【秘】 鑑賞用 リヤ → 救済者 ユー「…………」 返る声はない。はく、と唇を動かす。 ……いや。ぼくは、金糸雀。 君の声が聞こえて直ぐ、扉に近付く。 扉を開けるより早く聞こえただろう君の声を、一枚の板越しに聞く。 その声を聞きながら、細い指がひたりと扉に触れる。こつ、と額をぶつける。 声。 声は。 ――もう一度唇を動かすよりも早く、扉に手を掛けた。 勢いよく扉を開くから、君にぶつかったりしないといいけど。 自室の中は荒れている。花瓶は割れ、鳥籠はひしゃげている。 それが、ベッド以外のスペースを埋めている。 金糸雀が歩く導線と、部屋の片隅だけ、スペースが確保されている。 開いた扉から半身乗り出した金糸雀の手がぬるりと動き、君の腕を掴もうとする。 そうしてぐい、と、荒れた室内に引き摺り込もうとする。 (-80) 2021/10/09(Sat) 20:31:38 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 救済者 ユー「――…覚えてるよ、覚えてる。 君のくれた死は、すごく気持ち良くて落ち着いた。 頭の中が研ぎ澄まされて、透徹した水の中にいるみたいだった。 …… 一瞬だったけどね。 だから、そうだね ぼくは……」 君を引き摺り込めたのならば扉を閉める。 叶わずならば、……手を掴んだままだ。離れはしない。 「死は、 救いの一種だと思ったよ。 必ずしもそうあるべきではないけれど、選択肢の一つ。 本当は、皆で一緒に此処でずっと過ごしたい。 けれどそれは叶わない。だから、 ユー」 (-81) 2021/10/09(Sat) 20:32:05 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 復讐者 スオ彼の声に、やっぱり首を振る。無理はしてない ……あ。 でも蜂蜜レモンは嬉しいな。 だから、ぱ、と笑って見せ、 ……そうだ。 一度彼から離れ、ぱたぱた室内に駆けていく。 散乱した室内は、それでも金糸雀の導線と、部屋の片隅だけは綺麗だ。 導線を通ってベッドの傍。しゃがみこんで、ベッドの下に手を突っ込む。 そうしてスケッチブックとクレヨンを取り出した。これは、貰い物。 それからまた、彼の傍へと戻って、 「はちみつれもん うれしい。 部屋は見られたくないわけじゃないけど、 すごく、荒れてるから、それでもいいなら、どうぞ」 スケッチブックに、ピンクのクレヨンで整った文字を書き、彼に見せる。 かく、と首を傾げる動作と一緒に。 (-87) 2021/10/09(Sat) 20:56:20 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 愛玩用 ドゥーガル都合よく出会さず、運悪く入れ違ったのかもしれない。 貴方が先に食堂を出て、金糸雀の部屋にプレゼントを置いてくれて、 金糸雀はその後に部屋に戻ってきたんだろう。 置かれたスケッチブックとクレヨンを拾い上げ、首を傾げる。 誰が、と思ってきょろりと辺りを見回しても、きっと誰の姿も見つけられないのだろう。 それでも意図は分かる。優しさは分かる。 食堂にいた誰かだろうかな、と思いながら、 スケッチブックを嬉しそうにぎゅっと胸に抱き、 静かに部屋に入って行った。 (-88) 2021/10/09(Sat) 21:02:06 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 救済者 ユー唄を忘れた金糸雀 は、安楽死 を領域へ引き摺り込んだ。受け入れた。君を見上げる金糸雀の目は澄んでいて、期待に満ちた色をしている。 君を部屋に入れて、そしたらもう片手も動く。 両手できっちり、君の手を取る。 「死を望まない子も、味わえば戻れない。 救いにならないと思っている子も、君の優しさを知れば変わる。 ……ぼくは、そう思ったから今こうしてる」 金糸雀は流暢に囀る。異常に晒され囀ることを止めた金糸雀が、つらつらと流暢に囀っている。 「どうせいつかは皆死ぬ、皆止まる。 ぼくたちが生きる事は人間のそれよりずっと不条理で、理不尽で、ギャンブルだよ。 幸せになりたいと思っていても、酷い方法で殺されたりするんだ。 ――…そうなるより、君の死は優しい。 死の優しさは、生の優しさよりもずっとずっと平等。 身勝手なのは、そうかもしれないけれど、……」 金糸雀の小さな手が、細い指が君の指を撫ぜる。 するりと撫ぜて、掬いあげる。 指を絡めて、ぎゅっと握る。 「――ふたりよがりにしよう。わたし、できるよ」 (-90) 2021/10/09(Sat) 21:16:57 |
リヤは、唄を忘れた金糸雀だ。 (c27) 2021/10/09(Sat) 21:18:46 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 復讐者 スオ彼の言葉に はく と唇をまず動かし、声はなし。 ぱちぱちと瞬いて、またスケッチブックへ文字を描く。 「わたしが、散らかしたのに いいの? けがしちゃうかも。 けが、しないでね」 それでもいいなら。手伝ってくれるというなら、嬉しい。 ちら、と彼の顔を見る。 その顔が、その笑顔が嬉しくなって、彼の手をぎゅっと握る。 拍子にスケッチブックを落っことして、は、とした顔をした。 手を離し、再びスケッチブックへ。 「スオ。 おかたづけしてる間、スオのお話聞かせて。 なんでもいいよ」 そんなことを書いたら、へら、と笑う。 彼の返事がどうであれ、スケッチブックとクレヨンを一旦ベッドの上に置き、 ……取り敢えず、幾つも幾つもあるひしゃげた鳥籠を、ひとつひとつ、部屋の隅に寄せ始めるだろう。 (-95) 2021/10/09(Sat) 21:55:39 |
【秘】 鑑賞用 リヤ → 救済者 ユー「本当は、そうだったらいいとぼくも思う。 でも、そうはならなかった。 ならなったから、ぼくたち、此処にいるんだ。そうでしょ? ユー ユーサネイジア。 君ともっと早く出会えてたら、もっと幸せだったのかもしれないなって思うよ」 少なからず選択肢が増えていたはずだ。 選び取るべき道が幾つも提示されることは幸福だ。 不平等がぼくたちに平等に降り注ぐのなら、 そいつを死という平等で庇ってやろう。 優しくて悲しい色の君の目を見て、金糸雀は笑う。 金糸雀はもう異常を検知しないし、それを知らせない。 「うん。 ぼくも、 ……出来れば皆に。 皆に、自分から、やっぱり皆で一緒に居たいって思って欲しい。 だから、待てるよ。 皆で一緒に終わるために」 君の言葉には一度、二度と頷いて同意を示す。 君の手を柔らかく握り、共に塔へと向かうことにする。 崩れていく塔の奥。 皆を、待つために。 (-97) 2021/10/09(Sat) 22:12:59 |
リヤは、 願っている。 (c28) 2021/10/09(Sat) 22:15:08 |
【墓】 忘却の金糸雀 リヤ金糸雀はもう謳わない。忘れてしまったから。 金糸雀に出来ることは、鳴いて叫ぶことだけだ。 不条理と不平等に逆らって、唯一の平等と安寧を見出した。 誰も欠けて欲しくなかった。ずっと此処にいたかった。 もう叶わないことだ。 なら此処で終わりにしよう。全部終わらせよう。 皆と一緒に生きられないのなら、皆と一緒に死にたい。 金糸雀は、塔の奥深くまで進んでも異常を検知することはない。 もう何も知らせない。願って鳴いて叫ぶだけ。 優しい医療用がボスエネミーだったものに死を与えるのを傍で見て笑っている。 みんなで、しのう。 いいでしょ? (+26) 2021/10/09(Sat) 22:59:59 |
忘却の金糸雀 リヤは、メモを貼った。 (c29) 2021/10/09(Sat) 23:04:19 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「う――たを …… わ―― すれた かなりやは―― 」 第四階層、その最深部。 本来であれば正しいボスエネミーが鎮座していたであろう場所に、 金糸雀はいる。 小鳥を囚え、逃さぬ為に作られた鳥籠が其処にある。 鳥籠は人間一人をすっぽり捕らえられるくらいの大きさであり、 ――金糸雀はその中にいる。 扉は、閉じている。 君の呼ぶ声に反応して拙い歌を止めると、顔を上げた。 「その声は、ルツ? 会いに来てくれたんだ。 いるよ。 ぼくは、此処に!」 金糸雀は流暢に喋る。君が来てくれた事が嬉しくて、 喜び溢れんばかりの声色で君に声を返す。 (-100) 2021/10/09(Sat) 23:26:51 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「心配してくれたの? ありがとう」 やっぱり、君は優しいな。皆優しい。だいすきだ。 だから、やっぱり皆と離れたくない。 「エネミーはね、ユーが殺してくれたの。 此処に居たボスエネミーもね」 直ぐ傍に、優しい医療用もいる筈だ。 ぼくらの会話に横槍を入れたりはしないだろうけれど。 ――最深部。ボスがいた筈の此処にいるのは、医療用と金糸雀だけ。 「――…ぼくの中にはね、もうひとりいるの。 正しくは、その"バックアップデータ"。 ぼくはその一部を、ぼくの中に復元した」 だから、今はこうなった。 唄を思い出すことは出来ないけれど、それでももういい。 近付く君を止めはしない。けれど、鳥籠に触れたとて扉は開かない。 近付けば気が付くだろう。この扉には頑丈な南京錠が幾つも幾つも掛けられている。 これは、金糸雀が揺るがない為のもの。 「――… みんなを、待っていたの。 ねえ、ルツ ルツ。 ルツは…… 現実に戻りたいって、思う?」 (-102) 2021/10/10(Sun) 0:06:25 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「…… カナは昔死んだの。 わたしたちはお互いにお互いをバックアップにしてた。 身体は無くなっても、それがある限りいつかはって思ってた。 でも多分、そのいつかは来ない。 ……わたしは、ユーに優しい死を味わわせてもらった。 とても穏やかで気持ち良くて、素敵な気持ちだった。 だから、 一緒に死のうと思って」 鉄格子を真ん中に置いて、君を見る。 この扉は多分、金糸雀が望まない限り開かない。籠を力尽くで破壊すれば或いは。 それでも格子の隙間から手を伸ばせば、君に触れる事は出来る。 錠に触れる君の手に、金糸雀の手が伸びる。 触れる、だけ。ちょん、って丁寧に触れて、笑った。 「アタナシアスは、……アタナシアスに、会えた? 約束って、何? わたしは、仲間が欠けたのがとても辛かった。 …… 眠らせてあげよう。 ルツ。 ルツ…… アタナシアスじゃない。ルツのしあわせは、なに?」 君の手を、きゅ、とやわこく握る。 捕らえるというよりも縋るような仕草。 君の目を真っ直ぐに見る。 「ぼくと… 一緒に… 死のうよ。 みんなと… 一緒に。 ここで、 終わろう」 (-104) 2021/10/10(Sun) 2:35:52 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「そう。 ルツは言ったよ。 連れて帰るって。 わたし、信じた。ルツは嘘を吐かないって。 でも、アタナシアスは此処にいない! 」 仲間は欠けた侭だ。金糸雀が大切にしたかったものは欠けたままだ。 会えない侭、この場所は0と1に溶けていく。崩れ出している。 「欠けた侭、現実に帰る。其処にはもう、あなたたちは、いないの。 ぼくに残るものは何もない。カナはいない。 ユーも、ルツも、スオも、アタナシアスも、誰も、 何もいない。 ぼくたちはグレイ。 人間の道具。 現実では、変わらない。 道具が道具を、どうやって救うの?」 ――ぼくとわたしは、どうやって救われるの。 握り返してくれたその手を、強く強く握り締める。力を込めて、全部の感情を込めて。 「…… 死 そのものは穏やかなだけ。 ぼくは、死に拘っている訳じゃないの。それはユーも分かってる。 ぼくは、みんなと、此処にいたいだけ。みんなと一緒にいたいだけ。 一人で逝きたくない。一人で生きたくない。 わたし、 みんなと一緒なら、」 緩慢な所作で目を閉じる。考え込むような間を置いて、目を開く。 同時、君の頭上。金糸雀の"殺意のかたち"は其処に現れる。 大きな鳥籠は金属の軋む音を立て、刹那の間を置いて落下する。 当たったとして、一撃で死を齎す程の物じゃない。 強く打ち付けたとて気絶が精々。避けるのも容易だろう。 死を与えるのは金糸雀ではなく、医療用の優しいものであるべきだ。 「――――ルツ。 死を、味わってみよう。 それはとても心地良いものだから」 (-106) 2021/10/10(Sun) 4:03:54 |
リヤは、鳴いている。 (c30) 2021/10/10(Sun) 4:06:43 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「ルツ ルツ…… 其れは綺麗事だ。 バックアップデータはぼくの中にあっても、 身体がそこにない。触れられない。もう、一緒に未来を紡げない。 ――此処はもうおしまいになっちゃう。 この塔だってもう崩れて来てる。きっとこの四階層だってもうすぐ。 …… ここが終わる前に、 わたしはアタナシアスに会える? 現実に戻ったら、わたしはまたお屋敷に帰るだけ。 諦めないためには、時間がないよ」 この塔は一体何処まで崩れてしまったんだろう。 内側にいるぼくらには分からないけれど、外から見たらもう、 頂上の辺りは0と1に戻ってしまっているんだろう。 ――ゲームが強制終了されてしまったら、もうおしまいだ。 やさしい時間はすべておしまい。 金糸雀はそれが嫌でたまらない。君が何を言ったって、嫌なものは嫌。 ……だというのに、君が決して手を離さないから。 繋いだ温もりが、何があっても残ってくれるような気がしたから。 だから、……君に鳥籠をぶつけて、君に痛みを与えた時。 自分が望んでそうした癖に、動揺してしまった。 (-117) 2021/10/10(Sun) 14:19:48 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「―― わ たし、 は! 違う…… わたしは、 ルツに痛い思いをさせたいんじゃない!」 高い声は、大きく叫ぶ。唄を忘れてただ叫ぶ。 「誰にも痛い思いなんてさせたくない! ユーなら、ユーならやさしく終わらせてくれる! だから、 お願い ルツ ルツ……」 項垂れる。鳥籠の扉に掛かった頑丈な錠を見る。 ぽた、と涙が一粒落ちる。機械に必要のない機能。 「道具らしく、一緒に、みんなで、終わろうよ。 ぼくが現実で生きていくために、この思い出は優しすぎて、 …――毒なんだ」 …… だから、たすけてよ。 また、ゆっくりと瞬きをする。閉じて、開く。 今度は鳥籠は、君の頭上を襲わない。 金糸雀の居る鳥籠の横に、同じ大きさの鳥籠がひとつ、現れるだけ。 「…… つかまえさせて。ルツを。きみたちを、みんな」 …… たすけて。 (-119) 2021/10/10(Sun) 14:21:40 |
リヤは、泣いている。 (c33) 2021/10/10(Sun) 14:36:13 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 復讐者 スオ大丈夫、と言うように笑って頷く。 ひしゃげた鳥籠は部屋中に転がっているから、部屋の隅に集めてもかなりの量だ。 それでも少しずつ床が見えてくる。 二人で片付けるのならこれはそう時間は掛からない。 残るのは花瓶。割れた破片が辺りに散っていて、悲惨な状況だ。 どうしようかな、ってちょっと悩んで、取り敢えず大きな破片から拾う。 そうして一旦、扉の近くに集めることにした。 彼の困ったような顔に返すのは、やっぱり楽しそうな笑み。 うん、って頷く。聞かせてって頷く。 スケッチブックを拾うまでもなかった。 (-123) 2021/10/10(Sun) 14:57:30 |
【秘】 忘却の金糸雀 リヤ → 宣教用 ルツ「綺麗なだけじゃ、生きていけない。 思い出だけで生きていくには、現実は不条理すぎる。 わたし、知ってしまった。 動くことの楽しさ。話すことの豊かさ。 みんなで囲む食事の穏やかさ。誰かに触れることの心地よさ。 …… 全部、此処にしかない。なかったのに」 毒と薬は紙一重。君の言うことは、よく分かる。 思い出は大切で、それを抱いて生きていく。 ……生きてきた。 でも、此処で過ごした時間が余りに心地良かったから、戻らない思い出が酷く辛くなってしまった。 隣に落ちた鳥籠は、扉を大きく開いて君を待っている。待っているだけだ。 「…… わたしを?」 ぱち、と暫く。 ああ、そうか。わたしが、君たちを捕まえようと待っていたのと同じで。 君も、わたしを捕まえるために此処に来たのか。 伸びる手を拒む事はない。 ほろほろと落ちる、二粒、三粒と続く涙が、君の指を濡らす。 我儘に泣くだけの金糸雀の涙は、体温が移って温かかったろう。 (-134) 2021/10/10(Sun) 16:10:27 |
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