170 【身内RP村】海鳴神社の淡糸祭
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「どうか、息子を、あの子の人生を、
幸せを、奪わないでください、神様。」
。゚ ゚o .゚
..。゚ ゚o
。o゚
――ならば。
声に値する程の供物を寄越しなさい
人魚の落とし子には才がある
それをみすみす逃すのは口惜しい
『お前たち』にならば、出来るでしょう?
私の眷属となりなさい
さすれば、子の命と幸せは下界に
[親は、なんでも知っていた。
俺の願いが、歌を歌い続けることも、
その所以の幸福の根幹が、
『アイツ』だということも。
―――その日から、
家に金が置かれる事もなく、
俺の親は、俺に姿を見せなくなった。
* "その日"と、同じだったのだ*]
しら、知らない、
知らない、知らない知らない知らない
こんなの、
こんなの嘘に決まってる!!!
[絶叫した。痛みに、ではない。
苦し紛れの現実が、妖の呪いを受けていたなんて
信じられなかった。受け入れられなかった。
誰も、愛情を断ち切ってなんて、いなかった。]
『でも、謡えているでは或りませんか』
[『声』は笑う。
眷属を自身の隣に侍らせている。
動かない身体で、眼球だけ、彷徨わせる。
どれだ。どれなんだ、
俺の父と母が、
もはやどれなかもわからない。
]
お、オ、俺、俺は、俺は、俺は俺は!!
俺は、親父もおふくろも、海音も、
ただ、俺の隣に居ないだけで、
歌えば、歌ってれば戻ってくれるって思ってただけだ!!
お前たちに叶えてもらった願いじゃない!!
全部"俺"がいちから作ったんだ!!
[ドク、と脳髄がまた痺れる。
俺の感情を吸い上げるように、管が嚥下する。
光はさっきよりも赤く、あかく。
黒と違う淀みのようだった。]
『君の音楽、どれも良いね』
『採用しよう、我が社から売り出す事を約束する』
[コンポーザーとして、どこにも所属せず、
ネット活動や路上演奏で稼いでいた頃。
その言葉は、希望の光のように思えた。]
『では、この楽曲は
××さんの曲として、世間に公表するから』
[大手音楽会社に、曲を提供した時。
その一言で、光は一瞬で陰る事となる。
俺は、契約上、自身の名を明かせなくなる。
無名の俺が、曲を多くの人間に広める方法。
その手段として、会社はこの形態を取った。
ネット活動も制限されてしまった。
"ゴーストライター"
それが、俺の本当の今の仕事の肩書。]
[当然、始めは納得いかなかった。
いや、今だって納得が行っていない所もある。
けれど。現実は、厳しいものだった。
誰をも魅了する
人魚では、ないのだ。
俺の『歌』は――
ただ、俺が愛する人へ愛を伝えるときに、
自分の思い通りに、曲が作れるだけ。
何度かチャンスが訪れたとしても。
『俺自身』は、売れないままだった。
アイドルの突発的なヒットチャート
サブスクリプションで聞けるR&B。
J-POPに、レゲエが混ざった恋の歌
全て、俺が作った曲だと、世間は知らない。
形態を変えれば、たちまち、大衆は笑顔になった。
『歌』だけが、皆に愛されるのだ。]
有涯、生在る者の望む至高の幸福とは
如何に欲に塗れているものか
随分下界で苦労されているようですね
叶った後に関しては
私は一切、関与をしておりませんが
人魚の落とし子よ
再度『願う』のならば、叶えましょうか
真実を知り、何か新たに願う事はありますか?
……それとも、海鳴の子
ここに来た理由は、他の妖が原因でしょうが
私は、貴方の願いも、聞き届けますよ
[他人事のように、当然のように。
揺蕩う『声』に、悪意は感じられなかった。
ただただ、感性が違うのだ。]
お、れ、俺は、―――俺は……
[意識が、朦朧と、する]
[ 火花が爆ぜたような一瞬のこと。
知らぬ声が耳ではなく
脳に響く。
でも今、気にするべきはそこじゃない。 ]
宵稚!!!!!!
[ どうして、届かない。
手を伸ばせば膜のようなものに遮られる。
突然周りの空気が変わった。
頭のどこかで
これは現実ではないような気がしていて。
それでも夢とは違う。
だって、夢がこんなに苦しいはずがないんだ。
宵稚が俺の名前を呼んでいる
声が聞こえずとも口の動きでわかる。
だから俺も伝えるんだ。口を開いて
”ここは危険だ”
と
ただの直感。
でもそれはきっと正しい。 ]
[ 周りが暗くなろうと
俺は目の前の膜を破ろうと必死で
何度も手を叩きつける。
俺の手がダメになったっていい。
今、君の元へ行けるんだったら
なんだったってする。
けれど急に力が強くなるわけもなく
ただ力一杯足掻くことはやめなかった。 ]
[ その声は俺にも響いた。
俺と宵稚以外、
先程俺に語りかけた声とも違う
また別の声。
まるで君に知り合いに話しかけるような
懐かしさも込められていた。 ]
[ 俺は知らない。
君がその声に悩まされていたこと
聞けなかった。
知らなかった。
俺がずっと一緒に居れたなら
知れたかもしれないことを。
拳を握りしめて
膜越しに異形を光を睨み付ける
俺の中にある感情は
恐怖でも畏怖でも驚愕でもなく
明確な怒りだった。 ]
宵稚の両親のこと
知っているのか……?
まず、話し合いするなら
俺をそっちへ行かせてくれよ
[ 機嫌の良い声。
この状況でその余裕が俺には癪に触るんだ。
全く対等ではない。
落ち着け、落ち着けよ俺。
余裕があるということは
俺たちを格下とみているということ。
あまりにも今は情報が少ない。
『声』から得られる情報で
俺は理解しなければならない。
俺の中で答えはほぼ出ていた。
村の言葉を借りるならここは隠り世。 ]
[ 君に迫る危険に
俺は助けにも行けず
ただただ名を呼び続けるだけ
届かない、
彼の苦しむ叫びも聴こえない
けれどわかる、伝わるんだ。
その苦しさが。
握った拳に爪が食い込む。
血が流れ滴り落ちる。
口の中も歯を食いしばりすぎて
血の味が広がっていった。 ]
[ 握りしめていた手に冷たい何かが這う。
ソレは舌のように柔らかく滑っていて
俺の手の血を啜り、傷口を広げていく。 ]
……っ! な、何を
[ 手には何かが張り付いているような感覚が
あるものの何も見えず、
ソレが不気味さを増している。
ただやられっぱなしなんて
俺の性分じゃないもので
その滑ったものを拳で強く握った。
ピクピクと動く感じがわかって変な感覚だ。
このまま潰せないかと力を込めようとした時、
別方向から同じようなものに首を締め付けられ
手を離す。 ]
ぐっ……
[ 首に巻き付いて段々とキツくなっていく。
かろうじて息ができるものの
酸欠になるのも時間の問題で。
苦しさで口を開けた瞬間を狙っていたのか
口の中に先程よりも太く、それでいて
同じような滑りを持ったソレが
口の中に入っていく。 ]
んん゙……ッ!
ーーーー!!
[ 食いちぎろうと歯を立てれば
首を絞める強さが増し
口の力が緩めば口の中を好き勝手にされる。
じゅぶじゅぶと音を立てて動くソレに
耳まで侵されているように感じて。
口にあった血は全て吸い取られた。
唾液も吸い取りながら喉の奥へと進む。
苦しくて涙が溢れるけれど
俺が手を伸ばすのは
手の届かない宵稚の姿が見える場所。
苦しんでる様子が見える
俺が、俺が助けるんだ。
]
[ 光に映し出されたもの
それは俺の知りたかったこと。
君が話せなかったこと。
君自身も知らなかったこと。
俺がこのまま見ていていいものか迷った。
君の口からではなく
君の許可なく知ることを……。
けれど知らなくてはいけないんだ。俺は。 ]
[ 満足したのか俺の口から、首から
俺はソレらから解放されていた。 ]
なあ、俺の血は美味しかったか?
だが誰もタダでやるなんて言ってないからな
何事も等価交換、だろ?
特にこの世界では重要視される
これは交渉だ
この膜、破ってくれよ
さっきの血で足りないなら
足りるまで採っていいさ
先に手を出してきたのはそっちだからな
少しなら血のサービスをしてあげようか?
……わたくし共と渡り合おうだなんて
何と無謀な
けれど面白い。……良いでしょう
確かに
貴方の血は甘美でした
[ 首元に先ほどのソレが巻き付き
ちくりと痛みが走る。
出そうになる声を抑えると
勢いよく音を立てて
血を吸われていく感覚と
快楽が体に伝わる。 ]
気付きましたか
血を吸われると気持ちが良いでしょう?
貴方の苦しむ声を聞きたかったのですが
喜悦の声でも宜しいのですよ
へぇ……?
いい趣味してんな、褒められたもんじゃないけど
俺をってところは褒めてもいいさ
もし宵稚が……って考えるだけで
俺は俺を許せなくなる
でもせっかくだけど、俺は一途なんでな
……ぅ……ッッ
[ 解放されれば脳に送られた快楽と
血を失ったことによる貧血で
頭がぼんやりと蕩そうになる。
それでも俺は君の元へ行くことをやめない。
今行くから、
俺が行けば大丈夫だから
隔てられていた
膜が消える。
それと同時に俺は駆け出して
宵稚への元へ目指すんだ。 ]
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