【魂】 あなた達の写真家 卯波「もう少し、 カッコつけて言えばいいのに」 いざ、境内に踏み入ってくるならば、 神社の枠の中にそれらを囲うならば、 卯波は、しっかりとその声に応える。 「俺……場違いだと思うんだけどなあ。 いつも遅れて後ろをついていったり、 急に先走ってどっかいっちゃったり。 四人組って枠組みに相応しくないよ。 それでも、俺の名前も呼ぶなんてさ。 情けのつもりなのかは知らないけど」 そうして踏み出し、わずかに微笑んで。 意味がない写真をバラバラに引き裂き、 わーっと、 風に乗せて 遠くに散らした。 (_1) 2021/08/17(Tue) 22:06:11 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波そう。全部意味のないものだ。 それでも撮ってしまったものだから、 こうして、解き放ってあげる。 もう一度、皆を写真に収める日のために、 今、やっと、夢から決別する。 いくつもの写真は、 季節外れの白いカケラに成り果てて。 「でも。やっと気づいてくれたんだ」 そっと、手を差し伸べる。 届く距離にはいないし、ただのポーズだけど。 何度も示してきたから、もう一度。 「手を貸してあげる。 俺だって、あちこち駆け回って、 みんなを探しにいくんだもの。 でも、これは競争ですよ。 俺は、晶兄より先に見つけて見せる」 (_2) 2021/08/17(Tue) 22:11:49 |
【魂】 あなた達の写真家 卯波「会いにいってあげて。 ここでも。ここから帰っても。 どんなに時間をかけても、絶対」 「その行く末を撮るのは俺なんだから。 絶対、悲しい写真にはしないでください」 手を戻し、背中を向けて。 顔だけ振り向けば、何がおかしいのか、 にやにやとした笑顔を見せて、 「遅いよ、バカ」 と言い残し、走り去っていった。 (_3) 2021/08/17(Tue) 22:18:13 |