情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 ウユニ 愛情深い父母のもとに生まれ Wお姉ちゃんWと慕ってくれる弟妹もいた。 私は、あの子たちに得意な裁縫で 服や帽子を作ってあげたりして。 そのたびに大げさなくらい喜んでくれて それがたまらなく、可愛いと思ってたの。 そこにはあたたかで幸せな家庭があった。 手入れされた花壇に咲く花々のように 私の周りには確かな幸せがあったはずだったのに。 (15) 2022/08/08(Mon) 15:56:16 |
【人】 ウユニそんな一つの家庭の幸せに亀裂が走った。 原因は……身体に花を咲かせた私だったの。 当時の私は、それが病だとは知らず。 家族に忌避されるとも、思っていなかった。 (16) 2022/08/08(Mon) 15:57:43 |
【人】 ウユニ 太ももに咲いた、まだそう大きくない花を 家族に見せて、相談したあの日を 私は今でも覚えている。 弟妹は異物を見るような目を向けて 理解が及ばないことへ怯えを見せていたし 母は見たくない、理解したくないと言わんばかりに 私から顔を背けていた。 眉間にしわを寄せて、 此方を見ていた父が吐き捨てた言葉も はっきり覚えているわ。 (18) 2022/08/08(Mon) 15:59:41 |
【人】 ウユニ最初は何を言われたか、わからなかったの。 どうしてそんなことを言われるのかも。 今ならわかる。 家族は皆、異質な存在になった私を 受け入れがたいと思ってしまったのだ、と。 (20) 2022/08/08(Mon) 16:01:10 |
【人】 ウユニ父の言葉をすぐには理解出来なかった私は どうして、 とか聞いたような気がするしそれに対する答えは、 見たくない、気味が悪い、 と言ったような忌避の言葉だった。 出て行けという父に、家族は誰も止めなかった。 もし、誰か一人でも止めてくれる人が居たなら 私はきっと縋ろうとしたと思う。 (21) 2022/08/08(Mon) 16:03:05 |
【人】 ウユニ「…今まで、ありがとう。」 でも、家族の態度から縋れないのだと 悟った、 悟ってしまった 私は震える声で、別れを告げて。 最低限の荷物を持って、家を出た。 (22) 2022/08/08(Mon) 16:04:19 |
【人】 ウユニ そうして、私はふらふらと 町から町へと彷徨って。 ただ彷徨うだけではなくて、 自分の身に咲く花が何なのかを知ろうと 行く先々で書物を漁った。 私はW花咲病Wという病気を患っているのだと 知ったのは、貴方に出会う前の事。 (23) 2022/08/08(Mon) 16:04:40 |
【人】 ウユニ───朝の一幕:サルコシパラの家─── バラへと声をかける彼の姿を眺めるのは ここに来てからの私の日課の一つ。 彼が街の人から何と言われているか、 知らないわけではない。 でも、私は花を溺愛する彼を変だとは思わないし 優しいのだ、と思っているから。 私が奇異の目を彼に向けることもない。 (24) 2022/08/08(Mon) 16:06:59 |
【人】 ウユニ「おはようございます。 あら、そんなことを言っては 貴方の可愛いバラが嫉妬してしまいますよ。」 いつもの挨拶に、私もいつものように返して。 小さく口角を上げてみせるの。 血縁者ではない、家をなくした私を 住まわせてくれる彼は、優しいと思う。 彼を家族のようには思わず、W友人Wだと、 そう思っているのが、彼と私の違いかしら。 (25) 2022/08/08(Mon) 16:08:09 |
【人】 ウユニ 毎日のように貰う言葉を 軽く受け流していた理由は、 ここにいるのも、貴方との時間も、 期限付きだと決まっていて。 踏み込まないようにしていたから。 私と彼の関係は、そういうもの。* (26) 2022/08/08(Mon) 16:09:08 |
【人】 ウユニ───出会い─── 花咲病のことを知った後の私は、 独りで散ることができる場所を探していた。 誰にも踏み込まず、踏み込ませず。 一人で静かに、終わりを迎えようと。 この街に来たのも、そんな経緯。 (27) 2022/08/08(Mon) 19:47:59 |
【人】 ウユニ道行く人に、この街を見渡せる場所はないか 聞いてたどり着いたのが、街の奥にある丘。 ついた頃には日が沈みかけて。 沈んでいく太陽を、ただ眺めていたの。 髪を、頬を、風が撫でて 黒のロングスカートがはためいていく。 風に揺られる花はこんな気持ちなのかしら、 なんて、ふと考えて、くすりと笑った。 (28) 2022/08/08(Mon) 19:48:56 |
【人】 ウユニ花弁 が一枚、風に乗って飛んでいったのに 私が気づくことはなかったけれど。 もし、見た人が居るのなら、 少し疑問に思ったのかもしれない。 (29) 2022/08/08(Mon) 19:50:40 |
【人】 ウユニ「困ったわ。 今日泊まる場所も決まってないのに。」 あまり困っていなさそうな口調で 呟いて苦笑いした頃だったかしら。 それとももう少し後だった? ―――私以外の人が居るのに、気付いたの。* (30) 2022/08/08(Mon) 19:51:57 |
【人】 ウユニ踏み込むまいという私の態度は 花々にとってどう取られていたものか。 踏み込まないから、知ることもなく。 彼のWこの子達もWの意味に気づかないほど 私は鈍くはなかったけれど 鈍く、気付いていないふりをしていた。 (41) 2022/08/08(Mon) 23:57:22 |
【人】 ウユニ 人が花を選ぶように 花だって、人を選んでいいはず。 言葉を持たない、自ら動けない花には それが出来ないだけで。 貴方に頼ろうと思ったのは 紛れもなく私の意思。 それを選んだというのなら、そうかもしれないわ。 (44) 2022/08/08(Mon) 23:59:53 |
【人】 ウユニまさか誰かいるとは思っていなかったから 後ろから声をかけられたときはそうね、 驚いてしまったから。 一瞬反応が遅れてしまったけれど。 (45) 2022/08/09(Tue) 0:00:24 |
【人】 ウユニ仮面の彼の方へと向き直った。 W普通Wなら仮面に驚いたり どうして、と聞いてしまったりするのだろうけれど 踏み込まないと決めている私はそれを聞かず。 そもそも、疑問に思うこともなかったわ。 (47) 2022/08/09(Tue) 0:01:44 |
【人】 ウユニ 人は皆、仮面を付けているようなもの。 いつ、本性を表すかなんて分からない。 彼の場合は、見える形で仮面をつけているだけ。 ただ、それだけのことよ。 それに、私だって本心を見せまいとしているのだから 仮面を付けているのと同じでしょう? (48) 2022/08/09(Tue) 0:03:04 |
【人】 ウユニ「……さっきの独り言も 貴方には聞かれてしまったのかしら。 私はウユニ。 この街には今日来たばかりです。 行く宛てがなくて、 どうしようかと思っていたところだったの。 貴方は、どうしてここに?」 軽い自己紹介の後に、小さな声で もしかして、貴方の時間を邪魔してしまったかしら なんて、聞いてしまったのは……。 何故でしょうね? いつもなら人の話は聞かないのに。** (49) 2022/08/09(Tue) 0:04:24 |
【人】 ウユニ 奇病のせいで家族に家を追い出されてしまった。 路頭に迷った理由はそれしか言っていなかった。 住まわせて貰うのはせいぜい数ヶ月。 密かに、貴方の知らないうちに出て行こう。 当初はそう思っていたから 過去を話す必要もないと思って。 思ったよりも貴方の家に長居してしまったのは 私にとっては誤算だったわ。 仮住まいだとしても帰る家があることに 貴方の傍にいることに、居心地の良さを覚えて それに甘えてしまっていたのでしょうね。 (59) 2022/08/09(Tue) 12:18:06 |
【人】 ウユニだから、なのかしら。 貴方の過去の断片を聞けば より、貴方から離れがたいと思ってしまうの。 貴方の悲しみに寄り添いたい、と。 今までそうしてはいけないと思っていたのに そうしたい、と思うのは…… 貴方のことが…。 (60) 2022/08/09(Tue) 12:18:58 |
【人】 ウユニ彼の強い意志に背を押されて。 私は、最善とは言えない未来を、 この手で選び取ってしまった。 貴方を苦しませると、予想できる未来を。* (61) 2022/08/09(Tue) 12:25:56 |
【人】 ウユニいいえ、本当はずっと前から。 選んでしまっていたのね。 あの日の出会いを始まりにするのでなく 終わりにするべきだったの。 今生の別れにするべきだった。 (62) 2022/08/09(Tue) 12:26:19 |
【人】 ウユニ寂しさを受け入れられない、という言葉は 私には当てはまることだったから。 心を見透かされたような気持ちになってしまうの。 でも、それだけではなくて…… まるで彼のことも指しているような そんな気もしてしまって、思わず発した言葉に 貴方はどう思ったのかしら。 (64) 2022/08/09(Tue) 12:29:15 |
【人】 ウユニ「私も独りなんです。 珍しい病気に罹った私を、 家族は疎んで追い出したから。」 そう、言った後、冗談のような口調で、 「ここに、行く宛てのない人が居るんです。 その人を連れ帰れば、独りじゃなくなりますよ。」 口元に手を当てて、静かに笑った。* (67) 2022/08/09(Tue) 12:33:00 |
【人】 ウユニ私はひどい提案をしたと思う。 貴方を利用します、 と言っているようなもの。 勿論利用されるのは構わなかったし 例えば家事とか、私にできることを頼まれるのなら こなすつもりでいたし、たとえ頼まれなくとも、 何かの形で貴方へ恩を返すつもりでいたの。 (73) 2022/08/11(Thu) 0:05:38 |
【人】 ウユニ 数年たっても秘密を守っていたのは そう、最後の線引きのつもりだった。 花咲病のことは、 これだけは、知られてはいけない。 知ってしまえば、病を背負わせること、 私の心に踏み込ませることと同じだと思うから。 彼のためだから、そうやって言い訳して ずっと言わなかった。 (77) 2022/08/11(Thu) 0:10:54 |
【人】 ウユニ*** 私は、弟妹の世話をしていたこともあって 家事は一通り、できるつもり。 掃除は特に、出来るだけ積極的にしていたの。 何故かって? 見たことのない花弁が いつも床に落ちていたら不自然でしょう? だから花咲病の痕跡を残さないように、と 出来る限り、私が使う部屋、 出入りする部屋は綺麗にしていた。 彼が触れて欲しくない物には触れないように 入ってもいい場所、触ってもいいものは 事前に確認していたから。 彼の気を悪くするようなことはしなかった… そのはずだけれど、どうだったのかしらね。 秘密を明かした後も、習慣づいてしまったものを 変えられなかった、というのはまた別の話。 (78) 2022/08/11(Thu) 0:48:45 |
【人】 ウユニ普段はそうやって家事をするだけではなくて。 街に出て、布を買ってきては 服や帽子を作って、 店に持ち込んで買い取ってもらう。 私はそんな風に生活にかかるお金を賄って。 住まわせてもらっている対価のつもりで 貴方へと稼ぎを渡そうとしていたけれど… 受け取ってもらえなかったのなら、 家のどこかに纏めて置いたままにしていたでしょう。 (79) 2022/08/11(Thu) 0:50:28 |
【人】 ウユニ裁縫が得意だとは彼にも伝えていたから。 彼の服のボタンが取れていたり ほつれていたりするのを見つけたときは 「それ、直しますよ? そのままだと着づらいでしょう?」 と言って、服を直そうとしたこともあった。 また、ある日には。 (80) 2022/08/11(Thu) 0:50:58 |
【人】 ウユニ「売り物にするには作りが甘くて。 もしよければ、貴方に貰って欲しいんです。」 と、もっともらしい理由をつけて 貴方にひざ掛けを作って渡そうとしたこともあった。 竜胆の刺繍飾りがついた、 充分売り物になりそうな、ひざ掛け。 (81) 2022/08/11(Thu) 0:51:29 |
【人】 ウユニ住まう場所を提供してくれる彼に 何かを返したい、そんな思いを形にした贈り物。 「使わないのなら、私が使いますし 無理に、とはもちろん言いませんから。」 押し付けるのは本意ではなかったから。 そう付け加えて、差し出したそれは 受け取ってもらえたんだったかしら…?* (82) 2022/08/11(Thu) 0:55:05 |
【人】 ウユニ 貴方が私にどんな服を選ぼうとするのか 興味はあったけれど、そんなことを言えば 本当に買いかねない雰囲気すらあったから その想いは心に秘めていたの。 (94) 2022/08/11(Thu) 17:15:08 |
【人】 ウユニ 見ないふりをしていると 本当に鈍感になってしまうものなのかしら。 貴方がもしかしたら遠慮するかもしれない、なんて 不要な気を回して、 受け取ってもらえなくとも構わない、 そんな気持ちでいたのに。 貴方が大切に使う、って受け取ってくれると 心が弾む。あなたが喜んでくれることが たまらなく、嬉しいんだもの。 (96) 2022/08/11(Thu) 17:20:37 |
【人】 ウユニ病のことを打ち明けた日の夜。 私は、少ない自分の荷物の中から 小さな手帳を取り出して、読んでいた。 当てもなくふらふらとしていた頃。 花咲病について調べて、 わかったことをまとめた手帳。 貴方の目には決して触れないように 外出するときには、肌身離さず持って行って 家にいるときは鞄の中へとしまっていた。 (98) 2022/08/11(Thu) 17:49:03 |
【人】 ウユニ綺麗な字で箇条書きに綴られた項目はそう多くない。 それだけ、わかっていることが少ないという事。 私が知らないこともまだあるかもしれない。 最後の方の文章は一度書いて、その上から 線を引いて消してしまった。 誰かに感染すくらいなら 死のうと思っていたから。 (99) 2022/08/11(Thu) 17:53:14 |
【人】 ウユニ 何度読んでも書いてあることは変わらない。 ふ、とため息をついて、手帳をもとの場所に戻すと 明かりを消して、ベッドに横になった。 (100) 2022/08/11(Thu) 17:53:56 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新