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【人】 黒崎柚樹[────そう。武藤も案外、涙脆いよね。 私が無事、生還した時──それは死んでしまっていたのが誰なのか確定した時でもあって──二人で抱き締め合って泣きまくった。 他にも何度かは武藤の涙を見たことがあって、それは多分、私が武藤に見せていた涙の回数とそう離れては居なかった気がするよ。] ……どうだろう、ね。 [武藤と共に夜空を仰ぎ見る。 私の感覚なら今は春のはじめなのだけど、武藤の感覚なら秋のただ中。 首筋を擽る夜風は春のものよりは数段温かく、そも、夢の世界なのだとしたら現実の季節と乖離していても不思議じゃない。 "○○しないと出られない部屋"的な夢まで共有したことのある私たちだから、季節を知ったところで現実への手がかりには繋がらないかもしれない……けど、星の配列を確かめるのは、少し怖い気もして。] (310) 2023/03/03(Fri) 6:51:57 |
【人】 黒崎柚樹うん、そう。 ずっと実家住まい。 あの大学はスポーツ特待で行けたところで、 一番条件、良くて。 自宅からも通えるとこだったし。 [一人暮らしするほどの金銭的余裕は無かったし、働いてる母さんの代わりに家事を担う必要もあったから、家からは出る選択肢は無かった。母さんは好きなところに行って良いのよと言ってくれていたけれど。 とうに武藤が知ってるだろうはずのことを初めて口にするように告げ、とうに私が知っていることを初めて聞いた風に返す。 それは私の半年を否定するような行為だったけれど。 武藤と一緒に居られるなら、こうして話していられるなら、ちっともつらくなんかない、と自分に言い聞かせ。 恋人の不在を悲しむ自分を、心の隅、ぎゅうぎゅうと押し込めて冷凍するみたいに固めてしまえば、いくらか気は楽になった気がした。] (311) 2023/03/03(Fri) 6:52:21 |
【人】 黒崎柚樹すごく褒めてる。 [褒めてるのか? >>299 と、少しばかり納得していない風な口調で言われたことには真顔で返す。 どうしてもこういう時に"ねーちゃん節"(かーちゃん節ではない。断じて)的なものが出てしまうのは、もはや癖のようなもの。 弟とは、兄弟みたいと言われることが多々だから、"にーちゃん"呼ばわりもあながち間違ってないとは思うけどね。] 弟、5歳下だからね。まだまだ子供だよ。 [言いつつ、使い終わった調理器具は端から洗っていく。 料理を終えた時にシンクに器具が山盛りっていう状況、自分は好きじゃないもので。] …………、そう。 ["同じ年の従姉妹"の声には、少しだけ動かしていた手が固まった。 弟と同い年の、武藤に恋する女の子。 もや、と沸き上がった思いは、ボウルの泡を落とす湯と共に排水口へ洗い流し。] (312) 2023/03/03(Fri) 6:52:44 |
【人】 黒崎柚樹[武藤曰くの"仲良くなれた記念" >>301 の酒は、あっという間に消えていった。 これまで武藤と酌み交わした酒の量は、10リットルに収まらないと思う(下手したら50リットル……までは無いと思いたい)けど、今の武藤にとっては初めての500ml。 そう思ったら、もうちょっと味わいながら飲めば良かったかな。] …………それは、どうも。 [こういう時、10割「かわいい」と告げられるはずの言葉は「幸せそう」 >>302 にすげ替えられていて。 ありがとうと笑顔で言うことでもなかろうと、いくらか憮然と、でも面映ゆい気持ちでぽそりと返しておいた。] 武藤も、チョコ食べてる時は幸せそうだよ。 [このくらいの反撃は許されて良いと思う。] (313) 2023/03/03(Fri) 6:53:21 |
【人】 黒崎柚樹[そして目の前には、チョコの甘い香りのお酒。 オムライスのお供にするには甘ったるい気もしたけれど、お互いの皿はもう残り僅かになってたし、まあ良いかと、武藤が用意してくれたカフェオレ色の酒をビール缶の代わりに皿脇へ。] ………………あま。 [思わず呟いてしまう。不味くはない。チョコの味……と、アルコールの風味。 そういえばこれを口にしたのは、美術館で武藤と飲んで以来だったかも。 私は甘い系のお酒……というか清涼飲料もほとんど口にしないから、こういう甘さは武藤を象徴するもののようで。 今はむしろ、この甘さがありがたいと思った。] なんか、つまみ探す。 [けどさすがに甘くない添え物が欲しいよこれは……と、食料棚を漁りに行ったら燻製ナッツの袋が出てきて。 冷蔵庫の野菜庫の中身も把握していたから、きゅうりと人参とセロリをスティックにしてマヨネーズにバーベキュー用のパウダースパイスを混ぜたものも添えてテーブルに戻った。] (314) 2023/03/03(Fri) 6:53:54 |
【人】 黒崎柚樹楽しいと思ってくれるなら良かったけど……。 武藤ほど口、回らないし、愛想ないし。 自分で良いのかな…………、とは。 [グラスを傾けるいくらか緩んだ顔は、私のよく知る武藤の表情。 ずっと思ってたよ。 武藤は私と居ると楽しいって言うけど、私は特段面白い人間では無いと思うし、陸上と勉強と家のことだけで遊びらしい遊びもほとんど知らない。不真面目ではないけれど、頭もそんなに良くないし。 大学生なら当たり前に知るお洒落なスポットも、美味しいお店もなんにも知らなくて、子供の頃から行ってる地元のおすすめ店くらいしか言えるものはない。 女らしからぬ身長と見た目で、女子高時代から王子様王子様言われてたけど、その賞賛には何の中身もなくて。] や……、楽しいけど。こっちは。 一緒に居るのが武藤で良かったな、って……。 [投げかけられた視線に、"くっきーは楽しくないの?"という色を感じて、そう、慌てたように付け加えて。 こくりと多めに喉に流し込んだ甘いお酒に、けほ、と小さく咽せそうになった。*] (315) 2023/03/03(Fri) 6:54:50 |
【人】 黒崎柚樹ん……あまり地方に行くとかは考えてないかな。 結婚とかは……、わかんないけど。 [結婚、なんて言葉が武藤の口から出てきて >>319 、少しばかり背を強張らせながら言葉を紡ぐ。 無意識、右手が探すように左手指を辿ってしまうけれど、細く硬質な金属が指先に触れることはやっぱり無くて。 ────『卒業したら多少稼げるところに就職しようとは思うので』 そう告げられたのは、互いの思いを通わせ、また会おうと夢の世界で約束した後に再会した、現実世界の病院でのこと。 武藤のそんな言葉に、まさかプロポーズの意味があったとは知らず、「そうなの?」と軽く頷いていた、あの時の自分。 "今の武藤"は就職、どう考えてるの?なんて、聞けるわけがなかった。] (327) 2023/03/03(Fri) 12:05:16 |
【人】 黒崎柚樹ん……、だろうなとは思った。 ["チョコ食いながらこれ飲むでもオレは構わない"という武藤の言葉 >>322 に、すごく知ってるよと頷いてしまいつつ、武藤の備蓄以外にこんなのも出てきた、と麦チョコの大袋も卓上に出しておく。 確かに酒と麦チョコは合うけどね。なんなら日本酒にもお似合いだし。 私は生野菜が好きだから、こういう時、すぐ野菜(か肉か)を出そうとしてしまうけど。] ……作れるものは、作るよ。 [何の情報も渡せていない返事をしてしまい、それじゃあまりにそっけないか、と。 でも何をどこまで言って良いのか悩んでしまう。この、なんにも知らない無邪気な武藤に。] 普段の御飯もどっちかっていうと和食多いからな……。 ぶり大根とかイカの塩辛とか。ああ、モツ煮とかも好きだけど。 [とはいえ、きゅうりや豆腐あたりも好物だから、ただ切って味噌つけるだけ、醤油と葱かけるだけ、みたいなものも多いけどねと肩を竦めた。 まあおおよそ渋茶色のものばかりで、後輩女子あたりが部室で話している、"異性を惹きつけるモテ料理"的要素は限りなく少ない自覚はあるし、惹きつけるべき異性も、私にはずっと存在しなかったので。] (328) 2023/03/03(Fri) 12:05:50 |
【人】 黒崎柚樹[よく笑う? >>323 そんなに笑ってはいないと思う。 もっと笑いたいのに、笑えていないとも思っている。 けど、武藤は、"よく笑う"と言ってくれて。 そんなに私、武藤の前では笑ってるのかな……と、思い返しても自覚は遠い。 不思議そうな顔になったり、笑顔になったり、今日の武藤は(いや、今日の武藤も)ころころと表情がよく変わる。 ごくほのか、緊張を緩める酔いの気配に身を任せて、武藤の顔を呆けたように見つめてしまっていたら、にょ、と眼前に手を突き出され、頬を軽く摘ままれた。 >>323 ] …………ちょ、……な、に……。 [頬を染めて身体を引くも、欠片も悪びれず、"象ではない"とか言ってくるし。 ねえ、今の話に象とか関係なかったよね?? なんでそう、へらへらと御機嫌に笑ってるかな!?] (329) 2023/03/03(Fri) 12:06:24 |
【人】 黒崎柚樹武藤もよく笑うし、象ではないね。 [それはほんの意趣返し。 赤い顔は隠さないまま、でもしかめ面で、武藤の頬に手を伸ばし、むに、と強めに引っ張ってやった。 ばーか。 武藤の、ばーか。 人の気も知らないで。] 温泉…………。 [でも続く武藤の言葉には、顔を強張らせた。 温泉、好きだよ。すごい入りたいよ。 でも男風呂に入るわけにはいかないし、女性トイレに行って悲鳴を上げられた経験二桁ある自分が、女風呂に行けるはずもなくて。 いつか武藤と2人、 貸切風呂みたいなのに行けたらなとは、思ってたけど。] (330) 2023/03/03(Fri) 12:07:39 |
【人】 黒崎柚樹…………や、苦手なんだ。 銭湯、とか。 [そんなんで運動部の合宿大丈夫だったのかとか、思われてしまいそうだけれど。 絞り出した拒否の言葉は、俯いた口から溢れて、カフェオレ色のお酒に溶けていった。] ……武藤は、温泉行ってきなよ。 [場所確認するとかなら、それは一緒に行くからさ。*] (331) 2023/03/03(Fri) 12:09:04 |
【人】 黒崎柚樹["全部好きなやつ" >>333 ?だろうね。 ぶり大根と塩辛は、武藤のリクエストで作った酒のアテだもの。 最初は……なんだっけ、酒盗食べたいとか言い出したから作り方調べたんだけど、あれは発酵食品でマグロの内臓を1ヶ月塩漬けにして……みたいな品だったから「それは無理」ってなって。 塩辛なら作った翌日には食べられるからそれでいい?とこちらから言ったんだった。 材料からよく解ってなかったらしい武藤は、目の前でイカ捌いて見せたらやたら感心してたっけ。] いや、別にチョコだけでもいいし……。 お邪魔する時には、何かアテ、持ってくし。 [実際、持って行ったし……と思いながら、開けられた麦チョコの袋と、流れるように手酌で注がれてるリキュールのおかわりをちら、と見やる。 ついでにとこちらにも注いでくれてるけど、明らか、武藤のグラスのは色が濃くなりつつあって。 そっと引き寄せて確認したラベルに記されたアルコール度数は、日本酒より少し強いくらいの値だったからいくらか安堵したものの、でも一瓶空ける勢いで飲んでいたら、さすがに酔うんじゃなかろうか。] (343) 2023/03/03(Fri) 15:00:50 |
【人】 黒崎柚樹[だから、頬に伸びてきた手に、"やばい"、と思った。 それこそ、宅飲みの時がやばかったんだ。 2人で一升瓶+αくらい飲み干して、べろんべろんになって。 その時、酔った武藤はやたら触ってきたがるということを知った。 その後、うちの自宅で飲んだ時も、武藤の実家で飲んだ時も、まあまあそんな感じになって。 いやでも、武藤が、研究室の飲み会とか、サークル飲みや友人飲みで触り魔になっているという話は聞いたことはないから、私限定なのだろうとは思ってた……けど。 ────男でもいいのかよ。 イラァとした気持ちが沸いてきたとしても、仕方がないと思う。 実際のところは、記憶が無くとも、身体が覚えている感覚が武藤をそうさせていたのかもしれないけれど、そのあたりまで私が察することは難しく。 沸き上がった怒りにまかせ、むに、と武藤へ伸ばしてしまった手は、それでもなんだか嬉しそうにされてしまった。 ばーか。武藤のばーか。] (345) 2023/03/03(Fri) 15:01:22 |
【人】 黒崎柚樹そう? なんか、ごめん。 [温泉は、自分自身が大好きなだけに、"やめとく"とさらりと告げられた声 >>335 には申し訳なくなる。 確かに、人と顔を合わせたくないということでなら、早朝に行ってみれば良いことだし、幸い、自分は相当な早起き体質ではあるし。 "朝行ってみたら"の提案には素直に頷いたし、正直、嬉しそうな顔にもなってしまっていたと思う。 そうしているうちに、武藤のグラスにはまた新たな酒が注がれていて。 この程度で泥酔に至る彼ではないと知ってるから、特段口も出さなかったけれど。] …………ッ……!? !?!?!?!?!?!? [でも何の脈絡もなく、スティック野菜に伸ばしかけた手を取られ、肘の上あたりをぺたぺたと触られた。 いや、他意が無いのは解るよ?解るけど。 他意ある時の触り方を、私は嫌というほど良く知って────。] (346) 2023/03/03(Fri) 15:02:09 |
【人】 黒崎柚樹 ────……ッ。 [ああ、私も酔ってるのかな。酔ってるんだな。きっと。 触られた拍子、引きずられるように色々記憶が蘇って、頬がぶわりと熱くなる。] な、んか……あ、つく、ない……? [立ち上がりながら慌てたように告げるも、熱くも寒くもないよね快適だよね知ってるよ。おろ、と周囲を見渡して。] お、言葉に甘えて。 先、お風呂使う…………。 なんか、汗かいた、し……。 [言い訳にも説明にもなってない気がするけれど、どうしようもなく居たたまれない気持ちになって。 一人になれるところと言ったらバスルームくらいしかないわけで。 寝室に置いたドラムバッグから着替えを適当に取り出しひっつかんで、私はバスルームへと消えたのだった。 なんなんだよ、もう。 ほんと、もう、なんなんだよ……!*] (347) 2023/03/03(Fri) 15:03:51 |
【人】 黒崎柚樹[結果的に、後片付けを全部任せてしまったのは申し訳ないと思う。 武藤がきゅうり好きなのは知ってたから、野菜は人参とセロリを多めに口にしていたけど、でもいくらかまだ残ってたし……まあ、ナッツとチョコは湿気ないようにだけして片付ければ良いだけの話だけれど。] …………しっかりしようよ、私……。 [水浴びをができるほどの気温ではないけれど、体温以下くらいのぬるま湯を頭から浴びながら独りごちる。 私を男と思っている武藤を、困らせるようなことはするまい、言うまい、と思っていた。 この状況は、武藤が望んだことかもしれなくて。 つまり、彼の表の言動がどうであれ、深層心理では、私を好きにはなりたくなかった、恋人同士になったことを後悔していた、そも、女と知りたくはなかった────みたいなことではなかったのでは、と。 この"キャンプ"が何日続くかは解らないけれど、この場に居る間に決着つけろということなんだろうなとは、思っていた。 それが人ならざるものの仕組んだことか、武藤本人が仕組んだことかはわからねど。] (362) 2023/03/03(Fri) 17:20:31 |
【人】 黒崎柚樹[ともあれバスルームに入った以上、全身を洗って、頭が冷えたらさっさと出よう、とは。 自慢じゃない(全くもって自慢じゃない)けれど、ほぼ真っ平らな胸にスポブラつければ、寝間着のジャージ上下姿でも体型から女と解る人はそうそういない。 半年前の武藤は私が告白する前に私が女だと知ったけど、それは見た目からじゃなく、私が「私」と口にしてしまったからだ。 一人だけ、研究室が同じゲイの先輩に、見た目だけで女と看破されたことはあるけれど、見た目で解った人は、本当、そのくらいしか存在しない。] ………………。 [こういうのも"半年前の"なんだな、と小さく溜息を吐く。 水着に似た素材のスポブラと、綿のショーツは当然ながら"上下お揃い"なものではなくて、それはそういったものに頓着しなかった──する必要があるとは思っていなかった──半年前に私がしていただろう選択、そのままの旅行荷物。 最近は、武藤のためにも女の子を頑張ろうって、"寄せて上げる"系のとか、お揃いのショーツとかを身につけるのが常になっていたから、いっそ懐かしい気持ちで足を通す。 浴槽から出てバスマットに足を下ろし、バスタオルは洗面台の縁に引っかけて。 そして、スポブラに首を通そうと両腕上げた最悪のタイミングでガチャリとバスルームの扉が開けられたのだった。] (363) 2023/03/03(Fri) 17:20:55 |
【人】 黒崎柚樹[うん。 鍵なんか、かけてないよ当然。 そういうところの警戒心が足りないのだと、武藤には幾度も幾度も言われ続けていたことだけど、武藤相手に警戒心を抱けというのも無理なお話で。] ………………ぁ……、 [視線がいくらか下を彷徨った武藤と、かちりと目と目が噛み合って。 私ときたら、絹を裂くような悲鳴が出ることもなく、硬直したまま、晒した肢体を隠すこともなかった。 やかましいのは、"見られた"とばくばくし始めた己の心臓くらいのもの。 武藤は何か言ってたのかな。 でもあんまり私の耳には届かないまま、ぱたりと扉が閉められる。 思考も身体の硬直が取れるのに、それから何秒必要だったのかも、判然としない。頭の中がろくに動かないまま、のろのろと無表情で身支度を調えて。 髪からはぽつぽつとまだ滴が落ちてきていたけど、構いやしないと、ジャージの肩にバスタオルを羽織った状態でバスルームを出たのだった。] (364) 2023/03/03(Fri) 17:23:02 |
【人】 黒崎柚樹────……武藤。 [武藤、どこに居たんだろ。ベッドルーム?ダイニング? どこであれ、私は武藤の元に近寄って、囁くように、「ごめん」と告げた。] ごめん。黙ってて。 [俯いたら、頬にかかった髪からぽたりと滴が落ちていく。] いつか言わなきゃとは、思ってた……んだけど。 [懺悔の言葉は、半年前の武藤へ告げるもの。 あの時は、言う前に武藤には気付かれてしまっていたけれど、でも、仲良くなってからずっと、自分から言わなくちゃとは思っていたんだよ。あの時。] 私、管理小屋に行って、別のコテージ借りられるか聞いてみる。 [だって武藤、女と一緒の部屋でなんて、眠れないでしょう? そういうことも、私は良く、知ってるんだから。*] (365) 2023/03/03(Fri) 17:24:42 |
【人】 黒崎柚樹[武藤はずっと私のこと、男だと思っていて。 そして私がそれを知りつつ、訂正してこなかった >>369 理由。 この不思議なキャンプ場に来てからの私の思いは全く別にあるけれど、半年前にそうしていたのは、"一番、何も言われないで済むのがこの形だった"から。 女の子みたいな格好して、女装かと言われるのが面倒臭かった。 自分の身体と顔に似合うのはこういうのだからと、男っぽい格好のまま自分は女だと言えば、LGBTがーとか、ジェンダーがーとか、自分はそうとは思っていないレッテルを貼られてしまう。何枚も。 それをまた否定するのも面倒で。 ────色々全部が、面倒だった。 そういうのを気にしない、私を私として見てくれる人を探すのすら面倒と思っていたくらいには。 正直なところ、男の人を怖いと思ったこともなかった。 自分にそういう欲を向けてくる男なんて居るわけないと思っていたし、居たところで、いくらでも抵抗も撃退もできるだろうと。] (383) 2023/03/03(Fri) 22:03:41 |
【人】 黒崎柚樹[バスルームから出て武藤の姿を探すと、ベッドルームの隅で顔を覆っていた。 >>369 困惑極まれり、という時に、彼が時々する仕草。 ごめん、驚かせて。武藤が気付くまでは解らないようにしておくつもりだったんだけどな。] …………え……? [半年前も武藤は言ってた。 黙っててごめん、と言った私に、「何がごめんなんだ…?」って。 今も武藤は同じ風なことを私に真っ直ぐ告げてくる。 記憶が無くても、私のことを好きじゃなくても、武藤は武藤で、そんなことに、私は泣きたくなってしまう。] や……そんなのは、 [気にしないでいいよ、と首を横に振る。 ノックしないでドア開けるのは男同士なら不思議でもないことだし、触られるのも嫌なわけではなかった。 でも知ってしまった以上、武藤は私とは居たくないだろうなと思った────のだけど。] (384) 2023/03/03(Fri) 22:04:15 |
【人】 黒崎柚樹…………?良いの……? [コミュ強でやたら友人が多い武藤(以前見せてもらったLINEグループは呆れるほどの数があった。未読バッジの数もすごく多かったけれど)は、でも、ある一線以上には人を踏み込ませない人で。 一人暮らししているマンションへ人を呼んだのは、男を含めても私が初めの1人だと言っていた。 言葉を交わせば交わすほど、警戒心の強さが見えてきて、同時に、人に対する臆病さも透けて見え。 なんかね……自分と似てるなと、思ったんだ。 そう気付いた時には、好きになっていた。 その武藤が、"このままでいい"なんて言ってきたから、私は心底驚いた。 今の武藤にとっての私は、まだそこまで深く踏み込み踏み込まれた存在では無いはずなのに。] (385) 2023/03/03(Fri) 22:04:32 |
【人】 黒崎柚樹ん……私、も。 武藤とこのまま気まずくなるのは、すごく嫌だ。 [多分、武藤には相当に口にするのが難しい言葉だったと思う。 "気まずくなりたくない"という、自分の弱さを晒すような本音を出すことは、きっと、武藤にはすごく勇気の要ることで。 だから私も本音で返した。 私も武藤と一緒に居たい。武藤が嫌でないのなら。 でもこの男は、その後もこちゃこちゃと陣地とか何とか言い募っているものだから、思わず笑い出してしまった。] や、まあ、"陣地"は……そんなに厳密でなくとも……? [ベッドから出ないとかトイレ行かないとか、そんなことまで考えなくて良いことなので。うん。 いや、この場合、警戒心を持つべきは私の側なのだけど、ていうかこの武藤とえっちすることになったりしたら、それは浮気になるのかな?いや、しないけどね?でもね??貞操観念的には、同じ部屋で並んで寝るのも案外だめだったりするのかな??? 武藤の混乱が伝染したのか、私の側もおかしな考えてで頭がぐるぐるし始めてしまったのだけど。] (386) 2023/03/03(Fri) 22:05:12 |
【人】 黒崎柚樹[ああ、でも、伝えたいこと、あったな。 これは言っておかないと。 床にぺたりと座り込んでいる武藤と視線を合わせるように、私もしゃがみ込む。 また前髪から水滴が落ちて、いい加減、私も髪をちゃんと拭くべきだな、どれだけ動揺してバスルームを出てきたんだかと苦笑しながら。] これだけ言っておくね。 私は武藤をキモいとか、思わない。 何考えても、何言っても、何しても、絶対思わない。 [ああ、やっと武藤の目をちゃんと見られた気がするよ。 男と思われたまま、否定せずに居続けるのはそれなりに辛くはあったものなので。 言いたいこと言ってにっこり笑った後、まだぐしょぐしょなので髪乾かしてくるねと、私は再びバスルームへ消えたのだった。**] (387) 2023/03/03(Fri) 22:05:38 |
【人】 黒崎柚樹[女子高生時代。 陸上大会で何度も顔を合わせていた他校の男の子を、私は好きになった。 週末に一緒にシューズを見に行ったり、デートとも言えないような他愛ない外出を何度かして、でも好意を口にすることはなく。 そんな時、制服のセーラー服を着ている姿の私を初めて見たその人から言われたんだ。 「女装似合わねーなー!」って。 ああそうか、私のスカート姿は女装なんだ、って。 その呪いは、ずっとずっと根深く私に刺さり続けてた。] (413) 2023/03/04(Sat) 4:58:16 |
【人】 黒崎柚樹[武藤とお付き合いするようになって、私は"女の子"を頑張るようになった。 そういう偏見はタブーとされる世の中になりつつあるとはいえ、武藤が男を恋人にしたとか、恋人は"ジェンダーちゃん"だとか、武藤が変に思われたり笑われたりするようなことには、なりたくなくて。 私自身、スカートは履けなくなっただけで、履きたくなくなったわけじゃなかった。 いつかまた、履いてみたいと思っていた。踏み出す切っ掛けが欲しかった。 恋人なんて私に出来るはずないとずっと思ってたけれど、もし出来ることがあったなら、一緒に喫茶店でケーキ食べたりパフェつついたりしてみたいな……って。 そんな願いは全部武藤が叶えてくれた。 けど、それでも、自分に女としての魅力があるとは、未だに思えてないんだと思う。] (414) 2023/03/04(Sat) 4:59:48 |
【人】 黒崎柚樹…………? [そんなの、ではないだろ、と。>>403 なんで武藤の方が傷ついてるみたいな顔になるのかなと、私は首を傾げてしまう。 だって実際、"そんなの"だし。 私が気にしていたのはひたすらに、"武藤に、自分が女であることの証左を晒してしまった"申し訳なさばかりで、そこには、見られてしまった恥ずかしさはほとんど含まれていなかった。 今、目の前に居る武藤は、私がよく知る"半年後の武藤"と綺麗に地続きになっていることは頭では理解しつつ。 それでも、この武藤が今の私に性的魅力を感じて云々みたいなことはありえないのだと、頑なに思っていた。 武藤曰くの"やましい気持ち" >>404 なんて、沸くも何も、最初から存在しないに違いない、と。 それは武藤を信頼しているとかとは、全く別の次元のお話で。 そして私は、何をそこまで否定したいのかという自覚もないまま。] (415) 2023/03/04(Sat) 5:00:58 |
【人】 黒崎柚樹…………?……そう? …………そっか。 [私は、"私"が一番違和感ない、>>407 んだって。 性別誤認されているのを正しはしなかったものの、あえて"僕"とか"俺"とかを使うことは、今までに一度だってなかった。 聞き咎められるのを避けようと、ひたすらに"私"を口にはしないようにするだけで。 それは端から見ればけっこうな労力に思えたかもしれないけれど、当たり前に備わった癖のようになってしまっていた。] "私"って、言わないようにしてた。 武藤が知ったら、絶対困らせる、って。 でも、言ってしまいそうになって、ちょっと、ヤバかった。 [なんでそこまで言わないようにしてたのかを告げるつもりはないけれど。 そして、頬に伸ばされかけた手に気付いても、もう身体をあえて遠ざけることもしなかったけど。] (416) 2023/03/04(Sat) 5:02:20 |
【人】 黒崎柚樹[そして私と入れ替わりで武藤がバスルームへ消えていき >>408 、目の前にはどうにもアンバランスに、左右の壁にへばりつくように動かされたシングルベッドがあった。 ベッドの間の空間でスクワットでもしたいのかな。 スクワットどころかダンスもできそうな広さだけど。 で、勿論、次からは鍵をかけておけという助言?注意喚起?には、一応、こくこくと頷いてはおいたけど。 相手が武藤だから緩んでいるのか、武藤なのに緩んでいるのか。 そのあたりの自覚も薄いまま、私はキッチンへと戻った。 ここは夢の世界で、あの美術館と同じ現象が起きているのではと察すれば、"欲しいものは大概手に入るようになっている"ことに想像は難くなく。 食料棚に、先には無かったはずのココアを認めて、小さく笑った。] (417) 2023/03/04(Sat) 5:03:29 |
【人】 黒崎柚樹────おかえり。 ココア、飲む? [最初に粉を練る時も、水やお湯じゃなく牛乳を使ったココア。 武藤家のココアはそうしてるのだと、1月にご実家訪問した時に、お母様が教えてくれた作り方。 砂糖の量も、御馳走になったあの感じを再現した。 リキュールを割って牛乳はさんざん飲んだ気もするけれど、あったかい牛乳は安眠効果があると言うしね。 風呂上がりの武藤──やっぱりいくらか挙動不審なのかもしれないけれど、私は見て見ぬ振りをする──に、これで飲んで寝よう、と告げたら、実家と同じ味に驚かれてしまうだろうか。 種明かしはせず、黒崎家のココアもこんな感じなんだよと、私は小さな嘘を吐いておいた。*] (418) 2023/03/04(Sat) 5:03:56 |
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