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【独】 転校生 矢川 誠壱[ 誰にも 特別に思われたくなかった 誰も 特別に思いたくなかった そう自分を偽ってきた 自分自身を守るために だけど それがいまは ] (-823) ななと 2020/06/23(Tue) 18:40:33 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 窓際からそっと離れて、ベースをケースに入れた。 話さなければいけないことがある。きっと。 だから、ここから行かなきゃいけない。 彼らが自分で踏み出したみたいに、 自分もこの足で。 教室を出る。 ここがどこかはわからなかったけれど、 人の声のする方へと足を向けて。 途中、「イチくん」と呼んでくれる 声があった。やめてほしいと思っていた その声が、少し照れ臭くて嬉しい。 そう素直に思えた。] (106) ななと 2020/06/23(Tue) 18:41:59 |
【独】 転校生 矢川 誠壱[ ───だからさ、聞いてくれよ。 なんか偉そうなことばっかり言ってるし なんか平気そうなフリばっかりしてるけど おれはさ、ほんとはたぶん、 みんなよりずっと臆病者なんだ。 でもさ、それも含めてどうか 受け入れてくれないかな。 それで、特別に思ってもいいかな。 だっておれは ───] (-825) ななと 2020/06/23(Tue) 18:42:37 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 見えた人影。 心臓が打った。 なんとなく、緊張する。 少しだけ背筋を伸ばして。 後ろからその背中に駆け寄ろう。 そして、とん、と手を肩に置いて。 ああ、うまく言葉になるだろうか。 変なやつだって思われるだろうな。] (107) ななと 2020/06/23(Tue) 18:43:03 |
【独】 転校生 矢川 誠壱/* 大学生になっても雨宮くんはタバコを吸っているだろうか そして要くんに勝手に恋愛相談(という名の報告)をしてもいいだろうか (-838) ななと 2020/06/23(Tue) 20:38:18 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──まだもうすこし先のもしも── [ くああ、と大きなあくびをこぼした。 相変わらず寝坊癖は治らない。 スマートフォンの着信は2件。 一件は祐樹で一件は裕也だった。 Two winsは「終わらない」と宣言した 祐樹の言葉通り、文化祭の後もライブハウスで 何度か演奏をし、そのたびに盛況を呼んだ。 ただ、相変わらず曲は書けないと跳ね除ける ツインズにはデビューだとかそういう話は くることもなく。大学生になってすでに 2年と少しが経った現在もゆるゆると コピーバンドとして活動を続けている。] (121) ななと 2020/06/23(Tue) 23:01:18 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 祐樹の声は人の耳を引くし、 見目麗しい双子に人気が出ないわけもなく 着実にファンを増やしていっている。 ちなみに、以前のベース担当はというと、 己にその枠をわたして、県外の大学を受験し あっという間にこのバンドを去っていった。 相変わらず仲はいいし、あのころよりも ずっと自分とも交流はあるけれど もう一度バンドをする気はないらしい。 というわけで、間違いなく、矢川誠壱は Two winsのベース担当なのである。 メッセージがきているのを開くと、 こちらもまた祐樹からだった。 W次のライブ決まった 再来週の金曜の夜だけど 予定大丈夫そう?W なるほど、おそらく電話もその件だろう。] (122) ななと 2020/06/23(Tue) 23:01:52 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 父の転勤は相変わらずだけれど、 もう一緒に転々とするような歳でもない。 学園から二駅離れたところにある 大学にそのまま進学して、現在21歳。 一人暮らしは気ままなものだ。 もちろん仕送りに足すためにバイトも しているし、それなりに忙しくはあるが バーでのバイトは、楽しかった。 恋愛云々に関しては今もからきし。 というか、正しくは好きな人がいる。 …否、好きな人になった、のだ。 バーカウンター越しに誘われることも、 大学の同期やライブ終わりに 声をかけられることもある。 だがなぜだろう。 微塵のときめきも感じないのだ。 ある一人の人間を除いては。 だから、つい1ヶ月ほど前。 高校時代からの年下の友人に話した。 どうやら俺はあいつの事が好きらしい、と。 そのときどんな顔をしてたっけ。 あまりにあっけらかんと話したから、 もしかしたら面食らっていたのかもしれない。] (123) ななと 2020/06/23(Tue) 23:03:51 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ───同性で、友達だった。 いや、そうだな。 友達なんだけど、特別な人だった。 自覚したのはわりと最近の話だが それに納得すれば話は早かった。 今までの感情にも整理がつくのだ。 同性を、ましてや友人を好きになるなんて、 もっと悩むべき事なのかもしれないし、 もっと思い詰めるべき事なのかも しれないのだけれど。 そんな気持ちは微塵もない。 ただ、はっきりしているのは、 間違いなく自分は彼のことが好きで、 自分にはそれを伝える術があって 受け入れてもらえるかどうかはさておき 今のままでは嫌だということだった。] (124) ななと 2020/06/23(Tue) 23:04:35 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 約束していた場所へ向かう前、 先に喫煙所へ寄るとそこには 案の定彼の姿があった。 自覚すれば、その笑顔も、 声も、髪の長さも、指の動きも 伏せられたまぶた、光に当たると 薄く茶色だとわかる瞳の色 くわえたたばこがほんの少し恨めしい程 なにもかもが愛おしく思えるのだから 人間不思議なものだ。 喫煙所の窓越しに手を振る。 目があって、撓む。 こちらに気づいたのがわかった。] (125) ななと 2020/06/23(Tue) 23:04:58 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ それからそっとその扉を開いて、 中へと足を踏み入れる。 この匂いにも随分慣れた。 自分は相変わらず吸わないけれど。 ジジ、と小さく燻る灰の音がした。] 今日晩飯どっか食いにいく? [ 形の良い唇が開く。 答えにうんうんと頷いて。 片手にスマートフォンをとった。 返信をしておかなければ、再来週の金曜日。 ついでにバイトに休みの申請を 連絡しておかなければ。 ふと上げた目線の先にあった、 柔らかな髪が、揺れる。 晒された白い首筋に光が当たった。] (127) ななと 2020/06/23(Tue) 23:06:00 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 口から、当たり前のように吐いて出た。 遠くでテニスサークルが打つ ボールの小気味良い音が響いている。 ロマンチックさのかけらもない。 スマートフォンの画面をタップして、 「りょーかい」と祐樹に返信した。] あ、あと次のライブ再来週の 金曜だけどこれたりする? 要にも連絡しとくけど たぶん体調次第だろうし。 [ そう続けて。 またスマートフォンが震えた。 祐樹からだ。「ちょっときて」と 書かれているからこれはたぶん 曲のことで裕也と揉めたんだな、と頷いて。] (129) ななと 2020/06/23(Tue) 23:07:01 |
【人】 転校生 矢川 誠壱あ、ごめん、ちょっといくわ [ そういって壁につけていた背を離して、 ポケットにスマホを押し込んだ。 出て行く直前「あ」と小さく落とし、 立ち止まる。いけないいけない。 さすがにさっきの言葉を なかったことにするつもりはないのだ。 彼の唇にあるタバコをとって。 それに口をつけるか一瞬迷って、 かわりにその唇に自らのそれを当てよう。 かすかなリップ音とともに離せば、 高校の時、文化祭の日に理科室で吸った タバコの煙たい苦味が思い出された。 あのときは返したそれを、 目の前の灰皿に押し付けて。] (130) ななと 2020/06/23(Tue) 23:07:21 |
【人】 転校生 矢川 誠壱───さっきの、考えといて [ と首を倒して笑い、その場を去ろうか。 一度や二度断られたくらいでは 諦めるつもりは毛頭ない。 きっとゆっくりしていては あっという間に掻っ攫われてしまうから。 彼にとってのW特別な人Wに 今度はまたあのときとは 別の意味でなりたいと願うのは きっと悪いことなんかじゃないから。 バンドメンバーのもとへ向かう途中。 足取りはなんとなく軽い。 キスをした。だがその唇の柔らかさより その直後の顔を思い出しては なんだか笑えてしまった。]* (131) ななと 2020/06/23(Tue) 23:08:09 |
【独】 転校生 矢川 誠壱/* あと雨宮くんとお付き合いできたらやりたいことはひとつあるんですけど、それはわからないのでまたいずれ書きます (-876) ななと 2020/06/24(Wed) 8:09:16 |
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