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【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ この都が最初に戦場になったのは、 魔王を討ち帰ってきた勇者の暴走を止める為のものであった。 侵入は容易いものだった。 何しろ、今更魔族が数人入ってきたところで気にするものでもない。 背信者が顔を隠して紛れ込んだことなど、尚更気づけはしまい。 最初に見つけたあの額の御印の魔物を想起させられた。 城に現れた時よりも、人の名残が擦り減っていた。 それは即ち、思考も獣へと変質しているということに違いない。 なけなしの理性を聖都へと帰る為に使ったのだろう。 誇らしく報告したかったのか、家族に会いたかったのか。 悲しい程に、最期まで従順で望まれた形で有り続けた勇者だった。 ] (*1) 2020/10/29(Thu) 1:16:11 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ だからこそ、我々と都を守る人類達によって 多くの犠牲を生みながらも、勇者を倒すことが出来た。 躯の御印を突き付け、自分達魔族も襲われ都の人類を守ったことを示し 背信者達が口々に教会を糾弾すれば、その威光は翳りを迎えた。 最後に残った勇者だった者の証言により、 都の騎士団が教会に立ち入り、多くの証拠を見つけた。** ] (*2) 2020/10/29(Thu) 1:16:35 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ 殺められることは無く、しかし辿り着くことも出来ず 器となるには未熟だった身体を、魔物へと化身させた者。 多くを殺め、教会の念願を果たし 完成した勇者から、厄災の如く異形へと成り果てた者。 彼らの辿った道は悲劇であれど、 勇者になってしまった者の正しい末路でもある。 だから、間違ってしまったのは俺の方。 ] (*3) 2020/10/29(Thu) 1:51:44 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクスっ、ぐ……ううぅ ッ [ 胸の真ん中に当てた手は何かを掴み五指を丸め、 一気にそれを、慣れ親しんだ形の得物を引き抜く。 気づかれないよう潜める声は、悲鳴の全てを呑み込めはしない。 複数の敵に囲まれながらこの能力を使用すると、 実在化する武器の大きさに比例した隙が生まれる。 人狼族の登場で場を離れられたお陰で使えた。 これでもう少し、戦いやすくなるだろう。 ] (*4) 2020/10/29(Thu) 1:52:11 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス──現在── あああっ、クソが! [ 頭上スレスレを菓子売りのワゴンが商品を撒き散らし飛んで行く。 ふざけんな、明らかに鉄製だろうが。 久々に遭遇した理不尽な規模の暴力に育ちの悪さが露呈する。 木の棒でも放るみたいにそんなものを軽々投げられる種族など、 魔族の中でもごく一部に限られている。 熊、牛、虎、犀。体力自慢の獣人らが今共に戦う仲間ならば、 答えは一つ。オーガによる攻撃である。 ] (56) 2020/10/30(Fri) 2:08:50 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 今や都は乳白色の紋様を宿した光の網で覆われた。 規模の大きな術が上手く働いたのは発動者の多さと、 魔法の循環が行われやすい円形、即ち魔法陣と似た地形故に。 その空に雪が舞い始めたのは、クリオ達の能力の影響に違いない。 遠く離れた場所にまで現象が起きているのは、恐らく 無実体種族が無力化されたものと思われる。 元から彼らはそう強くはない。 幹部だった男は魔族に時折産まれる、特別な個体だった。 だからこそ同族に慕われ頼られていたのだろう──── ] (57) 2020/10/30(Fri) 2:09:03 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 自分達が都に囚われた事実を意に介さない、 ただ頑なに目前の敵の殲滅の為豪腕を振るう。 対峙するオーガ達の様子にも、 無実体種族が見せた敵意に似た感情が見て取れる。 牛や竜とは違う形状の、額から突き出た角。 人型存在の中では高身長の部類の自分と、頭二つ分は差がある 化身したベアで漸く追いつくかという程の筋骨隆々。 戦時中も、終結後すらも。積極的に人類との争いを繰り返し 戦いの中にこそ生きる意味を見出す、血の気が多い種族。 人魔の領域を繋ぐ転移装置の廃止原因となった事件の首謀者。 結ばれた和平に未だ納得していない、反魔王派魔族の筆頭格である。 両魔族の結託理由はそれぞれの種族的特性を考慮しても納得出来た。 残る不可解は、他の部分に。 ] (58) 2020/10/30(Fri) 2:09:16 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 先程までの剣は王に渡し、今は使い慣れた三叉槍を手にしている。 しかしこれでも、防御に回ればオーガの武器たる爪を防ぐのが精一杯 まともに攻撃を受け止めたのならあっさりと折れかねないだろう。 ] なあ、お前らはいつまでこんなことを……! 続ける気、なんだっ! [ 近距離からの競り合いは出来る限り避けたい。 ワゴンの投擲に怯んだところを狙ってか 距離を詰めてきた相手の攻撃をバックステップで回避。 その怪力の欠点は、巨体故にどうしても大振りになるところだ。 逃げ回る敵は、相手からすれば煩わしい鼠のようなものか。 呼び掛けには苛立った声が返ってきた。 曰く、王の首を取りかつての時代を取り戻すまで。 ] (59) 2020/10/30(Fri) 2:09:28 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクスそうか、…… やはり分かり合えないみたいだな、俺達は。 [ 両者の思いは同じであったのだろう。 雄叫びを上げながら再びこちらへと駆ける、 喉元を裂かんと鋭い爪を持つ腕が持ち上がる。 その光景をじっと見据え、もう逃げることはしないまま ────槍をその場で足元に突き刺した。 地面が隆起し、石畳を押し退けながら相手の足元へ向けて突き進む。 強靭なオーガの筋肉は、体躯に見合わないスピードを生み 既に敵の目前へと迫っていては、避けることは出来なかった。 体勢を崩した瞬間、横から犀獣人がその男に突進した。 オーガは勢い良く壁に衝突し、盛大な罅と多少の破壊を齎す。 そして、当人も動けなくなってしまったようだ。 ] (60) 2020/10/30(Fri) 2:09:40 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 各所からリザードマンが出現した理由は、転移装置に違いない。 しかし転移装置とは、一つ作れば何処にでも飛べるものではなく。 来る先と行く先両方に用意し、周囲に妨害魔法が掛かっていないこと それら二つの条件を満たしても尚、魔物が勝手に使用するなど。 特にリザードマンは群れを作り、独自の生態系を築いている。 人類や魔族の文明は奴らにとって異端かつ忌避すべきものだ。 子供のように幼い思考の無実体種族による奇襲も、 己の力を過信せず本気で魔王を狙わない知性的なやり方も。 幾多の事件を起こした短絡的で好戦的なオーガが 大人しく開戦まで人混みに紛れていたこともおかしい。 魔族の能力や魔物の数を存分に活かすべく、 都の警備を掻い潜り装置を用意し、作戦を立てた者は一体? ] (63) 2020/10/30(Fri) 2:11:05 |
【置】 魔王軍幹部 フォルクス[ 争いを知らない身、汚れなき両手。 平和を謳う唇と、かつての敵に歩み寄る様を民に示す足。 正統な魔王────真祖竜の血統と強大な力。 終戦後、「最後の勇者」により人口の半分以上を失っていた我々が 人類に根絶やし、或いは奴隷化されない為それらが必要だった。 明らかになったヤドリギの真実は、 決して魔族の生命の継続を正当化出来るものでは無かった。 魔族のみならず、新しい時代の象徴的存在が どうしても必要だった──── ] (L2) 2020/10/30(Fri) 2:13:03 公開: 2020/10/30(Fri) 2:15:00 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス「巫山戯た綺麗事を……!」 やめろ! [ ほんの一瞬でもその隙を敵は見逃さない。 陛下を庇い前に出て、丸太のような腕を槍で受け止める。 動けたのは脚と腕だけ。最善の選択を思考する余地は無かった。 やはり、無理がある行動だった。 負担の掛かる柄から亀裂が入れば、 三つに分かれた穂先まで侵食するのに時間は掛からず 今にも砕けてしまいかねない────] (71) 2020/10/30(Fri) 2:15:23 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクスなるほど、しかし…… [ どのようにして目前の敵をやり込め、障壁の側へと向かえばいい? ベアに投げられたオーガが立ち上がる、 何処か歩みに揺らぎが見られるが、その目に未だ光が宿る。 正直に言えば王を守ることに集中して心血を注ぎたい程の、 危険で生命力に溢れた相手だ。 狙いの一つであろう御方を外に出せば、 必ずしや敵も追い掛け作戦が台無しになってしまう。 そうした理由があったからこそ、彼は未だ此処にいるだけ。 ────一際気温が下がったように感じられたのは 緊迫した状況のせいかと思ったのだが、 何かが空に影を作り、錯覚ではないと知る。 ] (73) 2020/10/30(Fri) 2:16:34 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ グリフォンとクリオの部下達が空を征く。 空の鷹、地の狼が揃った戦場は 対するのが数だけの魔物ならば、十分に好転したのだろう。 中に残っていた都の住民が、教会残党と交戦中。 彼らはその情報を残し、恐らく既に上司達が向かっている方向 魔法障壁の元へと飛んで行った。 ルーに任せてきたのかリザードマンは殲滅されたのか、 どちらにしても恐らく、近い内に人狼族も同じ場所へ駆けるだろう。 ] (74) 2020/10/30(Fri) 2:16:46 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ この都に住みそれぞれの研究を行う者の多くが、 かつての背信者達の末裔だった。 彼らは争いに疲れ、魔族と共に戦うことは無かったが 教会の糾弾を含め、多くの協力をしてくれた。 異端扱いされようとも技術を磨き、文明を発展させようとしていた者 旧き時代の歴史を密やかに継いでいた家系……。 人類側の遺跡の情報、見つかった機械の復元や資料の解読。 この時代に至れども我々には傷一つ付けられないヤドリギ、 それを倒す術を見つけられないかと思ってのことであったが 思わぬ形で役に立ち、大変に大きなものを生んだのだ──── ] (*6) 2020/10/30(Fri) 2:16:59 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 「彼らと人類を、信じよう。」 その言葉は、いつも険しい顔をし感情を見せまいとする男には合わず、 先代から魔王族を見守り、深く忠誠を誓って 幾多の悲しみを乗り越え軍を率いてきた彼らしい言葉だった。 王の魔法で守られながら、もう一度槍を生成する。 三叉は変わらないが中央の一本が長く、二本は脇に広がるような形。] ああ、俺達の戦うべき場所は此処のようだ。 [ そんな形状の真鍮色を手に、先程立ち上がったオーガへと対する。 族長は近接するベアと王に任せ、槍を構えた。 首を掻っ切らんと振りかざされる爪が、頬を掠ってゆく。 怯むことなく距離を詰め跳躍し、穂先を真っ直ぐに──── しかしこの槍もまた、オーガの筋肉質の身体の奥までは届かない。] (75) 2020/10/30(Fri) 2:17:15 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ だが、敵の身体は崩れ落ちた。 槍を構成する鉱物の麻痺毒によって。 鋭い金属結晶を自分自身から創り出し、 自在に形を変えて実在化する。 その種類は一つでは無く、武器にしたものの性質の強弱を操作出来る。 それがかつて刃の勇者と呼ばれた者の能力だ。 ] (76) 2020/10/30(Fri) 2:17:36 |
【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 神託を受けてから変わってしまった瞳の色は、 その濃桃を通り越して、今は右目だけが赤く。 荒い呼吸を繰り返しながら、主を見やる。 相手に向けるべきではない鋭い視線は、 傷つき怯え、威嚇する獣にも似ている。 ] (81) 2020/10/30(Fri) 3:43:29 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ 捕まえた手を引き、乱暴に距離を縮める。 逃げぬように腕の中に囚えてしまえば、 すんと鼻を鳴らし、自分を誘った甘い芳香の在り処を探す。 触れ合う程に近いのだ、気づくまでにはそう時間は掛からなかった。 首に唇を寄せ、彩る赤色を辿りその跡を消してゆく。 やがてその流れてくる先へと到達すれば、 味わうように舌がゆっくりとなぞった。 ] (*8) 2020/10/30(Fri) 4:54:27 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ この姿勢では獲物の様子は見て取れない。 何かが気になった気がしたけれど、分からない。 感じるのは低い体温と何かを堪えるみたいな呼吸音。 それより、もっとこの味が欲しかった。 美味しいのだろうか?分からない。ただひたすらに欲している。 尖らせた舌先で奥に溜まるものを引き出そうとしたけど、難しい。 もどかしく歯を立て、また繰り返す。 ] (*10) 2020/10/30(Fri) 4:55:28 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ 夢中になっていた動きを止めたのは、弱い声と背の痛み。 この人はいつもそう。求められている自分で在ろうとする。 脆い部分は、隠さなければならないと思っている。 俺達がそんな風にしてしまった。 ……誰だっただろうか、この人は。 顔を離して、視線を合わせた。 この人は、夜明けのような色の目をしている。 ] (*12) 2020/10/30(Fri) 4:56:30 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ されるがままに動かされ、再び傷に噛み付いた。 少しづつ溢れてくるものを逃さないよう、啜ってゆく。 何か別の液体が、自分の目から流れてきていたけれど それは求めているものじゃ無いから、気にしなかった。 ] (*14) 2020/10/30(Fri) 4:57:37 |
【赤】 魔王軍幹部 フォルクス[ やがて────音を立てて結晶が崩れ始める。 殆どが落ち、砕けた後。 気を失うように身体は傾き、相手に身を預け眠り始めた。 空から、遠くの地から 魔王の配下達が集まってきたのはそのすぐ後。 ] (*15) 2020/10/30(Fri) 4:57:56 |
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