【赤】 一匹狼 “楓”[ちらりと彼女に……いや、彼女の唇に視線を向けた。 昨日目が離せなかった理由が、もう思い出せなかった。今思うのは、裂いたら同じ色の血が流れるだろうことぐらい。 それを思ったら、彼の手は自然と彼女の頬に伸びた。 拒む様子が少しでもあればすぐに手を引っ込めるつもりだったが、受け入れられるのならばそっと頬を撫で、身を屈めて唇を寄せるだろう。 口づけを望んでいるように見えるかもしれないし、一旦はそうするだろうが、彼が本来意図するのは彼女の下唇に牙を立てて血を滲ませることだ。 彼女に嫌がるそぶりがあれば、どの段階でもすぐに中断して離れるだろうけれど]** (*2) 2023/03/07(Tue) 10:01:24 |
【赤】 片連理 “椿”[頬を撫ぜる手はその声と同じく、無機質で冷たい。 光沢のない琥珀色が近づく。 それを瞬きもせずにじっと見ている。 あるいは、乾いた色の唇から覗く牙を。 赤が重なったのはほんの一瞬、すぐに下唇を歯列が捉えた。何かを感じる猶予も与えられず、牙は柔らかな肉を貫く。] ——ぁ [小さく呻いて、目を見開く。 舌先にとろりとしたものが触れる。慣れた味がする。 じわりと滲んだそれは次第に溢れて、唇の端から流れ落ちた。] (*3) 2023/03/07(Tue) 11:46:18 |
【赤】 片連理 “椿”[しばらくの間、椿は何を問うでもなくただ黙って楓の目を見つめていた。重い沈黙の中、喘ぐような呼吸の音だけが響く。やがて、大きく息を吸いながら一度ゆっくりと瞬いて、椿は低く呟いた。] 私も、殺す? [既に日は落ちて、夕暮れの名残に糸のように細い月が浮かんでいた。]** (*4) 2023/03/07(Tue) 11:48:31 |
【赤】 一匹狼 “楓”[問いかける呟きを聞いて、彼の視線は僅かに逸れた] ……いや、 [殺す気は無い……無かった、少なくとも今は。 けれど食べたかったような気はするのだ。 その感覚が意味するところを考えてみても、答えは簡単には見つかりそうにない。一番食べたかった女がうっすら脳裏に浮かぶだけ。その狂おしさともまた違うように感じた。 彼は椿からゆっくりと離れ、姿勢を戻し、朝食のとき座ったソファへと足を向けた。呼び止められでもしなければ、そのまま身を横たえるだろう]** (*7) 2023/03/07(Tue) 13:06:38 |
【赤】 片連理 “椿”……いたい [傷を袖で拭って、唇を巻いた。赤黒い染みが袖口に残る。まだ口の中に鉄錆めいた味がする。唇の傷は、小さくても出血量が多くなる。] (*8) 2023/03/07(Tue) 15:12:29 |
【赤】 片連理 “椿”[唇を重ねたその一瞬だけ、白昼夢の続きを見たような気がした。しかし咬まれたその瞬間に自分の死を連想したし、別にそれでも構わなかった。 死ぬのが怖い、とは思わない。 誰かに殺されるのをずっと待っていた気すらする。 死にたくない、と思わないわけでもない。 それでも、生きることも死ぬことも、自分には許されていないのだと、そんな気がしている。] (*9) 2023/03/07(Tue) 15:13:23 |
【人】 片連理 “椿”[楓を追って、リビングへと向かった。 ソファに横たわる彼と肩を合わせるように、床に腰を下ろして膝を抱える。 今はただ、そばにいたいと思った。] (28) 2023/03/07(Tue) 15:20:49 |
【赤】 一匹狼 “楓”怖くないのか。 [すぐ隣の気配に尋ねる。 彼女の行動がとても不思議だった。 殺意を否定はしたが、不意に血を流させた相手だ。 寄り添ってくる意味がわからない。 けれど、怯えずに傍にいてくれる人の存在には安らぎを感じた。 人間でなくなった今、人間の命を奪い続けながら生きている今、自分がいるべきはこういう人の傍なのではないか。] (*11) 2023/03/07(Tue) 16:08:02 |
【人】 一匹狼 “楓”[窓の外はどんどん暗くなっていく。 照明をつける気は起きなかった。 室内が闇に包まれ始めても、ずっと暗がりにいたせいか、何も見えないというほどではなかった。 普通に生活していれば夕食の時間だろうか。 何を食べようという気も起きないが、何年ぶりかで酒を飲みたい気分ではあった。 といっても、楓はろくに飲めない。 だから言い出す気にもならず、黙して薄暗い天井を眺めていた]** (30) 2023/03/07(Tue) 16:08:56 |
【赤】 片連理 “椿”……べつに。 [椿は素っ気なく答えた。] あのまま殺しても、良かったのに [自分だって同じことをしたかも知れないのだ、怖がる理由がなかった。] (*13) 2023/03/07(Tue) 17:33:08 |
【赤】 片連理 “椿”[大きなガラス戸越しに外を眺める。東から染み出した黒が夕焼けの橙も黄昏の紫も西の果てに追いやって、辺りは青みがかった闇に浸され始めていた。 少し肌寒い気もする。 何か作ろうか、とも思ったが、食べる気もしない。楓も何も言わないから、同じようなものなのだろう。 茶を淹れにキッチンに立って、湯が沸くのを待つ間にカウンターの下の棚を漁る。紅茶の缶がやたら充実していて、中には茶葉のようだが全く知らない名の記されたラベルがついているものもあった。 特に冒険はせず普通の紅茶を選んで、缶をしまおうとしたところで、奥に幾つかの小瓶が見えた。手にとってラベルを確認して、ポットと一緒にそれもトレイに乗せる。] (*14) 2023/03/07(Tue) 17:33:44 |
【赤】 片連理 “椿”[部屋の中はもう青みも抜けて十分に暗かったが、薄暗さに慣れた目には特に不都合もなかった。 トレイをテーブルに置いてカップを並べ、紅茶を注ぐ。それから、さっき見つけた小瓶の中身を小匙にほんの一杯、カップの中に垂らす。 楓の視線を感じたなら、椿はにこりとして小瓶を楓の方へ向ける。] 少し冷えますから、毒でも飲むことにします。 あたたまるのよ、いかが? [物騒な冗談をにこやかに放ちながら掲げた、スキットルほどしかない小さな瓶。そのラベルには、派手な飾り文字で“ラム”と記されている。]** (*15) 2023/03/07(Tue) 17:41:54 |
【人】 月島 雅空[言葉はなくとも態度は雄弁と語るもの。 美味しそうに食べるペルラさん>>19を見て、幼馴染を思い出しつつも、おかわりもあるよ。と伝えつつも、自分がきいた質問>>20には少しだけ切なく遠い色を見せて固まった後に茶目っ気たっぷり>>21な笑みを浮かべ教えてくれる。 楽し気に語りながらも、瞳は遠くの思い出を映して>>22のだろう。] そうか…俺たちと同じように、ペルラさんにもずっと一緒にいた人がいたんだな… [ペルラさんの憂いと強さを実感する。ずっと支えてくれていたから信頼できる人だ。といいきれたのもあるのだろう―――大雑把とか>>22とかもいってるが、そこはまぁ信じることにしよう。] (31) 2023/03/07(Tue) 20:31:54 |
【人】 月島 雅空[本当に好きな人なのだろう。と羨ましいと思う反面もやっともする。 それはペルラさんがその彼のことを語っているからではない。 珠月が困ったとき、傍にいたのは自分なのに、それが今、自分ではないという、そんなもやもやだ。 今いっても仕方ないことだし、逆にペルラさんを預かっているともいえるのだ] なら俺のほうも、安心して任せられるようにペルラさんを支えないとな。 [もやっとした気持ちを置いて珠月に帰ってきてもらうために、そしてペルラさんも帰すために。という気持ちをこめて、力強く口にすると] まぁ…できること今ぐらいのことしかないんだけどね。 あとは、お肌の手入れとか? [ただ実際できることはというと、静養のための補助だな。と改めて自覚しつつ、興味があるならやってみますか?とするのであった*] (32) 2023/03/07(Tue) 20:34:16 |
【赤】 片連理 “椿”あら、可愛らしいのね。 [揶揄うように言いながら、紅茶をマグカップに注ぐ。秋の並木道が描かれたカップは、薄暗い中では木の葉の赤が沈んで真っ直ぐに伸びた道だけが白く浮き上がって見える。] じゃあ、ほんの少しだけ。 [軸の細い、小さな匙に半分だけの酒を紅茶の表面に浮かせるように静かに垂らす。砂糖のような甘い香りがほんのりと漂い、これだけ僅かな量ならアルコールの苦味はほとんど感じないはずだが、口にすれば体の芯から熱が生まれるような感覚が得られるだろう。] (*18) 2023/03/07(Tue) 20:36:06 |
【赤】 片連理 “椿”[テーブルの前に膝をついて用意をしていた椿は楓の分のカップをテーブルに置くと、また膝を抱えるように座り直した。] 冬にはよく、こうしてお茶を飲むの。 よく温まって、気持ちよく眠れるのよ。 飲み過ぎたら、怖い夢を見てしまうけれど。 [今は黒にしか見えない赤い花柄のカップを両手で包み込むように膝に乗せる。右手の袖口には、黒い染みが残っていた。椿はそっと唇をカップに当てる。傷は塞がりかけているようだった。熱いカップが傷に触れないように、少し顔を傾けて水面を吹く。] (*19) 2023/03/07(Tue) 20:37:59 |
【赤】 片連理 “椿”怖かったな。 突然水の中に落ちて、深みに引き摺り込まれて。 息ができなくて、どれだけもがいても暗がりに引き込まれるだけで。 そのうち、足元に手が見えて、私を沈めようとしているのが、見慣れた人だったりして。すごく怖かった。 [彼は椿にとっての全てではあったものの、彼こそが自分を化け物たらしめているのではないか、という恐れはいつもどこかにあった。彼を恨んではならない、その献身に報いなければならないと自分に言い聞かせて、愛しているのか、愛されているのか、憎んでいるのか、恨んでいるのかも考えないようにして、ただ望まれるままに生きて、望まれるままに消えようとしていた、ような気がする。] 怖い夢は誰かに話すと見なくなるっていうけれど…… そんなの嘘。どんなに慰めてもらったって、 すぐにまたやってくる。 [貴方もそうでしょう?というような目を楓に向けて。]** (*20) 2023/03/07(Tue) 21:08:47 |
【人】 天原 珠月ありがとう、ガク。 美味しいご飯は力の源ね。 [大変なときにと思われがちなところだが、重要なこと。 体力も精神力も不思議な力も同じなのである。] アスルは私の力が伝わりやすいところにミツキを連れていこうとしてくれているだろうから……。 [特に伝言は頼んでいないくせに、断言して。] うーん、あと大事なのは、ミツキに焦点をあてることかしら。 私の力をそこだけに集中させないといけないわけね……。 [他の人と間違えたり、他の人も一緒ではいけない。 ガクと助け合ってミツキを連れ戻すのだ、なにも隠すつもりもなく、浮かぶ思考を口に出して。] (34) 2023/03/07(Tue) 21:22:07 |