241 【身内】冬の物語
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………。
[ゆっくり、自分の気持ちを確認しているよう。
何を言われるのか…とても怖い。
怖くて逃げだしたい。
あんな言い方をするんだから、期待してしまう。
でも同時に、期待してもと、後ろ向きになっていたが…]
………っ
[目を丸くして、息を飲んでしまう。
そんな事を言われるとは思わなかったから。
嬉しいと同時に、どういう意味なのと浮かんでしまう。
でも……そんな事を言われたら、どんな意味だろうが、どうでもよくなる。
嬉しいから…どんな意味だとしても、そう思ってくれる事が嬉しいから。
嬉しくて、別の意味で目の前が霞む。
やはりすぐに言葉を口に出せない。それほど胸がいっぱいだから。
乗り出していた身を、引っ込めて]
いるよ……傍に居る。
私から、離れるなんて…出来ないよ。
しないとと思って…でもずるずるできなくて、今度こそするぞって意気込んで、
手紙を出したのも、決意と言うかけじめというか、振り払う為とか…。
でも、結局最後の踏ん切りはつかなかったから…。
[大きく息を吸う。
別に今までだって、何度か口にした事であるが、初めて口にするような緊張が走るから]
ねぇ……そっち行って…いい?
柊に……会いたい。
[声だけのやり取りではなく、顔を、しっかりと会いたいから。*]
いいよ。
俺も……雪奈に会いたい。
[ 半年の間、避けていた。
会えない理由も、合わない理由も曖昧で定まらないまま。
だけど半年経ってみて残ったのは雪奈に会いたいということだけ。
ベランダから部屋に戻る。
それから、玄関に行って鍵を開けた。
いつでも彼女を迎えられるようにそのままそこで待っている。]*
すぐに行く。
[会える…それだけで胸が躍る。
ずっと笑い方なんて、忘れていた…けど、会えると思うと自然と笑っているだろう。
ベランダから部屋に戻って、気づく。
今、Tシャツと短パンの部屋着である。
久しぶりに会えるのに、こんな格好なのは…が、着替えるとなると、選ぶだけで時間がかかる。
許してと、鍵を持ち外へ。
部屋の鍵をかけて、すぐ隣に。
柊の部屋の前で足を止める。夕方…ここで足を止めた時とは違う気持ち。
行くと言ったから、勝手に開けてもいいだろうが、久しぶりなのもあって、インターホンを押してしまう。
扉が開けば]
会いたかった。
[はにかんだ笑顔を向けるだろう。*]
[ きっとそれは熱に浮かされるような激しい想いではない。
雪奈が向けてくれるそれとは違う。これは恋ではない。]
よ、久しぶり。
[ 扉を開けて雪奈を迎えいれて。
それから強く抱きしめた。
半年の空白を埋めるように彼女を強く腕に抱く。]
俺も会いたかった。
お前がいないのは寂しくて苦しかった。
[ そのはにかんだ顔を見て思う。
自分は確かに雪奈を必要としている。
そして確かに彼女を想い、愛していると。]*
[変わらない事が嬉しい。
半年も離れていたけど、それが嘘のように思えるくらい。]
うん。久しぶり…っ
[でも変わったのは、その腕の中にいる事。
行動一つで、すぐに胸がいっぱいになる。
その力強さに、実感させられ、負けじと手を回して、力を込めて抱きしめる。]
それは…私も……
ずっと、寂しくて苦しくて…辛かったよ。
声が聴きたくて…………会いたかった。
[もう一度、会いたかったと呟く。
ずっと、ずっと願っていた事だから。]
ねぇ、柊……覚悟してね。
がんばって、貴方を口説き落とすから。
[必要とはしてくれる。
でも、そこに恋があるかは解らない。
もしかして今更の宣言かもしれないが、それは解らないから。
見上げてにやりと笑う。*]
[ そんな必要もうないのにって思いながら。
雪奈に負けないぐらい不敵に笑って答える。]
楽しみにしてる。
……これからずっとな。
[ 先輩に失恋した
傷
はとうに癒えた。
そこに残ったのは埋められなかった喪失感という穴だけだった。
恋をした。
それは実らなかった。
恋はしなかったかもしれない。
でも、そこに愛情はあった、今もたしかにここに。]*
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