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【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ/* ご連絡ありがとうございます。 >>1:G34 ですが、間を開けすぎたのでどうしたものかと迷っていました。もっと早くご連絡すべきでしたね。すみません。続けていいなら秘話でさせていただければ……と思いますが、どうでしょうか? (-15) rik_kr 2022/08/14(Sun) 21:49:22 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ>>1:G34 【アルバアジト】 「徒歩? 勿論構わないよ。いいのかい」 「君の声を長く聞いていられるのはとても光栄だけど」 冷ややかな視線を朗らかな笑みで受け止めて返す。本来と逆転した身長差だ、やや上目遣いのようになるだろうか。 愛想ない物言いにむしろ男は安心していた。色々と様変わりするこの世界で、もっとも入れ替わりが激しいのが娼館界隈である。一般の客を取り、その上人を商品にする業界だから、表立ったトラブルも多い。君ももう入ったばかりではない。そういったことにいちいち参るような繊細さは失ってしまったかもしれないが。 いつもどおりだ、と心の中で安堵する。ならきっと、そう酷いことは起こっていないのだろう。 ────仕事を除いて。 (-25) rik_kr 2022/08/14(Sun) 22:52:49 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ【アルバアジト】 「金とってやろうかな…」 ふ、と口許を歪ませる。 なんとも馬鹿にしたような笑みだが、 そこには気やすさと、どこか甘えるような含みがあった。 「あなたこそ、いいの。 のろのろ歩いているくらい暇なら、べつにいいけれど」 彼女は今日も商品価値がある程度には美しく、整った服を身に着けている。 その布の下は、わからないけれど。 (-29) gt 2022/08/14(Sun) 23:13:01 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー「……どーも」 雑踏の中を歩くあなたに、声がかかる。 振り返れば、あるいはそちらに意識を向ければ、なじみの娼婦が壁に背をもたれてたっていた。 先日、あなたが声をかけるなり、面倒そうな顔をしてさっさと立ち去ったつれない女だ。 いつもよりしっかりとしたメイクは、それでも目許の疲労を隠しきれていない。 「こないだからフラフラと。 今大変だと思うけど。 暇なの?」 ふらふら、としているのは、この女の方だった。 祭りなんて、彼女のような職業にとってはかきいれどきだ。 店にいるべきだったし、あなたならそれを叱責することもできるだろう。 /*更新にともなうもろもろあると思いますので、よきタイミングで! (-30) gt 2022/08/14(Sun) 23:16:32 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ「ビアンカ。よかった、元気してた? それどころじゃないみたいだったから、心配でさ。 オレは花屋も繁盛してるけど、休めないほどじゃないよ」 相手の姿を見れば、嬉しそうに。どこか浮かれているような表情、そう見える。 街中にある男の顔はあくまで"花屋のソニー"であって、仕事仲間ではない。 さしずめそれなりの階級のある娼婦かコールレディに入れ込んだ、愚かな若者。 そう見えるように、やたらと構いすぎるくらいの前のめり具合で駆け寄った。 「お店戻るのしんどい? オレ同伴しようか。 それともどっか気の紛れるところにいこうか?」 おそらくは店が開いていておかしくない時間なのだろう。 相手の事情なんかは全く知らないふうに振る舞いつつ、合わせられるようにとさりげなく様子は伺う。 (-39) redhaguki 2022/08/15(Mon) 0:22:17 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー「………元気。 商売できるくらいには。 あなたほどじゃない」 駆けよってきた男の気遣いを全くの無碍にするではなく、 けれどそれほど尊重するでもなく、ゆるゆると言葉を返す。 つまりは今は、商売外だということのようだ。 「今日は……いい。 少し、気になることが……」 長い睫毛が、ぱち、ぱち。 二度三度と上下して。 「……静かで、誰もいないところなら、行きたいけど」 あなたの目をじ、と見た。 (-44) gt 2022/08/15(Mon) 0:45:43 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「……あの、」 その後に続くことばは、こんにちはだったろうか、 それともこんばんはだっただろうか。 あなたの営む駄菓子屋の店先から──店なんて開いている時間がなかったのなら、道を歩くあなたの前に歩み出て──ひとりの女が声をかけてくる。 そいつは、ノッテ・ファミリーとまさに一触即発の状態にあるはずの、アルバの傘下にある娼婦であった。 それをあなたが知っているかは、わからないけれど。 (-59) gt 2022/08/15(Mon) 1:52:29 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ男の店は何時だって開いている。 例え、親しい人が、ボスが死んだとしても、だ。 とてもではないが妙な格好をしていると言わざるをえない店主は、店に据えられた椅子に腰掛けた状態で、貴方の声にゆるりと顔を向ける。 「おっと。いらっしゃい、お嬢さん。」 「何か菓子でも入り用かな?」 男は知らない。 貴方が娼婦であり、アルバの人間であることを。 (-75) ぴんじぃ 2022/08/15(Mon) 3:24:41 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「お菓子」 そう聞いて、何か言おうとしていた口を一度閉じて店内を見回す。 お菓子。 その言葉には、ちょっと興味がある、ようだった。 けれどすぐに、その長い睫毛と眸を伏せる。 もう一度双眸をあげた時には、そこにはあなたの顔、しか映っていなくて。 その形のよい、つうと流れるように朱がひかれた唇を小さく開ける。 「……ええと。 …………ノッテ、……という、マフィアのファミリーについて…… 何か、ご存じ、 です、よね?」 ――その口から零れたのは、そんな言葉。 あなたについて何も知らない、けれど、知っている言葉だった。 ▽ (-77) gt 2022/08/15(Mon) 4:18:10 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ/ * あなたがノッテ・ファミリーになにかしら関係するものであることを、客の誰かから聞いた…という想定です。 (コンシリエーレであることや、裏の顔については知りません。 むしろ、ちょっと低い身分の者ではないかと思っています) 情報について問題ありそうでしたら、ただの根拠のない噂話ということにしますので…! 既知相談なしで申し訳ございませんが、ふうわりとご確認いただけましたら幸いです。 ※ランダムに導かれてやってきました (-78) gt 2022/08/15(Mon) 4:19:16 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「ふむ…」 その言葉に、どう答えたものか、と考える間があり。 「知っていたとして、先ずはそちらの名と所属を名乗るのが筋ではないかね?」 ノッテではないことは間違いない。 であれば、男とて慎重になるのだ。 (-81) ぴんじぃ 2022/08/15(Mon) 8:16:25 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ/* ご連絡ありがとうございます! 諸々承知しましたので、その体でよろしくお願いします。 ぷう (-82) ぴんじぃ 2022/08/15(Mon) 8:22:30 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ「そっか……祭りのせい、それとも、別のこと? なにかあったなら、オレは話聞くけれど」 気遣わしげに、ほんのすこしだけ下にある目を覗き込む瞳の奥はいつも通りだ。 ジェイドの瞳の奥底にはいつも、冷えたアイスブルーが埋まっている。 見た目のままに、おろおろと案じているわけではないということだ。 「――」 ごく微かに、目の動きだけで周りの様子を確認した。人並みの気配一つ一つを検分する。 状況が状況、どこに何を見とがめる者があるかもわからない。 ほんの一瞬の動きのあと、改めて相手に目を合わせた。 「いいよ、どこか移動しようか。 街の方は人通りが多いから、海のほうに出る? レンタカーとってくるよ」 配達車はアシがつく。近くのレンタリースに電話をかけて、一番安い車を取った。 大きな幹線道路に出る道は監視されているかもしれないから、使わない。 そう時間のかからないうちに車は準備される。繋ぎではあるが、他人に聞かれるようなことはない。 (-85) redhaguki 2022/08/15(Mon) 8:39:14 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「――……失礼しました。 ビアンカ。 ビアンカ・ロッカ。 【Pollo Nero】… ああ、……ナイト・バーの従業員です。 場所代は、アルバさんのほうに」 ばつが悪そうに、けれど目を逸らさない姿からは、 自らの間違いを認めたがらないような強情さと、 きちんと礼を尽くすことを基本としたような教育を感じさせる。 そうして、どこか曖昧とした言い方の中で、 彼女は自らの所属を語る。 正式な構成員ではないにしろ、アルバ・ファミリーの傘下にあるものだということだ。 (-105) gt 2022/08/15(Mon) 12:49:49 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー瞳を合わせるだけで、どこかひんやりと体の奥が冷えていくよう。 肌を合わせればとうぜん、誰だって暖かいのに、 そのアイス・ブルーを暖めることはどうしたってできはしない。 「……お祭り騒ぎのせい、かな」 合わせていた目を逸らすと、 細く美しい筆で流れるように朱をひいたような、 可憐な唇を小さく開ける。 筋肉と緊張がもたらす強張りが、その美しさをいささか損なってはいたけれど。 それでも、彼女は化粧を怠ってはいなかった。 ホルスターに銃を差すように。 それが、自らの武器であるかというように。 「ええ。 お願い。 ……危ないところはいやだからね。 誰かをつれてくるなんて、デリカシーのないこともやめてね。 今日は、そういうプレイの気分じゃないの」 それでもその冗談めかした答えにどれだけ白粉をはたいても、 恐怖の色を隠すことはできていなかった。 あなたが車を用意するなら、文句も言わず──そしてどこか当然のような慣れた態度で、助手席へと誘われるのを待つだろう。 (-106) gt 2022/08/15(Mon) 12:56:25 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ歩かなくともいい位置に車を寄せ、助手席の扉を開けきちんとエスコートするまでが仕事。 扉を閉めて、運転席に乗り込む。表情はそう大きく変わらないが、目線は落ち着いた。 市街に駐車場のあるホテルはあまり多くない。市民も使うようなふつうの手段だ。 やがて車は走り出し、周りの車に合わせた速度で道を征く。 「……しんどい? 今の状況。 ビアンカの立場からしてみたら、自分の力だけで身を守れないことに、 無理やり首突っ込まされたような感じだから……あんまり気が気じゃないかもな」 直接的には、あれこれとは口端にのぼらせて言ったりはしない。 けれども表通りの賑々しさと裏腹にひりついた裏通りの様子に、 相手が多少なりとも神経をすり減らしているのだろう、と推測して。 たかだかのメイドマンにあれこれと口を出す権利があるわけではない。 けれども講じれる手段を考えるくらいは、出来ないわけじゃない。 島から出ていけたらいいのだろうけど、そはできない。 「土地の店やってる人間のところはどうしてもどっちの息が掛かってるかわからないよ。 市外か、国外のチェーン経営しているところに籠もったほうがまだ信用できる。 幹線に繋げそうなところのホテルにでも運ぶよ。店にはオレが言っておく」 (-115) redhaguki 2022/08/15(Mon) 16:54:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニーエスコートされるがままに助手席に乗り込んで、ふわりとはしたなく広がりたがるスカートを掌でそっとたしなめる。 バックミラーを視界の端に捉えながら、視線はわずかに斜め前。 するすると動き出した風景を縫い留めようとするかのように、 どこでもない一点を見つめるだけだ。 「……楽、ではない。こういうとき、私達みたいなものは…… 関係者として狙われたって、おかしくないし、けれど表立って抵抗もできない。 何されたって、どんな死に方をしたって、誰もが『ああ、やっぱりね』と形だけ悼んで、どこの花屋がつくったかもしれない気取った花束を投げるだけ」 その言葉には、確かに体の奥底まで染み付いた血と、炎のにおいがするようだった。 ――アルバとノッテは、つい、ここ最近まで表向きはうまくやっていた。 まだ年若い彼女が、マフィア同士の抗争を骨の奥まで刷り込まれるようなことはなかったはずだ。 だからそれはきっと、ここではないどこかのことなのだろう。 そうして、ホテル、といわれれば、ゆるゆると首を横にふる。 「……ううん、ちょっとだけ……ちょっとだけでいい。話がしたいだけなの。 あなたと。…あなたじゃなくてもいいんだけど。 夜には、お店には、戻らないと。あいつらも……あの子もいるし」 あいつら、というのなら、彼女の同僚であり部下でもあるような娼婦たちのことだろう。 彼女は娼婦たちから上納金を巻き上げるような立場ではあったが、それにふさわしい庇護をファミリーに押し付けてきた。 つまりは、それが情によるものか、商売としての必要性かはともかく、ビアンカにとって娼婦たちは守るべき存在であるということだ。 ――あの子、というのは、ビアンカが自分の部屋に住まわせている男娼の少年のことだ。 それをあなたが知っているかどうかは、わからないけど。 がたん、と。タイヤが路面のなにかを踏んだのか、彼女の髪がほんの少し跳ねて。 ▽ (-117) gt 2022/08/15(Mon) 17:36:09 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー▽ 「ソニー。……この街の外に逃がすなら、何人まで頼める?」 彼女は、窓の外を向いていたから。 そう言った時、どんな顔だったのかは、硝子に映ったさかしまの顔でしかわからない。 (-118) gt 2022/08/15(Mon) 17:36:58 |
ビアンカは、本当にいいたいことなんて何一つ言わない。 (a8) gt 2022/08/15(Mon) 17:38:55 |
【人】 小夜啼鳥 ビアンカ>>25 ヴェルデ【街中】 あなたが人の波をかきわけ、屋台であれこれと会話をする姿を、 ビアンカはゆるく腕を組み、両足を確りと石畳に打ち付けるようにしてただ、見ていた。 それは日本語に堪能なものは、この街には少ないのだから、その表現が使われることはあまりないのだけれど──仁王立ちというにふさわしいような姿だった。 「ん」 あなたが釣銭を持ってきたのなら、またよろしい、と頷いて、それを受け取る。 それをどこかしら、おそらくは服の隙間に拵えられた隠しポケットの類──にひょいと放り込めば、 掌を空にしたままであなたの先を歩きだした。 「行くよ」 ふうわり、と、スカートが膨らみ、踊る。 細く長い足が、かつかつとまた音を奏でだす。 あなたはさきほど、人波を縫うように歩いたけど。 彼女は人並みの真ん中を、相手が退くのが当然といわんばかりに歩くのだ。 (27) gt 2022/08/15(Mon) 20:43:21 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ「いいとも。何が欲しい?」 残念ながらそういう嫌味────或いは冗談、軽口────は、この男には通用しないらしい。君がそれを知って口にしたのか、うっかり忘れていたのかは定かではないが。 男は嬉々として立ち上がるだろう。長い脚が大股に地を蹴って、君の斜め前へと立つ。進路は塞がず、エスコートの位置。 「君はそんな心配しなくていい、可愛い人。君より優先しないといけないことなんてあるはずないだろう?」 「新しいドレスを買うかい。それとも靴? そういえば、新しいパスティチェリアが出来たのを知ってる? タルトが絶品なんだ」 モノトーンでまとめたいつもの君のコーディネート。 きっと男が派手なものを勧めても断るのだろうけど。 (-134) rik_kr 2022/08/15(Mon) 22:14:49 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「もらうならちゃんとした仕事で貰うよ」 ち、と舌打ち。 まぁ、いつものことだ。 つんと顎先をあげて、自分のペースで歩く。 好きに歩けば、好きに合わせてくるだろう。 いつものように。 「そう。 私には、私より優先することがたくさんあるけれど」 「ドレスも靴も間に合ってるわ。 これ以上、私の衣装棚をぎゅうぎゅうづめにしないで。 ……──……、 ……タルトね」 すげなく言葉を返しながら、あなたを従えるように雑踏の中を歩いていく。 かつ、かつ、かつ。 靴底が鳴る音に合わせて、すげなくかけられる言葉を切り捨てて。 ――……菓子の名が出て、少し言葉に詰まった。 「…………どこにできたの?」 それまでそんなことはしなかったのに。 つい、とわざとらしく目を逸らす。 (-136) gt 2022/08/15(Mon) 22:38:22 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ「それもいいね。空いてるの、今日は」 世間話の温度で都合を問う。当然がっついているわけはなく、あくまで選択肢のひとつ。君が勤勉でよく客を取り、予定が詰まりがちなことも男はよく心得ていた。立場や財力を振りかざして無理強いをしたりすることは当然ない。 余裕綽々、口調も歩様も。 「そう。じゃあ尚更僕が見ておかなくちゃ」 突っぱねられても、愛想なく澄まされても男は気にしない。そうあると君は知っていてそうするのだから、ある種信頼があると言い替えてもいいだろう。そういうことがわかるくらいの仲ではある。 わかるから、男もそうするのだ。逸れる視線に笑みが零れた。 「五番通りの右から三つ目。ほら、以前アンティーク・ショップが入ってた」 「カフェも併設しててね、なかなかいい雰囲気のところだ。あのあたりは道がカーブしてるから、車も音を立てて走らないしね」 (-144) rik_kr 2022/08/16(Tue) 0:03:18 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「……予約は入ってないけど」 本当に立場が上なのはどちらなのか、わからないわけじゃない。 それでも、自分の"商品価値"を損なうことはできないし、したくはなかった。 ――だからこんな時でもいつものように、あなたが整えたようにふるまう。 それは別に苦ではなかったし、むしろ気安さの表れでもあった。 「ま、いいでしょう。見て楽しいものには、しているつもりだから」 あなたの視界の中で、自分が一番のものである。 そう信じているかのように背を伸ばして、商売女は歩いていく。 たとえ、その胸のうちがどうであろうとも。 「ああ、あそこ──……ふうん。 なかなか、よさそうな場所」 「……今度、一緒にいってあげてもいいよ」 よっぽど気になるのだろう。いつもはめったに言わない、そんな露骨なことを言って、つんと顎をあげた。 (-149) gt 2022/08/16(Tue) 2:02:25 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ「へえ? それは珍しいね。みんな聖母にうつつを抜かしてるってわけだ」 「僕には君の方が魅力的だけど。お邪魔しても?」 男は誰に対しても親しげに接する。立場の差なんてないもののように、しんから対等であるかのように声をかける。 それでもやはり肩書きの力というものは大きくて、遠慮がちに接してくる者の方が多いのだ。 だからこそ君の遠慮ない態度を嬉しく思う。それが仕事柄の振る舞いの一環だとしても────それだけではないように、なんとなく思っているのだ。口にはしないが。 「もちろん。飽きやしないさ、君は見る度に新しく美しいしね」 世辞のようですらある、しかし本心だ。こちらは恥ずかしげもなく口にした。 「そうだろう?」 同意の言葉には軽く返答。続く言葉には、やはり笑みを保って答えるだろう。 「本当? 嬉しいよ、ビアンカ」 「その日は車で迎えに行っていいかい、お姫様。それともやっぱり、歩いて行く?」 君が甘いものを好むことは知っているのだけど、こうすんなり快諾してくれるとは思わなかった。今日は運がいいのかもな、なんて心の中で呟いた。 (-154) rik_kr 2022/08/16(Tue) 2:44:26 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ「そう? うれしい。 ……あなたにも、ちゃんときれいに見えている? 少しでも、好きになってもらえるかんじなら、いいんだけど――…?」 くるり、と表情がかわる。 はりついたような笑顔。はりつけたような笑顔。 わざとらしいまでに商売用の顔に切り替えてから、ぱ、とその色を消した。 ベッド・サイドのランプ・シェードのように、かち、と引けば一瞬だ。 「……世界中の誉め言葉を集めたって、あなたのそのひとことにかないやしないよ。きっと。 聞いてて、悪い気はしないけどさ」 ありがとう、と。それが本心かどうかはわからないお礼を、艶のある唇に乗せる。 ほんの少し歩幅を広く、早くして、あなたの言葉を置いてきぼりにしようとするかのよう。 「まあ、落ち着いたらね。車は──…… 嫌」 そう言うと、こつ、と。一際高く、靴音を立てて。 ――……一瞬だけ。あなたの靴に、ちらりと目を落とした。 「私は石畳を踏む、この靴の音が好きなの。あなたの靴音も、まあまあね」 意味不明だ。けれどその言葉を、まるで数学の公式のように当たり前のものとして語る。 彼女はそういう女だった。うそと意地ばかりはって、 本心なんて、一言たりとも口にはしないのだ。 ▽ (-160) gt 2022/08/16(Tue) 4:45:05 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ▼ そうして靴音と、雑踏に紛れて。 「ファミリーは、 ボス・クリスティーナは、どういうつもりなの。 わたしたちは見殺し?」 まるで閨で囁くような、か細い息のような声が、した。 (-161) gt 2022/08/16(Tue) 4:47:19 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「…なるほど、アルバの。」 貴方の言葉を聞いて、さらに考え込み。 「確かに、俺はノッテに関して知ることはあるが。お前さんは何が聞きたい。」 互いに掟がある。 だが、会話自体は無意味だと思わなかったこと、そして相手は自分のことを知らない可能性が高いと踏んで、敢えて自分の方は明かさずに話を続けた。 (-167) ぴんじぃ 2022/08/16(Tue) 9:56:24 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「偶然お店を訪れて、偶然世間話をするだけです」 あなたの言葉に、目元の疲れを隠すかの厚めのメイクがすこし歪む。 笑顔のようなそれの不器用さが、どうやら彼女の緊張を表しているようだった。 ただの傘下のものとはいえ、守るべきルールはある。 マフィアのそれは、言葉遊びや誤魔化しを許容しない。 それでも、彼女はここにいた。 おそらくは曖昧な情報だけをよすがに、この見知らぬ異国の文化に囲まれる店先までただひとり。 「最近、ばたばたとしているでしょう。 うちの子たちが巻き込まれでもしたら商売上がったり。 ノッテでは、どういう話になっているのか聞いておきたいの。 銃がないならせめて、知らないことくらい知らないと。 噛みつくことも逃げることもできないでしょう」 陳列された商品を、物珍しげに顔を近づける。 ……彼女はうそつきだ。 鉄と火薬に慣れ親しんだものなら、 その太腿、スカートの傘に隠された小型拳銃のホルスターに 気がつくのは容易だろう。 (-170) gt 2022/08/16(Tue) 13:16:40 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「そうか、偶然ねぇ。」 くつくつと、喉を鳴らして嗤う。 「アルバが女一人に銃すら持たせない日和見主義だったことには驚いたが。手前でやっていることにヒビっているようじゃあ埒があかないんじゃないか?」 言外に、そちらが仕向けたのではないかと。 (-197) ぴんじぃ 2022/08/16(Tue) 18:13:39 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「もしそうなら、契約違反ですね。 こちらはお金で安全を買っているのに。 返品してしまいましょうか」 持っていた傘を小脇に挟み、細く美しい指を広げるように掌をゆるく持ち上げた。 降参、とでもいうような姿勢。 ――すくなくとも、私は知らないよ。 ――ほら、なんにも持ってない。 ――上はしらないけど。 ――もしかしてがあるなら、上納金の行先を変えたっていい。 ことこの場に至っては、彼女の主張はそれだけだ。 アルバの無罪を主張する様子はない。 ファミリーへの忠誠があるようには、見えなかった。 (-200) gt 2022/08/16(Tue) 19:24:59 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「…なるほど。」 「そちらがそう主張するのであれば、今はそれを信じるとしようか。但し。今からそちらに伝える事柄は他言無用、そしてノッテを売るような真似をしたならば、俺がお前さんを殺す。」 「その代わり。守って貰えるのであれば、俺はお前さんの望む平穏を乱さないと約束しよう。」 「どうだ?悪くない話だと思うがね。」 面の下から鋭く睨め付けながら、提案する。 比較的穏健派ではあるが、この男もノッテの人間なのだ。 (-213) ぴんじぃ 2022/08/16(Tue) 21:24:15 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「ええ。 安心して、私が売るのは自分の身体だけだから」 口許に笑みまで浮かべて、掌をひらひらと振る。 「お金じゃ命は買えない。 買えることもあるけど、 命の代金にしちゃちょっともったいないでしょ」 少なくとも表面上は、あなたの面の下、納められた刃の鋭さに臆した様子はない。 それもまた、娼婦の仕事だからだろうか。 (-220) gt 2022/08/16(Tue) 22:08:32 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ちゃお」 あなたの仕事終わり。 あるいは、仕事場から出かけるようなとき。 顔見知りのその娼婦は店の近くの壁にもたれながら、 火のついていない煙草をくわえていた。 誰か待っているのか、と思っていれば、あなたが出てきたのを見かけてひょいと片手をあげて挨拶をしてきたのだ。 「…お暇?」 どうやら娼婦といえど、デートの誘いをかけるのは下手くそらしい。 (-221) gt 2022/08/16(Tue) 22:13:53 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 「……珍しいこともあるものですね。ごきげんよう」 挨拶への返答としては随分な一言目。 仕事で疲れているのがあったにしても、だ。 端的な問いには訝し気に眉を寄せる。 仕事道具はしまったままのようだ。 「仕事は終わりましたし、暇と言えば暇ですけれども。 何です?デートのお誘い、ですか?」 冗談めかして尋ねる。 自分で言いながらまさかと思いつつも。 (-222) 968. 2022/08/16(Tue) 22:35:09 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ごきげんよう。 ちょっとね」 仕事用とおもわれる華美な服装の上に、一枚羽織っただけの姿。 返答のかたちを気にした様子もなく、自分もそれなりにざっくりとした態度で近づいてくる。 「どっちが嬉しい? デートと、飲みのお誘い」 あなたのお好みで、と。 口許を楽し気に、三日月のようにゆがめた。 (-224) gt 2022/08/16(Tue) 22:40:20 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 「……。 飲みの方で」 まさか本当に、とは思わず一瞬反応が遅れる。 片方は冗談と受け取り、もう片方を答える。 「そちらの仕事は終わったのですか?」 あなたの恰好を見ての疑問を ライターを取り出しながら尋ねた。 (-226) 968. 2022/08/16(Tue) 22:53:17 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタふ、と笑い声。 何度か、途切れるように。 「ふふ。どっちでもよかったのに」 冗談だろう。 彼女は本当のことは、めったにいわない。 「今日は予約がないから。休憩中。 …ま、お客に声をかけてないから当たり前なんだけど」 祭り、という環境だけをみれば、忙しそうなものだけど。 ん、とくわえた細い煙草を突き出しながら、 「おすすめのお店はある?」 と。 ……そういえば今まで、聞いた事のない質問。 いつもは、お店で行き会うだけだったから。 (-230) gt 2022/08/16(Tue) 23:16:43 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「ふん、小娘の体なんぞに興味は無い。が、しかし、それならば俺が知る限りを話そうか。とは言っても、口惜しいことに此方も殆ど何も分からず終いでね。」 「命を払うには確かに勿体ない代物だよ。」 「ここ数日で死んだのは、アウグスト、マウロ…そして、フィオレロ。この3名と、確かバーの店主も姿が見えないとか。」 「分かっているものの死因に直結する得物は銃火器。アウグストはスナイパーライフルでやられたようだな。」 「犯人は誰とも分かっていない。アルバの手の者か、それともノッテの内部の人間か、はたまたそれ以外か、何とも言えん。」 「他、知りたい事があれば答えるが。」 (-231) ぴんじぃ 2022/08/16(Tue) 23:18:32 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 冗談には溜息だけ返して聞き流して 手馴れた様子で煙草に火をつける。 でも、次の言葉には瞳を瞬かせて。 「……本当に珍しいこともあるものですね。 雨でも降りますか?」 空を見上げ尋ねる。揶揄われたことへの意趣返しに。 「そう、ですね……」 アマラントは当然ながら閉まっている。 ちらと女を見て、少し考える。 ビアンカのお客が居るような店は避けた方が良いだろう。 お互いに気が休まらないことになりそうだし。 「通りの裏手のバーは如何ですか? カクテルが多めです、ワインの種類が少ないのと、 少し賑やかなのが難点ですが。 ……静かなのがよろしければ……」 躊躇うように言葉を切って、また溜息をひとつ。 「私の家、でしょうか。 出せるのはワインと家庭料理くらいですが」 (-232) 968. 2022/08/16(Tue) 23:41:00 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ彼女の中にマフィアに対する隔たりがあるのを、直接的に聞いたことはないかもしれない。 仕事のこととなると忠実に過ぎる態度を見せる男は、相談相手としていつも適切なわけではない。 けれども意見を求められず、わずかな距離をにじませることがあったなら。 それが形にされないのなら、同じく言葉にされない気遣いはあったのだろうな。 「……命の価値は、同じじゃないからな。だからこうやって大騒ぎする羽目になる」 やたらに利いたふうな口を利くわけではない。形ばかりの慰みを口にするわけでも。 けれども時折バックミラーを確認しながら運転し続ける横顔には、使い捨ての駒の哀愁があった。 立場や程度問題の差異はあれど、結局何処も、誰も、大きく変わるものじゃない。 「じゃあもう少し街の周りを流すよ。少し走らせたって目立つこともない。 街の中にしろ外にしろ、どこも息抜きできる状態じゃないだろ」 空の見える車内は遠くの風景まで見えてしまうぶん全く安心できるわけではないけれど、 それでも誰に聴かれるかもわからない場所よりも、ずっと。 盗聴の可能性を防ぐために、大手チェーンの経営するレンタリースを経由している。 それから。少し、沈黙を経て。 「……一度に10人、 運ぶくらいなら。けれどもずっと誤魔化せるわけじゃない。 探られればアシがつく、目立てば目立つほど早く。連れ戻されて、それで終わり」 血の掟に誓いを立て、人並み以上の権利を手に入れたとて、所詮は下位の構成員。 出来ることなんてあるわけもない。絶望的な話だ。簡単に逃れる方法はありはしないのだろう。 まばらよりも少し詰まるくらいに車の行き交う道路を見据えて、前を向いたままで淡々と答える。 「それを踏まえてまったく行方をくらますんだったら、どっちの街を通るにしたって、 目の届かない遠くまで券を用意して隠れ潜むんだったら、せいぜい、 二人 だけだ」 (-233) redhaguki 2022/08/16(Tue) 23:43:38 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「こう見えても、これでご飯食べてるんだけど」 ふん、と小生意気な声。 それでも、あなたが話したことを聞くたびに頷いて。 「……ふうん。 思ったよりも面倒なことになってるみたい。 ──……スナイパーライフル……」 肩をすくめて。 「そんな趣味の悪いもの、持っている人いたかな。 男の人の銃の好みはよくわかんないな」 「……」 「気を付けなきゃいけない人とかいる? 私も、ノッテの人に近づくつもりとかはないですけど」 ふうん、と前髪をかるくいじる。 (-235) gt 2022/08/16(Tue) 23:53:07 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ありがと」 煙草に灯る炎が、ぽうと輝いた。 細くゆるく噴き出した紫煙が、古い石壁にふわりとまとわりついていく。 「あらやだ。日傘しかないのに」 何が楽しいのか。 横顔で笑いながら、煙をもう一度。あなたに向かないよう、ふうと真横に吹いて。 「ふぅん」 カクテル。ワイン。 きっと頭の中でくるくる考えていたけれど、 溜息の先の言葉を聞いて──ぱち、とまばたきをひとつ、ふたつ。 「……」 驚いたように、長く美しい睫毛の先の双眸が揺れて。 「今日は、静かなのがいいな」 客が離れて、ほ、と息をつくときのような。 夜明けの太陽のようにか細く柔い笑みを、あなたに向けた。 (-236) gt 2022/08/16(Tue) 23:58:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニーかたちにならないものが、いかに確かであるか。それは誰にも分らない。 けれど確かに思う気持ちが、そこにあるというのなら。 ――きっと、そこに。同じく言葉にならない、思いやりと気遣いはあったのだ。 それを互いに、自覚していたかどうかは分からないけれど。 「私にとっては、私の命が一番だけど」 窓に映るあなたの横顔に、一度視線が引っかかる。 ん、と軽い息が漏れて、太腿を持ち上げるように座り直した。 「うん。お願い。 ドライブは、……そんなに好きじゃないのだけど」 文句を言うわけじゃない。ただ、窓の外に送る視線はどことなく硬いものだった。 「……」 そうして、沈黙の先。ビアンカは、あなたが語る答えを聞く。 行き交う車が通りすぎるたび、びりびりと微かに窓が揺れた。 求めていた答えを得たというのに、彼女はまだ沈黙の向こう側に暫し、佇んで。 「ふたり」 溜息。細く。細く。 「…じゃあ、もし。ふたり。お願いするなら、あなたは頷いてくれる?」 「うちで一番若い子と、うちで預かってる子──ヴェルデ。ふたり」 窓に映る彼女の顔は、微笑っていた。いつもの、仕事の時に見せる顔で。 (-239) gt 2022/08/17(Wed) 0:10:03 |
ビアンカは、裏切った。 (a23) gt 2022/08/17(Wed) 0:10:22 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 礼の言葉に小さな頷きと微笑を返す。 煙草は好きでも嫌いでもないが、灯った光は少し好き。 以前そんな話をしたような、していないような。 笑うあなたに肩を竦め ふっ、と吐息のような短い笑い声を零す。 揶揄ったかと思えば、さりげない気遣いを見せてくる。 だからこそ、これまで付き合いが続いたのだろうけれど。 驚きの表情を見て、内心でまた溜息。 やむを得ないとはいえ、 揶揄われるような隙を見せてしまった、と。 けれど、返ってきたのは―― 「……分かりました。 ついてきてください」 今日は、の続きに淡々と答える。 一瞬。本当に一瞬だけれど。 見惚れた。 そんな貌もできるのですね、と茶化す気もなくなるほどに。 だから淡々と返事をして、先導する。 数歩先を、後ろに続くであろう足音に合わせた速さで。 (-245) 968. 2022/08/17(Wed) 0:30:26 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「うん」 あなたのうしろで、かつかつと石畳を踏む足音が響く。 ――素直な時は、疲れているとき。 彼女がかつて、自分でそう言っていた。 はたして街灯に照らされた化粧の奥には、隠し切れない疲労の色が滲んでいる。 けれどそれを見せないように、いつもよりさらに濃く、しっかりとメイクがされていた。 ただ灯った橙の灯りだけが、あなたのあとをついてくる。 バッグもポシェットも、鞄の類は何も持っていない。 ただ、いつも持ち歩いている日傘だけが、彼女の手の内で揺れていた。 「最近どう?」 特に意味のないような質問。 ゆらゆらと揺れて、尾をひいて、掠れて消えていく紫煙のように。 (-250) gt 2022/08/17(Wed) 0:50:53 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ 拍子抜けな返事を聞いて、かつての話を思い出した。 それでも揶揄う様子があまりにいつも通りだったから、 そんなことはないと、そう思って。……思い込んで、いた。 違和感はいくつかあったのにも関わらず。 冷蔵庫の中身を思い出して何を作ろうか、 なんて考えていると後ろからの声。 肩越しにちらと伺って、すぐ前を向く。 口元の灯りが照らす顔は、いつも通りに見えた。 「有難い事に盛況ですよ。 お祭りのおかげでお客様はたくさん。 今のところは大きなトラブルもありません」 だからいつも通り、業務報告みたいな返答をして。 一歩、二歩、三歩。 「……お酒の量が、増えました。 って言ったら、笑いますか?」 四歩目の足音の前に、苦笑が零れた。 (-252) 968. 2022/08/17(Wed) 1:36:09 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「そう。よかったじゃない。 商売繁盛、なにより」 どこか遠くから、ひとびとの喧騒が聞こえてくる。 祭り。 皆が浮かれ、楽しみ、ひとときの夢を追い混ぜている。 ─その夢を提供する側は、こんなところで女二人、近所迷惑にならないくらいの声量で話しながら歩いているのに。 そして、あなたの4歩目を聞いて。 「それを笑うと、次は自分で自分をわらう羽目になるんだよね」 …苦笑を返した。 どうやらこちらも、部屋に酒瓶が増えているようだ。 「あなた、料理できたの」 かつ、かつ。 足音が僅かに間隔を狭める。 ほんの少し歩く速度をあげてあなたの横に並んだビアンカは、ちょっと失礼なことを聞きながら首を傾げた。 (-258) gt 2022/08/17(Wed) 2:33:28 |
【秘】 ヒットオアスタンド ヴィオレッタ → 小夜啼鳥 ビアンカ>> ビアンカ ……意外。 というほどでもなかったけれど、苦笑いの答えに はっとして。 ほっとして。 だから足音が近づくのに気づくのが、少し遅れた。 「それなりには、ですよ。 高級料理店の味を求められると困りますけれど、 ちょっとメニューの狭い大衆料理店くらいなら」 首を傾ける所作すら美しい女の、 遠慮のない問いかけには慣れたもの。 見得もなく謙遜もない回答を口にする。 そういえば、人に料理を出すのなんていつ以来でしたっけ そんなことを考えながらアパルトメントの階段を上がり、 小さな部屋の扉の鍵を開ける。 「いらっしゃいませ、お客様」 扉を押さえて、仕事の声色で中を勧める。 綺麗に整えられた部屋は、 几帳面なこの女のものだと一目でわかるだろう。 (-264) 968. 2022/08/17(Wed) 9:02:18 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ヒットオアスタンド ヴィオレッタ「ふふ。 お部屋であんまり、かっこういい料理を出されてもびっくりしちゃう。 ……トラットリアくらいが、楽でいいの」 いつも酒の席でかわされるような気安いやりとりに、随分と楽し気だ。 ころころと軽い笑い声が響き、街灯に照らされた影が伸びて、また縮んで揺れていく。 階段を上がる時も、なんだか興味深いあちこちを眺めながら後に続いて。 「ん。…いいお店ね」 扉をくぐって、ぐるりと顔を巡らせて。 なんだか楽しそうな声で、芝居のような言葉を返した。 声量はそれほど大きくはないけれど、どこかはしゃいだ様子を隠そうともしない。 「ひとり?」 上着を脱いでくるくるとまとめて、傘と束ねて手の中で弄ぶ。 さすがに、主人よりも早く我が物顔で部屋の中を歩んでいくほど傍若無人ではないようだ。 (-274) gt 2022/08/17(Wed) 12:21:54 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…危ないから、ここを離れたいかなと思って」 あなたをここにしばりつけているのは、私でしょう。 ↓[2/3] (-276) gt 2022/08/17(Wed) 12:29:52 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカ「それが普通だと思うな。本質的にはみんな自分以外のために死にたいわけじゃない。 自分と関係ないもののために危険に晒されるのは嫌だ。 ……そうじゃない人もいるんだろうけれど」 今この状況のために義憤にかられている人だとか、復讐を誓う人々だとか。 自分以外の何かのために命を投げ出す人たちがいるために、こうやって争い合うことになるのだろう。 ハンドルを握っている男がどちら側にあるのか、なんてのは常通りの顔からはわからないかもしれない。 ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。 いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、 その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。 迂回するように街の周りを走る車は、もうじき折り返す頃に入る。 ふたり。その中に相手が、己を入れなかったのを聞いて、ちらと視線がかすかに動いた。 「……一人で外に出していいの? 自活出来ない年じゃあないだろうけど。 きっと、ビアンカがいなかったら、戻ってきちゃうよ。キミのことが心配で、さ。 笑って送り出してそれっきり、なんて。オレはずるいと思っちゃう」 貴方の表情が引き締まるのと反対に、男の唇が中央に集まるみたいに結ばれた。 引き受けかけた先の時とは違って、適切だろう判断が下されることを、渋るように。 より良くあるようにと送り出されることの寂しさを想像して、何度か瞼がまたたいた。 それがどんな気持ちになるものかを、しっているかのように。 (-291) redhaguki 2022/08/17(Wed) 18:07:58 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー「勝手にすればいい。死にたがりなんて。 面子も仇討ちも、…血の掟もなにもかも、 くそくらえだ。 私は、そうじゃない」 呪詛のように吐露をする。 さんざんに噛んで味のしなくなったガムのように、 そんな拘りはもう彼女の人生には必要ないのだ。 ただでさえ、苦々しい鉄と泥の味ばかりが口の中に残って、今でも忘れられないのに。 ごう、と窓が風を裂く音。 青、金、緑、紫、オレンジ。 揺れる海は、うねる髪のようにさまざまに姿を変える。 すぐに太陽が沈み、その色のいくつかは失われてしまうけれど。 ――太陽は、また明日も登る。 けれど、同じ波が見られるとは限らない。 「知らない。 エリカの方は若いつっても十八。どうとでもするでしょう。 ヴェルデは──……」 それは、優しさなんかじゃなかった。 相手のことを考えない、押しつけがましい、一方的なものが、 優しさや思いやりなんかであるはずはなかった。 彼女は、 ▼ (-293) gt 2022/08/17(Wed) 18:25:18 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー▼ 「私が拾ったガキに、私を不快にさせる権利なんてないの。 笑って送りだすつもりもない。 ケツを蹴り上げて追い出すから、安心して。 二度とこんなところくるんじゃないって。 この2年、ずっとずっと、面倒くさくてたまらなかった。 万が一死なれでもしたら本当に、最後まで面倒じゃない。 そこまで私の人生を左右する権利なんて、あのガキにはない。 絶対に、ない」 女でもなく、娼婦でもなく。 母親のような――それも、子育てなんて全くうまくない、最低で最悪な――顔で、悪態をついた。 本当のことなんて何一つ言わない女は、 自分自身にその顔を見せつけるかのように、 窓をじい、と見つめていた。 (-294) gt 2022/08/17(Wed) 18:27:45 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカ「旅行はべつに、したっていいけど」 少年の手が、あなたの細腕を遠慮がちに掴む。 振りほどくのは簡単だ。 少年があなたにこんなことをするのは、今まで一度だってなかっただろう。 「——二人でならな」 「危ないってんなら、あんたも同じじゃないのか」 「様子がヘンなのってさ、最近何かしてるのと関係ある?」 それから、こんな風にあなたの行動の真意を尋ねることも。 翠の瞳はじっと、あなたを見ている。 (-295) beni 2022/08/17(Wed) 18:36:19 |
【秘】 ”昼行灯” テンゴ → 小夜啼鳥 ビアンカ「悪いが、特定の人間に絞り込めていない状況だからな。俺からはその質問には答えられんよ。強いて言うなら…お前さんに理由無く近づく輩は全て警戒しておいて良い。」 「例え身内であってもな。」 誰が犯人なのかは分からない。 だから、身内だからと気を許すなと伝える。 「…お前さんは失うなよ。大切なものをな。」 (-296) ぴんじぃ 2022/08/17(Wed) 18:41:27 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「…………」 「私は」 捕んでみれば、その腕はなんとも細く、頼りない。 あなたは男だ。 数年もたてば──いや、今でさえ、彼女を組み伏せることすらできるかもしれない。 彼女は非力だ。 弱く、愚かで、そしてなんの能もなく、 この街を離れる勇気すらもなかった。 「私はいい。 体を売る以外、もう何もできない。 十年もすれば売れなくなって、あなたのかわりにゴミ捨て場に転がる。 けど、あんたは違う。 ……違うよ。 本なんて、私は読みやしなかったもの」 こちらを見つめる目を、見下ろす女の瞳は潤んでいた。 そこに浮かぶ感情を、なんと表現するべきだろう。 ――悲しそうで。 ――嬉しそうで。 笑うように、おんなは泣いていた。 涙なんて、決してみせはしないけど。 ↓[1/2] (-300) gt 2022/08/17(Wed) 20:06:02 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ↓ 「 私 、旅行は 嫌いなの」「私は大丈夫。守ってくれる男なら、いるし」 「――仕事してるだけ」 あなたの問いに、答えることはできない。 答えにもならない答えを押し付けて、歩き出そうとする。 「いいから黙って、街を離れなさい。 一回爆発しないと、こういうのは収まらない。 へたくそなセックスと同じ。男ばかり、馬鹿みたいに騒いで、あちこち犯して、そうして終わったら素敵な思い出みたいに語るの。ああ、くたばれって感じ」 溜息。血を吐くような。 「死にたくはないでしょう?」 死にたくなんてないのだ。 [2/2] (-301) gt 2022/08/17(Wed) 20:07:30 |
ビアンカは、ここは大嫌いだった。 (a38) gt 2022/08/17(Wed) 20:08:51 |
ビアンカは、けれど、ここに居続ける。 (a39) gt 2022/08/17(Wed) 20:09:10 |
ビアンカは、旅行になんていかない。 (a40) gt 2022/08/17(Wed) 20:09:23 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「そ。 まあ、女ですからね。 いつだって身の危険は感じてる」 冗談めかして笑いながら、自らを抱くように腕を組む。 寒くもないはずなのに、強く圧された指先が白んでいた。 「大切なもの?」 あなたの忠告を、レコーダーのように繰り返す。 ――そのレコーダーはノイズ混じりでがりがりと歪んでいて、きっとずいぶん昔に壊れてからそのまま、置かれているのだろう。 別に、珍しいことじゃない。 「処女なら、随分昔に無くしたわ」 他にはなんにも持ってない、と嘯いて。 握り締めた掌を、今度はひらひら、無責任に振ることはなかった。 「………あんまり営業妨害するのは気が引けるな。 ねえ、おすすめはある? これ、どこのお菓子? チャイナ?」 (-304) gt 2022/08/17(Wed) 20:16:19 |
【秘】 翠眼 ヴェルデ → 小夜啼鳥 ビアンカけれど、その頼りない腕が少年を拾った。 守りたいとか、どうにかしたいとか、そういうことじゃない。 そういうことができる者はきっと、他にいくらでもいるのだろう。 それでも。 あなたがしてくれたことを返したいと思うぐらいにはなったのだ。 「じゃあ、その十年で」 「おれがもっと他のことをできるようになって、あんたを拾えばいい」 少年は、ばかだ。 学はないし、碌にものも知らない。 ばかなこどもだ。 それがどれほど大変なことか知らない。 あなたの手を引く。 話はまだ終わっていないから。 「死にたくないのはあんただろ」 (-307) beni 2022/08/17(Wed) 20:31:21 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 翠眼 ヴェルデ「ばか」 ふ、と笑う。 「教えなかったっけ」 「男は、女を置いていくもんだよ」 手を引かれて、ゆっくりと振り返る。 肩越しの顔が、あざけるように歪んだ。 「その時私は三十四。 十年体を売れば、もう売るものなんて残ってない。 積み上げた借金は、きっともう返せない額に膨れ上がって、 私の女としての部分を全部ツケと利息でぐしゃぐしゃにする。 あんたも十年たてば、きっと大切なものがたくさん手に入る。 素敵なものがたくさん。 そんなとき、ごみを拾いに戻る必要なんてないんだよ」 はあ、と。 溜息に、どこか甘い香りが混じる。 ――酒の匂いだ。 「死にたくなんてないよ。 けど、生きていてもそんなに、よくはない」 (-309) gt 2022/08/17(Wed) 20:42:55 |
【秘】 花で語るは ソニー → 小夜啼鳥 ビアンカそうだろう、と繰り返すのは先と同じ言葉になるから、相槌だけで過ごされる。 やたらに相手の境遇や過去を聞きたがるわけではなかったから、相手も話したりはしなかっただろう。 そしてきっと相手も、金を払っている間のリップサービス以上には興味を寄せなかっただろうから、 男が何処で生まれてどう育ったかなんてのは、聞かされていないはずだ。 それでも真っ向から、裏稼業の浪漫なんてものに浸りきっている人間は、 よほど血筋に硝煙の匂いの染み付いた人間だけでしかないのを、知っている。 互いはそうではないということも、わかっている。 相手の、強い表情を横目に見遣りはしただろう。 ぎょっとしたりもしなければ、二度見して確認したりもしない。 ただ、少しだけ黒目は下の方を見つめがちになって、改めて道路の先の方に視線を移して。 運転に支障のあることはしないし、動揺してみせたような様子もない。 「……今度から」 余計なお世話なのだろうし、きっと言ったところで相手の覚悟が揺らぐわけじゃない。 彼彼女らの間でどんなやりとりが交わされていたのかだって、わかりゃしない。 納得済みの話なのだったら、それこそ無駄な忠告でしか無いだけのものだ。 「ウソつく時は、話切り出す時から貫いておいたほうがいいよ」 どこが、何が、なんてのは敢えて口にせずとも伝わるのだろう。心当たりはあるだろう? ゆっくりと、海岸線を窓の中に切り出しながら車はゆるやかなカーブを曲がっていく。 街を見下ろすほどの勾配もなくじきに市街に差し込んでいけば、 そのうちに車に乗り込んだ場所にほど近い風景が見えてくる頃だろう。 話し合いは、もうそろそろおしまい。 (-312) redhaguki 2022/08/17(Wed) 20:52:30 |
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