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人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

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視点:


【影】 うたかたの ダニエラ

ニコロ! いざや恩讐の碧落に絶えよ!
2023/09/20(Wed) 21:00:00

【影】 うたかたの ダニエラ

あるモーテルの入口。
冷えた風が肌を撫でる。女は立ち尽くしていた。


「una regina fulgida e bella al pari d'una fata
 siede accanto alla culla tua dorata...」



口ずさむのは『子守歌Ninna Nanna』。
歌うその声が微かに震えた。
…本当はそんな資格なんてない。自分が1番、分かっている。

誰かを檻に入れただけ、大事な人が檻へ行く。
なんて分かりやすい構造だろう。
世界は案外、そうやって帳尻合わせて回っているのかもしれなかった。
(&0) 2023/09/20(Wed) 21:19:07

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

ふと気付くと、左手の小指のエナメルに傷が入っている。
女はそれを見つめた後、愛おしそうに唇を寄せる。

そうしてしばし静寂の間そのモーテルを見つめる。
くるりと踵を返した。約束を胸に。

…あたしは今も、ひとりじゃない。
(&1) 2023/09/20(Wed) 21:24:16

【神】 傷入りのネイル ダニエラ

「………」
……人、少なくなりましたねえ。


小さな声。
誰に聞かせるでもない独り言。
顔色こそ変わらないがミントブルーの瞳はやや憂いを帯びて周囲を見つめた。
どこか薄皮向こうの景色みたいだ。

そんな脳裏に1番鮮烈に色付くのは昔なじみのライムグリーン。
小指のエナメルを、そうっと撫でた。

(G4) 2023/09/20(Wed) 22:08:17

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

/*



襲撃予告です。



こんばんは、おさとうかえでです。こたびは
波魔
の役職を賜りました。
日付変更のショック冷めやらぬ中、のっぴきならない事情でアリーチェさんを襲撃せねばならなくなったことをここにご報告致します。

つきましては、初めての絡みが襲撃ロールというのも何ですし、いくらかお話をしませんか?
入村文でお触り頂いたの、とっても嬉しかったですし……(本心)

以上、ぜひ、ご検討いただけますと幸いです。
おさとうかえででした!
(-16) 2023/09/20(Wed) 22:14:50

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

/*
こんばんは、ラッシュ時改札失敗猫です。
来られるかな?と思っていましたが本当に来てくれて感無量です!やった〜!!!

こちらこそ入村文で勝手に使っておいて一度もまだ会話したことがなかったので、ぜひ!お話して頂けると嬉しいです!
万が一役職について何かが出てもいいよう秘話進行の方が楽でしょうか?どちらにせよお任せします!よろしくお願いします!
(-18) 2023/09/20(Wed) 22:19:53

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

――新しいアジト。

そこで男からの留守電を聞いた女は、静かに息を吐き出した。
彼の情報が正しいのならばこれで終わり。
大切なものをどれだけ取りこぼしても、…彼らが大切にしていたものはきっと守ることができる。

それでいて、あのまどろみの中のような日々に戻ることはもうできない。
そのことを嘆く資格もないことなんて分かっているから、ただそっと目を閉じた。

…まあ、仕方がない。
だって最初から。あたしは。

裏切り者
だったのだし。
(!0) 2023/09/20(Wed) 22:30:10

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

/*
歓迎されてる……!!!
安心しました、是非とも秘話進行で…… とも思いましたが白も捨て難くて今唸り始めました。
いや流石に最終日まで役職の話は伏せた方がいいか……そうか……?

ということで秘話にしておきましょう。
これよりお話をしに伺いますのでしばしお待ちくださいませ!
(-24) 2023/09/20(Wed) 22:34:22

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

そうっと、朝礼の終わりあなたに近寄る女の姿があった。

「…アリーチェさあん」
「……ええとお」

――どの口が、と真っ先に浮かぶ。


「顔色、悪いですよお。」
「…大丈夫、ですかあ……?」
(-26) 2023/09/20(Wed) 22:39:10

【神】 傷入りのネイル ダニエラ

「あははぁ。大丈夫、ですよお。」

――へらり。先輩に緩んだ笑みを向ける。
『隙』の文字が皮を被って歩いているような女だ。

「エルヴィーノさんこそお。ええとお」
「…気をつけて、どうにかなるんですかあ、これ……」

(G9) 2023/09/20(Wed) 22:44:37

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

 
「…………あっ、……ダニエラ」
「ごめんね、平気よ。
 ここで蹲ったってどうにもならないのを知っているから。
 平気……に、なるしかないのよね」

顔色は悪い物の、涙で瞳が濡れていたりはしない。
両頬を軽く手で叩いたけれど、あまり効果はなかったようで、そこまで女の表情が晴れる事はなかった。

「ダニエラは大丈夫?無理してない?
 私じゃなくても、他に弱音を吐ける人がいるならいいんだけど」
(-34) 2023/09/20(Wed) 22:56:48

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

対する女の顔色はほぼ平常通り。
元より感情が顔色に出る方ではあまりない。
それでも笑ってみせるのは得意だった。


「ふふー。うんー。」
「あたしはあ、大丈夫ですよお。丈夫なのでえ」

緩んだ口元。
細めた瞳の上を前髪が揺れる。

「……でも、少し寂しいですねえ。」
「こんなに人が、いなくなっちゃうとお。」
(-41) 2023/09/20(Wed) 23:13:16

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

 
「悪法だとは思っていたわ。心配だとも。
 でも、まさかこんな勢いで始めるなんて……

 こんな大がかりだと協力者の数も少なくないはず。
 みんな、どうしてなんだろう。脅されて、なら、
 恨むこともできなくなっちゃうんだけどね……」

もし私利私欲の為なら?そんな想像をすると胸が痛む。
(-47) 2023/09/20(Wed) 23:22:41

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

「協力者…【A.C.A】、ですかあ。」
「んー。分かりませんけどお」

「…あたしも」

「なにか事情があるんじゃないかなあって。」
「そおだといいなあって、思いますよお。」

甘いですかねえ、と眉を下げ。
それでも笑顔は笑顔のまま。
誰かが好感を抱いた朗らかさのままに。

「…でも、そおじゃなかったら」

それが私利私欲のためであったなら。

「アリーチェさんはあ、…どおしますかあ?」
(-55) 2023/09/20(Wed) 23:39:07

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「そうじゃなかったら?
 ……私利私欲だとしても、理由は様々だと思う。
 だから……聞いてから考える、と思う」

「私は裁判官でもないから、公平に判じた場合許されない人を許しちゃうかもしれない。
 逆に、許される人を許せないかもしれない」

「勿論、許さないからと言って私刑を起こしたりはしないよ。
 ただ……こうだからこう、って機械的に決めるよりは、
 やっぱりその人の話を聞いてから、私は決めたい。

 それが相手に対する誠実な対応……
 って、信じたいっていうと、大袈裟かな、あはは」

「だ、ダニエラは?どうするの?」
(-57) 2023/09/20(Wed) 23:45:05

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

「ハハ、まあ、自分の何かが残る、引き継いでもらえるってのは、トシ取ると嬉しいもんだ。
 だから若者にちょっかいかけるんだなオッサンは」

わざとらしく腕をくみ、ウンウンだのと顎を振る。

「ほんとか〜?
 …いやまあ、ジッサイ、よくやってるんだろうけどよ。
 一回警察に授業参観に行くべきだったなあ」

「まあ、自分だけに見せる顔ってやつに男は弱いからな。それでいい」

役得役得、と適当な同意の言葉。
話を合わせていることがミエミエなそういう時こそ、
この男はよく聞いている。


「俺にとって必要でも、お前にとっちゃ無用かもしれんだろ」

そーいうときは、と目を細める。
その双眸はまた、ここから見えるはずもない水平線の――三日月島の朝焼けを、遠く見やるよう遠く。

「まあそれはそれで、好きにしろとしか言えねえが。
 好きに、勝手にしてる女が好みなんだ、俺。これは機密情報だが」

あなたが語るその言葉には、――目元にばかり、笑みを浮かべて。
こまったもんだと、口が嘯く。

「ま、困ったら連絡。な。手助けはできるかもしれねえから」

牢の中でいうことではないが。
(-59) 2023/09/20(Wed) 23:51:23

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

「あたし、ですかあ?」
「……あたしはあ」

む、と口を尖らせて、一考。

「…あんまり考えたく、ないですねえ。」
「難しいこと、面倒くさいですしい…。」

「悪い人がいるなら憎んだ方がラクかなあってえ。」
「だからちゃあんと向き合うのは立派だなあって、思いまあす」

向き合った結果、色良い解答が返るとも分からないのに。
もしくはそれすら騙されて、利用されるだけかもしれないのに。
そう思いながら、思ってもいないことを言う。
優しい人間というのは、本当に損だ。
(-67) 2023/09/21(Thu) 0:09:03

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「楽、か。……それもいいと思う。
 立派なんて言われるけど、抱えきれるものの重量は人には決まっていて、……わかっているのに、それでも聞かずにいられないだけよ。それは立派から程遠いどころか、真逆だと思うの…」

「多分、……私は怖いんだわ。
 楽、で切り捨ててしまった選択肢が、良いものである可能性に」
「……悪いことの方がきっと、多いんだろうけどね」

「だから、楽って言うのはわかるかも。
 ……自分から覗かなければ、傷付かずにいられる。
 きっと、賢い生き方というのはそういうものなんでしょうね」
(-70) 2023/09/21(Thu) 0:22:50

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

それは何より。肩を竦めて。
やっぱりオッサンの気持ちは若者にはよく分からない。

「なあにが授業参観ですかあ。」
「あたしの努力が水の泡ですよお、そんなことしたらあ。」

それよりも、役得に同意されわかりやすく口を閉ざす。
…そこは肯定しないで欲しかった。全部軽口の冗談だと流して貰えた方が、というかそれを想定していたのに。渋い顔。



「んふふ、そおですかあ。」

言われなくとも。女は笑んだ。

「好きにしますよお。その時はあ。」
「もう子供じゃありませんしい。」
「…それにそれなら、あたしだけの責任だと思いませんかあ?」

そう扱って欲しい、と隠しもしない意図が滲む。
だから、きっと本当は――手助けを求めることだって、そう良しとしていなかった。
(-77) 2023/09/21(Thu) 1:06:01

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

「……はあ、なるほどお。」

何とも微妙な声が出た。
だけどこれに関しては、あなたが悪いわけじゃない。

「アリーチェさん…苦労しそおですねえ。」

後輩に抱いたものと全く同じ感想を抱いた。
そうやって女に上手く嵌められた彼は今檻の中にいる。


「…………。」
「なあんの話、でしたっけえ。」

不自然に生まれた間を誤魔化して首を傾げる。
難しい話は苦手。ダニエラ・エーコは、その設定で、合っているし。
(-81) 2023/09/21(Thu) 1:13:16

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ


いつかの時間。
あなたが今日も見回りに出たなら、見回り中の、どこかで。

「お巡りさんの、ダニエラさん……ですよね」

「少しだけ、お話できませんか?
 一般市民のちょっとした相談事を。」

曇り空の下、スニーカーの底が、ざり、と路面を踏んで。
ふと、掛かる声があったかもしれないし、なかったかもしれない。

あなたが振り返ったなら、
そこには少女然とした格好の『一般市民』が居る。
珍しいライムグリーンのウィッグを被ったテディベアを持って。
(-112) 2023/09/21(Thu) 3:33:21

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

「わかんねえかなあ、変装していくんだよ。
 意外とバレねえかもよ、グラサン外していったらよ」

バカでかい背に目立つ赤髪、ついでに名と顔の知れたカポでは無理だ。
口を閉ざす様子には多分、気が付かず。


「ばあか。子供じゃないつってもな、俺はお前の上司で保護者だ。
 他に頼る相手もおらんだろ、そういうまだ面倒見がいがあるやつは……

 ………アレか?
 いるのか? 頼る相手?
 俺の知らん間に?」

…子供じゃないあたりのワードを聞きつけたのか、急に前のめりになってくる。
だが結局は、ハハ、といつものように笑って、壁に肩をつくようにもたれた。

「ま。
 好きにしろよ。
 俺も好きに責任取るから」

嗚呼、勝手な男だ。
(-120) 2023/09/21(Thu) 5:00:46

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → コピーキャット ペネロペ

「んー?」
「はあい。何でしょ ――」

見回りの足を止め、振り返る。
このとき女は珍しく、咄嗟に取り繕うことができなかった。

鮮やかなライムグリーン。
それだけがまず目に留まって。
『一般市民』の姿すら、一時として目に入らない。
(-122) 2023/09/21(Thu) 5:31:57

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

「いやあ。無理があると思いますけどお…。」

それで『冷やかしに来た』とでも言う気だろうか。
1つ分かるのは、その日は定時で帰れそうにないことくらい。


「んー。あー。」
「…まあまあ。それはそれ、これはこれぇ…」

…これは誤魔化す気などなさそうだ。
その気になればいくらでもどうにでもなるのだし。

「……もー。酷い上司ですねえ。」

口を尖らせ、文字通り嘆息。
そうしてその顔の傷がひとつでも増えるだけで、こちらがどんな気持ちになるかなんて考えてもくれないのだ。

「わかりましたあ。…そんなこと、させませんからあ」
「要はあたしがうまくやればいいんですしい…。」

そうして小さな失敗だってできやしなくなる。
…本当に、なんて上司だ。
(-124) 2023/09/21(Thu) 6:22:19

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

「やってみるもんだって。
 終わったらやるから手筈ヨロシク」

多分冗談だが、実際にやるとなればほんとうにやりそうだな気配。


「なぁに〜、どいつだ。今度うちに連れてきなさい」

ビッと親指で床を指さす。牢獄に連れてこさせるつもりだろうか?
──アレッサンドロは放任主義ではあるが、常相手を見ている。
そして自分が放っておいても大丈夫な相手・・・・・・・・・・・・・・・・だと思うと、急にポンと放り出すのだ。


「マア俺も、こんな上司は嫌だと思うが」

にやにやとした笑み。いつもの黒眼鏡がないと、胡散臭さの質が変わる。
ぼったくってきそうなうさん臭さから、急にブン殴ってきそうなものに――
ありていにいうと人相が悪いので、あの眼鏡でもかけていて正解なのかもしれない。

「ハハハハ、できる部下を持って俺あ安心だ。
 ──ああそうそう。
 今の外ン状況がわかんなくてな。
 軽く教えてくれ」

やっとマトモな仕事の話だ。
(-126) 2023/09/21(Thu) 6:55:18

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

「…コーヒー1杯じゃ済みませんよお、それはあ。」

だからって高価なもので済む話でもない。
そもそももし本当に
終わったら
、…その話はその時、行うとしてだ。


「さあー。何のことでしょお」

誤魔化す気はないまま、小癪にもはぐらかしにかかる。
…結果放り出されるとして。生意気に慕うのも行動の源流もきっと変化はないから些事なのかもしれなかった。


「自覚あるならあ、…あー。いいです、もお。」

別に説教をしにきたわけでも、ないし。
本当はこの惨状について問い詰めたってよかったんだ。

「……外はあ。」

報告に上がるのはここまでの逮捕者の名前。
あとは女の協力者がルチアーノ・ガッティ・マンチーニであるということ。
金で雇ったとのことだが、未だ彼には自分とあなたの関係は伝えていないこと。

「…怒ってましたよお。アレッサンドロさんのこと。」
「くそ旦那あ、って。」

そして、彼が今は姿を晦ましていること。そのくらいだろうか。
(-128) 2023/09/21(Thu) 7:25:31

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

「いくらでも淹れてやるさ。俺の珈琲は恩返しだからな」

無駄にこだわってサイフォンなんか使っているから、
結構な時間がかかりそうだ。

「ったく、こっから出たら調べてやるからな。
 カポのパワーを全力で使って…」

なんとも大人げないことを言いながら、
どすん、とベッドに座り直し。


「はあん、なるほどな。
 …ファミリーも随分やられたなあ」

ルチアーノの名を聞いた時には、ぴく、と眉が上がったが。

「ははは、怒るだろうな。
 ま、あいつはなんとかするさ」

適当にそんなことを言いつつ、腕を組み。

「……」
「巡査部長に、リヴィオ・アリオストってやついるだろう?」

くるくる、と指を回し。

「あいつ調べてみ。今日のラッキーカラー」

理由も不明だし、根拠が薄弱すぎる。
(-132) 2023/09/21(Thu) 7:42:10

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

ふうーん、と意味深な感嘆符。
言質はとったしそれじゃあたくさん『恩返し』してもらうとしよう。
何についての『恩』か、全く分からないけど。

「そんなことに全力にならないでくださあい。」

巻き込まれる人間の身にもなってやってほしい。


「…もっと迅速に、どうにかできればよかったんですけどお」

すみません、とその時ばかりは項垂れて。
もたつく間に取りこぼした物の数は多い。

「リヴィオさん…ですかあ。」

その名を呼ぶ時、どこか複雑そうな感情の色が言葉に乗った。
調べたくないというわけではないが。…何故、彼なのだろう。

「わかりましたあ。」

但しそこは従順な部下だった。
幸い彼には、いつでも能動的に仕掛けられる。…上手く情報を取れるかは、また別として。
(-138) 2023/09/21(Thu) 8:13:12

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

「俺が全力でなかったことがあるかよ」

ある。


「いいや、許容範囲だよ。
 死んだわけでなし、まあ、ファミリーとしちゃ被害大だろうが。
 思っていたよりは、かなりマシだ」

予定通りみたいな顔だが、そんなはずはない。
なのでこれは文字通り、“まあこのくらいなら最悪ではない”…くらいの意味だろうか。

「おう。ま、気が向いたらな」

命令…という感じでもない。
自由にやりな、くらいの緩やかさで手を振ると、

「アーそうだ。
 忘れてた。
 ダニエラ、もっかいこっち来い」

……段取りが悪い。今思いついたように、再び手招きする。
だがもしあなたが、そのへたくそな司会進行に招かれて、また格子に近づくなら。

「そこでこう…目ーつぶって。
 こう、顔を格子にもっと近づける。」

…………意味不明な指示だ。
(-153) 2023/09/21(Thu) 9:58:25

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

とある日、街中のテディベアが、大声で啼いた。

『10年前にダフネという恋人がいたがマフィアであり
 警察に追われた際に命を落としている。』

『だから警察を恨んで、中に入り込んだんだろう?
 本当はマフィアと未だに繋がりがあるんじゃないか?』

『ニコロ・カナールには、マフィアと繋がりがある。』


貴方の待ちに待った情報だ。
それと同時に貴方は悟るんだろうか。

カンターミネ・ヴォーフルが、摘発された
と。

貴方が動く材料が、今整った。
(-164) 2023/09/21(Thu) 11:03:51

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

「ありますねえ。」

あるらしいので。


「なら、…いいんですけどお…」

少なくとも、意図的に警察ばかりを摘発させていた自チームはその件には貢献していそうだが。
動けば動くほど、渡る橋を繋ぐロープが擦り切れていくのを感じる。
きっと長くは保たないだろう。だから早くの収束を願う。


リヴィオの件には間延びした返事。
ということは、雑貨屋に行かないと。忙しいなと浮かべていた頃。

「ええ?何ですかあ…?目え…?」

意味不明な指示すぎる。
困惑しつつも指示に従い目を閉じる。
…どこまで顔を近づければいいんだろう。まあ、いっぱいか。
(-189) 2023/09/21(Thu) 12:59:13

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

女――ダニエラ・エーコは、この日まで、あなたを摘発するための理由づくりを考えていた。
街のおまわりさん。――それを利用する?
時折立ち寄るガンショップ。――そこに難癖をつける?
あのハーモニカの音色は、何かの符牒なのかもだとか。

さあ果たして、どうすればあなたを牢へ送れるだろう?

…そんな、時の事だった。
これ以上ないほどの『理由』が齎されたのは。


エーコは俺をよく知ってるからな。
俺のチームがどうするかはわかるだろ?

ある日の言葉が浮かんで消える。
うん、そうだ。彼女はただ黙って捕まるような人じゃない。



「…………ミネ…。」


ただ一言、その名を呟いたきり。
それ以上のことが自分に許されるとは思っていなかった。

今は、ただ。
彼女が最後に残した『理由』を手に、その下手人――あなたの元へ向かう。
市民の通報よりも、ずっと速く。
(-192) 2023/09/21(Thu) 13:13:51

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ


「内緒の話なんです」

『一般市民』はあなたの様子を見て。
テディベアに視線を落として。
口元に片手の人差し指をあて、困ったように笑う。

「立ち話も何ですから。
 近くに行き付けのバールがあるんです。そこで話しませんか」

お喋りなライムグリーンはそこには居ない。
けれど彼女の作った、彼女の声を吹き込まれたものがある。
その代役を連れてきた事には、意味がある。
(-196) 2023/09/21(Thu) 14:29:36

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → コピーキャット ペネロペ

「…………………、あー。」

あなたが告げ終えるだけの時間ほぼ全てを、気を立て直すのに使った女は間の抜けた声を出す。

「…はあい。ふふー。」
「そおいうことでしたらあ、お供しますよお。お姉さん。」

そうしてからの持ち直しの速さはなかなかだった。
頬を緩めてふにゃりと笑い、あなたに付き従うことだろう。
(-203) 2023/09/21(Thu) 15:53:37

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ

都合の悪い発言は無視するタイプのカポ・レジームだ。

「ああ。
 俺はそれでいい。

 お前が辛ぇなら、それは辛がれ」

また放任。
任せる任せる、なんて言いながら。


「うむ」

ぺたぺたと、スリッパ履きの足音が近づいて。


ちょん、と。
あなたの唇に、なにか硬いものが触れて、


         
グイッ
と押し込まれた。


「差し入れでもらったんだが、甘いの苦手でな。
 食ってくれ」

……飴玉だ。多分、レモン味の。
ついでに、なにか平たく小さなもの油紙に包まれたデータチップが一緒に。
…どちらにせよ、女性の口に指で押し込むものではない。。
(-205) 2023/09/21(Thu) 16:07:22

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

「……。」
「…はあい。」

沈黙の後、肩を竦める。すまし顔。
任されましたあ。…そうやって、先送り。


んー、と足音を聞きながら。
こう言うのを素直に聞くのが良くないのかもしれないと今更。
まあでも、相手が相手だしなあとその辺りまで思考が飛んだ頃。

「――!?」

口の中に酸味のある甘い塊が捩じ込まれ。
流石に、驚く。ただすぐに持ち直すだけで。
ころころと飴玉を口の中で転がしながら、共に押し込められたものを選り分けるまでは多分数秒くらいだった。

「あのお。」

でも、文句くらい言っていい気がする。

「……。」
「なんでもないですう。」

…つい最近似たようなことがあったのを思い出した。
あれはトリュフチョコレートだったけど。
美味しかったし、飴もおいしい。
(-207) 2023/09/21(Thu) 16:37:23

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ


「あ、任務追加。
 ファーストキスと同じ味だったら教えてくれ。
 レモン味ってやつ、意味わからんよな」

セクハラだ。

「なんだ、もっと欲しいのか」

なぜこの男は、牢獄にお菓子を持ち込めているのだろう。
差し入れでもダメなはずなのだが。

「ほかなんかしとくことあるか?
 あんまり長居するとよくないだろ」

まだ格子にもたれたまま、なんかあるならいってみ、なんて手振り。
(-210) 2023/09/21(Thu) 16:46:26

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ


年齢のわりには大した胆力だ、と思った。
時間こそ掛かったものの、柔い笑みは常のものだろう。
動揺から立ち直って即座にそれを作るのは、容易な事ではない。

「人払い頼むわ」

バールに入れば、それだけを店員に告げ。席を通り過ぎ、
『関係者以外立入禁止』とプレートの掛かった扉を開け、
あなたを伴ってバックヤードへと入っていく。

人の気配は引波のようにさあっと引いていった。
(-213) 2023/09/21(Thu) 16:56:36

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ


「さって、単刀直入に本題に入るとしようじゃねえの」

雰囲気をがらりと変えて、あなたに向き直る。
椅子に掛け、椅子を勧めこそすれ、あなたが座るかは自由だ。
口調こそ荒いものの、それは腹を割ったもの。
猫被りの言う事など、信用ならないかもしれないが。

「あんた達のやり取りを盗み聞きしてる内片方は俺だ。
 声掛けたのは単に一度くらいは
 顔合わせて話しておきたかったからな。
 俺なりの誠意ってやつ。ビビらせたんなら悪いな」

「俺とカンターミネとは同僚。
 あいつが居なくなった後の事任される程度の仲だ」

そこで言葉を一度切る。
情報と認識をを整理する必要があるだろうと。

「俺ァあんた達のやり取りをどっかに流す気も無いし、
 それ材料に脅迫だの命乞いだのをしに来たわけでもない。
 まあマジで盗み聞きしてる…させられてる?だけだ。」

「あとこいついる?」

ぐに、とテディベアの腹を押した。
それはあなたもよく知った声で、
《なあなあ、最近どう?俺は順調》と鳴いた。
既に持っているなら必要ないだろうが。
(-214) 2023/09/21(Thu) 16:58:02

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 黒眼鏡

「えー。」
「そんな昔のこと覚えてませえん」

爆弾発言だったかもしれない。

「特にありませえん。」
「それどころか、
用事
を思い出したのでえ。」
「お暇しましょおか、そろそろお」

かつ、と革靴の底が鳴る。

「あー。また」
「気が向いたらあ、様子見に来まあす。」

「……………………
心配、なのでえ。


蚊の鳴くほどの声で添えて。
その靴の音が、離れていく。
(-215) 2023/09/21(Thu) 17:04:42

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → コピーキャット ペネロペ

連れられた先、勧められた席に女は座る。
どこか弛緩した雰囲気の女だ。
あなたの変貌ぶりすら、意に介さずに。

「あー。お兄さんでしたかあ。」

これである。

ふうむと話の中を聞き。
なるほど、お兄さんルチアーノの言っていた人だったか。
そう何の心配も懸念さえも抱いていなさそうな顔。
そこだけ見ればまるで、陽の当たる喫茶店のテラス席のような。

ただ。

「……。」

テディベアが鳴くと、微かに眉間に皺を刻む。
戴きますう、と心のまま。要らないなんて、言えるわけがない。
(-220) 2023/09/21(Thu) 17:31:46

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

ここ暫くの女といえば。
警察署とホテルの往復。
惰性のように続ける食べ歩きのルーチン。
奇数日はサンドイッチ。偶数日はベーカリー。
まるで何も変わりなかったかのように、…その頻度こそ多少落ちるが勤務後の食べ歩きも続けるほどだった。
ダニエラ・エーコという巡査はそうあるものだから。


「……。」

さて、そして、そんな帰り道だろうか。
何故か猫に懐かれた女は足を止めている。
…いつかパン屋のお兄さんが困り果てていたのを思い出す。
確かに間違えて蹴飛ばしてしまいそうだ。動けない。

ならば抱き上げればいいのだと、割と真っ当な結論に至った女はしゃがみ込む。
そこでもう一度動けなくなった。猫とはどのように抱くものだろう。

「…………。」

諦めて、ゆっくりその手を伸ばしてみる。
右手だ。腕には時計がついている。
触れるというにはおっかなびっくりなしぐさでその身体についた葉や土を払おうとする。

女はこの歳にして猫に触れたことがなかった。
(!2) 2023/09/21(Thu) 17:50:53

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ


「そ。なんか重要そうな事喋ったら教えてくれや
 たまに妙な事も喋るがまあ気にすんな」

そう言って、テディベアをあなたの方へ差し出した。
あなたが受け取れば、テディベアはあなたのように
くったりと弛緩したまま。その手の中に収まるだろう。

「要件はマジでそんだけだ。時間取らせて悪かったな。
 茶の一杯でも奢ってやりたい所だが…」

そっちも忙しい
だろ?
 情勢が落ち着いた頃にでもゆっくり奢らせてもらうわ」

そんじゃ、と伝えたい事を伝え終われば猫被りは席を立つだろう。
あなたは暫くそこに居てもいいし、その場を後にしてもいい。
とはいえ互いに忙しい身なのだろうけど。
(-223) 2023/09/21(Thu) 17:56:32

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

葉っぱを払い、ついでにふうわりその背を撫でる。
嫌がる様子を見せない猫の様子を見て、戯れるように指先が額や喉元へと伸びていく。

少し触れてみると、あっという間だった。
元から遠目に眺める猫のことは好きだったのもあるかもしれない。
そうして首筋にその指先が伸びたとき、柔らかな毛に埋もれた首輪に気付いた。
…このケーキ屋の猫だろうか。

迷うような素振りのあと、遂に意を決した。
そうっと猫の身体の下に手を差し込むと、背を撫でたよりずっと柔らかな手触りと体温が伝わってくる。
ゆっくり抱き上げたところでどう落ち着けたらいいのか分からなくて暫くぶらん。
…下手くそな抱き方だったけど、それからどうにかこうにか形にはした。

首輪の住所に向かう。
革靴がいつもより少し控えめに、こつこつ。
(!4) 2023/09/21(Thu) 19:00:32

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → コピーキャット ペネロペ

受け取ったテディベアを見つめると、人目もはばからずやおらに抱き締める。

「…はあい。」
「ありがとうございますう…」

そうして諸々については承諾した。
お茶なんて。このテディベアだけで十分だったのだけれど。

あなたがそうして立ち去ったあとも、短い時間だけ女はその場に残る。
同じ色のウィッグに少しだけ顔をうずめて、微かにその肩を震わせた。
(-232) 2023/09/21(Thu) 19:15:50

【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ


「…あ、これセクハラ?」

今更。
…爆弾に目を丸くしつつ、あなたを見送る。いつもどおり。

「おー、またな。……」
「心配性だねえ」

苦笑するような気配が、遠ざかってく。

………
……




チップには、『プラン』とやらが書かれている。
どうやって調べたのか留置所まわりの機密に触れうる各種情報と、
『合図があった場合、あるいは取締法が突如廃止になった場合、混乱と立場を利して脱獄を手伝うこと』
…と書いてあった。
人任せなプランだ…。
(-247) 2023/09/21(Thu) 20:23:26

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

勤務帰り、女は必ず自宅のアパルトメントに立ち寄る。
根城としているアジトはここより少し遠く、前あったアジトより更に遠くなったが、それでもここに立寄ることだけは欠かさなかった。

部屋にはかなりの数のダンボールが積まれている。
地震でも起きれば雪崩が起きそうなもの。イタリアは地震の多い土地だ。
そのダンボールの、真ん中で。

「…はあ。」

呆れだか溜め息だか、どちらとも取れない声を上げる。
……多分両方、しっかり含有していそうだ。
そうして疲れた眉間を揉みほぐし、ぱたんと端末を片付けた。

「…まあ」
「いいですけどお。」

そう呟く口許が微かに緩む。
べちゃりとデスクに頬を預けると、それも歪み冷たさだけが頬に移った。
…そうやって90度回転した視界に何かが映る。
ダンボールの山の中に少しも紛れられていない、ボストンバッグにスーツケースだ。
(&2) 2023/09/21(Thu) 20:51:30

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

……。
身体を起こす。重いんだ。これは。
結局、中身は何なんだろう。

「……。」

また眉間に皺が寄るのに気付く。
持ち帰る間の、墨を落としたような心地がにわかに思い出された。
あれから、別に状況は何ひとつとしてよくなってはいない。
寧ろ悪くなっているはずだ。
…現実だけをただ見つめれば、もうこの手の中には何も残っていやしない。
(&3) 2023/09/21(Thu) 21:28:58

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

「………。」

考えないようにしていたことが、すうと脳裏を横切っていく。
バッグの隣に膝を抱えて、ミントブルーの瞳を伏せた。

日差しが傾き、窓から差し込む赤い光に照らされる。
小波の音が聞こえる気がした。
瞼が少しずつ、重くなる。
そういえばここ数日は、あんまりしっかり眠れていない。
波の音に紛れ、歌声も聞こえるような気がしてきた。
髪を撫でる手が、ひとつ、ふたつ。…みっつ。

そして。





……寝息が、微かに聞こえている。
膝を抱えていた手がゆっくり、ことり、と床に落ちた。
(&4) 2023/09/21(Thu) 23:06:05

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

ある日の警察署。
あなたのデスクに近寄る女の姿がある。

「……リヴィオさあん。」

ゆるり。間延びした声に、周囲の空気が弛緩する。
思えば女の様子がおかしかったのは、あの日1度きり。
あとは変わらぬ気怠さとともに、毎日職務に向き合っていた。
(-281) 2023/09/21(Thu) 23:36:34

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

下手人――
ニコロ・カナールは
丁度カンターミネの移送を終えたところだった。

そこは牢屋から上の階層へ上がった通路で
彼以外の所員は、通達やら何やらで居ないところで。

貴方がやってくるなんて、まだ思っても居ないように
何かを考えるように、そこにいるだろう。
(-283) 2023/09/21(Thu) 23:46:51

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

いつもなら鏡を見てばかりの男も、
今日は書類に向き合って少しだけ忙しなく見える。
勿論、君の姿が見えたなら笑顔を見せて。

「…おや、ダニエラ君じゃないか。
 丁度君に会いに行こうか悩んでいたところだった」

そう言いながら懐から取り出すのは、
近くのパン屋のフォカッチャ2つとお水。
飲み物は何が好きかを考えていたら迷い迷って。
結局、当たり障りのないものを選んでしまった。

押し付けるために差し出して、
受け取って貰えたなら満足そうに。

「……っと、すまない。
 君の用件を先に確認すべきだったね」
(-287) 2023/09/22(Fri) 0:08:52

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

「ニコロさあん、…どおもお」

女は――笑顔だった。
けれどいつもの眼鏡はない。
どんな時でも、女は笑うことだけは得意だった。


「お仕事お疲れ様でえす。」
「…ニコロさん、【A.C.A】だったんですねえ。」

知りませんでしたあ、といつもの間延びした声。
へらりと笑って、革靴の底を鳴らしながら近付いてくる。
(-300) 2023/09/22(Fri) 3:00:29

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「ええ?あたしにい?」
「どうかしましたかあ。」

小首をこてん。
ややあって、取り出されたものにわあと表情を輝かせた。

「いーんですかあ?やったあ」

戴けるものは戴く主義だ。
それは嬉しそうにお礼を言って、へらりと笑いかけている。

「あたしい。…あー。」
「あたしの要件はあ……」
「…んー」

本当は、とある人からあなたを『調べる』よう言われここに来た。
用意してきたのは犬のヘアピン。…正確には小さなヘアクリップ。
それと、もうひとつ。
仕込み
のされた、銀のヘアピン。
いつものように、それを渡すだけでいい。いいの、だけれど。


「…せっかくですからあ」
「ここで食べても、いいですかあ。」

「リヴィオさんも食べましょお。」
「2個、ありますしい。」


そう言うと、自分のデスクから椅子をからころ引き摺って。
ちょこんと座った。返答を待つより前のことである。
(-303) 2023/09/22(Fri) 3:23:49

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ

ダンボールの積まれた部屋の中。夕焼け色に照らされてまどろむ。
子供の頃はよくこうして膝を抱えて眠っていた。
もしお母さんが帰ってきたら、すぐに起きてお出迎えできるように。

そんな女の傍らには、アレッサンドロ・ルカーニアからの預かり物。
ボストンバッグに、スーツケース。
…開けるな、と。
そんな指示すら只管に守り続けるような女だったから、それが開かれることはない。
だから女が、その中身を知ることはないはずだった。

…噂に聞く『情報屋』に会えるのならば、話は違うのだろうけど。



/*
お疲れ様です、おさとうかえでです!
上記の通り、黒眼鏡さんよりお預かりしているお荷物の中身を知るのに情報屋さんのお力をお借りしたくてご連絡致しました。

お手数をお掛け致しますが、何卒よろしくお願いしますm(_ _)m
(-305) 2023/09/22(Fri) 3:42:53

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

君の表情を見て、君の言葉を聞いて。
変わらず笑顔を浮かべ、その目元が少しだけ緩まった。

「…あぁ、君の分だ。受け取ってくれると嬉しいよ」

そのままフォカッチャ入りの紙袋と水の入った袋を渡し、
いつものように"君との日常"が始まるんだろうと
そう考えていた男は、少し予想外だったのか
目を瞬かせ、それでも笑顔で頷いた。

きっとその間に君はデスクから椅子を引き摺って、
それで隣に、いるんだろうけど。

「あぁ、こんな事ならさっき食べるんじゃなかったな。
 君との食事を満足に楽しめないのが残念だが、
 嬉しいものだね。こうしてご一緒出来るのは」

こんな事なら忙しくなる前に誘えば良かったね。
そう言いながら、机の上を軽く整理し、
君の方へと体を向ける。
(-308) 2023/09/22(Fri) 6:50:50

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……よう、ダニエラ。」

そちらの方をゆるりと向いた表情は
此方はどちらかと言えば、困ったような表情。
だって、分かってしまったから。

「お前が、“別の摘発チーム”だったんだな。
知りたくはなかったよ。俺をしょっ引きに来たか?」

誰かに面会に来た、とか
どうしたんだ、とか
そんな言葉もなく貴方は此方を『A.C.A』だと言った。
それが、全て。
(-310) 2023/09/22(Fri) 7:13:34

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

椅子を引き摺りながら、頷く姿にまたへらり。
着席すると、紙袋を開いてフォカッチャを取り出す。
ひとつあなたに差し出して、手を合わせた。

「あははー。リヴィオさんてばあ」

口が上手いなあ。でも悪い気は別にしないのだ。
無理して食べなくてもいいですよおとは声掛けて、自分のフォカッチャを少し齧る。

「…やっぱり、人が減ったしわ寄せとか…ですかあ?」

その瞳はぼんやりと、あなたの仕事の跡を見つめた。
ものの1週間ほどで、瞬く間に警察署の人間が逮捕されていった。
警部補に上級警部まで逮捕されて、署内はきっとどこもてんやわんやだ。
(-316) 2023/09/22(Fri) 7:50:06

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

「Esattamente. 今、外は大騒ぎですよお」
「知ってますかあ。ニコロさん。」

常と変わらない、気怠げな弛緩した空気で。
常と変わらない、朗らかな微笑みを浮かべながら。

「…あれだけ騒がれますとお」
「立場上、逮捕しないわけにはいかないんですよねえ。」

なんて嘯く。最初からずっとその気だったくせに。

「ニコロさんには、お世話になりましたからあ」
「…胸が痛いですう。わかってもらえますか?」

そう忍ばせた。これだけは、本心だ。
信じてもらえない方が、絶対にいい。
(-323) 2023/09/22(Fri) 8:15:04

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

「逃げたりはしねえよ。
そうなること自体は分かってたからな。
ただ、腑に落ちない事がある。」

あれだけ派手に騒がれれば
しょっ引かれないなんて思う訳がない
だからその点に関してはもう、覚悟は決まっていた。
けれど。

「何の目的でお前は、そっちで動いていたんだ。
こっちとは違う目的があったんだろ?」

抵抗はしない。
大人しく牢屋にも入れられてやろう。
その代わり教えろ、と。

胸が痛いという言葉には、今は反応は見せなかった。
(-325) 2023/09/22(Fri) 8:20:03

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

差し出されたフォカッチャ1つを受け取り、
取り出したティッシュの上に。
フォカッチャは男が好んで買うパンではあるが、
食べたあとで食欲がないのか直ぐには手をつけようとしない。

無理をしている訳ではないから、
ゆっくり食べるよと君に言葉を返して。

「…あぁ、引き継ぎする間もなく人が減った分、
 こうして残る人員に回ってくるものだね」

端に寄せた書類に手を置き、
髪を整える暇もないんだと冗談まじりに笑った。
少し乱れた髪も今はそのままだ。

「それに、戻ってきた時に残っているものが多いと困るだろう。
 少しでも減らしておけばきっと楽になるから」

そのためにもいつも通りに、
いつも以上に頑張る必要性があった。
(-336) 2023/09/22(Fri) 10:12:26

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

──そう、そのはずだった。
約束を違える理由の方が、あなたには存在しない。

その夢は、あなたが眠りに落ちたその状況を 
ほとんどそのまま写したような場所だった。
それでもはっきり、これは夢だと思えた。

山積みのダンボール、夕日の光が射す部屋。
傍らには預かり物の鞄たち……。



──そして異物の知らない誰か。

あなたと同じく床に腰を下ろしているが、
どうやら上背があるらしいことは窺えた。
(-337) 2023/09/22(Fri) 10:43:20

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

まどろみにまだとらわれたままのあなたをさておいて、
誰かはボストンバッグに手を入れる。
中身も見ずに何かを引き抜けば、それを開いてあなたに見せた。

 

『よいこのダニエラはさわってはいけません』
 

子どもでも読めるような字が書かれた紙。
あなたが見ることが想定されている内容。
もう子どもじゃないあなた宛。

あなたは中身に触れていない。
目の前の誰かが、勝手に触っただけである。

「開けようか。それとも、開けずに内容物の仔細を言おうか」

低い、落ち着いた声が投げかけられた。
あなたの意思一つで構わない。
そんなことでも言っていそうな、寄り添う空気感がそこにある。

/*
ポップコーン殺人事件様からOK出ました。
ダニエラのリアクション後に開示したいと思います。
(-338) 2023/09/22(Fri) 10:44:09

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

「ええ?それ、聞いちゃいますう?」

からからと、それでも控えめな笑い声。
まるで歌でも歌うように、明るい声音が嘯いた。

「あたしの目的はあ」
あなたたち
にいなくなってもらうこと、ですよお。」

これは、本当。


「だってえ。そうでもしないとお」
「いつかあたしが、逮捕されちゃうかもしれないじゃないですかあ。」

これも、本当。


「ニコロさんが逮捕した、カンターミネ・ヴォーフル。」
「あたしの、幼馴染なんですよお。」

これも、本当。


「――たったそれだけの理由でえ」
「無実のあたしが逮捕されるなんて、おかしいじゃないですかあ。」

これが、嘘。


虚実を織り交ぜ、女はいう。
曰く、正当防衛である、と。
そんな身勝手な女である、と。
…そのために、あなたたち摘発チームを解体するのが目的だった、と。
(-354) 2023/09/22(Fri) 12:47:13

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「なるほどお…。」

フォカッチャを口元に寄せたまま、静かに感心の声。
…みんなが戻ってくる日は、来るだろうか。

そのとき、自分の居場所はもうないだろうけど。



「…【A.C.A】って、警察の人…ですよねえ。」
「どうしてこんなに、警察のことも摘発していくんでしょお」

きっとその殆どが冤罪だろうに。
そう、ぽつりと言ちる。
まるで、自分のことじゃないみたいに。
(-359) 2023/09/22(Fri) 13:21:26

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ

同じ景色に、知らない誰か。
それをすんなりと受け入れたのは、これが夢だと分かったから。

記された文字を見つめる。
なんだこれは。まさか開けると思っていたのか。
浮かんだのはそんな憤り。子供みたいに、少し拗ねる。

それでもそんなものを、その当人に預けたのだ。
もしかしたら逆に、信頼の証と受け止めるべきかもしれない。
そう浮かんだところでつい口元を歪めた。
信頼されていると、思いたいんだ。あたしは。
(-377) 2023/09/22(Fri) 16:04:23

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ



「…開けちゃ、だめですう。」


女が悩むことはなかった。


「でも、あなたは」

「中身を、知ってるんですかあ」


そうして無垢な瞳で問いかける。

女はほんとうのことを知りたかった。
この荷物がそれを、教えてくれるかはわからなかったけど。
(-378) 2023/09/22(Fri) 16:05:57

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

煉瓦道の一角。人気のケーキ屋。この店のことは知っている。
だけど、ダニエラ・エーコのルーチンには存在しない店だった。
だから、立ち寄ったことはない。

「つめ…?」

小首を傾げ。両手は猫を抱いている。
今はお見せすることが出来ないが、
左手小指のエナメルは、傷が入って、剥がしもされずにそのまま。

けれどまあ、返答としては「ネイルなら少ししてまあす。」とそんなものだろう。
問題はどこから、その話を聞いたのかであるが。

猫を差し出す。
手放しても、数秒程はその体温が手の平に残っていた。
(!6) 2023/09/22(Fri) 16:24:18

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

 ああ、知っているとも」

誰かは言った。
拗ねた子の頭に手を伸ばすことを考えたが、考えただけだった。


ひとつひとつ、補足が必要であればそれも添えて。
誰かは鞄の中身を挙げ連ねていく。

/*

【ボストンバッグ】

・武器弾薬
(ピストル、ソードオフ・ショットガンライフル、カービンライフル、グレネード数種、サブマシンガン、およびその弾薬─いずれもセルフディフェンス用では許可の下りない軍用弾薬使用モデル)
 “目が飛び出る”のに十分な量の爆薬
 市内の地図、特に下水道や駐車場に書き込みがある
 車のキーがいくつか
 「よいこのダニエラはさわってはいけません」とかかれた紙


【スーツケース】

・人間一人が”人生をやり直す“のに十分な量の大金、および金塊、宝石などの資産
 海外に逃亡するために手配された、アレッサンドロ所有のプレジャーボートの隠し場所と隣国の“窓口”への連絡手段
 新しい身分のための一式…身分書や書類など。名義は「ドナータ・ウォータストン」となっている。アメリカ国籍の女性に生まれ変われる魔法のアイテム
 アレッサンドロの店、Mazzettoの鍵
 オリジナルブレンドのコーヒー豆
 紙(この彼女がパッと知らせたがらなかっただけで、内容は預かっています)
(-384) 2023/09/22(Fri) 16:33:46

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

一通り告げれば、スーツケースをトントン叩いた。
何も持っていなかった手に、いつの間にやら折り畳まれた紙切れが収まっている。手品か何かのよう。

「これも、お前宛てだ」

「見たら後戻りはできない。
 …が、これは夢だ。情報屋ロッシの夢だ」

「言い訳は、しようと思えばいくらでもできるだろう」

あなたはこの紙の中身を自分で見ることも、読み上げてもらうこともできる。当然、中身を確認しなくても構わない。
(-385) 2023/09/22(Fri) 16:34:08

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「どんな話に切り替えてもいいの?」
「じゃあそうね」


「──どうしてニーノだったの?」
    

「それとも、手柄が欲しかっただけ?」    



本当は、ずっと聞きたかった。
どうして貴方で、彼で。そんな事をしていたのかって。
けれど先程の答えを思うに、答えて貰えないだろうか。
最も、不意に話題を切り替えた事に後悔はない。

あるとしたら、張り詰めた緊張感だけ。
(-391) 2023/09/22(Fri) 17:15:10

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

きょと、と丸くした目は、確かに動揺からきたものだった。
だけど本当にひとつの瞬きの間に、口を歪めて笑っている。

「そおですねえ。」

あなたの心地と相反して、弛緩した声。
間延びして。気怠げで。――そんな、いつも通りの。

「もしそうA.C.Aだったら、1番嫌だから。」
「…あんまり知られたくないこと、知られてたんですよお。ニーノくんにはあ。」

それが何なのかどころか、そんな理由だったことすらも知らぬまま、彼は牢獄へと押し込まれてしまったわけだが。

「悪いことしたなあって、思いますよお。」
「あれは、あたしの不手際でしたしい。」

女は何ひとつ、嘘をついていない。
ただその態度に何ひとつとして反省も後悔も見えないだけ。
笑って自分の想いを隠すのは、得意だったから。
(-396) 2023/09/22(Fri) 18:03:43

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「そんな……」

本当は何と言ってほしかったんだろう。
弁解の言葉か、あるいは仕方のないと思えるような理由か。
愚かにもこの段階においても、女は望んでいて。
だがそんな女が望むものは何一つ与えられない。

「あの牢獄は、生易しい物じゃないわ……。
 沢山血を見て、陰惨で、目を覆いたくなるような光景も多くて……」

こんな事を語るからには、誰かに会いに行ったことがあるのだろう。女にとっては地獄とも思える光景だった。

「嫌だから、って理由だけで、入れちゃうなんて……
 同じ、一緒に働く仲間なのに……」

そんな場所に入れた事を、"いつも通り"に答えられる様子が恐ろしい。
本心であれ本心じゃなかれ、いずれにしてもそう振舞える人間は、自分なんかより余程場数を踏んでいると考えているから。

「……ダニエラ。貴方、何者なの?
 普通の巡査にそんな事できるとは到底思えないよ」
(-397) 2023/09/22(Fri) 18:12:43

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

皆が戻ってくる日があるか。
それは未来で、明確に答えにするのは難しい。
しかし、戻らないと断定することも、また。

君の問いに、首を傾け、悩むような仕草。

「……上の考えることは分からないし、
 俺個人として知ろうとは思わないが」

「摘発する側はそうせざるを得ないのかもしれないね。
 恐らく上からの命令で、それって圧力だろう?
 止まりたくても止まれないとか」

どうだろう、真実は当人に問うまで分からない。
お上は警察とマフィアに等しく法を執行することで、
従順な軍隊でも作ろうとしているのか。

「何にせよ、答えは俺には出せないし、
 話が聞けるなら聞きたいところだね」

それは上にではなく、そうせざるを得ない者に。
(-401) 2023/09/22(Fri) 18:36:53

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 情報屋 エリカ

あなたの声以外はひとつとして音のしない、
それは、本当に静かな時間だった。
最初はただ黙って聞いていたに過ぎなかった女だったが、
徐々にその口を引き結び、息を呑み、目を伏して。



――狭い車内と、遠く夕陽の海を望む。
その後ろ頭と流れる景色を、瞼の裏に浮かべていた。
(-406) 2023/09/22(Fri) 19:08:06

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 情報屋 エリカ

目を、開く。
静かな時間は続いていた。
無音で首を振る。…そうしてようやく、口を開いた。


「少し、悩んだんですけどお」
「読まないことにしましたあ。」

「読むのはあ」
夢から覚めてから
にしますう。」


もったいぶって、そういって。
へにゃり、と、頬を緩めて笑う。


「そおしたらあ」
「言い訳なんて、しようがないと思うのでえ。」

「それで、ちゃあんと、向き合って」
「…そのあと、考えよおと思いますう。」


続いたのは、暢気にゆらりと、間延びした声。
「ありがとおございましたあ」と、向き合うきっかけをくれた、あなたへ。
(-407) 2023/09/22(Fri) 19:08:58

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

「そおなんですかあ。」

へらり。感想は、それだけ。

「ふふー。でも、嬉しいですねえ。」
「ちゃあんと仲間だって、思っててくれたんですねえ。」

一緒に街を見回って、休み時間は笑いあって。
あなたの作ったお菓子を食べて、また作ってくださあいなんておねだりをする。
そんな日々。
その日々は決して、嘘だけではなかったけれど。
嘘だとしていた方が、あなたにもきっと都合がいいはずだと女は信じていた。


「…んー。聞いちゃいますかあ?それえ」
「でもその答えを、聞いちゃったらあ」

「アリーチェさんも」
ニーノくんとおんなじとこ
に」
「連れてかれるかもって思いませえん?」

無垢そうな瞳で、恐ろしいことをいう。
そうしてまた何もなかったみたいににこりと笑った。
それだけは教えられないのだ。この女は。
だからそんな言い方で、あなたのことを牽制している。
(-412) 2023/09/22(Fri) 19:37:06

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「あはー。なるほどお。」

頷く。暢気なものだ。
またフォカッチャを、ひとつ齧る。

「でもお、それじゃあー」
「もし。…もし、お話を聞けたとしてですよお?」

そういうの
じゃなくって、ほんとおに悪うい人だったらあ」
「リヴィオさんは、どおしますかあ?」
「…やっぱり、逮捕、しちゃいますう?」

こてり、と。首を傾げて、ミントブルーがあなたを窺う。
流れるのは、ただの雑談の延長だと嘯くような、日常的で、穏やかな空気。
(-414) 2023/09/22(Fri) 19:59:24

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

男の机上、置かれたフォカッチャは
まだ歯型もなく欠けもない。
問いかけにまた首を傾げ、指先で顎を撫でる。

「そうだね、もしも悪い人だったら。
 そうだったら……いや、逮捕よりも皆の解放を願うかな」

「一人を逮捕しても何も変わらないだろう?
 だったらそう願う方が現状を変えられそうだ。
 最も、俺のこれは願いや望みってやつなんだろう」

希望論でしかないもしもだが、
だったら同じ目に合わせようというのは堂々巡りでしかない。
リヴィオ・アリオストは、そう考えている。

「……君なら。君ならどうする?ダニエラ君」

それじゃあ君は、問う君はどうだろう。
同じように雑談の延長線、その続きを君と続けよう。
(-418) 2023/09/22(Fri) 20:21:54

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

運ばれていく猫に、指先だけで手を振って。
その頃には手の平に残っていた柔らかさも温かさも消えている。

「…あー。色男さあん。」

ブーケを受け取る。…浮かぶ顔は2つくらいあった。
しかしタイミング的に、片方に絞ることもできそうだ。
…そうやってだれかの顔を浮かべながら花束を見つめるその瞳には、僅かな寂寥が乗った。

「色男さんはあ、このお店、よく来るんですかあ?」

おもむろに顔を上げた女は、気怠そうに間延びした声でそう訊ねる。
ブーゲンビリアは胸の前。香り立つことなく、ただ鮮やかに。
(!8) 2023/09/22(Fri) 20:38:41

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「…あたし、ですかあ。」

問い返され、女は僅かに眉を下げる。
口元の笑みは変わらぬまま。少し、困った様子。

「リヴィオさんみたいに、人ができてないのでえ」
「捕まっちゃえって、思いますねえ」
「…だって、
許せません
からあ。」

ニーノくん。イレネオさん。
テオドロさん。ニコロさん。ヴィンセンツィオさん。
…実際に悪事を働いていたとされる上級警部を差し引いても、
きっと罪のない仲間たちが4人も牢へと送られた。


「私刑…って言っちゃえば、そおかもしれませんけどお」
「悪いことした人を裁くために、法ってあるんじゃないですかあ」

そんな理想を、語る。許されざる悪人が捕まって。そして。

「…それにい、もしかしたらあ」
「その人に逮捕された人も、釈放とかされるかもしれませんしい?」

罪なき人が元の生活に戻る、大団円。
本当にそうなったら困るのは自分だというのに。
どこかで口に出して消化してしまいたかった。…これも、紛れのない本心。


「…なあんて。流石に出来すぎますよ、ねえー。」

けらけらと、女は自分の言葉を控えめに笑い飛ばす。
どんなときでも本心を隠して笑えるのは、女の特技だった。
(-429) 2023/09/22(Fri) 21:10:31

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

「…… 

「そうか」

目覚めて覚えているのは情報の内容だけ。
他のものを渡しても残らない。
 
そうであるから。えらいな、なんて個人の感想は口にされなかった。

礼の言葉だって聞き流していたふうだが、
受け取ったらしい空気感はあっただろう。

 パチン

そうしてひとつの結論が出れば、
別れの挨拶の間もなく夢は弾けた。
 
(-434) 2023/09/22(Fri) 21:25:13

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

目が覚める。
夢の続きの夢でなく、あなたにとっての現実。

傍らの預かり物は、
眠りに落ちる前と同じくそこにある。
(-435) 2023/09/22(Fri) 21:26:05

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……今だって、仲間だったと思ってるわ。
 それは嘘じゃない。でも、
 貴方の言葉だって、嘘じゃないって思ってる。
 ……だから、わかんなくなって、」

信じてる。信じたい。
彼女は面倒臭がりで説明が不足しがちだけど、
こうして今まで一緒に笑い合った、他でもないあなたは、
心ない人物だとは、とても思えなかった。

だからこそ、何か理由があるんじゃないかと。
そんな救いのような言い訳に縋ろうとし続けている。

「…………っ」

ビクリと体が震える。
"あそこに連れて行かれたくはない"
純粋な恐怖と、自分が連行された場合に教会にかかる嫌疑。
そのどちらもが身を竦ませるには十分な威力だった。

「でも、私、貴方の事が知りたくて……」

先程は打って変わって小さくなった声は、
それでも未練たらしく響いている。
(-437) 2023/09/22(Fri) 21:34:17

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ

―――ぱちり。

積まれたダンボール。窓の外の夕焼け空。
幾度かの瞬きを繰り返しここが現実であると悟った女は、傍らにある2つの鞄を見た。

立ち上がる。スーツケースを、部屋の中央へ。
一瞬躊躇いはするも本当に一瞬だけのことで、意を決してそれを開いた。
中身をひとつひとつ見つめる。
夢と同じであることの確認を取るだろうか。

そして。

カサ、と最後に手にしたもの。
それを、ゆっくりと、開いた。
(-447) 2023/09/22(Fri) 21:58:29

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

「………。」

貴方の言葉を最後まで、静かに聞いた。
時折思うように目を伏せて、それでも。

「言い分は分かった。
だが、やってることはお前も同じなんだぞ。
罪もない人間を罪がある様にでっち上げ
場を混乱させて、良いように利用する。」

「それで良いのか?
正当防衛だから咎められないなんて
そんな甘い事はないって、分からない訳ねえよな。」

貴方が分かってないとは思わない。
けれどこれは、同じ仲間のよしみとしての忠告。
(-449) 2023/09/22(Fri) 22:11:21

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

「……アリーチェさん。」
「振り込め詐欺とか、気をつけた方がいいですよお?」

信じようとしてくれる人間をただただ茶化すように。
いつかきっと口にした言葉。そのときの印象通りのあなたへ。

竦む身体でそれでもなお、甘えた言葉をいうあなたをミントブルーが映している。
笑うことしかできないから、ただただ笑みを浮かべたまま。
……純粋で、綺麗なひと。


「あー…。それなら言い方を変えましょおかあ。」
「世の中知らない方がいいこともある、…ってことですう。」

ゆらりと女は左手を持ち上げる。
小指にはマリーゴールドカラーのエナメル。
しかし少しだけ欠けていて、塗り直しもされず少し不恰好。
そんな左手であなたの髪に触れようとする。
くすりとやっぱり、変わらない笑顔を乗せたまま。

「…せっかくのきれいな髪、鉄格子の向こうでぼろぼろになるの、あたし、見たくないなあ」
(-450) 2023/09/22(Fri) 22:13:48

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

ミントブルーの瞳を細め。
女は乱視だったから、それでもあなたの顔はぼやけていた。

「――もちろん」

にっこりと笑う。
まるでピザを奢られた時と同じように。

「あたしは、やられる前にやっている…」
「ただ、それだけですからあ」

「同じだってことは、もちろん承知の上ですよお。」

分かっていて、己のためにそれを行い、振り翳す。
それを人々は
悪人
と呼ぶ。
そう呼ばれ思われ恨まれることを女は望む。
中途半端に信じたままより、そっちの方が絶対に幸福だと信じているから。


「まあ…それじゃあ。」
「ご理解頂けたよおですし、そろそろ行きましょおかあ」
「…ニコロさん?」

そういう女の手の平の中には、鈍い銀色の手錠が煌めいていた。
(-452) 2023/09/22(Fri) 22:27:25

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

「お前、半分嘘だな?
まあ、今此処で暴いたところでどうにもならねえけどよ。」

本当に自分が可愛い人間は、此処まで割り切れない。
自分も同じように裁かれると分かれば躊躇も生まれよう。

だから、貴方に別の何かがある事だけは、察せられた。
それが何かなんて、分かる訳もないけれど。

「後悔すんなよ。」

何がとは言わない。
男は既に覚悟は決めていた。
遅かれ早かれ、この法の片棒を担いだ罰は来る。

それが、今になっただけのことだから。
それだから、抵抗はしない。

貴方に両の手首を差し出した。
(-453) 2023/09/22(Fri) 22:37:54

【秘】 情報屋 エリカ → 傷入りのネイル ダニエラ

鞄の中には、
情報屋から聞いたそれらが正しく収められていた。
夢で開かなかったその紙も、また。
 

 
『命令。これを見たらお前は身を隠し、      
  全てが終わったら国外に逃亡して        
  以後マフィアに関わらないこと。任務は終わりだ』
 

 

あなたの行為を阻むものはなく、
その中身は随分あっさりとさらされたのだった。
(-455) 2023/09/22(Fri) 22:40:35

【秘】 pasticciona アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「あ……」

今となっては随分懐かしい言葉。
それを話題に笑っていた日は、まさかこんなにも世界が変わってしまうなんて欠片も思ってはいなかったのに。

「……馬鹿。
 ダニエラがそう言ってくれたから、私助かったのよ」

ダニエラにとっては些細なエピソードでも、自分にとってはとても大事だったのだ。きっと、貴方に対してもそれと同じ事のように思っていて、

貴方が笑みを浮かべ続けている理由だってわからず、
貴方が何を考えているのかが全く──
最も、普段から実際読み取れていたかと言うと定かではないが──
読み取れず、困惑の内に髪に触れられ、目を伏せて不安げに左手を右の手でぎゅっと握り込む。

「……わたしだってなりたくないし、させたくない、よ」

触れる髪を伝って微弱に震えているのが伝わるかもしれない。
きっと脅しじゃないのだろう。冤罪にしか見えない同僚を艶やかに逮捕してのけた人だ。自分の事だってすぐに何とかしてしまえるだろう。

怖くて、辛くて、それ以上に何もわからない自分が悔しい。
(-456) 2023/09/22(Fri) 22:41:43

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ

「……さあ、どおでしょお。」
「あたしは、嘘つきですからあ。」

…笑顔だけは、崩さずそのまま。
罵倒される心づもりまでは、できていたのに。


あなたに近寄り、手が伸びる。
マリーゴールドの色をしたエナメルが、この日も両手の小指に咲いていた。
そこに握られた、手錠が、

―――かしゃん。


 
いつかあなたにリクエストした『子守歌』。
あれはカンターミネ・ヴォーフルが、眠る女に歌って聴かせた曲だった。
…女の胸にはあの歌声も、あの日のハーモニカの音色も未だに残り響いている。

そのどちらもをこの日同時に失ったわけだが。
嘆く資格なんて、当然女に残っているはずもないのであった。


そうして、女はあなたを逮捕した。
「後悔するなよ」、その言葉には、何も返事を返せなかった。
(-468) 2023/09/22(Fri) 23:34:54

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ

開いた紙に書かれたものを。
読んで、女は

「…あー。」
「なるほどお。」

…これは、

「ずっっるいなあ……。」

――さて、どう向き合おうか。
心だけは、もうとっくの昔に決まっていたけれど。
(-470) 2023/09/22(Fri) 23:39:41

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

――あれから。

目を覚ました女がまず行ったのは、ここ数日1度も開けようとしなかったこの『預かり物』を開けることだった。
スーツケースを部屋中央まで引き摺って開く。
しばしがさごそと何らかを行う物音がして、最後にぱたりと閉じられた。

「…さてと。」

とりあえず、ひとつ決めたことがある。
やっぱり1杯くらいで許してやるのは絶対にやめてやると、そんなことだった。
(&5) 2023/09/22(Fri) 23:45:15

【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 傷入りのネイル ダニエラ

男は貴方を罵倒するでもなく
嘆くでもなく、ただ静かにそれを受け入れた。
鉄の重みが腕に伝わる。

マリーゴールドに捕まえられたそこには
たった1本、右手の薬指にだけある、ネイビーの空。
そこをちらりと見て、男は笑っただろう。

だって男には罵倒する資格なんてありはしない。

既にその手で、同僚を摘発して。
此度は貴方の幼馴染を…そして。
またその次も、考えられていたのだから。

「じゃあな、ダニエラ。
他人に嘘を吐く分には構わんが
自分にまで嘘を吐くんじゃねえぞ。」

まるで仕事上がりに挨拶するような声音で
最後のお節介を焼いて。

男はそれ以上は何も言わず、連行されていくのだろう。
(-471) 2023/09/22(Fri) 23:48:12

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ

そうやって笑い合ったあの日、こうなるなんて思っていなかったのは女もおなじ。
あたたかな日差しの下でうとうととまどろむような、本当に幸福な日々だった。
同じ言葉を違えることなく言えるのだから、女にとっても些細なものではなかったのかもしれない。


「そおですかあ。よかったですねえ。」

それを他人事のように切り捨てて、そうやってここまで歩いてきた。
これまでの幸せな日々を削って。全部嘘だったと騙って。

それだというのにまだあなたは、やさしい、甘いことをいう。
触れる髪すら震わせながら。それが女は、
とても█しい


「――そう思うんならあ」
「もお、この話はやめにしましょうかあ。」
「ただでさえあたしの秘密を1個知っちゃってるんですしい」

歌うように間延びした明るい声。
するりと指先をあなたから離すと、かつ、かつ、革靴の靴底を鳴らして2歩、あなたから離れた。

「…誰にもあたしのこと、話さないでくれるならあ」
「見逃してあげましょお」

「大サービスですよお、アリーチェさん。」

女は、嘘つきだ。見逃してなんかやるつもりはない。
だけどこう言って裏切れば、自分を今度こそ恨んでくれるんじゃないだろうか。
前の2人では失敗したから、今度こそ

…そんな思いが確かに、女の胸の中にはあった。
(-486) 2023/09/23(Sat) 0:38:45

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

革靴の底が鳴る。こつ、こつ。
牢獄を繋ぐ通路。…目当ての場所まで、真っ直ぐに。

「…ミネ」

とある牢獄の手前で立ち止まった女は、底に収容されたあなたへ声をかける。
今は、眼鏡を外していた。
不安げで悲しげな面持ちが、そうっと檻の中を覗く。
(-492) 2023/09/23(Sat) 0:56:11

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

カンターミネは、通路に背を向けて横たわっていた。
どこかぐったりとして見えたが、
足音が牢の前で止まり、そこに声がかかれば
のっそりと転がってあなたの方を向いた。

「……わお、エ……エーコじゃん。元気そう……でもないな。
 いやー捕まっちゃったぜ、酷くない?
 俺別にそんな悪い事してないってのになあぁ」

へらりとした声。いつもと変わらない声。

眼鏡を外しているなら、顔に浮かぶ憔悴の跡に気付くのは難しいだろうか。
その分、いつもと変わらないように聞こえる声の奥に
ほんのりと我慢の色が見えるかもしれない。
(-496) 2023/09/23(Sat) 1:12:23

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

「………そうかい」

頷いて、けれど変わらない笑顔で君を見つめる。
男のこれは出来ている訳ではなく、
リヴィオ・アリオストの模範的解答と言えるのだろう。
最も、君にそんなことが伝わるはずもないのだが。

「……そうかも、しれないね。
 逮捕した人間が悪いやつなら、そうなるかもしれない」

罪のない人間は、暖かな部屋に帰るべきだ。
あんなに狭く、冷たい空間にいるべきではないのだろう。
君の答えはとても正しい。
綺麗事よりも、とても正しかった。

「だから、ないとは言えないかもしれないね。
 …未来ってのは、分からないものだ」

その
出来すぎた
未来が訪れないとは、
決して、言い切れるわけもない。
君の本心は、奥深くまでは理解出来ないが、
君を見つめる男の表情はいつもよりもずっと、
柔らかで、少し、苦しげにも見えたかもしれない。
(-497) 2023/09/23(Sat) 1:15:52

【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……本当?で、でも……」

視線が右往左往する。
その提案を飲むか、アリーチェの中で葛藤が発生する。

このまま、何も知らない振りをして見逃して貰えば、
自分がまだ逃れられるなら、あの人も子供達の事も助けられるかもしれない。

実際には不可能なそれを夢見て、
でも、ダニエラは?

ずっとずっと、その言葉がリフレインする。
だけど、

「──わ、かった」

「あなたの要求を呑むわ。誰にも、話さない。
 ……見逃してくれる?」

恐る恐る、お伺いを立てるような問いかけ。
最も昔からこの女の気弱さを考えると、そうおかしなものではないけれど。
それが"貴方に"向けられての事なら、随分と珍しい事だろう。
(-518) 2023/09/23(Sat) 2:41:31

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 傷入りのネイル ダニエラ

あなたは今か、後ほどか。
花束の中にメッセージカードが入っていることがわかるかもしれない。
それは丁寧に書かれた読みやすい文字だ。


『もし俺が逮捕されることがあったなら。
 一番最後に会っていた奴はリヴィオ・アリオストだ』


そこに含まれている全ての意味を知る事は難しいだろう。
ただ電子文で送られた最後という言葉にも、
このインクで綴られた最後という言葉にも、
誰かを信じて裏切られるつもりがない男の意思が籠もっていた。

男は今でも
貴方
を。
自分の信じたいと思った者達
を信じている。
(-522) 2023/09/23(Sat) 3:14:48

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

乱視の視界に鮮やかに灯るライムグリーン。
女には
受け止める
意気地がなかった。
…そんなあなたの様子や顔色をだ。

「…」

いつも通り、――ううん、ちょっと違う。
ただそれだけなのに胸が痛い。
そうっと手を持ち上げる格子に触れて。
指先には、ぞくりとするほどの冷たさだけが残った。

「…あはー。そおだよねえ。」
「ミネはちょおっと、盗聴とかそゆことしてただけでえ。」

…頬を緩めて、へにゃりと笑う。
この特技はきっと、こんな時にこそ役立てるべきものだった。
それにしても発言は身内贔屓が過ぎるが。

「……あたしは。」
「だいじょおぶ、元気だよお。」

えへへと笑って、左手を翳す。
少し傷が入ってしまっても剥がさずにいるこの小指のネイルは、あの日あなたに塗ってもらったものだ。
…だから、大丈夫。ダニエラ・エーコは、まだ頑張れる。
(-531) 2023/09/23(Sat) 4:45:17

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

わかってる。だって『エリー』は優しいから。『エーコ』は聞き分けがいいように見せているから。
鼻血の跡、きちんと拭けてるよな。よだれ、垂れてないよな。


「そうそう、ちょっとだけってオーイ。しーてーまーせーん。
 俺のテディに変な仕掛けがされてただけですぅー。」

ふざけるように笑いながらも、近づかない。
普段なら絶対に駆け寄って、その手を握るのに。
悪い。今はふらついて真っ直ぐ立てないからさ。


「そりゃあ、……元気ならよかった。おまわりさんも
 日々激務だろうけどさ、ここからのんびり応援してるよ」

そう言って寝転がったまま、片手を上げる。
この仕事のない場所をそれなりに満喫しているらしい。
お前だけは同じ場所に入らないでくれよ。


そして、少しの沈黙があって。ふと、思い出したかのように。

「あそうだ。今度あいつ、あのーあれ。ほらあいつ、
 花屋で『マリーゴールド』をよく買ってた奴。
 あいつにもし会う事があったらさ」

あなたの指を見る。フレームの歪んだ眼鏡だと、
少し見え辛いけど、きっと約束の花はそこにあるから。

「……無理すんなって、伝えといてくれない?
 あいつ、すーぐなんでも我慢しちゃうだろ〜?」

へにゃりと、ブレてても見えるように大きく笑った。
(-532) 2023/09/23(Sat) 5:08:19

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「…そおですねえ」

こんな話題のお供でも、フォカッチャはすぐに減る。
ダニエラ・エーコという巡査の、1番正しい挙動をなぞる。

「来るといいなあ、そんな未来」

来てはいけない、そんな未来は。

普段と遜色なく女は笑う。
こうなる前の、普段と。
温かい日差しの中で、まどろむようだったあの日々と。

「あ、そおだ。リヴィオさん。」

フォカッチャもあと欠片と差し掛かったところ。
お口直しと水を1口、口の内を、潤して。

「…犬と猫」
「前、
最近は
猫が好きって、言ってましたけどお」

「今は、どおです?」
「今も猫の方が、好きでしょおかあ?」

ことん。ボトルを置いて、小首を傾げる。
(-538) 2023/09/23(Sat) 6:29:12

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ

――へらり。
…やっぱりそれは、いつも通りの緩い笑みで。

Certamente.もちろんですよお
「…ありがとおございますう、アリーチェさん。」
…ああ。信じちゃった。
本当に、純粋で――綺麗なひと。


ひらりと、離れた足そのまま手を振った。

「じゃーー」
「これまで通り、仲良くしましょおねえ。」

かつ、かつ。靴底を鳴らし、離れていく。

こうする度に、浮かぶ言葉が胸を刺すけれど。
その言葉だけは口にしてはいけないから、胸の中で何度も押し潰した。
(-540) 2023/09/23(Sat) 6:38:55

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

へらりと緩い笑みで頷く。

「えー、それじゃあ」
「看板のティラミスを――」

ダニエラ巡査は、そう笑って。
この日ホテルに持ち帰ったのは、ブーゲンビリアの花束と、ティラミスがひとつ。
(!10) 2023/09/23(Sat) 6:42:33

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 口に金貨を ルチアーノ

そのケーキ屋で、女はすぐにそのカードに気付いた。
身に染み込んだ技術がそれを一切表沙汰にしなかった。

ほんの一瞥でそのメッセージを読んだ女は顔色ひとつ変えない。
まるで、最初から、そう。
そういう仕事をしていたみたい


――このカードの送り主がこの場にいたのなら、そんな些細な様子にだって気付くことはあったのだろうが。
きっと、目の前の店員は気付けない。気付かない。

…ありがとお、お兄さん。
あたしもお兄さんを
信じて
ますからねえ。
(-541) 2023/09/23(Sat) 6:47:13

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

守りたいものが、あった。ひとつ、ふたつ。…ふたつとも、こぼれ落ちて行く。
守ることができなかった、その想いだけで枷なのに。
そのふたつの現在いまを知ると今度こそ先に進めなくなってしまう。


「…ふふっ。」

何がおかしいのか、あなたの様子を見た女は笑う。

「…大丈夫だよお、ミネ」
「カメラとか、全部、弄ってきたからあ」

びっくりしたあ?なんて女は悪戯に笑った。
元から女は警察に忍び込む内通者。これくらいなら、易くあり。
…更に言えば、上層部が検挙されたこの署内を好きにするのは、日頃より少し、更に易かった。

「…あんまり長くは保たないけど、でも」
「話したいことが、あったのお。」

とはいえリスクは多分にある。
毎度面会でこんなことはしていられない。
…リスクをとる必要があったのだ。だから、今こうなっている。

「その、お兄さんのこと、なんだけどお。」
「…ううん、あんまし長く話す時間もないしい、要件だけ、言うねえ。」

指先が上がる。5本。時計を見ながら、1本減った。
時間の猶予は、それだけだ。

「ミネのモーテルに、まだ仕事道具が残ってるなら」
「場所と使い方、教えて欲しいんだあ」
(-542) 2023/09/23(Sat) 6:58:20

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

「来るといいね、そんな未来」

君と同じような言葉を繰り返す。
変わらない笑顔で君と笑い合う。
そこだけはまるで、法が発表される前のようで、
"いつも通り"の二人のようだった。

男の机に置かれたフォカッチャは、
やはり満腹なのか手を出さないまま。
君のそれが欠けていくのを少し眺めて。

「そうだね、今は……同じくらいかな」

最近見た子犬がとても可愛くてね。
あの可愛さには流石に無敵も眩みかけたよ。

笑いながらそう付け足して、
傾げられた首に合わせるように首を傾ける。

それから「君は?」と問いかけて、
反応とその答えを待った。
(-557) 2023/09/23(Sat) 9:20:58

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ

指先のエナメルを眺めた。
傷がまた、ひとつ増えている。

左手小指のエナメルは約束の証だ。
だからどれだけ傷がついても、女は剥がしたりしない。

「……今度こそ」


どっちつかずの蝙蝠が、どちらの居場所も認められるなんて間違ってる。
…犯した罪は消えやしないのだから、その分くらい、憎んでもらわないと。

/*
お疲れ様です。おさとうかえでです。
重ねまして、情報屋ロッシありがとうございました!

discordにて先にお伝えしておりましたが、本日の襲撃対象は
アリーチェさん
ということで本人に予告も済ませております。
よろしくお願いします!
(-566) 2023/09/23(Sat) 9:54:52

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「えー。いいなあ。」
「あたし、犬の方はまだ会ってなくてえ。」

最後の欠片も、ぱくり。
咀嚼し飲み込むと、また水を1口、流し込む。

「でも猫は、触りましたあ。」
「…ぐーぜんですけどお。」

猫カフェも調べてたのになあ。
そうからころ笑って。
どっちが好きかは、犬も触ってから決めまあすなんて。

指先をナプキンで拭いて手を合わせる。

「ごちそうさまでしたあ。」
「ふふ。結局リヴィオさん、食べませんでしたねえ。」
(-569) 2023/09/23(Sat) 10:06:20

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

「おや、まだ会えていなかったか。
 ……それじゃあ」

「それじゃあ、今度一緒に犬カフェに行こうか」

犬カフェ、君とならきっと楽しいから。
リヴィオ・アリオストは落ち着いたら行こうと、
未来の話を君にする。

それから、手を合わせる君に頷いて。

「はは、君との話に夢中になってつい、ね。
 どうせまだまだ業務は残っているし、
 きっとお腹も空くだろう。後で食べるよ」

元々君にと買ってきたものだが。
分け合うってのも素敵なものだ。
このままいただいていくとしよう。
(-573) 2023/09/23(Sat) 10:23:31

【念】 傷入りのネイル ダニエラ

ひと回りほど小さくなったアジトのデスク。

7色の缶の紅茶アソート。
薄紅色のバスボム。
ライムグリーンのウィッグのテディベア。
ブーゲンビリアの花束。
そして冷蔵庫の中には、少しお高めのチョコレート。
部屋の片隅に、大きなボストンバッグとスーツケース。
鞄の中には、15mlの小瓶が複数と、脱脂綿にオイル。


この部屋にある、女の私物はそれだけだった。
女の自室とまた別の意味で、生活感のない部屋だった。
けれど変わらず、その部屋の明かりが消えることはない。
帰ってくる時女は、誰もいないその部屋に必ず、「ただいま」といった。
(!12) 2023/09/23(Sat) 10:33:23

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「ええー。いいんですかあ?」

間延びした口調のまま、そのトーンだけが微かに持ち上がる。
嬉しそうに女はへらりと笑った。
この笑顔は決して嘘ではなかった。


「んー。そおですかあ?」
「お疲れ様ですねえ…。あ」

思い出した、とでもさも言いたげに立ち上がる。

 
懐には2つの小物。
犬の小さなヘアクリップと、銀色の大人びたヘアピン。
犬のヘアクリップはごく普通の購入品。
だがヘアピンの方には仕込みがされている。


「リヴィオさあん。」
「ちょおっと、じっとしててくださいねえ」

あなたに近寄り、手を伸ばす。
女にはあなたを調べねばならない理由が2つあった。
だから、迷う必要なんてどこにもない。


そうして、ふたつの中からひとつ。
女はその手の中に、選び取る。
(-586) 2023/09/23(Sat) 11:16:02
ダニエラは、ふたつの中から、犬を選んだ。
(a23) 2023/09/23(Sat) 11:16:18

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

…そうしてそれを、あなたの前髪に。丁寧に。

「ふふー。お手伝い、でえす。」
「…本当に、お忙しそうですからあ。」

満足げに、微笑みかける。
そしてあなたから離れる刹那、衣服のポケットへ銀のヘアピンを滑り落とした。


それまでの人生、受け取ってばかりだった女は、
あなたが贈り物のヘアピンを大事にしてくれるのが本当に嬉しかった。
…だからこそ、この銀のヘアピンをあなたへの贈り物にはしたくなかった。
今までの贈り物と、同列にしたくなかったのだ。
(-587) 2023/09/23(Sat) 11:17:03

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……。あーもうほんとびっくりした。
 俺のお姫様はおてんばな事で……
 いっそ王子様って呼んだ方がいいかもしれん……」

いや、その座は譲る気ないけど、とも思うが。
ともかく、軽口を叩くほどの時間はなさそうだから。
『お兄さん』の事も気になりはするけれど。

「……おいおい、あそこに踏み込まれたんだぜ?危ない……」

そこまで言って、かぶりを振る。この子は、子供じゃない。
隣に立つ相手。唯一、信を置くその人だから。息を吸い込む。
(-593) 2023/09/23(Sat) 11:38:38

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……連中も色々探ったろうが無茶は出来ないと思う手間のかかる大型の備品は運び出してないはずだベッドまだ買い替えてなくてよかったよ『あのベッド』のマットレスを外してスプリングの中から緑色の部品を全部抜いてくれそしたら頭側にある収納に幾らか道具が落ちるからそれを組み立てて使ってくれ番号のシールが貼ってある」

一息に伝える。それが、あなたに渡せる唯一の仕事道具。
誰も信用していないカンターミネが、
万が一、億が一に備えて用意した最後の"武器"だ。

「フェイクの部品も入ってるから、番号を間違えるなよ。
 正しい組み合わせはフィボナッチ数列の順だからな。
 起動すれば後は5番の部品を捻って、
 チャンネルを合わせればいい。
 34番と、55番がそれぞれ送信機と受信機。
 13番が録音機だ。全部本体のスイッチ一つで起動する」

なるべく簡素に、必要な情報は確実に渡す。
後は、あなたに全てを任せて、女は息を吐く。

「……もし、万一……本当に万一、エリーが捕まったら。
 全部俺が指示したって言ってくれ。俺に脅されてたって。
 昔馴染なのを利用して、無理矢理やらされたって」

実際、それに近しい事をするんだから。
自分の道具を渡して危険な橋を渡らせるんだから。
これくらいのリスクは、せめて背負わせてほしかった。
(-596) 2023/09/23(Sat) 11:39:55

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「やあだ、王子様はあ、ミネだもん


そう口を尖らせたのも一瞬のこと。
すぐに和やかににこりと笑った。

ありがとう。信じてくれて。
その言葉だって本当は嬉しいんだ。
でもただ守られるだけのお姫様では、やっぱりいたくなんてなかった。


立てた指が曲がる。1本、2本。
その間あなたの言葉を1字1句忘れることなく聞いた女は、密やかな吐息をまたひとつ落とした。

「…うん。ありがとお、ミネ。」
「でもお、あたしは優秀だからあ。そんなことにはならないよお。」
「…ふふ。見ててよねえ。」

そう嘯いたのだって、もしかしたら強がりかもしれない。
それだってあなたにはわかるはず。だって女は、笑っていたわけだし。

「『マリーゴールド』の子にも、伝えときまあす。」

けれどからかうように、あなたのお転婆姫はいう。
茶化して笑って、ゆるりと変わらないあのモーテルでのことみたいに。

指が、あと1本。
反対の指先を冷たい格子に滑らせて、その向こうに薄い微笑みを向ける。
…本当に、あっという間なのだ。最後の指も、次第に折られるだろう。
(-600) 2023/09/23(Sat) 12:12:36

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

説明が終わって、お願いも終わって。
指折り、時間の流れを見ながら、
ため息とともに笑みがこぼれる。

「見てるさ。一番近くでな。
 しっかり伝えといてくれよ」

きっと、そう遠くない内に朝が来る。
真っ暗な内はライムグリーンの方が目立つけど、
明るさを交えた頃にはミントブルーが輝き出す。

「……なあ、残りの時間の間、目ぇ瞑ってくれる?」

言って、立ち上がる。ふらつきながら。
一度、二度とたたらを踏み、二度目には壁にぶつかりながら、
あなたの方へ。最後の1本が折られてしまう前に。

「後は頼んだ、エリー。いってらっしゃい」

あの夜と同じように、送り出す。
今はネイルを塗り直す事は出来ないから。
ふらつく姿は見せたくないから、
片膝をついて、少し背伸びして。

格子にかかる指先に、ほんの一瞬のくちづけを。
あとは、指が折れるだろうから、また床に転がった。
(-604) 2023/09/23(Sat) 12:36:34

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

笑んで頷き。
続いた言葉に、一瞬だけきょとん。
あなた相手に身構える必要はないけれど、多分このときの女は他の人に同じことを言われると警戒の色を見せていた。


「…いいよお。なあにい?」

そうして目を瞑ってのしばしの時間。
ゆっくりとあなたが近付く気配がして、…少しして、指先に湿ったやわらかな感触。
それだけでぎゅうと胸が潰されるくらい痛くって、手が届く距離にいるはずのあなたに今すぐ触れたいってそんな我儘が過ぎっていく。

だけど、女はそうはせずしっかりと目を閉じたまま。

指を折るまでの時間は心の中で正確に数えた。
最後の指まで折り曲げた後、目を開いた女は恥じらうようにはにかみ笑っていた。

「…ミネ」
「早くこんなとこ、出られるといいねえ。」
「ミネはなあんにも、悪いことしてないんだからあ」

カメラに載せられるぎりぎりの本音に虚言を添えて。
…ただでさえ小細工もした今日はあんまり長居ができないから、それを別れの挨拶みたいにこつこつ靴音を立てて立ち去っていくんだろう。
(-613) 2023/09/23(Sat) 13:34:53

【秘】 いつもあなたの傍に居るから カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「ふふん」
「なーに、きっとすぐ出られるさ」
「なんせ今日の俺は運が良いからな、
 わざわざ面会に来てくれる奴がいるくらいだから」

いつものように、笑い、歌う。そして手を振る。
くた、と脱力しながら、心中で笑う。
何言ってんだか。俺はもうとっくに出てるよ、お姫様。
だって――。

そうして、また、眠りに落ちる。
床の冷たさが、心地良かった。
(-616) 2023/09/23(Sat) 13:40:57

【影】 傷入りのネイル ダニエラ

常日頃、閑古鳥と同棲するそのモーテルは、つい数日前の騒ぎから一転、ここ数日でさらに静かになっていた。
ある雨の日に立ち寄ったのと同じように女はそこを訪れる。
人目を気にして足早に入口へと近付くと、するりとその中へ入っていった。

入口傍のカウンター。
カフェインの香りを撒き散らしながら店番をする経営者の姿はそこにない。
超えて奥にある扉を潜ると、そこはそんな経営者の私室だった。
部屋の大半をキングサイズのベッドが占め、本当に寝るためにしか存在していないんじゃなかろうかと密かに思っていたことは誰にも言っていない。
さらに言えば彼女は徹夜の常習犯でもあったのだから、想像する更に数倍この部屋に価値はないんじゃなかろうかと思っていた。

…実際には、そんなことはなかったと知ったのはつい数時間前のことである。

ペンライトを口に銜えて両手が使えるようにした女は、それからそこで暫く作業を行った。
たった1度しか聞かなかった手順だが忘れようもない。
大切で大好きな、昔馴染みの言葉なのだから。
(&6) 2023/09/23(Sat) 14:09:14

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

「勿論、実は俺も気になってたんだ」

今まで一度も足を運んだことがない動物カフェ。
一度どんなものなのかをこの目で見てみたかった。
それに、君が笑顔になれたらいいなと考えたんだ。
流石にそれは内緒のままだが。

立ち上がり、手を伸ばす君を眺める。
何かを口にすることもなく、
君が施してくれる様子をただ黙って見ていた。

(-627) 2023/09/23(Sat) 14:34:21

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ


もしも、君が少しでも男の額や頬に触れたのなら、
異様に熱を持っていると感じられるかもしれない。

勿論、普段触れることがなければ、
男の体温が高いだけの可能性はあるだろうが。

──だって男は、"いつも通り"だ。

きっと、気のせいだった。

(-628) 2023/09/23(Sat) 14:34:45

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

満足げに微笑みながら離れる君を確認した後、
飾られた犬のヘアクリップを見るために、
机上の鏡へと手を伸ばす。

「……今日も素敵だね。
 本当に、いつもありがとう」

そうしてそれを目にした途端、緩やかな笑みを浮かべ、
噛み締めるように君に、改めての感謝を告げる。
こんな時だからこそより丁寧に、
その日常への思いを伝えたかったからこそ。

いつだって、君からの贈り物は嬉しいものだった。
(-629) 2023/09/23(Sat) 14:35:18

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「ふふー。」
「今回も気に入ってもらえて、良かったですう。」

はにかみ笑んで、明るい声。
ありがとうなんて、本当はこっちが言いたかった。

それにしても。
そうして落ちた瞳であなたの額に触れた手の平を見つめる。
まあいいやと割り切れてしまえる女ならばよかったのだが。

「…リヴィオさん。」

また徐に手を伸ばす。
前髪揺れる額ではなく、目指したのはその頬だった。
別に無理にと言いはしないから、拒否をされれば触れることは叶わない。
それでももしまた触れることができたなら、その熱を確信して問うはずだ。
「熱いですよお。具合悪いんですかあ?」って。
(-639) 2023/09/23(Sat) 15:44:00

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

君に礼を告げて、今日も「また明日」の約束をする。
きっと今日の終わりもそうなるのだろうと考えていたからか、
再び伸ばされる君の手にほんの少し驚いて。

でもだから払い除けるなんてことはない。
君の手を、払い除けるはずがなかった。
頬に触れる手に左手を重ね、緩く微笑む。

「…少し、働きすぎたのかもしれないね。
 あぁ、しかし君のおかげで楽になったよ。
 だから平気さ、心配ありがとう」

揺れる髪の下で滲む汗も気の所為だと感じられるほど、
いつも通りに笑う男は、問題ないと口にする。

その笑顔には確かに、不安がる要素なんて欠片もない。
男は、重ねた手を直ぐに外して、君の手を自由にする。
(-644) 2023/09/23(Sat) 16:10:57

【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……うん、」
「でも、お礼を言われる事はひとつもないよ」

これまで通り。

貴方は気にしていないようにも見えるけれど、
女の中ではそれが酷く遠い言葉に見えた。

それでも今この瞬間、貴方を引き止める言葉を持ち合わせてはいないから、離れていく靴音を聞いて俯きながらこちらも踵を返す。

心の中で何度も声が聞こえる。
本当にこれでよかったの──?と。

一度足が止まる。振り返りそうになった衝動を、何とか拳を握りしめる事で耐えきって。その先へと歩いて行った。
(-652) 2023/09/23(Sat) 16:54:47

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「……。」

いつも通り。変わらない笑顔。
嘘みたいに笑う。自分の不調も、苦痛も。
女にはその姿に、覚えがあった。


いってきますと声がする。
さみしいな。もっといっしょにいたいのに。
だけど、それをいったら困るから、いい子のかおで、わらって。
「いってらっしゃい」…あたしさえがまんすれば、いいことだから。

「…リヴィオさん。」

そうして笑ったあとはいつだって孤独だった。
誰も自分の不調にも苦痛にも気付かない。
それで不調や苦痛が、なくなってしまうわけじゃないのに。

あなたもそうだとは、言いきれないけれど。
そんな自分とあなたを重ねずいるのは、どうしても女には難しそうだ。
(-654) 2023/09/23(Sat) 17:09:40

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

「無理は、だめですよお。」

そのときばかりは、女の顔に、笑顔はなく。
心のままに、眉を下げた。

「ほらあ、倒れたら元も子もありませんしい。」
「リヴィオさんまで倒れたら、あたしもお仕事増えて困っちゃいますしい。」

そんなダニエラ・エーコらしい理由も交ぜて。
…どこまで言っていいのか、分からないけれど。

「今日は、早退にしましょうよお。」
「……なんてえ、だめ…ですかねえ…?」

首を傾げて、そこでようやくふにゃりと笑う。
本当に何でもなかったとき、その方がきっと、断りやすいから。
(-655) 2023/09/23(Sat) 17:10:20

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ

――さてそれから、1日2日と経ったある日。
あなたのデスク、または荷物に1通のメッセージが忍ばされていた。


  
相談したいことがあります。
港の××番の倉庫の裏まで来てください。

P.S.恥ずかしいので、誰にも言わずにお願いします。



崩した筆跡でそう書かれたそれには、倉庫の場所の略図も添えられている。
こんな古典的な手法でも、振り込め詐欺にすら騙されそうなあなたなら簡単に騙されてくれると差出人は思ったらしい。
(-659) 2023/09/23(Sat) 17:20:44

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ

/*
ここまでお付き合いありがとうございます、おさとうかえでです!
ということで、倉庫まで来ていただいたところをマフィアとの密会疑惑で確保させて頂きたいと思っております。
こんな古典的な方法に引っかかるアリーチェさんは可愛いと思うので……………………

何か不都合ありましたらお教えいただければ軌道修正します!
よろしくお願いします!おさとうかえででした。
(-660) 2023/09/23(Sat) 17:22:20

【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「え、」

デスクに忍ばされていたメッセージを読んで、
書かれた追記の文を見るとぱっと慌ててそれを隠して、
今度は周囲の人に見られないように注意を払いながら
時計を確認した後、「巡回に行ってきます!」と
唐突な振りをして、警察署を飛び出した。

ここで誰かに相談をしていればよかったのに。
或いは、誰かがその不審さに気づいてくれればよかったのに。

けれど今、それを一番気にしてくれていた幼馴染二人は牢の中。
女を止める人はもう職場に片手で数えられるほどしかおらず、
それら数人が付きっきりで見ている筈もないのだ。
そうなれば、振り込め詐欺にすら引っかかる女は安易にその誘いに乗る。


「──あ、あの……」
「そ、相談、は……」

指定された港の倉庫XX番裏手。
碌な荷物も持たず、常に身に着けているベレッタのみの状態で頼りなさげな様子の女は、倉庫に姿を現し、おどおどした様子で周囲を見渡していた。
そんな態度が余計に検挙する側からすると怪しく見えるのは皮肉でしかない。
(-664) 2023/09/23(Sat) 17:44:55

【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

/*
こんばんは、ラッシュ時改札失敗猫です。
確保の方法、了解しました!
アリーチェは愚かな女で入村文ですらあの様子ですから、容易に引っかかって確保されると思います……ありがとうございます……愚かをプレイさせて下さって……嬉しい……

特に不都合などありませんのでそのまま進めて頂けると助かります。よろしくお願いいたします!
(-665) 2023/09/23(Sat) 17:49:12

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

笑顔が消えた君を見て、
同じように男の表情からもいつもの笑顔が消える。
代わりに浮かぶのは、
リヴィオ・アリオストという無敵で幸福な男とは違う、
どこか弱々しくも見える一人の男の笑顔だ。

しかしそれもほんの一瞬のこと。
きっと気のせいだと思えるくらいの間だった。

「……ありがとう、ダニエラ君。
 君の仕事が増えてしまうのは困るから」

「………明日、明日の午後に休みを取らせてもらうよ」

動揺と混乱の続くこの署内で、
まともに仕事に手をつけている人間は少数で。
明日が来るとも分からない今、
今日に頑張る必要があった。
誰がその行いを誉める訳ではないと、知っていて尚。

「辛くなったらその時は早めに早退する。
 だから、大丈夫だ。心配をかけてすまないね」
(-670) 2023/09/23(Sat) 18:13:48

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ

あなたの大事な幼馴染たちはもういない。
そうでなくとも人員が減り多忙を期した警察署内で、あなたのその様子が見落とされたのは致し方ない。
…ともすれば、だからこそ女も、こんな簡単な方法を選んだのかもしれなかった。



「――こちら、ポイントX。」

「被疑者が現れました。」
「…これより、確保に移ります。」


足音より何よりも先。
聞こえたのはそんな声だった。
次いで、かつりと革靴の底が地面を叩く音。
振り返ったあなたの前にいるのは、眼鏡を外した女の姿だった。

手にした無線から何やら声が聞こえ、「了解」と女は短く返す。
弧を描いた口元のまま、ゆらりとその瞳があなたを捉えていた。

「あれえ。」
「アリーチェさんじゃないですかあ」

わざとらしい声だ。
かつかつと、同じ音を立ててあなたへと近付いてくる。
(-675) 2023/09/23(Sat) 19:22:51

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ

女は人を、よく見る方だ。
いや、人をよく見なければならなかった。
だからきっと、その一瞬の変化だって。

「…よかったあ。」

そうして安心したように笑ったその顔が、一体何に所以したかなんてあなたに知れるはずもなく。
ただこの笑顔は本物だった。
偽物と本物の堺境なんて、意図して笑おうとした時でない限り女にとって曖昧になっていたが、それでも。


「絶対ですよお?」
「明日もこの時間にお仕事してたらあ、あたしが連れて帰りますからあ。」

しかしその言葉の根幹にあるのは、本当にただ心配な気持ちだけではなかったのかもしれない。
あなたがこんなに仕事をしなければならないのも、元を辿れば自分に大いに原因がある。


だから。

「んふふー。いいんですよお。」
「…そのぶん、早く体調、治してくださいねえ」


続いた言葉につい浮かんだのは、
「無敵になんて拘らなくてもいいのに」なんて言葉だったが。
今は、言わない。
これ以上、あなたの手を止めてしまうのも悪いと思うから。
(-677) 2023/09/23(Sat) 19:40:14

【秘】 favorire アリーチェ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……っ」

被疑者?確保?
何の話かまるでわからず、突如現れた眼鏡をかけていない
珍しい姿の貴方を、穴が開く程に凝視する。

「……ダニエラ?
 あなたなの?私をここに呼んだの……」

貴方の手に持つ無線につい視線が行ってしまう。
誰かと通信している?それはわかるが、
自分が個々に呼ばれた意図がわからない。
その発想を脳を拒否しているのかは、本人ですらわからない。


逃げる様子はない。かといって困惑しきりの様子で。
見えない何かに怯えるように、かつ、と靴音を慣らして一歩後ずさる。

「……こんな所に呼び出さなくても、わたし、話聞くよ?
 この前の件の事が気になったからこんな所に呼んだの?」

この状況での察しの悪さは一流ともいえるほどで、
それは貴方の裏切りを理解していないと言うことでもある。
だから自然、いつもの友達のように声をかけるだけで。
(-684) 2023/09/23(Sat) 20:27:57

【秘】 無敵の リヴィオ → 傷入りのネイル ダニエラ

「…あぁ、絶対だ。君に約束をしよう。
 明日は必ず、午後からは帰らせてもらうよ」

君のその奥底までの感情を理解するには、
語り合うには今この場では時間が足りない。
男が気付いていたかさえも分からない。

ただ、君にいつものように笑いかけるだけだ。

「勿論、早く治して元気に働くとするよ。
 半日休めば仕事の疲れもぱっと取れるさ」

「…よし、それじゃあ明日のためにも
 仕事の続きに向き合おうかな。
 話が出来て良かったよ。
 犬カフェの件もまた後日話そう」

楽しみにしているよ。
そう付け足しながら端に避けた書類を元に戻し、
フォカッチャは空の紙袋へと仕舞って鞄の中に。

君が立ち去るようであれば手を振って、
その姿を見送り、業務の続きへと戻るのだろう。
(-686) 2023/09/23(Sat) 20:33:15