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【人】 受験生 雨宮 健斗[驚いて近藤の顔を見る。 昨日のお礼、と言う言葉に、 んが、と変な声が出た。 ] そんな、気使うなよ… いや、もうなんか礼を言われると 逆に申し訳なくってな… [なにが、とは、言えない。 けれど、あの近藤との時間があったからこそ、 気づけたことがあったと思うのだ。 あの後に、なにがあったか。 いつかこの後輩に話すことはあるのだろうか。 手の中で、開いた紙袋の中には、 バニラじゃない、リップクリームが、 ころん、と立っていた。 ]* (98) 2020/11/30(Mon) 15:12:53 |
【人】 受験生 雨宮 健斗何、指でした訳じゃないよな。 その辺は、硬口蓋。奥まで行くと、 軟…軟らかい方の軟口蓋。 そこまで行くと嘔吐くから、気をつけて。 それは、また、別のプレイらしいぞ。 知らんけど。 [なんて、リップクリームのお礼に なるはずもない情報を一つ、送って。]** (124) 2020/11/30(Mon) 18:50:07 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[遠くから、近づく足音。 ああ、認めてしまえば、ただの足音だって、 誰のかって、すぐわかってしまうなんて、 サイアクだよ。 名前が呼ばれて。 わかっていたのに、びくり、と 思った以上に身体が跳ねた。 悪戯を見つかって叱られる前の子供みたいで、 振り向けなくて。 見上げていた視線を足元に落としたら ついでに肩も落ちた。 ] (145) 2020/11/30(Mon) 21:57:12 |
【人】 受験生 雨宮 健斗…なんで、 [あやまんの、とか、あんなことしたの、とか、 続きは言えなかった。 心臓の拍動に合わせるように、ズキ、ズキ、と、 今更掴まれていた肩が痛んだ。 ]* (147) 2020/11/30(Mon) 22:00:41 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[特別で、大事な人、なんて。 友達の延長線上。 そう言えば、変わらないでいられる? 知ってしまった気持ちに、名前はつけないで、 また蓋をして、閉じ込めて、馬鹿言って騒いで、 笑って。 もう、知ってしまったから。 それは結構、残酷だなと口の端が歪む。 ] …馬鹿じゃねぇの。 ・・ お前は特別で大事な友人にキスすんのかよ。 [声が詰まる。 そんなことを言いたいんじゃ無いのに。 ] (150) 2020/12/01(Tue) 8:07:22 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[差し込む月の光は人工的な光とは異なる色で 動きかけた足が止まるのを照らして、 矢川の眉根がぎゅ、と寄るのが良くわかった。 問われた事に、違う、って、 すぐに口は開いてくれなくて、 ぎり、と噛み締める奥歯の音が聞こえた。 堰を切って流れ出すような矢川の言葉を。 言いづらいこともきっとあるだろう、 必死ささえ含むような、その声を、 いつもよりずっと困ったように 寄せられるその眉根も、 全部、全部、漏らさずに、受け止めたいのに。 なんでかな、視界が滲む。 ] (154) 2020/12/01(Tue) 10:54:09 |
【人】 受験生 雨宮 健斗矢川、俺。 好きなやつ、いたみたい、って、 そう言ったんだ。 [一歩だけ、踏み出した足は、 思ったより、震えてなかった。 ]* (156) 2020/12/01(Tue) 10:57:54 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[結ばれた唇が、また開くのが見えた。 すう、と息を吸い込むのもわかって、 吸った息の割に短い言葉が 返ってくるのを聞いていた。 一度落ちた視線が、また上がる。 謝罪と、礼を伝える矢川の顔から 視線は逸らせずにいた。 今どんな顔をしているか、 わかっているのだろうか。 応援する、なんて言う彼は、 もしかして笑っているつもりなのだろうか。 ] (158) 2020/12/01(Tue) 13:45:10 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[体調を気遣う言葉が聞こえる。 ああほら、やっぱり。 こんな下手くそな笑顔、記憶になかった。 ] (…あ、そうか。俺、大事なとこ…) [どくん、と心臓が跳ね上がる。 差し出された手を見つめて、 届く距離まで足を進めた。 何も言わずに差し出されたのはちゃんと右手で。 ふ、と笑いが溢れて、それをそっと握り返した。 ] (159) 2020/12/01(Tue) 13:47:17 |
【人】 受験生 雨宮 健斗なんでお前がそんな顔、してんだよ。 [さっきと同じ言葉を繰り返す。 ] 泣きたいのはこっちだよ。 …まじサイアクだ。 [握った手に力を入れて、ぐいと引き寄せた。 腹の立つことに、ちょっと背のびをしないと 届かない。 少しだけ、かさかさした唇に そっと己のそれを重ねて。 ] (160) 2020/12/01(Tue) 13:50:05 |
【人】 受験生 雨宮 健斗…馬鹿じゃねぇの。 言えるか何回も。 [つい、と顔を背けて。 けど、とぽつり付け足す。 ] …友達で、男だし。 積み上げたの、壊れるのが 怖いんだよ俺。 理由がわかんないまま あんま寝られなかったり 食えなかったりしてて。 手は死んでるし、ピアノは弾けないし。 ───だけどさっき、わかって。 (163) 2020/12/01(Tue) 18:22:12 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[しょうがないから繰り返してやったのに、 最後まで言えなかった。 長い身体を折るようにした矢川が、 俯いたままの唇を掬い上げて塞いだりするから。 ──聞こえた言葉に、ふ、と息が漏れて。 笑ったはずなのに視界が滲んだ。 ]* (165) 2020/12/01(Tue) 18:23:28 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[久しぶりに、腹が減ったな、と感じた。 けれど残念ながらというか当たり前というか、 バーベキューは終わっていて。 どこからか知らないけれど、己が倒れた、 と言う情報はある程度伝わっていたようで、 何人かには気遣う言葉をかけられただろう。 その都度、さんきゅ、大丈夫、と返しながら、 赤羽にバレたらまずいな、と苦笑いして。 ] (175) 2020/12/01(Tue) 21:52:44 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[I love you を月が綺麗ですねとでも しておきなさい、と言った文豪の気持ちは、 わかるはずもないのに、 おっさんやっぱやるな、なんて 頷けるような気がした。 我君ヲ愛ス、なんて。 そんな言葉で括れないものが、 世の中には嫌と言うほど溢れてる。 深淵でもがきもせずただ沈んでいた己に、 伸ばされた手があったこと。 人より少し大きな手に掬い上げられながら、 暗闇から光が見えたような気がしていた。 ───あれは、きっと今日みたいな綺麗な月。 ] (178) 2020/12/01(Tue) 22:49:28 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[さて。 なんやかんやで向かい合ってしまえば、 この同室というのはなかなかどうして 困ったもので。 ───なんて思っていたけれど、 窓の外に今度こそ本当に張り付いた 軍曹(体長約20センチ)と目が合ってしまって、 それどころじゃなくなって、布団を頭から被って、 …いつのまにか、眠っていた。 こんなに、ゆっくり眠ったのは、 随分と久しぶりだった。 ] (179) 2020/12/01(Tue) 22:51:37 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[目が覚めたら、ベッドから足がはみ出して 狭そうに寝ている男がいて。 昨日の朝を思い出して、苦笑混じりのため息を 吐きながら、アラームを鳴らし続けた。 ───そりゃまぁ見事に起きないもんで。 しまいには上に飛び乗って起こしてやろうか、 と一瞬過ぎったけれど、以前言葉を交わした バンドメンバーの話を思い出して踏み止まる。 代わりにそっ、と前髪に手を差し入れて。 近くで見る唇は、やっぱりカサついていて、 親指で撫でた。 ちょっと悩んで、またままごとのような、 かすめるだけのキスをひとつ、落とそうか。 ] (180) 2020/12/01(Tue) 22:54:30 |
【人】 受験生 雨宮 健斗[遅刻魔の意識がようやくはっきりしたころには すっかり日が登る。 遅すぎる今、何時、には、 しかめ面で起床時刻ぎりぎりアウトだよ、 と返す。 慌てる様子もなく欠伸をする様子に呆れて、 文句を言おうとしたらつられて欠伸が出た。 手招きをしているその頬は緩んでいて、 ドキリとしたことを恥じて隠すように ふいと顔を背けたら、布団から身を乗り出して、 ───キスが降る。 ] 朝から何やってんだ。 [と睨んだ顔はきっと、 赤かったと思う。 ] (181) 2020/12/01(Tue) 22:56:36 |
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