人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:

全て表示


【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



心配されるような人間ではないと、
喉まで出かかってしまうのは変えられない性分で。
僅かに口ごもって、また、ため息ひとつ吐き出した。

「……こうして生きている、それが答えだよ。
 でもね、ニコ。君は俺よりもまず、彼らを心配するべきだ。
 それに君が色々と話をするのは大事だと思うんだが」

話したかい?話せたかい?
これからのこと、今回のこと。どうするのかって話。
俺に問うよりもと思うのは少しのお節介。

だから、これから先を当たり前に語る君にもう一度、
深めのため息を敢えて零すのは、仕方のないこと。

「…さぁ、特に何も考えていないよ。
 適当にもう暫く──…生きてみる、だけだ」

それが長く保てるかと言えば、分からない。
だけど出来れば、
その時は誰も彼もが手を離して欲しいと思う。
首にかかった縄はいつだって、ここにあるままだ。

誰かとともに落ちるのはきっと、耐えられないから。
(-254) 2023/09/30(Sat) 1:52:03

【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



かっこいいと返されて僅かに言葉に詰まったのは確か。
それが照れなのか、動揺なのかは不明だが、ともかく。
確かに男は君にそんな様子を見せて、
手が自由であれば頬でもかいているんではないか?
と思えるような形で少しそわそわと体を揺らす。

咳払いという誤魔化しをひとつ。
格好悪いなとは思うのだが、これが俺だった。
自分が言う分には何ら、そんな感情を抱くことがないのに。

「…あぁ、俺も。君の時間をもう少し欲しいと考えていた」

行こうかと、緩やかな足取りで君を追いかける。
追いかける、とは言ってもだ。きっと君は隣を歩く。
同じ速度で、人の少ない夜道を歩いていくのだ。
辿り着けば促されるままに先に座って、
次に君が座るのを見届けてから口を開いた。

「…この怪我が治った後、復帰したいかどうかを考えた。
 だけど、どうしてもその気持ちは湧いてこなくてね」

「…警察だとか、マフィアだとか。隔たりにも疲れた。
 あとはそうだね、……少し、自分の道を歩こうと思って。
 何がしたいとか、何をしていきたいとか、
 そういうものがあってのことじゃあないんだが」

もう少し生きようと思えるうちは、
レールを外れて歩くのも悪くはないかなって考えたんだ。
(-256) 2023/09/30(Sat) 2:18:28

【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ



保っていただけだ、不完全な仮面を被り直して。
保とうとしていただけだ、そうでなければ自らを守れない。

がくりと折った膝と曲げた体が掴む腕を離さない君と
反発し、折れた腕に相当な負担をかけていく。
離してくれた方がまだ、マシだった。

「ッ……なんだ、…そんなに、俺の、顔が……見たいかい」

照れてしまうなぁ、そんな軽口を返すものの。
あからさまに苦痛の声が混じっているのは確かだった。
動く右手で君の行いを止めようとする。
弱さを見せるのは苦手だ、笑顔で隠すのは得意だ。
だけど。
守るべき
がない分、体調が崩れている分、
守るべきものがある彼女より
脆さは出てしまう。

「う、ぁッ……は、………そう、か」

ドッ
と音を立てて背が床に付けられる。
背けた顔は、抵抗する右手は君の力に敵いそうにもない。

「……いや、何…っ、流石にそれは、許せなくてね……ッ」

なんせこちらは病人だ。ここまで保っているのが異常で。
人の内を覗こうとするなんて無遠慮だなと笑いが込み上げた。
しかしその抵抗も長くは続かない。
君に見えるのは余裕もなく、苦しげに顔を歪め、
それでも笑っていようとする弱い男ひとりの人間の姿だっただろう。
(-262) 2023/09/30(Sat) 2:56:31

【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ



折れて動かない左も、力比べによる消耗で落ちた右も。
まるで壊れた人形のようだと思考出来るだけまだマシだ。
そうして君
顔を
見せない
よう背け続けるが、
顎に伸ばされ無理やりに向かされるようであれば、
それも結局、見え透いた結果しか齎さない。

「…………は、」

愉快そうな君に、精一杯の笑顔を返す。
それでも苦痛に歪む顔も余裕のなさも隠しきれはしない。
無駄な抵抗と言われればそれまでだが、
笑顔それは己の心を守るための砦だからこそ崩せない。

せめてと、視線だけでもと逸らすことを試みるが
それもまた、結局は無駄な抵抗となってしまう。

揺れる海が君の月に映し出される。
隠しきれない弱さが、間近で、
自らにも見える形で映されている。

男の部屋にある鏡は洗面台に取り付けられたものだけ。
本当はずっと、弱さ虚像を映すその存在がとても、苦手だった。


(-276) 2023/09/30(Sat) 5:22:38

【秘】 リヴィオ → 幕の中で イレネオ



触れ合う額はきっと君に、男の異様な熱を伝えてしまう。
滲む汗だって触れ合うことになるだろう。
男にとってそれもまた、顔を歪めるひとつの要因。

気丈に振舞っていたのだと知られてしまうことが嫌だ。
己の弱さを暴かれていくことから、逃げ出したかった。


話し方を忘れてしまったかのように一度言葉を詰まらせ、
代わりに吐き出すのは熱い吐息だ。
それでも、急かす君に伝えなければならないのは、

「……ち、がう。許せない、のは……俺自身、だよ……っ」

それ以上に話すことはない。言っても分かるはずがない。
問われれば答える男ではあったが、
今この時だけは、その全てを晒け出すことはなかった。

男は、察しが悪い訳ではない。
だから、もしかするともう既に……と。
そう考えてしまう頭を、止めることが出来なかった。

それがより一層仮面を保つに障害となると知りながら、
どうしたって、自分よりも彼女を考えてしまうのだ。


笑顔がふ、と──ほんの一瞬、掻き消えた。
(-277) 2023/09/30(Sat) 5:23:41

【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ



ヒュッと、自分の喉から聞いたことのない音が出た。
翠眼は緩やかにさまよって、そうしてもう一度、君を見る。

「……止めても、無駄なんだろうね」

出来れば、知りたくない。そして、知られたくもない。
聞かれれば答える男ではあったが、
知らない答えまでは君に渡せないからこそ
そうするしかないのだと、理解はしているが。

声をかける日なんて、あるのだろうか。
知りたいと思える日なんて、来るのだろうか。

お互いにその領域を侵さなければ、まだ。
何も変わらず、今と同じ"平和"で居られるはずだって。
悪夢を見ることの何が平和か。
そうでないことくらい、もうとっくに知っている。

それでも別に、恨んでいる訳じゃない。
だって顔は知らない、声だけの存在だ。
亡霊を恨んだって何も変わることなんてない。

…だからこそ、


この苦しみを向ける場所はどこにもなかった。


(-278) 2023/09/30(Sat) 5:52:44

【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ



望まれて生まれたかった。
愛されて生まれたかった。
必要とされて生まれたかった。

ずっと、ずっと──生きていくのが、苦しかった。

涙は出ない。泣き方の辞書なんてとっくの昔に置いてきた。
代わりに浮かぶのは、泣きそうなほど顔を歪めた笑顔だ。

俺は要らないものだった。もうずっと、昔から。
ようやく手に入れた居場所でも結局また、
必要とされない、価値のない存在だった。
それでも生きてきたのはきっと、
本当は誰かに、その言葉を否定して欲しかったのだろう。

夢は終わらない。
これからもまだ、変わらない時間が続いていく。
それでももう少し、生きようと思えたのは───。


「……本当に君は、俺のことが……好き、だね」

破滅この願望はきっと消えない。
いつかにきっとまた、終わりを求めてしまうのだろう。
それを否定されることは望めないし、変えられない。
それでもまだ少し、あと少しこれから先の未来を、
友人と、君達と、緩やかに、平和に過ごすとしようか。

「……ここを出たら、酒が飲みたい気分だ」
(-279) 2023/09/30(Sat) 5:55:54
リヴィオは、君と友人であるリヴィオは、柔く微笑み君との未来を思い描いた。
(a27) 2023/09/30(Sat) 5:58:09

【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



「……いいことを教えてあげよう、ニコ。
 大丈夫だと、そう決めるのは君じゃない」

何を思うであれ、アリーチェの姿を見ていた男は、
あれを大丈夫などと口にしたくなかった。
だから話せ、そう言っている。言わなければならない。

「上手くやれるから話さなくていい、それは違う。
 だからこそ、話をしておくべきだって言ってるんだよ」

と、そこまで言って男は右手をぶん!と横に振る。
避けなければ君の頭にヒットする予定だ。
ついでに言うと痛み分け、男も自らの傷で顔を顰める。
その場合はかなりの間を置くのだが。

「………あぁ、そうか。それなら俺が彼らに話しかけるか。
 今の俺は本当に無敵だよ、何せ肯定されまくってるからね。
 A.C.Aだった俺を肯定する甘い人間が多いんだ」

困ったものだね。そう口にする男の口調は柔らかいものだ。
上手くいかないなと何度思ったことか。

「で、警察を辞めるかどうかだったか。
 …もうとっくに辞めてるよ、有給届と叩き付けてきた」

真っ当に警察をやってきた男は、
去り際に真っ当ではない辞め方をしてきたらしい。
当然色々とあったがどうせ、この腕では暫く働けそうにもないのだ。
(-298) 2023/09/30(Sat) 10:32:51

【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



どういうも何も詳しい話はしてやらない。
何も出来なかったことを悔いる気持ちは知っているが、
その奥底、確かな思いまでは分かってやれない。
だけどそれは、そう思うのは君だけじゃないってこと。

最後に見た姿が確かさなのか。
それを言うなら、俺がA.C.Aでなければ君は
"いつも通り"の俺に大丈夫だと言うんだろうな。

まぁこれは、持たざる者としての妬みだろう、きっと。
痛みに顔を顰める間、そんなことを考えていた。

「……人間っていうのは案外、そういうものなんだろう」

ふと、彼女と語った出来すぎた未来を思い出す。
形は違えど、これもまたその未来なんだろうな。

「それに、それなら俺に道を作らない手を伸ばさない方が良かったな。
 そういう甘さが、未来に繋がっているんだよ。ニコ」

『兄』として、『巡査部長』として、
『いいおまわりさん』として、
そのどれかでいろと頼んだ覚えは一度だってないんだ。
後悔したくないのなら迷わずそれを選べ。
選ぶのは"君"で、"君"がどう在りたいかが答えだった。

…あぁ、勿論。"全部受け入れる"とは言わないけどね。
(-306) 2023/09/30(Sat) 13:40:20

【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



お揃い、果たして喜んでいいものか。
男は薄く微笑んだまま、君の話を聞き、頷いている。
やがて、緩慢に口を開いて。

「…君が、そうして笑って道を考えられるようになって
 多分俺は、凄く嬉しいんだと思う」

あの日もここで語り合いはしたけど、
あの日の君は迷路の中で、とても苦しそうで。
まるで、自分を見ているようだと思った。

「君なら大丈夫、そう思ったことも嘘じゃない」

「………本当に、俺達は似ているのかもしれないね。
 俺は尊敬や感謝を貰うような人間じゃない、けど。
 あの日の君の"希望"になっていたのなら、良かった」

振り回されたとは言わないし、あの日のように、
君の頭を撫でる手はない。代わりに少しだけ身を寄せて、
君の肩にトンッと少し触れようとする。

「きっと君はこれから大変だろうし、
 自分の道で歩む分、色々と考えることも増えるだろう。
 だから、大丈夫じゃないって少しでも心が揺れたら、
 いつでも──俺に甘えておいで」

どこまで頑張れるかは分からない。
だけどもう少し、頑張れる間は君を見守っているつもりだ。
(-329) 2023/09/30(Sat) 19:01:24

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



署に出向く機会も、友人に聞く機会もあっただろう。
そのどちらかは明かすことはないが、
ともかく、君の病室に出向くのは確かで。
それはきっと一週間以内のこと。

ガガッ。…ガッ、………ガラガラ。


扉を開ける音が外から響く。
何やら、少し手こずっているような様子だが。
暫くすればドアは開いて、君の知る男の姿がそこにある。

とは言っても無事とは言えず、左手は三角巾で吊り、
右手は包帯で巻いて、左耳にはガーゼが貼ってある。
しかしそれを感じさせることもなく、

「やぁ、エル。…随分と、無茶をしたようだね?」

何となくいつも通り、
しかし少し異なった印象を覚えるような冷静さで問う。

「……約束、守れなくてすまなかったね」

そうして、二言目は謝罪だ。
もしもあの日君の約束を果たせていれば
君は、そんな怪我を負うことなどなかったのかもしれない。

考えたところで、仕方のないことだけど。
(-331) 2023/09/30(Sat) 19:20:00

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



同じように入院している誰かさんのように
何を言っているんだ?
と首を傾げたり、
緩やかに閉まっていく扉に足を挟む、ことはない。
素直に病室内に入り、ベッド際へと近づいていく。

「はは、俺はデートをしていただけだよ」

嘘、とも言えない。
その詳細までは言えないが、確かに彼女とデートをした。
女性を誘うには些か、
いや、かなり色気のない場ではあったが。

そうして、怪我のことを問われれば、
落ち着きを見せた表情からパッと切り替え笑って。

「デートに心が弾み過ぎてね、ついうっかり
 階段から足を踏み外してそのまま転がってしまってね……」

いやぁ、君も気を付けた方がいい。
男は笑顔のままそう付け足して、傍にある椅子に腰掛けた。

これは嘘。しかし必要な嘘だった、と考えている。
誰を守るためか、誰を隠すためか。
そんなことは、どうだっていい話だ。
(-339) 2023/09/30(Sat) 19:51:42

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「…あぁ、とても美人で俺には勿体ないくらいだった」

本当。それが誰だとは言わないし言えやしない。
でも君はきっと聞かないでいてくれる。
そう信じているから、男は緩やかに微笑んだ。

それで怪我の嘘、その笑顔は
"いつも通り"に振舞っていたつもりだが、
君が察してしまうのなら何も言えるはずがない。
だとして、その詳細を明かすことは一生、ないだろう。
聞かれたら答える男ではあっても、
それだけは語ってはならない真実ものだった。

「はは、これが真実だよ。俺を疑うのかい?
 こんなにも正直者で無敵の俺だと言うのに」

今まで散々リヴィオ・アリオストに騙されてきたんだ。
君は、何も知ることなく未来を歩いていくべきだ。
例え歪んだ道だとて、その道が途絶えない限り、ずっと。

ただ、出来ることなら本当は、
その歪みがいつか、真っ直ぐになればいいと。
君のことが大切な先輩は未来に期待している。

例えその未来を、この海のような翠に映すことがなくとも。
(-345) 2023/09/30(Sat) 20:34:04

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「はは、病院デートなんてつまらないだろう?
 今度は埋め合わせとしてカフェに行く予定さ」

嘘、本当。ぐるぐると混ぜて、分からないようにする。
それが今までのリヴィオ・アリオストという男で、
無敵という仮面は剥いでしまったとしても
リヴィオもまた、都合の悪いことは覆い隠していく。
それが上手く出来るからこそ、
"リヴィオ・アリオスト"は20年近く生きていた訳だ。

「…イレネオ?いや、俺は知らないな。
 ばたばたしたまま警察を辞めてしまったからね」

本当。行方すらも知らない、生死だってそうだ。
でもそのひとつを考えない訳ではない。
答えは結局分からないから、箱の中に仕舞われたままだ。

元気だといいねと呑気にも語るのは、願いか、あるいは。

「あぁ、あと君は"僕の周りは"と称するが
 今の現状を見ると君が一番無茶をした人間だからね。
 それを忘れず、見舞いに来る人の有難みを噛み締めてくれ」

「君がこうなる事で悲しむ人はちゃんと、いるんだからね」

これに懲りたら無理はするな。
今回は仕方がないとはいえ、命がいくつあっても足りない。
不思議そうにこちらを見る視線に笑いかけて、
ゆっくりと、腰掛けた椅子から立ち上がった。
(-350) 2023/09/30(Sat) 21:25:37

【秘】 リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



後悔はしていない。それは男もまた、君と同じ。
そうして甘さも同じだ。
目的は違えど確かに同じ道を歩いていたらしい。

「……はぁ、君ってやつは本当に」

「ひとつだけ、ひとつだけ明確にしておこう。
 これは、俺の譲れないものだから」

そう、君が誓おうともこれは男の譲れないもの。
俺を大切にしようと思うのなら、果たせと願うもの。
絶対に、言っておかなければならないことだ。

「……俺は、
があれば君を連れて行きはしない。
 そして、君はそんな俺を追いかけてはならない」

友達になるのか、何になるのかは分からない。
だとして、これは男の提示する一緒にいるための条件だ。
頷かなければ、こちらも君に頷くことはない。

人を掴むなら、君自身が幸せになれ。
それが願いだ、それが望みだ。
俺に"希望"をくれた君に──叶えて欲しいことだ。

「約束、してくれるかな?」
(-351) 2023/09/30(Sat) 21:35:55
リヴィオは、本当はとても、狡い男だ。
(a36) 2023/09/30(Sat) 21:36:16

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



連れて行ってもらったのか。
さて、笑顔に隠されたものはどちらだろう。
混ぜて隠して、本当の答えは箱の中。

椅子から立ち上がった後、ぐっと背を伸ばす。
傷んだ骨に若干響いたが、これくらいじゃ笑顔は崩れない。

辞めた理由を問われれば「A.C.Aだったから」の一言。
他の理由はもしかすると、まだ、あるのかもしれないが、
複数回答を求められた訳じゃあないから、内緒のままだ。

「おや、君は一体いつから先輩に言い返すようになったのかな。
 俺は無茶ではなくてデートの結果さ、同じじゃない」

「棚上げは良くないよ、エルヴィーノ後輩君

包帯の巻かれた右手を伸ばす。
その手は、君の背……ではなく、軽く肩を叩いて、
それから身を反転。都合の悪いことブーメランは知らないフリ。

「君とも今度、約束の埋め合わせをしよう」

君の心配を背に受けながら
ひらひらと手を振り、緩慢な足取りで扉の前に。
「あ、しまった」などと呟いているのは、多分気の所為。

両手が不自由ってのは本当に──不便なことだ。
(-359) 2023/09/30(Sat) 22:24:46

【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



勝手に手渡されるものを突き返すのは難しい。
結局、こういうところが"悪役"になれないひとつなんだろう。
でもそれに後悔はない。後悔は、しない。

だから、君からの言葉贈り物。ちゃんと受け取るよ。

触れる肩。拒まれなかったことに安堵の息を吐き
海の色は視線だけが空に向いて、
少し、何かを考えるようにその双眸を閉じた。

「俺も、」

「………俺も、この街を出ようと考えているんだ。
 友人に頼めば、いい物件を探してくれそうなんでね」

A.C.Aに所属していた、それだけが理由じゃあない。
今の家は与えられたもの決められた場所で、職も与えられたもの決められた道で。
名前も、何もかもが"リヴィオ・アリオスト"のためのもので。

それは、愛されていたからじゃない。
引き取った以上、そうするしかなかったのだろう。
だから俺が俺として、彼らが彼らとして生きていくために、
今このタイミングで選ぶことが必要だった。

「………まぁ、だから」
「忘れることはないし、見守っている……が、」

(-370) 2023/10/01(Sun) 0:37:59

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



瞳を開き、深く、息を吸ってから。
吐いて、少し躊躇って、………それでも。

「──
暫く
、俺と一緒に暮らすかい?」

声にする。言葉にする。

自分を受け止めて受け入れてくれた人達のためにも。
抱いた本音や想いを語って、生きていこうと考えている。

これは、その一歩──のうちのひとつ。

「勿論、既に決まっているなら断ってくれて構わない。
 行き場がまだないならって話でね」

「……どうやら俺は、君のことが心配みたいだからさ」

ひとりで歩くのって、きっと大変だから。
その一時の支えを担い見届けて、満足に死ねたらいいなと。
狡い考えを笑顔に隠し、君の隣を
少しの間
歩こうとする。

「情けない俺も見せてしまうだろうけど、
 それは、……出来れば、許してくれると嬉しいな」
(-371) 2023/10/01(Sun) 0:39:15
リヴィオは、君と同じものを見ている。
(a37) 2023/10/01(Sun) 0:40:35

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



「あぁ、…約束、してくれ」

君には、ちゃんと"幸せになって欲しい"。
そしてこれは、身勝手な願いなんだろうと思う。
しかし、だとして。願わずにはいられない。
これは、仕方のないことだった。

だから、それでいい、そういうように頷いて。

「……君、言っても言わなくても同じじゃないか?
 約束してくれと言ったところだろう?」

「精々その時の俺に祈っててくれ。
 その約束はあまり、したくない」

君と俺は"対等"で、主と犬じゃあない。
気まぐれに消えた友人か知人か。
それを想って探すなど、やめておいた方がいい。

一方的に、身勝手に。
狡い言葉を並べ続けて、君を縛り付けるやつなんだ。
だけどそれが俺で、この約束を後悔することは一生、ない。

それでもきっとその時、俺は君のことを
考えずにはいられないのだろうなと──そう思うのだ。


「………さて、そろそろ俺は行くよ。
 伝えたいことは伝えられた」
(-373) 2023/10/01(Sun) 4:12:10

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 月桂樹の花 ニコロ



"同じじゃない"。
男はそう口にする君の顔を見て、翠を瞬かせる。

「……そうか、違うのか」

腕が自由なら、その手は口元を覆い
考えるような仕草をとっていたはずだ。

「………あまり、期待はしないで欲しい、が。
 ……メール一通くらいは送る、かもしれない」

約束は出来ない。約束にはしたくない。
その日がいつ来るかなんて、男にも分からないから。
くるりと身を反転させ、君に背を向ける。
そのまま扉まで歩いて、
来た時とは違い器用に扉を開いてから。

「………代わりに、その約束は叶えてもいい。
 そのために精々ルチアーノ友人を口説いてみてくれ」

「それじゃあ、ニコ──
また
ね」

ひらひらと、君に向け振る手はない。
それでも確かに未来の約束を結んで、君にまたを告げよう。

好きも嫌いも、愛も恋も分からない。
だけど君の気持ちは嬉しいと感じられたから、暫くは君と、
その関係を楽しんでいくのも悪くはないだろう。
(-387) 2023/10/01(Sun) 12:33:54

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



見開かれた双眸から落ちていく一粒を、
空に浮かぶ星々よりも綺麗だと感じたのは
君が君だからこそなんだろう。

「…あぁ──…一緒に居よう」

そうっと、大事な宝物に手を伸ばすみたいに
右手を伸ばして、君を軽く引き寄せようとする。

もしも君が拒まずにいるならきっと
間の子猫はにゃあと鳴いて、まぁるい瞳をこちらに向ける。
だから男は、少しだけ許して欲しいなと子猫に微笑んで、
夜空の下、二人と一匹で熱を分け合うのだ。

「哀しい時は泣いていい。苦しい時は吐き出していい。
 俺に抱えられるものはきっとそう多くもないけど」

「俺の前では大丈夫じゃなくて隠さずに甘えていいんだよ」

ほら、シンデレラも時間になれば魔法は解けるだろう?
おまじない魔法はあくまでおまじない魔法で、
『永遠』に続く万能さを持つものじゃあない。

しゃんとして、着飾っているのも悪くはないけど、
ひとりの人間である俺達は、本当ありのままであっていいんだ。
 
(-388) 2023/10/01(Sun) 13:31:45

【置】 きみのとなり リヴィオ


好きも嫌いも、愛も恋も多くのものを知らないまま。
それでも、誰かを、何かを大切に出来る心はあった。

それは、こんな自分を慕ってくれた君やエル、
こんな自分に何となくでも贈り物をくれたダニエラ君、
こんな自分でも友人になってくれたルチアーノや、
同じ立場で、落ちる前に手を掴んでくれたニコのおかげだ。

破滅願望消えない思いはあるけど、
それでも、生きているうちくらいは前を向いていよう。

俺はもう、ただのリヴィオひとりの人間なのだから。
 
(L3) 2023/10/01(Sun) 13:33:26
公開: 2023/10/01(Sun) 13:35:00

【秘】 きみのとなり リヴィオ → マスター エリカ



向けられた瞳を感じながら
皿の中身がなくなるまでは、ただ、静かに。

君の、貴方の変わらない態度が確かな救いだった。
友人でもない、時折寄る店のマスターである貴方に、
俺は、確かに救われていたんだ。

そんな話、この先誰かに話すこともないだろうが。
抱いた思いは偽物じゃなく、ずっと確かなもの本物だった。


やがて、皿の中身がなくなる頃。
手にしていたスプーンを置いて、両の手を合わせる。

「ご馳走様でした」

その一言に含まれるものが僅かな感謝ではなく、
今までの全てを含むことを知っているのは、男だけ。
だけどそれでいい。これは男の、勝手な思いなのだから。


「……それじゃあエリカさんマスター、落ち着いたら、また」

そう言って立ち上がり、
きっちり値段分のお金を君に渡して扉に手をかける。
そうしてそのままその場を後にする──のではなく、
「…あ」と何かを思い出したように振り返り。

「今度は、具沢山のシチューを食べに来るよ」
 
(-389) 2023/10/01(Sun) 14:44:54
リヴィオは、貴方の作る料理を大層、気に入っている。
(a41) 2023/10/01(Sun) 14:45:57

リヴィオは、柔らかに微笑んでから店を後にする。それは──5日目の午後のことだった。
(a42) 2023/10/01(Sun) 14:47:07

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオ



合わせた額も、擦り寄せられる鼻先も。
己を映す金も……顔を歪める要因ではあれど、
動揺を誘うような何かはなかった。

ただ、そこから先が
良くなかった


「……………ん、ッ」

押し付けられた唇の感触に男は目を見開き、
瞳をより一層強く揺らす。

それはきっと、長い時間ではないのだろう。
だとして、この男にとってはそうではなくて、
落ちた右手をまた持ち上げ、
君の体にその手を当て
弱々しく
押し返そうとする。

「……ふ、……………」

動揺で思考がぐちゃぐちゃだ。
自分がどのような表情をしているかさえ分からない。

ただ、目の前の君だけを感じることしか出来なくて、
自らが零す声にどうしようもなく弱さを感じて、
そんな自分がとても、とても、
嫌で堪らなかった。


(-398) 2023/10/01(Sun) 15:55:39

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 法の下に イレネオ



やがて一度目が終わる頃、何かを言おうと開いた口は
二度目によって音もなくまた、閉じられてしまう。

体が失った酸素を求めて、激しく上下する。
自分は知らぬうちに息を止めていたのか。
そんなことをぼんやりとした思考の中、考えて。
取られた手を、僅かに虚ろな瞳が追いかける。

あぁ、心配だよ。だって俺が連れてきたんだ。
友人に任されたこともあるけど、俺自身が彼女を心配で。
ここはいい場所とは言えないが、それでも。
彼女には少し、少しでも──休んで、ほしくて。


ぐず、と……胸の奥で何かが渦巻いた。

愉快そうな声も、弧を描くその唇も。何もかもが
信用に値せず、提案に乗っていいことがあるとも思えない。
それでも、欠片でもそれが"本当"であるなら、

「………………わかっ、た」

首を、縦に振る以外に出来ることはなかった。

せめて彼女の左手の小指大切なものにだけは触れないでくれと、
愚かな男は愉しげに笑う君に──願いを乞うた。

宝物のように大切に撫でるあの仕草が深く、印象に残っていて。
あんな風に何かを大切に思う気持ちは──彼女から、貰ったものだったから。
(-399) 2023/10/01(Sun) 15:57:58

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



君に手を伸ばしてしまったのは、
自分』を見てしまったからなのだろう。
多くの感情を隠し、縋れなかった先を知っている。
だから、そうなって欲しくはなくて。

君には真っ当に、真っ直ぐに、生きて欲しいと願って。
身勝手な願いのまま、
暫く
なんて半端に手を取って。
でも、後悔なんて、微塵も湧いてこなくて。

引き寄せた背を撫でながら、
逸らすことなくありのままの君を翠眼に映し出す。

誰に何を言えばいいのか分からない。
迷惑心配をかけたくない。
平気だと笑っていれば、きっと『大丈夫』だ。

本当の願い言葉を飲み込んで、
本当の不安感情を隠し続けて、
それでも『大丈夫』だと──真実を箱の中に閉じ込めた。

そんな人間を、俺はよく、知っている。
そうしてそれが"普通"ではないことも、理解している。

無敵だから『大丈夫』なんて、そんなこと、在りはしないのだ。
だけど、『何にもなかった俺空っぽでしかなかった自分』は、そうするしか選べなかった。


(-405) 2023/10/01(Sun) 18:32:03

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



涙が落ち着いて、君が顔を上げた頃。
男は君に気にしなくていいというように微笑んでいた。
謝罪にだって、首を横に振る。

涙というものはそうなのだと、知っているから。
泣かないことが強さじゃない。
だから、涙を流せるのなら我慢せず泣いたっていい。

「…勿論、一緒に行こう」

「決めることは……うん、少し友人に確認してみるよ。
 落ち着いてからだと君の暮らす場所に困るだろうし、
 それに、俺も今の家から早く移動がしたくてね」

ひとつひとつ、君の確認へ答えを返していく。
最後については少し、悩むように撫でられる腕を眺めて。

「それで期間は………そうだな、」

「…君が、一人で歩いていけるように本当に『大丈夫』になるまでかな。
 暫くとは言ったけど、あんまり詳しくは考えてないんだ」

1年か、5年か、あるいは10年か。

どれほどでそうなれるのかが分からない男は、
のんびりとした口調で、そんな答えを返すのだった。
(-406) 2023/10/01(Sun) 18:33:03

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ



煽るつもりなど、この男には微塵もなかった。
思考の乱れた頭では考えようもなかった。
ただ逃げたいと思う心が、そこにあっただけだ。

冷たい金属の音が響く。

何をされるかなんてもうとっくに、理解しているのだ。
こんなのはもう、取調という枠から外れていることだって。
最初から、そうではなかったことだって。
理解していて尚、逃れることは出来なかった。
君に、正しさを教えることなんて叶わなかった。


虚ろな瞳は天井に向いて、
合わさる額と金の瞳をぼんやりと眺めてから
離れていく君の影を見送った。

それでも、最後の抵抗だと言わんばかりに
君が居る方から視線を逸らし、その表情を隠そうとする。
引き結んだ口は不器用な笑みを懲りずに浮かべて、
宛てがわれた金属の感触を、指先に感じた。

痛みには、慣れている──けれど。


(-408) 2023/10/01(Sun) 19:13:27

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 幕の中で イレネオ



、ッ……
あ゛
あ゛
あ゛
ッ゛
ッ゛〜〜〜!!」


絶叫。ここまで出来る限り笑顔に隠して、
それで、苦痛さえも閉じ込めていたけれど。
どうしたって、抗えないものはある。

体が跳ねる、左手の指先が床を掻く。
足は
ダンッ
と床を叩いて、
右手の指先が君の手に縋るようにきゅうっと力が入る。
目を見開いて、流れる汗は床へと落ちて。
そうして、めいっぱい開いた翠から一粒の雫も落ちていく。

「ぅ、あ゛あ゛…ヒュッ、は………っふ、……あっ、あ゛」


泣けるような男ではなかった。
泣き方なんてとっくに忘れてしまった。
それでも、それは生理的なもので、止めようがない。

落ち着けようと大きく吸った息は、
カヒュッと男の喉から詰まるような音を鳴らした。

既に異常とも言えるほどに、堪えてきた痛みもあった。
だから、それら全てが集約し、爆ぜて。

そこから先はもう止められない。
それでも、君へと頷いた以上嘘には出来ない。
男は、真面目だった。それでいて、愚かだった。
(-409) 2023/10/01(Sun) 19:15:21

【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ



何だか悪戯っ子のようだなと、
笑う君に少しだけ眉を下げて笑う。
答えは上手く返せなかったし、君もそれを分かってる。

自分はこの問いに困っているのだろうか。
それとも、それ以外もあるんだろうか。
なんだか綯い交ぜになったような感情に僅かに首を傾ける。
その間に肩にとん、と軽い衝撃を感じて。

言葉はまだ、返せない。
聞こえる小さな声に眉を下げたまま、また、笑った。

「………はは、…そうか」

そうしてそれ以上、言葉は出てこなかったから。
止まってしまった手でもう一度、君の背を撫でる。
自分は、そう長くその選択を取れないのだろうと思うけど。
だからといって、そうだと君に明かすのは、まだ先の話だ。

再び君が顔を上げる時、その言葉に頷いて。
回していた腕を外し、緩慢にベンチから立ち上がる。

「頑張って治療するよ、困ることも多いからね。
 君に迷惑をかけることもあるだろうけど……あぁそうだ。
 俺には色男で猫のエキスパートの友人がいてね。
 今度紹介するよ、家の話も彼にする予定だからさ」

「──それじゃあ、帰ろうか」
(-428) 2023/10/01(Sun) 20:37:56
リヴィオは、「ねぇ、ニーノ。………いや、えっと」
(a45) 2023/10/01(Sun) 20:38:03

リヴィオは、署内での"ニーノの話"を思い返して悩むような仕草。しかし、言葉は続く。
(a46) 2023/10/01(Sun) 20:38:11

リヴィオは、「俺達はまだ、お互いに知らないことも多いからさ。落ち着いたら話をしようか」
(a47) 2023/10/01(Sun) 20:38:21

リヴィオは、言えること、言えないことがあるだろうけど──それでも、話すべきことがあるから。
(a48) 2023/10/01(Sun) 20:38:31

リヴィオは、「あぁ、そうだ。晴空の下の散歩も忘れずに行こうね」
(a50) 2023/10/01(Sun) 20:38:41

リヴィオは、
暫く
は君と、君達と歩んでいくために、足並みを揃え歩んでいくのだった。
(a51) 2023/10/01(Sun) 20:39:32