【人】 封じ手 鬼一 百継>>3:34 誘蛾 絆取得 === 月に向かって弦をはじき歌う誘蛾を見ていた。 ――ただ 請うは そう この世の すがた これこそ 真実 あな 美しや 歓びと快楽の涙がぽろぽろと珠に成ってあふれるように、誘蛾の調べは、こぼれ、止まらぬ。 その姿を見ていると、儂は、どうしても、ひとりの女性を思い出さずにはいられぬ。 ――ねえさま。 徽子ではない、鬼一の血を同じくする姉のことだ。 9年前の百鬼夜行。 それまで、鬼一の一族は、定期的に訪れる百鬼夜行で封じ手としての力を振るい、犠牲を最低限に抑えてきた。 そう聞いていたから、5歳の儂は安心していた。今回も大丈夫だと。 それが突然、父、母、姉を連れていかれたものだから、通例よりどれだけ強力な"百鬼夜行"が行われたのかと、それは如何なる理由故かと、不思議でならんかった。 真実を知れば、なんてことはない。 徽子はすべて知っていた。 姉が百鬼夜行の狂おしい饗宴に魅せられ、屈し、与したのだ。 身内の……ごく親しい身内の裏切りによって、父と母は喪われた。 記憶の中の姉はいつも溌剌としていて男勝りで、その瞳は知性で輝いていた。 堕ちたなど、信じられん。だが事実だ。 つまり、百鬼夜行には、そんな姉を惹きつける"何か"があるのだ。 (5) TSO 2021/04/24(Sat) 0:47:27 |
【人】 封じ手 鬼一 百継目の前の、この少女にしか見えぬ女性もまた、そのひとり。 音を奏でれば場を支配し、色を描けば釘付けにして離さず、それでいて只々自由なこの女。 誘蛾。 彼女自身は儂の姉にまったく似てはいないが、ふたつだけ共通点がある。 ひとつは、百鬼夜行にこそ生の真実を見出してしまったこと。 ふたつめは…… 「……優雅、ねえさま」 優雅……いや、誘蛾。教えて欲しい。 「百鬼夜行の魅力、如何ほどか。 なあ。抗おうとは、罪深いとは、思わんのか。 お主の見る世界には何があり、どう聞こえておるのじゃ。 あやかしのもたらす享楽は、その他総てを犠牲にできる程、素晴らしいものなのか」 誘蛾は、奏で続ける。儂など此処に居らんように。 儂の歌姫は、知らぬ間に、手を伸ばしても届かぬところまで遠ざかっておった。 理解しようとも、できるとも思わぬ。連れ戻すには遅すぎる。 それなのに語りかけるのは何故か、自分でもようとして説明がつかぬ。 が…… 「……教えてくれ、誘蛾」 最後に、祈るように、一言だけ。 [こちらからは〆] (6) TSO 2021/04/24(Sat) 0:49:46 |
【人】 封じ手 鬼一 百継>>7 継置 === 百継、と名を呼び捨てにされ、飛び上がるほど驚いた。 それはまさに、あやかし除けの香を前に、今後どうしていこうと考えているところであった。 これらの香は、一葉には毒じゃ。 しかし皆を守るためには必要である。 母さまや姉さまが生きておれば細やかな助言が貰えたかもしれん。 儂に残されたのは、父譲りの、大掛かりで大雑把な術への出力の仕方のみ。 首をひねって試案をしていたところに突然声がかかり、間抜けに「ひゃ」と言いながら振り返る。 「継置か」 そこには儂の子がいた。 継置はいつも容赦がない。 ――家族を喪うつもりか? 「そうしないために、考えておるのじゃ」 今まさにやわい、痛いところを突かれ、幼い口調になる。 「儂は!」 つい、先ほどのことであった。 一葉と話し合った。 醜い己の雑念を自覚し、一葉への親愛という矛盾する感情も認めた。 しかし尚割り切れぬものも抱える。 (8) TSO 2021/04/24(Sat) 1:21:46 |
【人】 封じ手 鬼一 百継――おれの事は?信じられないか? 「うん」 首をかしげて、甘える仕草。 実を言うと、もう信じているのだ。 信じたいのだから。信じてどうなろうと後悔はしないのだから。 だから、これはただの我儘。 なあ兄や、その口に出して聞かせてほしい。 「兄や、儂の力になってくれるか。 真実を、今ここで、聞かせてくれまいか」 [パス] (12) TSO 2021/04/24(Sat) 2:20:25 |
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