血痕。 注視しても判別が難しいようなそれに何故目が吸い寄せられたのかは分からない。 誰かが喧嘩でもしたか、派手に暴れたか。 はたまた――これ以上は、今考えることではない。 そのあたりで頭を振り、血痕を踏み越えて歩き出した。 足早に路地を抜け、数週間前と同じように公園の外れのベンチを陣取る。 違うのは、今日は一人ということ。 (-343) 2023/09/30(Sat) 20:15:06 |
【秘】 Commedia ダヴィード → 法の下に イレネオ期間限定のチョコバナナとマシュマロのパニーニは表面がごく軽く焼かれていて、齧ると予め火を通されたチョコとバナナが蕩け、表面が炙られているマシュマロがサクサクとアクセントになる。 そんな甘いパニーニを口いっぱいに頬張りながら、今は姿の見えない人のことを思う。 毎日顔を合わせるほどの仲ではなかったけれど、こんなに長い期間会わなかったのははじめてだ。 喋る相手もいないものだから、咀嚼しながら思考は巡る。 イレネオさん、この街から引っ越しでもしたんだろうか。 この街がきな臭くなってしまって、治安も混乱していた。 故に家族に急かされたか、急な転勤を命じられたとか何かで。 お互い連絡先も知らなかったから伝える手段がなかっただけで、きっと別の街で今日も元気にしているはずだ。 貴方はやさしい人だった。 たとえ何処に行っても幸せに、陽の当たる道を真っ当に歩き、今日も大切な人と笑い合っているだろう。 だからきっと、幸せな生を全うして、ああいう人こそが天国に行くだろう。 当然のように、そう思った。 (-344) 2023/09/30(Sat) 20:15:52 |
ダヴィードは、買いすぎた昼食を、一人きりでは食べきれなかった。 (a34) 2023/09/30(Sat) 20:16:09 |
ダヴィードは、『イレネオ・デ・マリア』に、生涯出会うことはなかった。 (a35) 2023/09/30(Sat) 20:16:27 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ「…あぁ、とても美人で俺には勿体ないくらいだった」 本当。それが誰だとは言わないし言えやしない。 でも君はきっと聞かないでいてくれる。 そう信じているから、男は緩やかに微笑んだ。 それで怪我の嘘、その笑顔は "いつも通り"に振舞っていたつもりだが、 君が察してしまうのなら何も言えるはずがない。 だとして、その詳細を明かすことは一生、ないだろう。 聞かれたら答える男ではあっても、 それだけは語ってはならない真実だった。 「はは、これが真実だよ。俺を疑うのかい? こんなにも正直者で無敵の俺だと言うのに」 今まで散々リヴィオ・アリオストに騙されてきたんだ。 君は、何も知ることなく未来を歩いていくべきだ。 例え歪んだ道だとて、その道が途絶えない限り、ずっと。 ただ、出来ることなら本当は、 その歪みがいつか、真っ直ぐになればいいと。 君のことが大切な先輩は未来に期待している。 例えその未来を、この海のような翠に映すことがなくとも。 (-345) 2023/09/30(Sat) 20:34:04 |
【秘】 L’ancora ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「……ズルいでしょ、だって」 「引いて無いよ……オレだって、嬉し、かったし」 いつか貴方に齎した甘言の分が返って来ているような心地。 本当に欲しい言葉を、貴方は全部くれていた。 一歩分の足音に、近付いた距離に、 いつの間にか足元をうろついていた視線を上げる。 その拍子にころりと一滴だけ、涙の粒が零れた。 泣いたのは久しぶりだった。何年泣いていなかったろうか。 涙の出し方を忘れていたようで、たった今思い出したようでもあった。 「……宝なんて」「初めて言われた」 ぱち。また目を閉じる。また零れる。 白い砂に吸い込まれて、涙の粒は消えていく。 「オレにね、そんな事言っちゃダメですよ。 本当にそうなるんだからさ……」 ゆるりと貴方の右手を掴んだ。 両手で手のひらを持って、強く握るでも握手をするでもない。 緩く握って、指の形を確かめて、手の甲を撫でて。 手のひらを揉んで、それから包んだ。 それから恐る恐る貴方の顔を見て。 「あは、」と蕩けるみたいに笑った。 初めてこんな笑い方をした気がした。 #ReFantasma (-346) 2023/09/30(Sat) 20:36:43 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[12:00] 三日月島内でノッテファミリーとの関わりを厭う島外の業者は必然的にが内部への伝手を求めた。 陸路の少ない場所は守られているという、それは閉鎖的であるということであるともいう。 内部で起きていることは他に知られにくいことと同義であるともいう。 インターネットが発達した今でさえ、陸の繋がらない場所のことは真に知ると言えもしない。 故に狙うものは多く、そして狙うならば自らの実入りは多いほうがよく好まれた。 ノッテと手を組もうとする業者が己の安定と安寧を求めたのに対し、 その裏に隠れようとする業者はリスクを掛けてでも金を得ることを選び、 そしてそういう者たちは、ノッテと関わりのない男の手を借りることを選ぶが多かった。 その全てが、たった一人の男の零落と共に引きずり込まれて壊れていくのだ。 一人が舌打ちとともに乱闘めいた光景を止めさせた。 言葉に続いたのは電動ドライバーを持ち上げる、硬質のぶつかる小さな音だった。 過ぎてしまったことを責めることは何の意味も持たない。 だからこれからは自分たちが情報を引き出す番だ。 拘束され、殴打を加えられた男の肩を足で押さえつけて電動ドライバーの先を突きつける。 他に手引している組織や、今まで構築したルート。 自分たちが手にすれば今からでも利益を得ることの出来る隠し事。 そういうものをできるだけ多く吐いたほうが傷は少なくて済む、と問う。 できるだけ、というのは相手が満足するまで、という意味だ。 男はそれに、嘲るような笑いで返す。 水っぽい音が響いた。 #BlackAndWhiteMovie (-347) 2023/09/30(Sat) 20:52:39 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-345 「デートついでに病院まで連れて行ってもらったらいいんですよ、先輩は」 まさか本当にそうなってたとは、流石に思ってないが。 それでも手当をされている様子を見れば、病院に一度は行ったのだろうからとりあえずは及第点だろう。 「そういう事にしておいてあげますよ。 僕の周りは皆すぐ無茶をする人ばかりだ……あ、そういえば先輩、イレネオ知りませんか。 連絡が取れないんですけど……アイツ、釈放ちゃんとされてますか?」 勿論正直に答えなくて良い。 答えるべきではない質問だ。 ただそれでも、それを知らぬ愚かな男は、可愛い後輩を純粋に心配をしていただけ。 「……先輩?」 どこか遠くを見ているようなあなたに気づいて、ベッドに寝かされたまま不思議そうに、その顔を見上げた。 (-348) 2023/09/30(Sat) 20:56:00 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ>>_5 「……」 若干驚いたように体を揺らしたが文句は言わなかった。 遠くから駆けつけようとする看護師に手を振って、 大丈夫だ、と口元に人差し指を当て笑ってみせる。 貴方の背中を撫でつつ、優しく軽く叩けば、 ゆっくりと息を吐くように促していく。 自分たちに向けられていた視線は段々と減っていき、 また此処は二人きりとなった。 「驚くじゃないか、……まあ。俺の用はこれでおりだ。 ……まだ片付けないとならんことがある。」 目を伏せて。開けて。貴方を見つめる。 「お前は立てるか?」 (_6) 2023/09/30(Sat) 21:05:01 |
【魂】 花浅葱 エルヴィーノ>>_6 「むり。……嫌だ。行かないで」 何処にも行けないから、 頼むから、今僕をひとりにしないで。 胸にぎゅっとその眼鏡を抱いて、頭を振った。 すがるように伸ばした左手は、あなたの袖をぎゅっと掴んでいる。 事実、痛み止めが切れた肩が悲鳴を上げるかのように痛んで、顔色も青白く死にそうな顔をしている。 けれど。 「……どうして……」 「イレネオは殺されたの……?」 震える声が、それを問う。 あなたがこれを持ってきた。 それは、マフィアかそれに関係する何かによって彼は殺されたということ。 あなたはその死を見届け、正しく処理をしたということだ。 だったら、その死の原因をあなたは知っているはずで……。 僕は、それを知らなきゃいけないはずで―――― (_7) 2023/09/30(Sat) 21:13:22 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「そういうもんなんだろうな。」 良くも悪くも。 今回にあっては幸いとも言えよう。 「そうだなぁ。 俺の甘さが全部今になってる。 でも、後悔はしてねえよ。」 貴方の言葉に、頷いて笑う。 全くだ。甘く計画性もなく。だからふらつく。 けれど後悔はしていないのだ。 貴方が小突いてくれたから 目が覚めたような気がした。 「お前の手を引っ張らない方が良かったなんて そんなこと絶対言ってやらねえ。 リヴィは、俺にとって必要な、大事な奴だから。」 離さないと誓った。 「だからこれからも、一緒に居ても良いかな。 友達になるのか、俺もまだ良く分かんねえけどさ。」 (-349) 2023/09/30(Sat) 21:19:01 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ「はは、病院デートなんてつまらないだろう? 今度は埋め合わせとしてカフェに行く予定さ」 嘘、本当。ぐるぐると混ぜて、分からないようにする。 それが今までのリヴィオ・アリオストという男で、 無敵という仮面は剥いでしまったとしても リヴィオもまた、都合の悪いことは覆い隠していく。 それが上手く出来るからこそ、 "リヴィオ・アリオスト"は20年近く生きていた訳だ。 「…イレネオ?いや、俺は知らないな。 ばたばたしたまま警察を辞めてしまったからね」 本当。行方すらも知らない、生死だってそうだ。 でもそのひとつを考えない訳ではない。 答えは結局分からないから、箱の中に仕舞われたままだ。 元気だといいねと呑気にも語るのは、願いか、あるいは。 「あぁ、あと君は"僕の周りは"と称するが 今の現状を見ると君が一番無茶をした人間だからね。 それを忘れず、見舞いに来る人の有難みを噛み締めてくれ」 「君がこうなる事で悲しむ人はちゃんと、いるんだからね」 これに懲りたら無理はするな。 今回は仕方がないとはいえ、命がいくつあっても足りない。 不思議そうにこちらを見る視線に笑いかけて、 ゆっくりと、腰掛けた椅子から立ち上がった。 (-350) 2023/09/30(Sat) 21:25:37 |
【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ後悔はしていない。それは男もまた、君と同じ。 そうして甘さも同じだ。 目的は違えど確かに同じ道を歩いていたらしい。 「……はぁ、君ってやつは本当に」 「ひとつだけ、ひとつだけ明確にしておこう。 これは、俺の譲れないものだから」 そう、君が誓おうともこれは男の譲れないもの。 俺を大切にしようと思うのなら、果たせと願うもの。 絶対に、言っておかなければならないことだ。 「……俺は、 次 があれば君を連れて行きはしない。そして、君はそんな俺を追いかけてはならない」 友達になるのか、何になるのかは分からない。 だとして、これは男の提示する一緒にいるための条件だ。 頷かなければ、こちらも君に頷くことはない。 人を掴むなら、君自身が幸せになれ。 それが願いだ、それが望みだ。 俺に"希望"をくれた君に──叶えて欲しいことだ。 「約束、してくれるかな?」 (-351) 2023/09/30(Sat) 21:35:55 |
リヴィオは、本当はとても、狡い男だ。 (a36) 2023/09/30(Sat) 21:36:16 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[13:00] 短い時間の間に、的確な暴力が幾つも男の体へと振り下ろされた。 同じ時間を使って、もっと徹底的に人間の体は破壊できる。 そうしなかったのは、吐けば楽になるという意識を高めるためであり、それ以外ではない。 縋れば光があると思い込むことの出来る細道を提示するのは大事なことだ。 眼球の片方が抉られ、濁った体液がとうとうと面の凹凸を流れる。 言え、と言われたのは三度目だったが、男は饒舌を失ったように一言も話さなかった。 次に、右胸に空いた傷にドライバーの先が充てがわれた。 皮膚を突き破り肺を傷つけた銃弾は貫通せずに体の中に残っている。 片肺が残っているとは言え呼吸には著しい不足があり、普通ならば無事では居られない。 めり込んだ破片と熱と器用に傷を塞いでいる間はかろうじて息をして、 そうでない時には逆流するように苦痛が駆け巡り咳き込んでいる。 その、皮下の脂肪組織と筋肉に出来た傷へとぴったりと押し当てられる。 再びに彼らは問いを投げかけた。 男は脂汗を面に滲ませながらも、息だけで嘲弄を表した。 既に薄灰色の組織が絡んだドライバーが回転する。 ぱっぱっと、風に薔薇の花が吹かれるように血とピンク色の肉片が飛んだ。 男がどれだけ大きな声を上げて叫んでも、誰も表情を歪めなかった。自身を含めて。 そこにあるのはこれまでに築いてきたものとその結果であり、理不尽なことはない。 理解しているからにこそ、尋問は淡々と続いた。 #BlackAndWhiteMovie (-352) 2023/09/30(Sat) 21:48:56 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ耳元で落ちる優し気な声は、昔から聞くそれとずっと変わりない。 この声がずっとあったから彼を手放しても自分を思い出せる今がある。 その名を呼び続けてくれた感謝も込めて、抱きしめる腕の力は強かったのだろう。 同じ気持ちを抱いてくれていたと知れば安堵をしながら、指されたベンチに隣同士に座る。 「…………ううん」 「応援してくれたらさ、すっごくうれしいけれど。 いやだなって怒ってくれてもいいんだよ。 止めるのは難しい、んだけど……」 それでも感情に蓋をしていつか煮凝ってしまうのなら、今自分にぶちまけてくれたっていいとも思う。 自分だって寂しいから、隣に座る貴方の指先を左手で撫ぜた。 「……オレも弟だからって。 ねえさんのすること全部に応援はきっとできないから」 そうしてぬくもりを感じながら開いた唇が伝えるのは。 あの日から貴方に話したかったこと、届けたかったもの。 [1/3] (-353) 2023/09/30(Sat) 21:57:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「ねえ、フィオねえはやっぱりさ……マフィア、なんだよね? にいさんとおんなじ」 「あんまり何してるかって詳しくないけれど……誰かの命を奪うことも、あるんだよな。 そういうのが必要なときがあったりとか。 ……何かあったときに、そういう手段が取りやすかったり、とか」 脳裏に過るのは今でも思い出せる一瞬だ。 あの時酷く痛んだ胸がまだ疼く心地がする。 大事な人が、大事な人を撃ったこともそう。 ……それから、もうひとつも。 「でも、オレはさ。 そういうの、あんまりねえさんにしてほしくないって思う。 人生の中で選択に悩んだときに……それが並ぶようになってほしくない」 「オレは、そう思ってる。 ……ねえさんが大事だから、思ってる」 綺麗ごとだけで生きていけないのは知っている。 憎しみや悲しみが簡単に片の付けられる感情ではないことも。 だからこれは貴方の行為を否定したいがために紡ぐのではない。 誰よりも大切に想う貴方の前だからこそ、これ以上を偽ることなどないように。 「だからねえさんのこと、応援できないこともあるんだ」 「…………でもね」 そうしてその先に、一番に伝えたいことを伝えられるように。 [2/3] (-354) 2023/09/30(Sat) 21:58:15 |
【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ>>-350 「え……本当に連れて行ってもらったんですか」 埋め合わせと言うくらいだから本当にそうだということだ。 冗談のつもりだったのに。 誰だか知らないが、相手の女性に少しだけ同情してしまった。他意はない。 「そうですか……。 携帯にかけてるんですけど、繋がらなくて。 ……まぁ、いいです彼も忙しいんだろうし……って、ええ? 警察やめた? 」どうして、という言葉はあなたの笑顔に封殺されてしまっただろうか。 なんとなくだけど、答えてくれる気がしない。 答えてくれたとしても、それもまた、はぐらかされたような答えに違いない。 「僕のは運が悪かっただけで……。 まぁ、死にかけたのは確かですけど…………」 あなたより傷は少ないけれど、この一つの傷が致命傷になりかけた。 それは本当だ。 けれども、僕は。 僕はあなたの後輩だから。 「でも」 「それブーメランですからね」 僕だって、心配するんですよ。 ねぇ? 先輩。 (-355) 2023/09/30(Sat) 21:59:49 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ「もしねえさんがこれから先、何をしたって。 どんな罪を犯すことがあったって──」 ぎゅう、と。 今このひと時だけは、誰よりも近くに自分がいる。 その証明をするみたいに手を強く握った。 「──オレの "だいすき" は変わらないから」 「辛くて苦しいときは、傍に居たいし。 涙だって拭ってあげたい。 世界で誰よりも、ねえさんの一番の味方で居たい」 今までみたいには簡単に会えなくなる。 涙落ちるときに傍にはいられないかもしれない。 だけどもしまた、貴方の心が暗闇に落ちることがあるとき。 今のこの瞬間が微かでも光を届けられたらいいと、願って。 「そう思っている弟がいるってこと。 離れてもずっと……忘れないでいてねって」 「伝えたかったんだ、今日」 そうして笑みを浮かべて、その顔を覗き込んだことだろうか。 受け取ってもらえるかなあ、そんな期待を込めた瞳を細めて。 [3/3] (-356) 2023/09/30(Sat) 22:01:20 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「あはは。 尊敬とか感謝は、勝手に手渡されちゃうんだよ。 貰うべきじゃないって思っても……貰って? だってせんぱいがしてきたことの結果なんだ」 例えそれが貴方が本当に見せたい姿じゃなかったとして。 その中で救われた人間がいたことをどうか覚えていてほしかった。 肩に触れられるのを拒んだりしない、あの夜と同じ。 誰かに触れられるのはずっと怖かったけれど、今は目を瞑ることも震えることもない。 時計の針がようやく動いた気がした、だからこちらからも体重を少し返す。 「……うん、ありがとう。 せんぱいの大丈夫のおまじないは、効くからなあ」 「でも大丈夫じゃなくなっても、すぐには来れないかも。 オレ、この街を出ようと思っててさ。 事情は〜……ややこしいんだけど、居ない方がよくって。 顔を知ってる人に色々見られるのが困るっていうか……」 見回りだけは元気に行っていたものだから、警官としてのニーノを知る住人は多い。顔見知りも。 彼等にはニーノは死んだことにしないといけない、提出された死亡診断書が真実となるように。 だから。 「……だからね。 今までみたいに毎日って会えなくても。 忘れないでいてほしいし、……見守ってくれてたら嬉しいって、なんというか」 「こ、心で……?」 言葉通りの見守りというよりかは、心持ちというか、こう……言葉が少しふんわりした。 (-357) 2023/09/30(Sat) 22:20:19 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 口に金貨を ルチアーノ「 お前がマフィアだってこの間まで知らなかったんだぞ。 警戒もするだろそりゃ。法律が施行されてる只中だったしさ。」 マフィアというものを身に染みて知っているから 例え友人だろうと警戒したのは許されたい。 それをリークしたのは彼のアリソン女史なのだが。 「心中って、そんなにか…? 今は、まあ、そうだな。 そこまで思い詰めたりはしてねえけど。 いってえ。ちょ、ヤバイ、いてぇ…!」 あちこち骨折しているせいで ぎゃあぎゃあ喚きながらも車に押し込まれた。 全治するにはかなりの時間を要しそうだ。 「…頑張って探してみるさ。 アイツの手を引っ張ったんだからな。 そのくらいは、やらねえと。」 男としてダサいだろう、と思うし 引っ張った責任もある。 貴方の言葉に頷いて、最後に。 「今度カンターミネ…いや、先生と飯行くんだけどさ。 お前も来いよな。」 何処かの先生が巻き込んだお食事会。 貴方も来るだろう?と笑う。未来の約束だ。 (-358) 2023/09/30(Sat) 22:24:32 |
【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ連れて行ってもらったのか。 さて、笑顔に隠されたものはどちらだろう。 混ぜて隠して、本当の答えは箱の中。 椅子から立ち上がった後、ぐっと背を伸ばす。 傷んだ骨に若干響いたが、これくらいじゃ笑顔は崩れない。 辞めた理由を問われれば「A.C.Aだったから」の一言。 他の理由はもしかすると、まだ、あるのかもしれないが、 複数回答を求められた訳じゃあないから、内緒のままだ。 「おや、君は一体いつから先輩に言い返すようになったのかな。 俺は無茶ではなくてデートの結果さ、同じじゃない」 「棚上げは良くないよ、エルヴィーノ」 包帯の巻かれた右手を伸ばす。 その手は、君の背……ではなく、軽く肩を叩いて、 それから身を反転。都合の悪いことは知らないフリ。 「君とも今度、約束の埋め合わせをしよう」 君の心配を背に受けながら ひらひらと手を振り、緩慢な足取りで扉の前に。 「あ、しまった」などと呟いているのは、多分気の所為。 両手が不自由ってのは本当に──不便なことだ。 (-359) 2023/09/30(Sat) 22:24:46 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → リヴィオ「……。分かった。 約束するよ。次があったら、お前の言葉に従う。」 言葉を飲み込んで、少しの間があって。 男はこくり、と頷いた。 貴方が譲れない事ならば、それは受け入れねばなるまい。 「ちゃんと、俺自身のことも考える。 アリーチェたちの事も、勿論。」 「でも、行く時は言ってくれよな。 じゃないと、多分、追いかけちまうから。」 急に居なくなられたらきっと。 主に置いて行かれた犬のように、探してしまいそうだから。 もしもそうなったら、と言うだろう。 尤も。 次なんて、来させないつもりで居るのだけれど。 (-361) 2023/09/30(Sat) 22:31:09 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[14:00] 街は賑わいの波も高く、パレードはメインイベントに入ったらしい。 そうした市街の様子はこんなところまでは届かない。逆も同じくだろう。 質問への回答を拒否している間に、貫通痕はあちこちと増えた。 関節部をやれば幾らも動きを封じることは出来るだろうがそうしないのは、 聞き出した話の内容によっては殺す前に実情を確かめる必要があるかもしれないからだ。 それでも、沈黙が続けば業を煮やす。傷は段々と粗雑な出来になってきた。 脇腹や腿を削り取り、筋肉を破らないようにしても出血はひどくなる。 自分たちが逃げ出すことの出来る時間をどれだけ確保できるか。 焦りは、彼らの注意を鈍らせ眼の前に集中させ始めていた。 外を走る車の走行音と、傍に着ける車の音の違いもわからないほどには。 表扉がドアノブを破壊するようにして開かれる。 注意を向けるのと銃を手に持つのとを同時に行うには警戒が足りていなかった。 犯罪グループの男たちが応戦の姿勢を整える前に乗り込んできたのは、 毛嫌いするようにその影を遠巻きにしてきたノッテの構成員達だ。 今頃はアジトが散々な混乱の内にあるかも知れないが、 それを知らないのか、だからこそ明確に目先に見える手柄に手をつけたのかはわからない。 彼らは品行方正な警察ではない。動くな、と銃を突きつけるようなことはしない。 構成員たちはまず下っ端と見られる手前の見張りの頭を吹き飛ばした。 工場内の機材を散弾銃が轢き潰し、天井の明かりを使い物にならなくした。 それだけやってもいいと踏んだのは、この建物ごと消却するつもりだからなのだろう。 混乱が場を締めている間に全てを掃討しようとするように、 彼らのよくよく磨かれた革靴が一気に建物内へと踏み込んだ。 #BlackAndWhiteMovie (-360) 2023/09/30(Sat) 22:31:14 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノそわりとこちらも扉が開くまでを待っていたところ、貴方の姿見えたのならわかりやすく瞳が輝いた。 「かっこいいろーにいだ〜」 眼鏡しててもかっこいいけれどね。 謎に付け足しながらありがとうとお邪魔しますを続けて口にし、中へと入っていく。 ちなみに子猫は腕の中ですやすやお昼寝中だった。 「え、今買って来てくれたの?」 気にしなくても良かったのに、を続けようとしたが。 何やらそわそわと貴方が嬉しそうなのが見えて……ああ、と納得する。 喜んでくれているんだなって気が付かないわけがない、だから言わなかった。 「……へへ、ありがと、うれしい。 お腹減ってたんだ、そういえば全然何も食べてなかった」 言葉は感謝へと形を変えて、抱くのはいとおしいなという感情。 ちょうどおんなじ色の……なんなら子猫をおっきくしたかのような白猫が窓際に居たので、そっと並べて隣で寝かせてみる。よし。 好きなところの指定には「どこだったらろーにいの隣に座れる〜?」と尋ねたりして、貴方が嫌がらないのならそれを叶えられるようにしながら。 「にしてもさ、ほんとに戸籍どうにかできちゃうんだね」 などと口にする言外で求めているのは、貴方の口から語ってもらえる本当のことだ。ちら、と顔を見上げた。 (=10) 2023/09/30(Sat) 22:45:00 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ[15:00] 手術台そのものに拘束されていないのは男にとって幸いだった。 周囲の注意が逸れたのをいいことに寝台の上から床へ転がると、 射線から逃れるように機材置きの後ろへと潜んだ。その際に肘を捻ったが、その程度だった。 撃ち合いに巻き込まれるのは御免だという意識くらいは持ち合わせていたらしい。 されど生きたいから、ではない。何も知らない内に死ぬのでは望みに足らないからだ。 撃ち合いは暫く続いたものの、勝敗は明らかだった。 奇襲に成功し予期した武装を手にしているノッテの構成員と、 街の賑わいから逃げおおせたつもりでいて危機の迫るのをずっと先だと思っていた、 犯罪グループの人間とでは準備の段階で差が出ていた。 尤もこんなところまで出向している人間でなく、彼らの母体なら結果は違っただろうが。 構成員達は床に転げたヴィンセンツィオの肩口を掴むと、壁の薬品庫へと寄りかからせた。 既に打撲で腫れ上がっていた肩に銃口が向けられる。質問の内容が少しだけ変わる。 尋問をする人間が、代わる代わるに入れ替わっただけに過ぎない。 今までこの島に手を出そうとした人間たちの居所、そういった情報を彼らは欲しがった。 それでもやはり、男は口を割ろうとはせずに笑うだけだった。 相手が"犯罪者"である限り、男は必要なことを喋ろうとはしなかった。 #BlackAndWhiteMovie (-362) 2023/09/30(Sat) 22:51:44 |
【独】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ (-363) 2023/09/30(Sat) 22:52:38 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>-363 ぐおおおん、と。 尋問と拷問に意識の向いていた構成員たちのなかで、 壁越しに遠く響いていたエンジン音が、ぐんぐんと近づいてきたことに気が付いたものはいただろうか。 ──ば がぁん。 甲高く硬質な音が、建物の中に響く。 差し込んでいた日の光が、眩く溢れ出すように強さを増した。 建材がへこみ弾ける音とともに、真っ赤な車が突っ込んできたのだ。 もうもうと車から吹きだした白煙に、ノッテの構成員たちががなり、銃を向け、あるいは混乱しヴィンセンツィオを引き倒そうとする。 めいめいに好き勝手な反応を見せるものたちは確かに、元から乏しかった統率を欠いており。 ばがん。 ──扉の隙間から滑り込んできた男が、両手に構えた拳銃と短機関銃をまき散らす間隙を与えることになる。 #BlackAndWhiteMovie (1/2) (96) 2023/09/30(Sat) 23:03:24 |