>>30 メイジ
「そう、だったね。……わかった。
次に会う時、返してね」
気にしなくていい、という言葉は飲み込んだ。
次の約束を確かにできる口実が、欲しかった。
そんな欲を持ってしまった。
紙を手に取り、書き記された住所をじっと見つめた。
「そんな事……あったら、どうしよう。
きっと大変で、でも……会った時には、おかしくてお互い、笑っちゃうかも、ね」
駅に名前を書いておこうか、と呟く。
都会ではそういう場所や物があると、学校の本に書いてあった。
そんな知識が役立つことが来るとは思ってもいなかった。