【人】 黒眼鏡>>86 ダニエラ 「ええー、違うのかあ。なんだろな」 その控えめな笑顔に、まるで眩しいものを見るかのように目を細めた。 額に指をあて、なんだろなー、と首を傾げて、 「ええ、そんなあ。お嬢さんうまいねぇ…! 次、ってのに弱いんだよなあ、男っては」 降参するように、両手をひらりひらり。 口許を楽しそうにゆがめて、 「……だが、そうだなあ。 次も来てくれたら、 もっとサービスしちまおうかな」 しっかりと覚えてるよ、と。 カウンターに肘をつきながら、緩く微笑み。 「……あ。そういえばコレ」 と。突然思い出したように、カウンターの脇にある冷蔵庫を開ける。 中から出てきたのは、ラッピングされた小さな箱。 このサイズでもそこそこの値段がする、ブランドもののチョコレートだ。 「あげるよ」 …クラッカーをあげたあとに、あげるようなものではない。 (93) 2023/09/09(Sat) 18:35:56 |