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人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


rrr……

『……電話で失礼しますねご主人様』

『報告がこのような形になることをお許しください。
 後で書面で纏めてきますので、それでは本題を』

『あの男は
個人で動いていて勧善懲悪に節操がない
ようです。
 悪い琴線に触れたら
誰でも狙える
んじゃないんですか?
 誰を目的としてそんな意志を持っているのか、
 娯楽なのかどうかも直接話はしていませんので、不明です。
 法案の件とも此方ともまた別の陣営のようですね、どう扱って良いのやら』

『それと、この通話もアジトも盗聴されてる恐れがあります。
 張り付かれてはいないと思いますが、
 この先は基本筒抜けになると思ってお喋りください。
 そういう類の人間には誤魔化しきれないものがありますから、
 あえて気にせず吹っ切れるのもいいと思いますよ』

『それでは、良い夜を』

【人】 路地の花 フィオレ

「…どうしたのかしら」

今日はスラムの子供たちに会いに行ってから、バーの手伝いに行こう。
そう決めて、街中で買った大量のパンを抱え歩いていた。

いつもとは違った雰囲気のざわつきに落ち着かなさを覚えながら、皆一様に新聞を手に噂話に花を咲かせているようで。
不安げな声と、嘲笑の声がそこかしこから耳に入る。

「ごめんなさい、一部もらえるかしら」

快活な青年から朝刊を一部受け取って、ありがとうと微笑み。
早足でスラムの方へ。

学のない彼女には、難しい単語は理解できない。
ただ、それでも。

「……何、で…」

同じファミリーの人間が、逮捕されたことくらいは分かって。
スラム街の入り口で、しばし立ちすくんでいた。

#街中
(1) 2023/09/14(Thu) 21:40:41
フィオレは、踵を返し、アジトの方へ駆け出した。
(a0) 2023/09/14(Thu) 21:45:23

rrr……

『……』

『………』
『……』

『…………そうですかあ。』

了解ですho capito。』
『またいつでもアジトの方へ。』
『…少し、意見を聞かせて欲しいですねえ。』

『今日は、お疲れでしょうからあ』
『ゆっくり、おやすみくださいねえ。』

『アリソンより。報告事項はありますか?』

もし直接確認したいことがあるなら、と、日時と場所が指定されている。
夜中の桟橋からひそかに出航する、小型ボートの上だ。

 
──アリソン・カンパネッロ。
白昼夢のように聞き覚えのない名前が、突如脳裏に浮かぶ。

その人物の詳細こそはわからないが、多額の献金を現所長に行った事、マフィアの排除を望んでいる事、これによって速やかにこの震えあがりそうな悪法が施行されたという事実に、不思議と確信を持てた。

「……これもまた、私が見ている夢なのかしら」
「それでも、何一つ情報がないよりはきっと、」

アリーチェが今望んだのは、確かに「ほんの少しでもいいからこの件についての手掛かりが欲しい」と言う物で。
この夢がまた一つ、それを小さく叶えてくれた事に、まだ気づいてはいなかった。

不安に駆られて『会いたい』なんて。
バカみたい。……バカみたい。

だけど。

「……しょうがないじゃない」
「会えなくなるのは、嫌なんだもの」


「おう、『また』会ったな」

「あんたは警察、こっちはマフィア。
 こんな夢をこんな時期に見るたあな」

夢を夢と認識できる夢の中、あなたの姿を認めれば。
これも予兆だったのかね、とぼやきつつ。

「法ってのは夢の中まで有効だったりするのかね。
 それとも『バレなきゃ犯罪じゃない』か?」

「ペネロペ!」

貴方の姿も存在していると認識すると、先ほど頭に叩き込まれた情報に靄突く頭が急速に覚醒したかのように引き戻される。

「よしてよ、貴方を逮捕するつもりはないし……
 そんな権限、私にはないわ。あっても使う気もないけれど」

逮捕されたいって言うなら別だけど、と拗ねたように零し。

「……、アリソン・カンパネッロって人、知ってる?」


「俺ぁどっちかってえとあんたが現実でうっかり口滑らせて、
 そんでお縄になる方を心配してんだけどな……」

「…アリソン・カンパネッロぉ?」

聞いて、暫し考え込む。

知り合いにも、過去に仕事で聞いた名前にも、
そして自分が以前に使った偽名にも。
この名前は心当たりがなかった。

「残念だけど知らねえな。
 なんだ、人探しでもしてんのか?」

「まあ。そ、そんな事は……な、ないわよ?
 はぁ……もしなったらペネロペ、会いに来てね」

なんて、無理難題を述べる。
あらゆるもので鈍い女だが、さすがにこれもジョークの一つだ。本当に自分が捕まったのなら、真っ先に逃げて欲しがる。

「夢で会った」だなんて荒唐無稽な理由ですら逮捕されない暴利な悪法が施行されてしまったのだから仕方ない。

「その、さっき『少しでも手がかりが欲しい』って考えてたら、この名前が浮かんできて……」

そうして、先ほど浮かんだ内容を貴方にそのまま伝える。

法が施行され発表されたその日。
ひとりになったタイミングで連絡用の端末を取り出し、
届いたメッセージを眺める。

この狂犬には、これといって報告事項はないのだが、
確認すべきことがないとは言えない。
次はどのように行動するか。誰が怪しいか。
それを聞かないことには、次を選べないからだ。

敢えてメッセージには返事をせず、
夜中になる頃、指定された場所へと向かうだろう。


「おう、会いに行く会いに行く。夢ん中でな」

無理難題、もといジョークにはジョークで返しつつ。
実際それが実行可能であるかはともかくとして。
二度ある事はなんとやらと何処かでは言うらしい。

「手掛かりねえ……
 まあ、こんだけ妙な事が続いてれば妙なりに
 信憑性もあるってもんだが…」

「アリソンねえ。この辺りの人間らしくない名前だ」

時を同じくしてか、少し遅かったかもしれない。
もう1匹の狂犬もまた、メッセージを確認して。

此方もまた、報告する案件は無いけれど。
相談すべきことは山とある。

端末に向かう旨を打ち込んでから。
ポケットに仕舞って、待ち合わせの場所まで足を運ぶだろう。

「でも……本当に、気を付けてね。
 今の警察は冤罪前提の検挙を行いかねないから……

 私も、ノッテマフィアで捕まって欲しくない人は複数いるし、何とか少しでもこの法が早く撤回される事を望んでいるわ」

あなたの所属がどこのマフィアか聞いたことはないが、この地域のマフィアと言えばまずノッテだ。
だからつい真っ先にそこの所属を想定して話をしてしまう。

「私は一介の警察官だから、こんな事知ってもどうしようもできないけれど……
 この法の施行の狙いを、少しでも力のある人に届けられれば何かが変わったりはしないかしら……」

フィオレは、抱えたままだったパンは、アジトのどこかの部屋に置いてきてしまった。
(a3) 2023/09/14(Thu) 23:55:02

フィオレは、その部屋は今頃、焼きたてのパンの香りでいっぱいになっていそうだ……
(a4) 2023/09/14(Thu) 23:55:42

三日月島は、夜も灯りが落ちることはない。
ただ海ともなれば、一部の港やホテル以外はとっぷりと夜闇を流したように黒く染まって、吸い込まれてしまいそうな暗い幕がどこまでも伸びている。

指定された桟橋に向かえば、そこにはきちんとした船倉を持ち、10人ほどなら乗れそうなプレジャーボートが停泊していた。
船のへりに腰かけた"アリソン"が手を振り、君たちを招き入れる。

『無事摘発できたようで、なによりです』

"アリソン"はスマートフォンの画面を見せて、にこりと笑う。

『海の上ならコンクリートマイクでも話は聞かれませんが、念のため。』


「ま、冤罪はボロボロ出てくるだろうな。
 考えたかないが、その中にホンモノが混ざってる可能性もだ」

マフィアが関わっているのであれば、
逮捕状の必要なく逮捕が可能になってしまう。
少しでも言い掛かりを付ける余地があればお縄が現状だ。
これを機に理由はどうあれ検挙に躍起になる輩も居るだろう。

「力のある人間に、なあ。
 そうは言ってもあんたの所は署長と代理があのざまだし…
 ウチだってボスは出払ってる。アンダーボスか、
 幹部がいいとこだ。そっちとそう変わらねえだろうな」

「そもそもこの法の狙いは何だ?マフィアを消したいだけ?
 例の偉そうな署長代理様とやらに、
 莫大なカネを握らせた理由がそんな単純なもんか?」

かつ、かつ、テーブルを指先で叩く。

「漁夫の利でも狙ってんのかね」

これも一介の構成員メイドマンの知ったこっちゃないが、と。

『ああ、摘発は出来た。部下も一人残らず。
が、予定にはない警察官も一緒にしょっ引かれた。
恐らくは、別で動いている奴らの仕業だろう。』

アリソンに倣って、画面を見せた。
その表情はやや硬い。

『どこもかしこも今は混乱だらけだ。
探りを入れようにもまだ尻尾は掴めないだろうな。』

『出来る限り早めに掴みたいところですが』

そう簡単にはいかないだろうと同様に画面を見せ首を振る。
別で動いている1つ以外にもチームは存在するかもしれない以上、
下手に動いてこちら側が悟られるという自体は避けたい。

『何かきっかけが出来るまではまだ
 水面下で探りを入れる以外他ないでしょうね』

勿論それは相手も同じ。
とはいえだ、硬直状態でいるのも困り物でしかない。

『あなたたちの手際は確認しました。
 次もお願いします』

『もう一つのチームについては、初手が警察官というのが妙ですね。
 面倒なことになりそうです』

船倉の冷蔵庫を開けて、冷えたウイスキーグラスに注ぐ。

「アルコールがダメならブドウジュースもある」

冗談めかした笑い声をあげてから。

『そうですね。
 探りはこちらも入れておきます。

 そして、此方の仕事も。次のターゲットを決めましょう。』
『お二人は、次に狙うべき心当たりは?』

「う」

あのざま。そう言われると何も否定できない。
そもそもこの法案だって現所長が大きく関わっているのだ。

「漁夫の利、かぁ……」
「もしそうなら、手を組めたらもっと、って思うけれど……
 ……検挙ばかりしている側が言い出せることではないし、
 今の警察も、そちらも絶対受け入れないでしょうね」

仕方のない事だ。そんな甘い世界ではなく、仲良くと手を組むと慣れあいは近いようでまるで違う話。
今までは緊張を放ちながらも付かず離れずの距離を取っていたのをぶち壊したのもこちらなのだ。

「……恨まれても仕方ない事、してるわね」

考えた末にその言葉が出てくること自体、やはり女の思考は比較的お花畑に近いのかもしれない。そんな小さな感情の話ではきっとないのに。


「爺さんの代と同じ事にならなきゃいいけどな」

ぽつり。
誰に言うでもなく零して。

「あーめんどくせ。こっちもそっちも、
 自分の立場と身内の為にそうしてるだけだろ。
 そんで起きた軋轢なら恨みっこなしだろうよ」

「ま、手を組めないのは否定しないが。
 下は良くても上層部がダメだろうな、特にそっちが」

面倒だ、と思う。
立場や所属に縛られるこの社会というものは。
上が一言ダメだと言えば下もそれに倣わなくてはならない。
形だけでも。付かず離れずを保つのも、対立するのも。

「…はは、それなら明日も仕事だ。
 ブドウジュースを貰おうかな」

いつも通りに振る舞い、笑い返す。
声で話す時はこの方が都合がいい。

『こちらは探り途中でまだ何も。
 出来れば自分は二人の意向に沿いたい』

ちらともうひとりの狂犬を一瞥し、
心当たりはあるかと問うように僅かに首を傾ける。

『アリソン女史の方に心当たりは?』

「こっちは酒で良い。」

少し可笑しくて、笑いが漏れてしまう。
酒を飲まない選択肢がある訳がないのに。

『此方もまだ何も。
もしそうだとしたら厄介かもしれない奴は知ってるが。
流石に一般市民を引っ張るにも面倒があるだろうからな。』

確実にそうだと言う心当たりは此方も無い。
だから同じように女史の方を見てしまうだろうか。

『なるほど。
 前言を翻すようで申し訳ないのですが。
 警察内部に、アリソンの邪魔になりそうな方がいます』

表示されるのは――ある巡査長の名前。

――イレネオ・デ・マリア。


『摘発チームとは無関係ですが、
 その主義主張から無計画に
 私刑に走る・・・・・可能性があると』

スマホがゆらゆらと揺れる。
海面に反射して、ちかちかと瞬く星のように。

『別にそれ自体は問題ありませんが、
 誰が狙われるかわからないという意味では――』

笑う。

『Alberoさんなんかは、気が気でないのでは?』

「……。」

少しの間動きが止まって。
考えるような間だろうか、それとも。

『否定はしないが
具体的に何が邪魔になるか聞かせて欲しい。』

見せた画面には短い文章が打たれていた。

「じゅうごど……」

15度ってどれくらい凄いんだろう。
と考えている時点で飲んだことがないのは明らかだ。

「あ!じゃあロメオさんが飲んでるのちょっと欲しい。
 オレのもお裾分けするから」

どうせ多くは飲めないだろうから、と貴方にねだってはご機嫌。
けれどグラスホッパーは……小さめグラスで頼んだりするかもしれない。気になるもんね、チョコミント。
とりあえずは最初の一品目を注文すればマスターは早々に用意を始めてくれることだろう。
最中、こちらはといえばきょとんと貴方を見上げていた。

「ブルームーンって、どんなの?
 フルーツ系?味が好きなやつ?」

『彼はマフィアを憎むあまり理屈通りに動くとは限らず、
 誰を逮捕するか分からないと聞いています。
 例えばあなたの大切な人を害す可能性があるのでは?』

なんでもないように酒を傾け、あなたたちのグラスにもそれぞれウイスキーとジュースを注ぐ。

『ああ、やはりマフィアからがいいですか?
 それなら耳ざといルチアーノでしょうね。
 もしくはカンターミネでしょうか。

 アリソンはなるべく多くのマフィアが摘発されてほしいのですが、
 同時にチーム員の要望も叶えてあげたいんですよ』

暗い水平線の向こうで、三日月島の灯台がその在り処を示している。

『そのためには、執行はコントロールできたほうがよい。
 別チームへの対応と同じ考えですね』

『…いや。そういう事なら、イレネオで良い。
その次は、カンターミネだ。』

僅かな間があった。
けれど程なくして文字は打ち込まれていく。
その手に迷いは、ない。

『ルチアーノに関しては分からないが
カンターミネはどこからともなく情報を掴んでくる。
その手腕は警戒するに値すると此方は思っている。』

どうだろう?という風に首を傾げた。

表示された名を遅れて確認し、
続いてAlberoの反応を伺うように横目に見る。
そのままふたりのやり取りを眺め暫くして、
あがったひとつの名に、ほんの一瞬顔を顰める。

しかしだからといって、表にそれを出す訳ではない。
名があがる以上、相手は自分にとっての敵だ。

『イレネオの次はカンターミネですね。
 自分は特に異論ありません』

特に意見も異論もない一匹はふたりへ頷いて、
その選択に間違いはないだろうと肯定する。

実際、警戒すべき要素は多くあるのだから。

『ではそのようn』

メッセージを打っていた、スマホが振動する。

「……」


『ではそのように』

船がぐらり、と揺れて、グラスの中にも小さな波が浮き上がる。

『方針は変わらずお願いします。
 ルチアーノにも要注意を。
 彼、いろいろ調べ回っているようですから。

 イレネオの話も、彼からだそうですよ』

遠く、三日月島の灯りが星空のように煌めいている。
アリソンが立ち上がって操舵すれば、ぐるんとボートの舳先がそちらへ向いた。

『気を付けておく。
そちらも十分に気を付けて。』

グラスに軽く口を付けて
酒精を煽る。一口、二口。

『カンターミネまで無事に摘発出来たら。
次はルチアーノで問題ないだろうな。
もしくは、危険と判断したら次でも。』

嗅ぎ回っているなら早々に。
淡々と冷たい文面を綴りながら、船に揺られていた。

グラスの中の小さな波に時折視線を落とし、
端末の振動音にまた、顔を上げ記されたものを視界に映す。

『了解です。アリソン女史にAlberoもお気を付けて』

『一先ずはイレネオを摘発。
 無事に済んだその後に、どちらかを考えましょう』

危険な芽は早々に摘んでしまいたいが…。
どちらも同じくらいに注意すべき存在ならば、
早急に決めずとも、時が来れば自然と決まるだろう。

揺れる船上で緩やかにグラスを傾けて、
横目に、煌めく灯りを眺め続けていた。

「爺さんの代……?わからないけど、昔はもう少し、
 今より警察と仲のいいアルバがあった、んだっけ……」

爺さんが誰を指しているかは曖昧だが、小さく聞こえた言葉には思わず反応してしまう。
確かその頃は勢力図が今よりも大きく変わっていた記憶がある。

「うぅ……そう言うさっぱりしてる所は助かるわ……
 ねちっこいのは警察の方だと思うし……
 それだけ真面目に仕事してる人も多いんだけど……」

「……でも、ペネロペって随分何て言うかこう、
 争い?好きじゃないのね。さっきの手を組む話だって、
 上がいいなら構わなさそうに言うんだもの」

マフィアが好戦的な人だらけとまでは思ってはいないが、
こと一触即発まで関係が悪化していた警察相手に
そんな穏健な案を否定しない人がいるのは珍しく感じた。


「俺の爺さんはノッテとの抗争で死んだ」

テーブルに片肘をついて、ぽつり。

「アルバがあった頃にな。
 だからってノッテに恨みがあるわけでもない。
 それはそれで、これはこれ。昔は昔で、今は今だ」

ただ、そういう時代であったというだけ。
仮に恨みを向けるのであれば、
そういった流れを生んだものを恨むのが筋というものだろう。
それは今も同じ事。

「争いが好きな奴なんてそう居ないだろ。
 そっちは知らんがこっちは百害あって一利なしだ。
 身内と自分らの縄張り守る為なら仕方ねえけどな」

「そんでお互い無駄に消耗するよりは、
 どんな奴だろうとさっさと手を組んだ方がマシだ。
 お上がどうだかは知ったこっちゃねえけどな」

この構成員が特別争いを厭うという印象は間違いではない。
警察に対して好感があるというよりは、
現状維持を望んでいるがゆえの穏健派。

「……そう、そうだったの」

アルバファミリーと言うマフィアがあったのだと自分は知識としてしか知らなかったが、彼女のように血縁者がアルバの物だったなら、少し無神経な言い草をしてしまったかもしれない。少し後悔を秘めつつ。

「……ペネロペは、割り切るのがうまいのね。
 私はどうしても地続きに考えてしまって、半端に情が沸いて、その結果どちらにも迷惑をかけてしまいそうだもの。
 お爺様も、今のペネロペに近い考え方だったのかしら」

「……ただ……え、っと……ううん、やっぱりなし、で」

争いについての考え方はそれは最もだと何度も頷いて聞いていた。
ただ一つそれを聞いて思い浮かんだことがあるが、それは口に出さない方がいい話題なのも薄々察していて。だからこんな歯切れの悪い中途半端な話題ひっこめになった。

『はい。
 マフィア撲滅のため、頑張りましょう』

かつん、と。グラスの縁がかちあって、甲高い音をたてる。
ボートは黒い水面を白く泡立て切り裂きながら、灯りの落ちた桟橋へと戻っていった。





「よろしく」

ボートのふちに肘をついた"アリソン"は、最後にあなたたちにメールをそれぞれ一通ずつ。

「ああ、それ。渡し忘れ」

…そういうと、にこりと笑う。
ボートの片づけをするのだろう。グラスを傾けながら、見送った。


「さあな。割り切るのが上手いかは知らん。
 爺さんがどうだったかもな。
 俺はどっちが身内の為になるか損得勘定してるだけだ」

結局のところ、天秤の片方には絶対的に重いものが乗っている。
だから情が沸いたところでそれが揺らぐ事は無い。
それは身内を罵倒するようなものでもない限り、
他者の物言いに対しても同じ事。

「言い掛けてやっぱやめた、は悪手だな。
 余計気になるのが人のさがってもんだ」

中途半端に引っ込められた話題にはそう返して。
とはいえ問い詰めるような声色ではない。
あなたが言わない事を選んでも追及されるような事はないだろう。

「……身内の事が大好きなのね。
 その為に身を切れる人こそ本当の身内想いなんでしょうね」

自分は、どうだろう。

「身内のように親しい子もいれば大切な同僚もいるけれど。
 守る為に、恩人に銃口を向けられる自信はない、なぁ」

ひっこめた話題については暫く悩んでいたが、「ごめんなさい」と告げてそれ以上それについての発言はなかった。
自分の小心者の度合いにまた少し心が磨り減る。


「ふうん」

悩んだ末、告げられなかった答えにはそれだけを返して。
やはり追及するような事はなかった。

「そりゃそうだろ。ガキの頃から面識がある奴も居れば、
 世話になってた人もわんさと居る。
 他の奴がどうかは知らねえが、俺は俺の居場所を守るだけだ」

「たとえ恩があったって、
 相手に話し合いのテーブルに着く気すら無いとしたら
 俺は相応の態度でもって応じるだけだ」

ふわりと香る花の匂い。彼女のそれは甘くて、内側から支配しようとするかのよう。
日ごろから、捕食するための聞こえのいい言葉甘い蜜を振りまいて。

ねえ、だから言ったのよ。
もっと気を付けて接しなきゃダメだって。

ごめんね。こんなやり方になっちゃって。

その日の日中協力者の姿はホテルになかった。
連絡は取れるだろうが、顔を出せそうなのは午前中のわずかな時間か日が暮れるころになりそうだと伝えられた。

そんな部屋には朝早くに紙袋が置いてある。

紙袋の中には手作りと思われる弁当、ラザニア・アル・フォルノ。
意図は分からないかもしれないが、こんな時でもうまい飯を食えというメッセージだ

ふらりと貴方の離席中にホテルの一室にやってきた人影はソファーにぐったりと伸びている。
仮眠しているのか、新聞紙を顔に乗せて静かなようだ。

昼夜問わず、女の姿なくとも明かりのついた一室。
だから帰りついた女は、玄関時点ではあなたの在室に気付かなかった。

「……? あー」

だからあなたに気づいた時、そんな間の抜けた音を漏らす。
多少の肉体労働のあとで、このとき女も少しばかり疲労していた。
そうっと近寄り見つめた後、傍に静かにしゃがみ込む。

……電気、消した方がいいのだろうか。
顔の上の新聞紙を見ながら、そんな逡巡。

/*襲撃相手(イレネオさん)の方には告知するよう、運営ちゃんに連絡しておきますね。もしRPでは話しつつ別の方をコッソリ襲撃したいなら、別途運営ちゃんにご相談ください!

【人】 路地の花 フィオレ

「みんな、元気にしてた?」

落ち着いた頃に再び外へ繰り出して。
寄付や差し入れのためによく訪れている、
院内に入るや否や。ワイワイ集まってきた子供たちの頭を慣れたように撫でている。

世間のざわつきに子供たちは気付いているのかいないのか、ほとんど変わった様子はないけれど。
この場所に何もなければいいと思うのだ。
子供たちが、社会の闇に晒される必要はない。

「……守ってあげないと」


どうしたのー?と足元から声を掛けられて。小さく笑った女は、何でもないのよと目線を合わせるようにしゃがんで。
その額にキスを送ってあげるのだ。

#養育院
(58) 2023/09/16(Sat) 15:53:17
…暫くして、立ち上がり電気を消した。
振り返った室内は暗く、それでも何も見えないほどじゃない。

「…」

今朝持って出た
弁当
の中身は、半分ほども減っていない。
昨日と打って変わって食欲がしなかった。
…パオロは今頃、どうしているんだろう。檻の中の冷たさを女は知らない。

それでも彼が眠っているうちに、これだけは空にしたかった。
黙々とひとくち、ふたくち、食べ進める。

「普通のビールで5〜7度くらいだから」
「もっとだな。ワインくらいかそれよか強い」

かな……とぼんやり、そこら辺の知識は自分もはっきりしておらず。
とりあえず強いという事を主張しておいた。

「そ?じゃあそうするよ。色々」

マスターの手際は良く、伝えてすぐ準備が始まる。
その手付きを眺めながら「ん? んん……」と生返事をして。

「菫のシロップが入ってる。スッキリしてて飲みやすいんだけど」
「あんまり人前で頼むなよって酒だな。青いから」

……その言葉に合わせたかのように、一品目が頼んだつまみと共に届くだろう。
こちらにはブルームーン。
カクテルグラスに薄い青紫のアルコールが揺蕩い、
照明の光をキラキラと返した。

「飲むか?」

「ん……あ?」

貴方が側に寄ろうと中々目覚めなかった男は、そこそこに不用心であった懐を漁りながらガサガサと顔の上の紙を鳴らして体を起こした。

「ぁー……すまない、待たせてしまったか」

時間も有限であるのに、と。
少し香るトマトとチーズの香りにあれは一口でも食べたか、と満足げに口端は上げていた。

「話はできるぞ……次の目標も一応決めてきた。
 相変わらず、あんたが言うなら変えてやっても良いですけど」

新聞紙のたてた音に振り返る。

「おはようございまあす。」
「…お疲れの様子ですねえ。」

何事もなく女は笑みを浮かべた。
手元のお弁当は、完食にこそ至らなかったがそれでもほとんど減ったらしい。

「休める場所が他にないなら、気にせずいてくださいねえ。」

「でも、そおですねえ。」
「次の調査対象の話は、早いうちに聞いておきましょおかあ。」

早く取りかかれた方が休む時間もできるかもしれませんしいだなんて、気遣いのようなことを言う。

/*
告知について了解しました!

一応念の為の確認ですが
襲撃セットに関して全員でセットでよろしかったですか?
樹木子や猫又等を考えてかつ
襲撃相手とのやり取りを考えて一人にするか
全員セットで襲撃も全員で向かった形でいくか…
どうだろう?と考えてしまったので相談失礼いたします。

ちなみに今はイレネオさんにセットしております。
運営ちゃんにはまだ未連絡ですが…!

「……私の幼馴染や教会みたいなものね」
「居場所を守る、か……
 この法の施行でもっと考えないといけないって、
 重々想い知らされちゃったわ」

「それは……
 話し合いさえ応じない、なら、……そうね」
 その時は引けるかしら、引き金……」

「でもやっぱり話を聞いてて、ペネロペ、格好いいわ。
 ってたくさん思うわね。理想の大人のお姉さんって感じ。

 わたし、女の先輩で仲いい人が全然いなくて、
 相談とか悩む件も多かったからペネロペがいて嬉しいわ」


「ま、よく考える良い機会じゃねえの。」

そちらとしては、という他人事だけに留まらず。
こちらもボスの代替わりによる体制の変化も含め、
有事の際の問題点は確かに浮き彫りになっているだろう。
それどころではない所も大いにあれど。

「俺ぁ仮に裏切者が居たとしても、
 向こうの意思が変わらないってなら引き金を引くだろうよ」

裏切者。

我が身可愛さに、或いは他の何かの為に。
身内を売る者が居るかもしれない。
そういった最悪の事態を、考えていないわけではない。


「………あと、」

「俺、男だからな。」

「ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリア」

少し苦々しい声を出しているのは、上の人間は調べれば調べるほどリスクが高いからだ。

「……今日のが随分な男だったからなあ。
 警察は血の気が多い奴らばかりなのか気になっちまう」

「心配事はあるか、自分のことでも他人のことでも良い。
 あー、このラザニアを作らせてくれたやつもな、
 ……自分のことより俺とあんたがしょっ引かれないか心配してだぞ」

ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリア。
長駆の上級警部殿。

「…………“怖いおじさん”」


口の中で転がした小さな声は、きっとほとんど聞き取れない。
考えるようないとまのあと、ラザニアの残りをまた口に入れる。

「わかりましたあ。お任せしますねえ。」
「あとで前金と、今回の報酬もお送りしておきますう」

きっと前回と同じように、どちらも手早く振り込まれるはずだ。
やはりいち巡査が躊躇なく支払うには大きな額であるはずだが。

「……」
「心配事、はあ」

言い淀んだ瞳が、傍らの鞄へ向いた。
中には薄紅色のバスボムが、丁寧にラッピングされて入っている。

「…捕まらないで欲しい人がいる、くらいですかねえ。」

静かな声。続いた声は、それに比べると朗らかだった。

「お兄さんは、そういう人、いますかあ?」

/*とりあえず自分がセットしますので、お二方はご自由に…というかんじでよろしい……かと!

そしてご相談なのですが、
実は私、暗殺食らって今回で逮捕されますので……………(初手離脱系出資者)
演出される場合はお二方にお願いしたい感じです。

そのうえで、おっしゃるとおりほか役職のかたの行動考えると、私だけ設定でもいいのかな…というかんじもあります。
なにとぞよきようにしていただけましたら………

いろいろお任せしてしまってすみませんが、よろしくお願いします…!

(※いいつつ檻の中からの指示みたいなロールでよければ自分もできます やりやすいほうで!)

/*様子見てたら変な声出ちゃいました。
あのメールはそういう事かー!愉快な事になりますね…

此方も今はイレネオさんにセットしてあります。
が、女史が此処で離脱となれば
別行動している、という体の方が自然ではある気は致します。

バラけさせるのも一手のように思えますが
もしバラけさせる場合
カンターミネさん、ルチアーノさんのいずれかでしょうか?

此方も良きように合わせますので
これしたいな〜があれば是非是非どうぞ〜。

/*
アッ かしこまりました!
メールと忘れ物でもしや?とは思いましたが…
それではN.N.は今回パスにセットしておきますね

別行動、あるいは今回は留守番役ということで

Alberoの行動についてはお任せします
あくまでN.N.のセットがパスという形で…
我々が一気に落ちることはなさそうですが念の為!

運営ちゃんにもパス連絡しておきます
樹木子と猫又に恐れているN.N.PLより…

 
「裏切者……」
「組織内での裏切者なんて考えたくないわね……
 最も、今の警察は裏切りどころか分裂状態だけど……」

公僕である以上、上が水は赤いと言えば赤くなるのだ。
新法案に反発している人は少なくはなくなくとも、
それに表から批判できる人はいないし、"いなくなる"。

「……ノッテに裏切者がいない事、私も祈ってるわ。
 どこでどんな利権が発生しているかわからないだけに、
 いないと言い切れないのが複雑だけれどね」

 
「……えっ?」

「……やだ、ペネロペ。
 わたしが幾らドジだからって、性別を間違えたりは……
 間違えたりは……
しない……
はず……」


またからかおうとして〜。くらいの軽い笑みを最初は浮かべていた物の、徐々にその表情が固くなって。

「…………
うそ


「俺のツラが良すぎて勘違いさせたのは悪いと思うが…」


傲慢。

「まあ夢を抱いたままでも結構だけどよ。
 そういう相談にはあんま期待すんなよって事。」

 
「夢、一瞬で儚く砕け散ったわよ……
 ううん、まだ夢の中ではあるんだけど」

「絶対女の子だと思ってたのになぁ…………」

完全に女性の先輩と思って慕う気満々だった女は、ショックのあまり机に顔を押し付けるように突っ伏した。暫くは起き上がってこない事だろう。

「じゃあどうして女の子に見える格好を?
 ……女の方が有利なこととか、やっぱりあるのかしら」


「まあ夢の中で夢が砕け散る事もあらあな」

テーブルに突っ伏す様子を見ながら適当言っている。カス。

「ん〜……まあ女の方が懐には入り込みやすいからな。
 弱そうだと思わせておいた方が得な事も多いし。
 女の方が入りやすい場所も多いし…」

夢のない話がどんどん出てくる。

/*なるほど…
であれば此方も今回はパスとしておきましょう。

此処で2人も捕まるのはヤバそうですし…
運営ちゃんにもその体で報告しておきます!

「諜報するには女の方が有利なのはよくわかったわ。
 いざとなれば、男の力で抵抗もできるし……
 ちょっと羨ましいかもしれないわね、ペネロペのそれ」

夢のない話に更に潰されて机に突っ伏していた顔がようやく上がる。

「……今、やっぱりペネロペの所、忙しい?
 よかったら様子を見るだけでもいいから、
 ちょっと、ある人をサポートして貰ったりは……」

ごにょごにょ。
自分でも、余りいい提案じゃないのは理解していたのだろう。
声が小さく潰れて行って、目線は逸らされる。

普通は多忙なら、誰かひとりじゃなく身内全体の利になるように動く筈だ。
それを夢で出会ったどこの馬の骨か知らない女の要望を聞いてくれることなんてまずないと思うけれど、言わずにはいられなかった。

「捕まらんで欲しい奴かあ……。
 俺の部下に一人可愛いやつがいてなあ、
 そいつは一人寂しいと泣くんで無事で居て欲しいね」

「それ以外はー、あんたぐらいだ」

それは偽りなく、心から。特に深い意味も無く告げられる。
どちらも女性であるが、そこに自分の所属している陣営は甘味されて居ない。

「こちとら周りは覚悟が決まった連中が多いんでな、心配はしてない。
 だが、協力している身からすればあんたみたいにやりたい事がある人間が志し半ばで折られるのは忍びないねえ」

「男なんてそんなもんだ」

心配しすぎた方が嫌な顔をされる。
まあ、捕まった情けない姿を見たいわけではない人間はいるが。


「ま、見た目に気を遣ったり上手くやらねえと
 ただひ弱なだけの男になるけどな」

自分は上手くやっている、そういった自負。
傲慢の裏返しは自分への自信にある。

「サポートするったってなあ。
 そりゃ下から上まで大忙しも大忙しだよ。
 相手と内容を聞かなきゃどうとも言えん
 あんたが実在する人間なのかもまだ怪しいところだしな」

髪をいじりながらそう答える。
この男の行動原理は結局のところは損得勘定だ。
それがひいてはこちらの利益になりそうなら、
今は誰か一人の為の利益だろうと飲む事はできる、が。

「普通のビールがごど……なら……」

「…………さ、三倍……!?」


ハワ……みたいな反応になってしまった、さすがに。
ビールは数回口にしたことがあるが、そのときでもアルコールだ……と感じ入っていたぐらいだ。
もしかして自分にカクテルは早かったのではなんて考えるのだけれど、それでも折角の機会なのだから飲みたいは飲みたい。
やるぞとごくり、一人生唾を飲み込んでから。

「へえ〜……菫なんだ。
 青いのってだめ?」

味の想像があんまりつかないなと思いつつ、色に関しては綺麗だと思うけどな、と。
続ける前に実際に届いたものだから。
自分の前に届いたお酒よりも、貴方の前に届いた美しさにまずぱっと目を輝かせた。

「きれ〜……えっ、いいの!?
 飲みたい飲みたい!」

そう言ってどこか前のめりに主張。
頼みを貴方が聞き届けてくれたのなら、一口目か、貴方が飲んだ後の二口目を貰ったことだろう。

その結果──

[1/2]

「──ぅ、ゎ」


ぴた、と固まっていた。
普段味わうことのない度数の高さが喉を焼いて少し咽かけそうにもなる。
けれど口中に広がるまろやかな甘味とすっきりとした酸味は飲みやすさを感じさせるもので。
味わった結果、真っ先に出てきた感想は。

「……お、大人、だ」

「これ、大人だよ……」

階段一歩登っちゃった感覚を形にしたかったのだが、謎語彙チョイスとなっている。

「え〜いっつもこういうの飲んでるの?かっけえなあ〜……」

[2/2]

名が出たことには率直に驚いて。大きく瞬いたミントブルー。
けれどその視線を少しずつ低く落としていく。

「覚悟、とかあ。」
「そーゆうの、よくわかりませんけどお…」

フォークを1度置く。
上手く言葉にできないけれど、妙な蟠りだけ溜まっている。

「自己満足とは、違うんです…よねえ?」
「自業自得だから、心配してない〜とか」
「……いやあ、ええとお」

結局、言い表せないままかぶりをふった。
ごめんなさいー、と一言置いたあと。

「母子家庭、だったんですう。」
「だからあんまり、」
「男の人の考えてる事はわからない…って、言いますかあ。」

「でも、そういうもの、なんですねえ…。」

「……ノッテなら、ヴィットーレがいると思うんだけど」
「勿論、本人が検挙されないのが一番なんだけど、
 彼、孤児院を持ってるでしょう。
 だからそことの関係性を何とか隠蔽しきれないかって」

「……勿論、ヴィットーレ自身でその辺りの処理は一人で終えるだろうけど、手助けしてくれる人がいれば私も安心だから……」

心苦しそうに、少し顔を困り顔のまま伝える。
ノッテの利益になるかというと、正直な所厳しいだろう。
ただ、自分の恩人が少しでも見つからないように、余裕ができるようにしてほしいだけ。ただの我儘だ。自覚しているからこそ、この表情である。


「…ヴィットーレちゃんか。
 まあ身内の事だ。引き受けんでもないが…」

ファミリーにとっての利益でなくとも、
身内の為ならばある程度は融通が利く。
結局のところ、この男にとっての最優先事項は身内だ。

「すぐにできるかまでは確約できん。
 何せこっちもこっちで尻尾を出さないように必死だからな。
 それでいいならウチの人員を幾らか回すくらいはできる」

「謝る必要はない、要するに格好つけだ。
 いい顔見せて好かれたいんだ女には」

完食まではしないでいぞと、置かれたフォークを見て一緒に紙袋に入れていたナプキンを差し出した。

「怪我をするのは他人のせいにしないで自分で背負う、なんて。
 色んな見栄のはり方があるんだよ、全部スマートに済ませてこそ一流だがなあ」

自分が出来ているとは言わないが。
あなたの男心を理解しない思考には肩をすくめて構わんと乾いた笑いを返した。

「まったく論理的でもなければ、情動的とも言わん。
 ……それにしても男手無しなら稼ぎは厳しかっただろうに。
 いい女に育ったなあ? 母親の手腕が最高だったのかもしれんな、親孝行は出来てるのか」

「……」

一瞬の沈黙。受け取ったナプキンで口元を拭う。

「お母さんは、亡くなりましたあ。」
「飲酒運転の車に、轢かれて。…でも」

「お母さんが生きてた頃から、支援してくれる人がいてくれたのでえ」
「…親孝行。親じゃ、ないですけどお。」
「その人に、してるつもり…ですう。」

できてるかはわかりませんけど、と。
茶化す素振りなく真面目な口調で言い切って。

「…ごちそおさまでしたあ。」
「ありがとおございます。用意してくれた人にも、お礼、言っといてくださあい。」

「それだけでも十分すぎるくらいよ。
 彼の頼みなんかじゃなくて、私の勝手な我儘だから……」

「ありがとう。勿論、わかってる。
 ……自分と部下だけじゃなくて、孤児院との繋がりまで色々と隠そうとするのは普通よりきっと大変そうで……
 もし回せてもらえるならきっと助かるし、私も少しだけ安心できるから……」

丁寧に頭を下げた。

子どもの頃から、あまり思いを顔に出さない方だった。
だけど、笑おうと思えば笑うことだってできる子どもでもあった。

行ってらっしゃい、とか。
大丈夫だよ、とか。

そういう特技がこの日常に活きているんだと思う。
活きていたんだと、思う。

気付くとこの笑顔が本当なのか嘘なのか自分でもわからなくなっていて。
そのことに気付いたその日から、少しずつ、狂っていっていたんだろう。


「ま、要らん世話かもしれんしな」

「あんまり期待はしすぎんなよ。
 工作するにしてもこっちの足跡も残さないようにせにゃならん
 俺らまで捕まったら元も子もないからな。」

気休め程度に思っとけ、と念を押して。

「あんたこそ、自分の身の回りに気を付けておけよ。
 マフィアに好感があるならなおのことだ。
 揚げ足を取って告発しようって輩が居るかもわからん」

「あ、はは……やっぱり逮捕されそうに見える?私。
 ……結構ミスばかりして迷惑かけているから、
 恨みを買ってないとは言い切れないわね、困ったわね」

「でも私がいなくなったら、ペネロペ。
 ここの景色を独り占めできるわよ?落ち着けるかも」

なんて冗談めかしていって。
わかっているとは言いつつも、まだ内心「自分が捕まる可能性」への実感は抱けていないようだった。
それが楽観視のしすぎだったと思わされる機会は果たして来るだろうか。


「ま、逆に無害だと判断されて目をつけられないかもな。
 実際どうなるかはなってみないとわからねえもんよ」

逮捕されそうに見えるか、にはそう返して。

「あんたが居なくなったら酒が出てこねえじゃん。
 こんな夢の中に一人で居てもつまんねえし」

さっさと起きて仕事してた方がマシだね、と
頬杖ついて口を尖らせそう続けた。

その驚きには静かな頷きを返した。
そうなのだ。酒の度数は馬鹿に出来ない。
この世には99度とかいう度数の酒もあるのだから。

「うん。青い酒って言うか、青い飲みもんはあんま」

それだけを言って、貴方が飲みたい事を主張すれば
黙って一口目を譲る。
グラスが傾けられて透き通った青紫が注がれていくのを
ロメオはじっと見守っていた。

「……アハ。大人だろ」
「ちなみに青い酒が駄目なのは薬混ぜられるからだぜ。
 睡眠薬とか水に溶けると青くなるようになってるから、
 万が一混ぜられても気づかないんだよ」

それからケロッと笑顔になって、
何故駄目なのかのネタ晴らしをした。
ちゃんと一口飲んでから告げる辺りに
少しばかりの悪戯心と悪意があるからこれは良くない。

「オレが悪い大人じゃなくてよかったな。フフ」
「良い酒だろ。オレは好き」

勿論そんな事するわけじゃないけれど。
貴方は敵じゃないのだし。

――躊躇。
しては、いけない。
ここまできたら。もう。

ううん。ここに来る前から。
あの人との関係に気付かれたかもしれない時点で


(……ごめんね)


それは、音にしてはならない言葉。
後ろ手に閉めた扉の奥で、ひとり、口を引き結ぶ。

そそそ……と貴方にグラスを戻しながらも。

「エッ」


ケロっと明かされたネタ晴らしにはそんな声が出た。
飲む前に言わなかったのはつまり、とほんのちょっぴりじっとりとした視線を向ける。

「も〜〜〜……揶揄ったな?
 ロメオさんが悪い大人だなんて思ってないけどさあ〜。」

それでもびっくりするのはびっくりするから唇を尖らせて。

「というかなんでそういうの知ってるの?
 もしかして常識……?」

オレが無知すぎるだけか……?と零しつつも自分のカクテルにも口をつけてみる。
口内に広がったのはお酒とは思えないほどの、甘さ。
やっぱり度数はきついのだけれど先程のよりは飲みやすい感じがして、「デザートみたい……」を呟いていた。

「無害……本当にそう思われればいいのだけれど。
 教会に迷惑だけはかけたくないから、
 せめて、捕まるなら……」

ひとりでじゃないと。
決意表明のように呟いてから、
あなたの答えには少し嬉しそうにはにかんで笑う。

「話し相手としては認めてくれてるみたいで、よかった。
 次に会ったときは、お望みのお酒を頼むわね」

なんて笑って、今宵の夢は仕舞いとなるだろう。

 


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