168 【飛び入り歓迎】Hospital of Delusion ー妄執の病院ー【R-18RP】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
[だから、私はこの男が憎い。
憎くて、羨ましくて、おいしそうで、
――ほんのちょっぴり、怖ろしい。
彼の欲望が自分に向けられているのが分かる。
求めた夢を満たすだけの価値を己に見い出せずとも、
チハヤをここに留めるだけの理由はあるだろう。
留まれば、彼の命は喪われる。
あの時は消えてしまいそうだと思ったけれど、
今はどうなんだろう…………分からない。
快楽に溺れるどころか、
それすら糧にして己の欲望を育んでいるような。
自我を失うどころか、
これまで希薄だった分を取り戻すような。
その貪欲さは、執着は、
一度すべてを諦めてしまった私にとって、
生の輝きに等しい。]
[だからこそ怖ろしいのだ。
家族への怒り、恨み、哀しみ。
生者への嫉妬、羨望、憎しみ。
気づいたら死んで、気づいたらここにいた。
そんな私のしがみつくべき存在理由が、
彼の欲に塗りつぶされてしまうのではないか。
塗りつぶされたら、どうなってしまうのか。
注がれて満たされてしまったら、
私なんて簡単に消えてしまうかもしれない。
それなのに気持ち良くて、もっとして欲しくて、
痛みと恐怖と快楽が頭の中でぐちゃぐちゃになる。]
わたし……は、こわ い。
……ぁ ぁッ、ふ、ふ。
おそろし い、ひと。
[彼が空虚に舌を這わせる頭上でぽつりと零した。
それは古いベッドが軋む音とお互いの荒い息と
かき混ぜられる粘液の音しかしない病室の中でも
聞き逃してしまうくらいの小さな声だった。]*
[お預けを食らった抗議は痛みも恐怖も掻き消す
深い挿入に吞み込まれた。
意趣返しだと分かる彼の笑い声が
鼓膜を擽るだけで痺れが指先まで広がるようだ。]
や ぁ…… っん ん
[次の望みは叶えられ、古いベッドに白い肌が落ちる。
自重から逃れた代わりに彼の腰がより深く穿たれ、
これまでと違う場所を擦り上げられれば
腰の奥から脳天へ、何かが駆け上がる感覚がした。
汗も滲まなければ肌も冷たいまま。
しかし甘く蕩けた声と表情、水音の増した下肢が
彼の与えるものにどれだけ感じているかを
雄弁に伝えてしまうだろう。
腰を逃がそうとしても既に力が抜けきり、
彼が耳元に顔を寄せることも容易に許してしまう。]
ぁ……む、 むす ぶ……ッ
[注ぎ込まれた
XXXを壊れた玩具のように繰り返す。
むすぶ、むすぶ。
私に恐怖と快楽を与えてくれる人。
下腹部からせり上がってきた感覚が止まらなくて、
ナカが限界を告げるように痙攣を繰り返す。]
ん、ん ……ッ ―――――
ぁ♡
[ほとんど湿った吐息に近い声をあげて絶頂に達した。
背は弓のようにしなり、
彼の欲望を搾り取るように締め付ける。
すぐには戻れず、投げ出された肢体は成すがままだ。
突かれれば跳ね、抉られば甘く啼くだけの女になる。
しかし注ぐ前に腰を引くことだけは許さず、
最奥に広がる温もりを感じれば手で腹を撫でた。
それから視線を頭上の彼に向け、唇を動かす。]
― それから/名もなき病室 ―
[彼の欲は収まっただろうか。
未だ昂ぶりを残すのなら、蜜壺はねだるように蠢く。
きっと溺れさせることはできないのだろう。
それを理解してもなお、獲物を手放すことはない。]
…… っ、はぁ …… うふ。
[一度きりにしろ、続きがあったにしろ、
ベッドの軋む音が収まった頃には、
病室の中はすっかり色の匂いだけが漂っていた。
結が眩暈を覚えた甘い死の香りは目の前の己から
発され続けているが、彼の様子はどうだったか。
もしまだ耐えられる様子であったとしても、
腕の中に誘って肺いっぱいに吸い込ませよう。]
少し、休んだ方がいいわ。
……そうしたら、また痛くて、また欲しくなる。
[彼が強い意志で抗わない限り、
一人ベッドを抜け出すのは容易いだろう。
脱ぎ捨てた衣服はベッドの下に散らばったままだが、
真っ白な己が裸体は既に元通り、
落ちているものと同じ白いパジャマを纏っている。
質量を得てはいるが、生者と同じではないのだ。
彼の耳元へ唇を押し当て、口づけのように囁く。]
[初めて会った時、
かけてくれた黒いカーディガンを彼の肩に被せた。
攫った場所からそう遠くない病室だ。
目撃者が探しに来るかもしれないし、
結自身が好きに動くこともできるだろう。
何も阻みはしない。
己が画策せずとも、異界化したここから
容易に逃れることなどできはしないのだから。
最後に彼を一瞥した後、制止がかからない限り、
再び黒い闇の中へと溶けていく。]*
[なんで、生きて来たんだ?
"死ななきゃいけなかったんだ"───]
[悲しみが、怒りが、憎しみが、恨みが
黒く、黒く……渦巻く感情が、同調する。
再び己の心を、支配してしまいそうになり───…]
おとう さん
おなまえよんで
[俺に寄り添うように、忘れるなと戒めるように
時折聞こえるその声は本当に幻聴なんだろうか]
[やはり己は───
存在してはいけなかった。
そう、
"嗤う"
しかなく。]
[絶望。
そこから這い上がる術だって知らない。
闇のように、どす黒く哀しい感情
それが己の耳か、脳内かは不明だが
届いた
声
が───
更に、己を
嘲笑
した気がした。]
少女が下腹に感じた違和感は、贈った『僕』も気付くことは無い。
今まで、「そうなった」ことは一度も無かったし、意図したものでもないからだ。
――けれど、少女の中に潜んだ『私』は、確かにその変化を感じていた。*
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