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【人】 孤児 セレン[ 痩せた手脚。傷だらけの肌。 栄養が足りないせいで弱々しく、 働き手としての価値もないはずの子供。 そんな子供を買う場所など在ろう筈もなく、 10を過ぎるまでは親元で生きていられた。 ──実子ではなく、奴隷として ] (67) pisca 2019/04/08(Mon) 3:01:02 |
【人】 孤児 セレン[ 両親がなぜ自分を売ったのかは理解ができた。 忌み子だと産んだ時から疎い、蔑み、 体よく奴隷として扱っていた子ならば、 二束三文とはいえ金になるならば手放すだろう。 だから売られる日が来ても心は動かないまま ] (68) pisca 2019/04/08(Mon) 3:02:32 |
【人】 孤児 セレン[ 手を繋いで夜を泳いだ。 川で洗うには寒い季節の夜の海。 繋がれた掌だけが道標で、 けれどその手は、売るための商品を繋ぐ鎖。 行き先は、春を鬻ぐ宿でもないらしい。 孤児を集める教会でもないらしい。 ならばこの遊泳の先にあるものは何かと、 稚心に考えていたのをいまでも夜は思い出す ] (69) pisca 2019/04/08(Mon) 3:04:37 |
【人】 孤児 セレン[ 売られた村はこのご時世に何故か豊かで お腹いっぱいに食べるものがあって 教育も受けさせられ、身体の傷は癒やされて。 何より隠し続けていた双眸を晒しても、 汚物を見るような視線を感じることはなく。 安息の地だと思った訳でもないが、 少なくとも毎夜に漂う死の気配からは遠ざかった。 生きていられる……生きることを許された。 拙かった言葉も滑らかに喋れるようになり、 何に使うかは未だ分からないものの、 これから先に必要なものだからと教育も施され ] (70) pisca 2019/04/08(Mon) 3:32:56 |
【人】 孤児 セレン[ 死にたくはなかった。 飢えたくも、居場所を失いたくもない。 この時勢に特色もない村が豊かな理由も、 そんな村に自分の他にも幾人もの孤児がいて、 一定周期ごとに消える不穏さにも目を逸らして。 必要な知識を必死に学ぶ。 何もかもを吸収するようにして、憶えた。 この安寧が、せめてもう少し続くように願いながら ] (71) pisca 2019/04/08(Mon) 3:35:13 |
生贄 セレンは、メモを貼った。 (a10) pisca 2019/04/08(Mon) 3:51:25 |
【人】 生贄 セレン[ 静謐とした夜の空気。 朧とした光源が雲間の月だと知るには、 異色の双眸は郊外に続く道しか見ず、 フードから零れた銀だけがその光を映していた。 その丁寧に梳られたプラチナブロンドからは 上質な甘い花の香が仄かに漂っている。 結ばれた唇にも花の彩が引かれて艶やかに、 熱心に磨かれた肌もまた、滑らかな白磁のようで] (132) pisca 2019/04/08(Mon) 20:40:02 |
【人】 生贄 セレン[ 子供を各地から安く買い叩き、 成人までは傷一つなく育て、化け物に捧げる。 世界に満ちた悪意を煮詰めて凝縮し、 それを甘く誤魔化した安寧の地は蠱毒に他はなく、 そこにしか居場所がない子供は選ばれ、 こうして捧げ物として運ばれていくだけの話だ。 それを真に理解したのは昨夜の話で、 孤児に逃げ場などなく、唐突に未来は閉ざされ、 こうして大人に囲まれ郊外の道を行く。 ] (135) pisca 2019/04/08(Mon) 20:42:47 |
【人】 生贄 セレン[ 何が待ち受けているのかを知らされてはいない。 けれど間違いなく、 己の意志は関係なく物事は流れていくのだろう。 着飾られた衣装は殆どが上質な絹物で、 身じろぎするたびさらさらと衣擦れが響くけれど、 それすら身動きを封じる悪意の鎖のようで ] (136) pisca 2019/04/08(Mon) 20:43:51 |
【人】 生贄 セレン[ やがて、森林を切り裂く道。 ひっそりと建つ古城は目を瞠る大きさで、 その門を潜らされればぽつんとひとりきり。 背後で閉じる門の音に、真に退路を断たれた。 前へ進むしか道はなく震える足で扉の前へと赴くと ] …………。 [ 扉を叩く勇気などなく、 辛うじて扉に掌をぺたりと触れさせて。 俯いた頬を濡らす雫を一つ零し、白く煙る息を吐く。 死ぬ為に、奪われる為に、未来を無くす為に。 ] (138) pisca 2019/04/08(Mon) 20:53:25 |
【人】 生贄 セレンあなたの、もの です。 [ 恐ろしいのだろう、きっと。 乾いた心で村人に生贄となる未来を告げられ、 抗うこともできずにここに居るだけのただの人間は、 人間であることを捨てものだと言い切った。 死にたくはない。 捨てられたくもない。 もう飢えるのも裏切られるのも嫌で、 生贄としての未来しかないのならば、いっそ。 踏み出す姿にすら動けぬままだった仕草は、 漸く焦点を合わせて、古城の主を見つめる。 映すでなく、見て、夜空の断片に瞬いた。 血の彩りを宿した瞳を持つ、美しい化け物を。 牙を覗かせる微笑みを描く、恐ろしい男を ] (204) pisca 2019/04/08(Mon) 22:49:04 |
【人】 生贄 セレン[ 玲瓏たる声音で告げた名を棚引くように、 男の前で頭を垂れる──には、 紅い眼光に許されざる意を汲んで視線は逸らさずに。 震える指先でフードだけではなく外套を脱ぎ、 すらりと靭やかな身体を晒してみせる。 生贄にされるためだけに整えられた肢体は、 お嬢さんと呼ばれるには程遠く、 主の勘違いを言葉ではなく視界で紐解くようにして ] (205) pisca 2019/04/08(Mon) 22:54:58 |
生贄 セレンは、メモを貼った。 (a22) pisca 2019/04/08(Mon) 22:57:29 |
【人】 生贄 セレンぅ、……裏切るのは、 ぼくが、嫌……なんです。 [ 人の感覚を古城の主も抱くとは考えてはいない。 ただ、裏切られ続けた過去を振り返り、 疵を刻まれたからこそ滲む言葉を素直に告げて。 そっと息を吐き、惑う視線を再び主へ向けた。 忌まれた瞳を射抜く紅に自ら絡め取られて、 その顎から逃れる気など欠片もないと示すように] (229) pisca 2019/04/09(Tue) 0:08:39 |
【人】 生贄 セレン[ 頬へ伸びる指にも抗わず、 涙の筋を撫でる指先に温かな体温を返して。 染まった頬をなんと思うのだろうか。 主の指は夜のせいか種のせいか冷たくて、 瞬きを数度――それから、唇をまた震わせ紡ぐ ] (231) pisca 2019/04/09(Tue) 0:20:57 |
【人】 生贄 セレン望むことを [ 今までもそうして生きて来た。 産まれることすら望まれないままの己を自覚して、 その穴を埋めるように自らを殺して生きてきた。 重石に縛られゆく感覚は、故に、ない。 そんなものはもとより諦めが蝕み麻痺して、 当然のように受け容れる子供は今もまた。 蕩ける微笑に蠱惑されるでなく、 ただ、満ちていく悲哀に瞳を曇らせて ] (232) pisca 2019/04/09(Tue) 0:21:30 |
【人】 生贄 セレン[ 貴人を悦ばす知識は、詰め込まれていた。 古城の主のために―― 生贄が気に入られればそれだけ村の滅びが遠ざかる、 たったそれだけの理由で、子供には相応しくない知識を。 だからこそ、差し出された指へ生贄らしく。 その指先を迎えた唇は柔らかな感触で、 そっと触れるだけに到らず舌を覗かせちらりと舐めて ] (235) pisca 2019/04/09(Tue) 0:35:34 |
生贄 セレンは、メモを貼った。 (a28) pisca 2019/04/09(Tue) 0:45:00 |
【秘】 古城の吸血鬼 ニクス → 生贄 セレン[ そっと掠め取るように伸びた舌は彼の唇に。 花の蜜を垂らした甘ったるい赤に這わされた。 唇の柔らかさ。 甘露のような残り香を残る場所を 吸い付いて、啄んで、リップ音を立てる。 大人の欲望で飾られた紅を消してしまうよう 口付けて、啜って、舐め上げた。 糸が伝う。 くちびるに映った紅を伸ばした舌で拭った ] (-77) noil 2019/04/09(Tue) 1:19:17 |
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