196 【身内】迷子の貴方と帰り道の行方
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[わたくしの答えに見当をつけているのは、
ラサルハグさんだけでしたね……。
悲しげな声を聞けば心は揺れますが、決意は揺るぎません。
ただ、帰してもらうだけと思っておりましたので、
まさかお土産の用意までしているとは思いませんでした。]
帰ってどのように言い訳したものかしら?
とは思っていましたが、
手紙は有り難く頂戴しますけれど、
お土産までいただくのは……。
[とは言え、実験に無償で付き合ったというのは
現実味に欠けますので、聞き入れる他はなかったでしょうね。
受け取り拒否が認められない様なら、
せめて感謝の意を、精一杯お伝えしましょう。]
有難う御座います。
素敵な贈り物、頂戴いたします。
一夜の記憶と共に、
一生の宝物
です。
[膝をつき、しっかりと受け取ります。
わたくしも何か……と思いましたけれど、
物を残しては却って、心患いの元になるやもしれません。]
お返しになるものではありませんが、
一つ約束を残していきます。
わたくしは、必ず幸せになりますわ。
わたくしの人生を、幸福を、案じてくださって有難う。
[スカートを摘まんで一礼すれば、
もう思い残すことはありません。
魔法をかけられ、帰り道が開けば、
一度だけ振り返ります。]
さようなら。
再び会う事は決して無くても、
わたくしはいつまでも、ラサルハグさん、ネリリさん。
貴方方に幸あらんことを、祈っております。
[魔法使いの彼の背に、少女の姿が見えました。
最後にやっと、相見えることが出来ましたね。]
流石にお誕生日のご令嬢を預かったんだからね
手ぶらで帰す気はないよ。
[そうだね。報酬という事で貰ったという体にする
それが一番無難だろうね。
]
おや、一生なんて随分大きく出たね。
魔法使いとでもこんな形で出会うのはこれきりだ
たまにでいい。思い出してくれたら嬉しいよ。
[こちらは物は流石に受け取れないかな。
何かが残らない方が、いいのは確かだ。]
ん。それは素敵な
置き土産だ。
絶対だよ。
[スカートをつまむ姿に
此方も丁寧に頭を下げて礼をした。]
うん、さようなら。
……ありがとう。ほら、ネリリも
[最後にだけあった目と目。
彼女を見送って、姿が見えなくなって
それから悲しみに満ちた声が場に響く。]
……いなくなっちゃったね
ぼく、そんなに間違っていたのかな
─── 彼女には帰る場所があったんだ。
そんな子を引き留めは出来ないよ。
ね、もうこれで終わりにしよう?
もう限界だって
わかってるだろう?
だからっ! だから……
一緒にいてほしかったのに
取り込んででも引き留めたかったのに……
ネリリ。
それは、人の生を奪う行為だ。
わかってて見過ごしていた僕も僕だけどね。
……僕も、君もとっくに人間じゃないんだろうね。
嫌がってる子は帰していたけど
やっぱり後から後悔するものなんだね。
だから、最後はちゃんと後悔にならないでよかった
[ここにいれば苦痛がないのは本当だから。
それを言い訳に罪を重ねたには変わりない。]
でもそうだね……
───── 寂しくなったなぁ
[その言葉が、僕のまぎれもない本音だった。]**
[最後の客人。
もう、限界。
彼女に語る事をなかったことについて
最後は語ろうか。
もうと言うべきかな。
やっとというべきかな。
僕の時間も残りが少なくなってきていたんだ。
万能のように力をふるっていても
招けた人間が一人の時点で
そこまで衰えていたのかと実感していたんだ。]
[以前取り込んだ精神の寿命が近い人たちも
気が済むまでは何とか維持させてあげられたけど
もう自然と溶けきってしまうだろう
結果的にエルメス嬢が最後の招待となった。
ねぇ、最後位ちゃんと出来たかな。
彼女の意思のまま、結末を受け止めは出来たけど。
僕の事、彼女の事、忘れないでくれる?]
ネリリ……
僕は誰かに期待して動くべきなのかな
[残り時間が見えてきた今なら、同じように年を取る可能性
それもあるかもしれない。]
魔法使いさんがそうしたいなら
していいと思うよ。
ぼくは最後までここにいる。
それだけだよ。
[ネリリには選択肢はない。
体を取り込んでしまった以上この敷地から離れられない。]
……いいや。
疲れた。
寄り添ってくれる存在は……君がいればいい。
[そうだな。残り時間はネリリと自分の存在と
国への貢献にすべて使おうか。
この家を、家族を失ったら
次にまた作るだけの気力も力ももうない。
せめて最後はここにいてくれた彼女と共に朽ちたい。
誰かと共にあるのなら、ずっといてくれた存在がいい。]
わかった。うんっじゃあ最後までい〜〜っぱい遊ぼう!
美味しいの食べて、お庭綺麗にして
あ、エルメスお姉ちゃんが結婚する時は
こっそりプレゼント贈れないかなっ!
[その言葉に軽く笑った。]
のぞき見は感心しないけど
そうだね、お名前は教わったし結婚する時
情報貰えるよう手配しておこうか。
こっそり祝福をしてあげるくらいいいよ。
[幸福になれる相手じゃなかった時は
修道院に逃げる選択肢もあったから
それを出来るかどうかは彼女の頑張り次第だけど
そういう未来を夢見たっていいだろう。
やった〜とはしゃぐネリリを微笑ましく眺める。
最後のお客人
君がもし、もしも幸せな結婚式をあげる時は
この桃
色の薔薇を贈ろうか。
幸福
の花言葉を添えて、最後の贈り物だ。]
| [そうして、結婚式の日 二人の誓いの後 二人に桃色の薔薇が降り注ぐことになる。 それは、体にはあたらず、床に落ちれば消えてしまう どこかで見た現象だ。 >>0:86 なら、手に取れば勿論。] (14) 2023/01/19(Thu) 20:43:24 |
今日からここが僕の家、か……
[誰もいない館は静かで、寂しかった。
それは無意識。
誰か、誰か。誰か僕の隣にいて。どうか誰か ]