16:26:36

人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「……困った事があったら言いな。酷いことされた時も。
 助けてほしい時も。傍に居て欲しい時も」

「オレはあんたの力になるよ。フレッド」

『うまく使え』、といつもの癖で言いかけて。

「……兄ちゃんだし…………」

きちんとそう言い直した。
(-222) 2023/09/21(Thu) 17:44:06

【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノ

「お前の」「その」
「知らぬ存ぜぬのうちに」
「何人が死んだんだろうな」


声を潜めて男は言う。

「疑わなかったのか?」「一度も?」
「俺でさえあいつがノッテマフィアだと知っていたよ」


言葉ひとつはなんの証拠にもならない。
悪魔の証明。騙していない、ことを証明する手立ては存在しない。ないことを示すことはあることを示すより難しい。方法が存在するとすれば、それは貴方が自身の善良さを示すことだけ。
その善良さだって、男にとっては既にない・・ものだ。

貴方は善人ではなく・・、既に仲間ではない・・
貴方に正義などなく・・、法への忠誠もない・・
だから手加減する必要もない。



男が笑った。

(-239) 2023/09/21(Thu) 19:51:08

【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノ

だん。
音。

それは男が、
手に持っていたペンを貴方の手に突き立てた音。

手元を見ていたわけではないから、僅かに逸れたかもしれない。
命中していたなら、尖ったペン先は貴方の骨を割るだろう。
(-240) 2023/09/21(Thu) 19:51:29

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

へんな気分だ。
全てをいいんだと許されていく。
それでもきれいなのだと告げられる。
昨日までは友達だったひと。
今日からは家族のように想うひと。

大きな腕の中に抱かれていると、安心した。
まるで昔からずっとそうしてほしかったみたいに。

「……ありがとう」

貴方もスラムにいたのなら案外、なんて。
ちょっと高望みしすぎか、それにそうじゃなくても。
嬉しい、の次に、己を想って告げてくれる言の葉たちと。
貴方自身が
そう
であると認めてくれたのだから。

それだけでもう十分で……なんでだろ。
酔っているせいかな、胸が締め付けられて。
先の貴方の笑みを思えば一滴だけ、涙が落ちた。


一度詰まってしまった声を抱きしめる力を強めて誤魔化す。
見えてないから、ないしょ。

[1/2]
(-257) 2023/09/21(Thu) 21:07:35

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「……へへ、うれしい。
 でも、逆だってそうだよ」

「オレも、ロメオにいの力になるよ。
 できること……多くないけどさ。
 それでも、オレが叶えられることならなんだって」

貴方のこと、多くを知るわけじゃない。
けれどきっと"家族"を多く知っているのは自分の方だ。
だから、と。

「ね、一緒に色々しようよ、これから」

ひとつひとつ、ぬくもりを教えられますように。
望んだものは夢などではないのだと告げられますように。

「友達じゃなくて、家族っぽいこと。
 ……いいだろ?」

ちら、と貴方を見上げ、いつもみたいに無邪気に笑う。
これから変わっていく明日に想いを抱いていた。
共に居られる日々は変わらないって、信じていたから。


[2/2]
(-260) 2023/09/21(Thu) 21:09:35

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ


──疑わなかったのか、と。

その言葉が耳に届いたとき、声を詰まらせた。
考えたことがないわけじゃなかった。
男はこの世の掃き溜めで生きていた。
十分に薄暗い世界を知っている。
或いは、だから、と考えたことはあっただろう。

それでも己に伝えないのならと明らかにはさせなかった。
もしそうだとしても、言いたくないのならと尋ねなかった。
じゃあ、これは、そう。

知らなかったじゃなくて──

──
知ろうとしなかった
、のではないかと。


だん。

「────い゛ッ!?」


[1/2]
(-266) 2023/09/21(Thu) 21:48:17
ニーノは、ならば、その罰が下るように。
(c12) 2023/09/21(Thu) 21:48:32

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ


痛み。

殴られたときのそれじゃなく。
蹴られたときのそれとも違う。
ペン先が皮膚を裂き、抉り。
先にある手骨を割った痛み。

「ぁ、? っ、せんぱ、……ぃ、なんで、」


いたい、いたくてたまらない。
吹き出る汗も滲む視界も、熱から来るものではない。
男は貴方を見た、怯え切った瞳にその笑みを映した。

「……ッ、ゃ、やだ、ごめ、なさ」


嗚咽を堪えて謝罪を形にしたのは条件反射のように。
それでも遠ざかろうと身を引く。
熱と痛みでろくに入らない力で、ペン先が突き立てられた手を引こうとする。

──逃げなきゃ、と、思って
 どこかに どこに?


[2/2]
(-267) 2023/09/21(Thu) 21:50:15

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

腕の中の友人は、今は弟と同じ。
ぎゅう、と回された腕の力が強くなれば薄く笑った。

もしかしたら幼い頃会っていたかもしれない。
逃げ回るように生きた幼年期のどこかであなたと会えたなら、自分はきっと今のような生き方をしていないのかもしれない。

例えば、一緒にマフィアになって。例えば、共に警察として。
結局はもしも話、なのだが。

「……オレの力に?」「頼もしいな」

後輩にも頼る事はあるのだ。きっと弟にも頼る事がある。
弟にしか頼れない事がある。

「家族っぽいこと……ってなんだ?一緒に寝るとか?
 それはちょっといいな」
「いいね。色々やろう。オレ、やりたいな……」

無邪気な笑顔と向けられた視線に、
こっちもいつも通りの笑顔を返した。
あの時の笑みは、あれきりだ。


何かが変わった。どう変わるかは、わからないけれど。
家族への憧憬、もう手に入る事のないと思っていた夢の断片。
今、確かに貴方の形をして共に居る。

「……グラスホッパー、頼むかぁ」

そろそろ少し酒も抜けたろ、なんて笑って。
これから起こる事なんて、今はまだ知らないで。
(-276) 2023/09/21(Thu) 22:48:09

【秘】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ → 暗雲の陰に ニーノ

サルタナレーズンとピスタチオを練り込んだデニッシュを手に店を出る。
夕日を浴びて街に馴染んだ公園を見て懐かしむように目を細める様子は、
いつかの記憶を思い出しているかのようにも見えた。
ベンチに浅く腰掛けてなるべく視線のよく通うようにしながら貴方の言葉を聴く。
ひとたび問いかけに突き当たるまで、話し終えて満足するくらいまで。
そこに作意はない、おそらくは。長い睫毛が、相槌の代わりに何度も合わせられた。

「うん。……うん」

「いま、かつての実効支配があった時代とは違って、
 大きなマフィアのファミリーも富裕層めいた暮らしをするものではなくなっている。
 みかじめピッツォを払わなくとも殺されるようなことは殆どないし、
 大手を振ってメディアが彼らと取り上げられるくらいに、力は小さくなった。
 それでも彼らを恐れる人は多い。彼らを取り締まる方法は今も常に新たにされている」

大きな手の中に包まれたデニッシュは、ひとかじりもされないまま小麦の匂いを漂わせる。
朝も早く閉まるのも早いパン屋の商品は、朝日の中ほど芳しいわけではないが。
秋めいた枯れた芳香と相まってどことなく郷愁を抱かせるような、そういう匂いだ。

「けれども、彼らを取り締まるのはあくまで市民の為だ。
 弱く、力を持たない人々が自由に生きることのできる社会を作るために、
 今回の法案や、私みたいなマフィア対策部署の人間がある。それは、其れ以上ではない。
 だから、何も力を持たないひとびとを怯えさせるような方法を振りかざすのは、
 私は……間違っている、というふうに感じている。
 みながどう思うかは、それぞれに違うだろう。だからあくまで一つの、参考にしておくんだよ」」

貴方の言葉を聞き、己の考えをゆっくりと話す目は。貴方を慈しんで心配するようなものだった。
変わらない、ずうっと。小さな貴方を、保護するもののように愛している。
後ろから見守って、歩き出す勇気が足りなかったり道を迷う時に、
そっと支えるように傍にある――そういう、穏やかな顔だった。
(-285) 2023/09/22(Fri) 0:08:24

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

先程の笑顔はもうそこにはない。
普段よりよく見えるいつもの笑みを見上げながら。
やりたいの意志を隠さずに示してくれることに眦を下げる。

「作ったご飯一緒に食べたり、とか。
 ……一緒に寝るならロメオにいの家行きたいな、そのうち。
 だめ?オレの家、ちょっと厳しいから」

尋ねながらもゆっくりと身体を離していく。
このままではグラスホッパーが頼めないし、と。
けれど、離れ切ってしまうその前。
少しだけ貴方の頬を掠めるように撫でては、悪戯をした幼子みたいに笑った。

「眼鏡さ、ないほうがかっこいいね」

それだけ告げて、姿勢を正したことだろう。
次いでマスターにグラスホッパーを注文して、…………。

……そういえば店の中だったんだよな、とか、今更のそれだ。
今になってちょっぴり恥ずかしさが湧いた。
誤魔化すように水に口を付ける。
(-335) 2023/09/22(Fri) 9:46:16

【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノ

「俺が聞きたいのは謝罪じゃないよ。」


ぐ、と押し込む力。
ぐり、とねじ込む仕草。
ぱきり。骨片が皮膚を裂く。
男と貴方では体格が違う。力が違う。
暴力への箍の外れ方も違う・・・・・・・・・・・・
抵抗の仕草にこれは軽く笑う声を漏らした。

「なんでもなにも。」
「何でもしていいと言われてる。」
「吐かせるためならな。」

「そのドライブの行き先は?」
「贈り物に何か仕掛けられていなかったか?」
「珈琲の瓶に何か混ざっていなかったのか?」
「その喫茶店で何を売っているのか知らなかったのか?」


ぐり。
ぐり。
(-368) 2023/09/22(Fri) 15:03:00

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「ああ、いいな。オレ作れるよ、少しくらいは。
 オレんちに泊まりは……あー、多分大丈夫」
「いいよ。やろう」

急に仲間が尋ねてくることも殆ど無いし、
忙しい日に予定しなければいい話だ。
その時は折角だから、貴方の好きな食べ物を
作ってやれたらいいな、なんて。

頬をするりと撫でる手は、やっぱり自分より小さく。

「……伊達なんだよ。これ」

そう言って、肩を竦めて笑ってみせた。
ロメオは店の中でも素知らぬ顔で、
恥ずかしげもなくまたメニューを見て。

「また来ような」

カクテルの届かぬうちに、次の約束をするのだった。
(-409) 2023/09/22(Fri) 19:21:53

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

最後までを暖かく見守り聞き終えてくれた貴方が、次に口を開き話してくれるのは己が知らない時代のことだ。
マフィアについて詳しくもなかった男は今と昔の違いをそこでようやくに知る。
けれど一度広まった印象というものはそう簡単にはなくならないもので。
彼等からの被害も決して無くなったわけではないと、これは周囲を見ていても知るところ。

だから、やはり仕方ないのだろうかと。

落ちかけた視線、されど貴方の言は続いていく。
下がる眦が届けてくれる慈愛に満ちた表情。
鼻先を掠める芳香と混じり、かつての記憶が蘇るよう。
──変わらない。

「…………うん」

変わらないものが、ある。
そう感じる度にどうしてこんなにうれしくて。
どうしてこんなに泣きたくもなるのだろう。


「ちゃんと、ひとつの参考にする。
 けど、……よかった」
「ヴィトーさんが、"間違っている"を言ってくれること」

にぃと笑って届ける表情も幼いころと変わらない。
……のは己で自覚しているものではないけれど。
伸ばした指先は、貴方の服の袖をちょんと摘まんでいた。

「自分の心、よく見えなくなってたけれど。
 それを聞いてようやくちょっと……見えた気がするから」
「でも決まっちゃったもの、変えるのって難しい……ですよね。
 何かしてたら、オレでも変えられるものあるかなあ……」
(-422) 2023/09/22(Fri) 20:42:47

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 法の下に イレネオ

押し込まれた瞬間に悲鳴がまた落ちる。
骨が割れる音を拾い上げ腹の底は冷えるようなのに、
ペン先が刺さるその場所は燃えるような痛みを訴える。
片側の手を止めるために動かそうとしても──じゃらり。
金属が擦れる音が自由の無さを示しただけ。

「……な、にも、しらな」

ぐり。


い゛っ
、ぅ」
「っは、……」

「……ゎ……、かり、ませ」


ぐり。


「〜〜ッぁ゛」


ねじ込まれる度に背が丸まり、びくりと身体が跳ねる。
喘ぐように開いた唇から苦悶に満ちた哭き声だけが落ちる。
首を横に振る度に汗と涙がはたりと落ちていく。
息をすることさえままならなくて、こんなの。

[1/2]
(-423) 2023/09/22(Fri) 20:49:50

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 法の下に イレネオ


──地獄、みたいだ。


いたい、こわい、くるしい、やめて。
逃れるための術を探している。
何か伝えたらやめてくれる?
でも本当になにもしらなくて。

貴方にそれを伝えようとしたのだと思う。
顔を上げ、滲む視界にその表情を捉えて。
けれど。

…………なんで。


どんな言葉よりも先に浮かんだものが、形になる。

「……な、んで…………」

「…………、……ゎ、らえる、の……?」


わからない。
わからなかった。
ぽた、とまた頬に雫が伝う。

[2/2]
(-424) 2023/09/22(Fri) 20:52:29

【秘】 路地の花 フィオレ → 暗雲の陰に ニーノ

「ふふ、姉さんは大人になってからチーズに目がないのよっ」
「って言っても全然作り方とかは分かんないんだけど……」

アイスケーキのようなものだから、作れば一緒に食べられるだろうし。
カッサータを持って、笑顔で寄ってくるあなたの姿が目に浮かぶようだ。
今からもう楽しみで。

この世で一番なんて大きく出たなあなんて笑いながら。
楽しみにしてるからね、と笑う。
クロスタータを食べるのも楽しみだな、なんて袋を揺らして。

「頼もしいなあ。
 フレッドは立派な警察さんなんだもんね」
「じゃあ、約束」

絶対に助けてくれるはずだ。自分だってそう信じていた。
立派に成長したあなたが、何かあったら助けに来てくれるはずだと。

何かの間違いで、あなたが捕まりそうになったとしても。
その時は自分が助けてあげられると。

信じていた。
ずっと。

「なにからなにまでありがとうね、フレッド」
「貰ったもの、食べたらすぐに感想送るから。楽しみに待ってて」

にっこり微笑んで。また一つあなたを抱き締める。
また次も無事に会えますように。
(-427) 2023/09/22(Fri) 21:05:43

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「やった!
 料理は……オレ、あんまりできないけど。
 でも手伝うから、火の番するとか……」

好きな食べ物を、なんて考えてくれていることも知らず。
おねだりを受け容れてもらえたのなら満足気。
マスターが早速作ってくれているのをちらと眺めたが。
それもすぐに貴方へと戻して、はたりと瞬いた。

「……なんでつけてたの?恥ずかしがり屋?」

……なわけ、ないだろうなあ。
ちょっとどきまぎした自分と違って、貴方は気が付いているだろうに涼しい顔だし。

「…………うん」

そうして続く、届いていない内の次の約束への返答は妙な間が一瞬空いた。
嫌だったとかそういうものではない、でもさっき聞いたばかりだ。
自分から誘うことはそうないって。
じわり湧き上がる嬉しさに口元がどうしたって緩むから、こてん。
気にしてないみたいだしいいかって、頭を傾けて貴方の肩にくっつけていた。
(-430) 2023/09/22(Fri) 21:14:37

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ

「じゃあ本当にとびきりの作って持っていくから、待ってて?」

貴方の言い方が面白くって、だからくすくすと笑ってしまった。
カッサータはどれくらい作るのが難しいだろうか、今はまだ想像もできないが。
それでも大好きな貴方のためならいくらだって頑張れる。

「そう!オレもう警察だから!
 約束できるよ、まだまだ下っ端だけど」

少しぐらいは何かできるはず。
だからそのときはと、約束の一言には小指だって差し出していたことだろう。
昔からの変わらない契り方。
ぎゅっと絡めて、そうして解いて、じゃあって。
離れる前に両腕が伸ばされていた、気付けば貴方の腕の中だ。

「……へへ」
「うん。
 楽しみにしてる、フィオねえ」

其処は揺り籠同然の場所で。
恐れるものなんて何もなかったから、ぎゅうとこちらも抱きしめ返す。
子どもみたいに貴方の髪にも少しだけ頬を摺り寄せてから、名残惜しくもじきに離した。

そうして今度こそ手を振って離れていくことだろう。
もう少し夜が深くなれば雨も降り始める日のこと。
その晩に貴方は何かを食べてくれただろうか、メッセージででも感想を伝えてくれただろうか。

だとしても──そこに返るものは、何もなかったのだけれど。

[1/2]
(-440) 2023/09/22(Fri) 21:38:51

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ


────こえがする。

暗い牢越しに貴方が名を呼んでも、そこにいるのが本当に"弟"なのかはすぐに分からなかっただろう。
冷たい牢の隅、与えられた毛布に丸まって蹲る人影。
声をかけられてもぴくりと跳ねるだけで、すぐに顔を上げない。

幻聴だと思った。
だってここであなたの声を聞くはずがないから。

……それでも、その内に。
緩慢な動作でゆっくりと顔を上げる。
泣き腫らし腫れた瞼も、熱で赤らみ汗ばむ頬も、暗くて貴方にすぐ見えるものかはわからない。

「…………ね、ぇさ、ん……?」


けれど貴方を呼ばう声が掠れ切っていて。
聞き落としてしまいそうな程に弱いものだったことだけは、明らかで。

夢かもしれないと思った。
なら夢でいいとも思った。
身体を動かす、それだけで。
走る痛みに喉奥がひきつる。

[2/2]
(-443) 2023/09/22(Fri) 21:43:08

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ

/*
すみません、お待たせいたしました!
まだ最後まで状況は確定しておりませんが、とりあえずはこの程度は……といったところまで分かったのでお返事いたしました。最終的にもう少し酷くなる可能性はありますが、とりあえず、とりあえず……
どうぞごゆるりとお付き合いいただければ幸いです、ねえさん〜……
(-444) 2023/09/22(Fri) 21:43:42

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「なんなら教えようか。オレの作れるもんくらいは」
「そしたらお前もオレに作ってくれるかもしれねえし……」

というのもまた冗談だが、教えるのも楽しいんじゃないかと思ったのは本当だ。しかしあわよくばいつか、貴方の作ったご飯も食べてみたくは……ある。

伊達眼鏡の理由を聞かれると、少しだけ視線を巡らせて。

「ナイショ。」

なあなあにしてごまかすことにした。
ただのパン屋が変装する義理が無いのは本当だし。
おしゃれと言い張るにはこの眼鏡じゃ無理がある。

「ふ。よかった〜」

楽しみができたわ〜、と気の抜けた声。
預けられた頭の重さに心地良さを感じて、
随分居心地のいい空間だな、と思った。

直にカウンターに置かれるグラスホッパー。
ミルキーなグリーンが揺れて、どこか愛らしい。

「…………」
「乾杯でもする?」

本当は飲み初めにするものだろうが、
なんとなく自分たちの区切りにはいいと思った。
グラスを持ち上げて、貴方に持ちかける。
(-445) 2023/09/22(Fri) 21:54:40

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「え、ほんと? じゃあおしえて!」
「作ってもらうばっかりもくすぐったいからさ。
 オレも作れるようになったら作りたい」

冗談、だとは受け取ることはなく。
貴方が少しでもその未来を描いてくれているならと男は笑った。
……が、続く、ナイショの一言を聞けば少しだけ頬を膨らませる。

「弟に内緒にするんだ〜」

意地悪な言い方だ、とはいえ本当に拗ねたのではないのだけれど。
代わりにぐいぐい……と寄せた頭で貴方を押すようにしていた。

そんなもちゃもちゃとしたやりとりののち、カウンターに置かれたグラスホッパーに気が付けばきらと目を輝かせて。

「わ、ほんとうに緑」

つん……とグラスを謎に突いて感動の声。
そのままそろっとグラスを持ち上げて飲む前に。
誘いを持ちかけられるときょとんと眼を丸くして貴方を見上げる。
込められた意図に気が付けば目を細めて、無意識に微笑んでいた。

「うん。
 じゃあ〜えっと……
 ……兄弟になった日に、乾杯?」

小首傾げつつ、こつん、貴方のグラスと己のグラスを合わせてみる。
改めて口にしてみるとなんだかやっぱり恥ずかしいな。
つい感じてしまえばそそくさと誤魔化すみたいにグラスに口をうけて一口。
思っていた以上にチョコミントだったので感嘆の声よりもいっそ、「えっ……」という動揺の声が出ていたとされる。
(-457) 2023/09/22(Fri) 22:45:34

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「作ってくれんの?なんだ、嬉しいな……教育しがいがある」

何を教えてやろうかな、なんて企みも出てきた。
無論変なものを教えたり嘘を教えるつもりはないが、
自分の好物を貴方に作ってもらうのも、また乙だと思ったのだ。

「そーでーす。オレは弟にもナイショごとがありまーす」

さして痛くもない圧力にささやかな訴えを感じつつ、
言えないことは言えないのでしょうがないのだと開き直る。
これ以上の誤魔化し方もわからないし。

下からの目線に目線を合わせ、
目を細めればタイミングはほぼ同時か。
そうだよ、と言外に語って自分も笑う。

「おう。乾杯」

カチン、と透き通った音。
バーに相応しい乾杯のシルエットがカウンターの上に映る。
横目に映ったその影が、ペパーミントの揺らぎが、貴方の微笑みが、約束の形としてずっと記憶に残ればいいと思った。

口を付ければ、生クリーム由来のなめらかな舌触り。
カカオの香りとミントの香りは甘さを伴って、なるほどまさにチョコミントのようであり。

「ん。美味いなあ」

よかったな、と噛みしめるように思った。
(-464) 2023/09/22(Fri) 23:13:29

【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノ

貴方のまろい頬を涙が転がり落ちていく。
少年じみた首筋に玉の汗が浮かんでいる。
反面男は涼しげで、触れる手に熱はない。
けれど。
至近の双眸だけがめらめらと燃えていた。
獲物を見つけた猟犬のそれに似た三日月。


なんで ・・・?」

明らかに、この男は笑っている。
声だけではなく視線に滲んでいた。口の端に、鷹揚な態度に、場違いな満悦と愉楽が垣間見える。

「はは」
「お前」
「そればかりだな」

まるで父親が子どもを嗜めるような口調で言葉を紡ぐ。

「まさか本当に何も知らないのか?」

貴方の。
頬に、男の手が伸びた。


そのまま。
身を引かないなら────僅か、唇が重なって。
(-482) 2023/09/23(Sat) 0:26:16

【秘】 路地の花 フィオレ → 暗雲の陰に ニーノ

誰もいないわけじゃないのは、気配で分かる。
寝ているのだろうかとも思ったけれど、寝息も聞こえない。
今動いたのは、嘘じゃないはずだ。

「フレッド」

一歩近付いてもう一度、呼んでみせる。
答えられないのだろうか。もしかして、やっぱり酷いことをされたんじゃないかって。
泣きそうな顔で。

そうして。
か細い声を、耳が確かに拾った。
小さい子が助けを求める声を聞き逃さないように、耳で音を拾う事をずっと続けていたから。だったのかも。

「フレッド……!」

酷い声。もしかして、また熱を出しているんじゃないのかな。
沢山の心配事が過る。
だっていつもなら、私の声を聞いて。喜んで寄ってきてくれるはずだから。

今は、自分と弟を隔てるものがとても分厚く感じる。
今すぐにでも駆け寄ってあげたいのに。
(-507) 2023/09/23(Sat) 2:01:18

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

教えがいが出るなら何よりだなって。
嬉しいを素直に形にしてもらえたことに、こちらの胸にも嬉しさがまたひとつ。

「じゃあオレだって内緒するし〜」

何の張り合いだろう。
でも、貴方に言えないことがあるのならそれでいいとも思っている。
その裏にあるものがなんだって変わらない。

きれいじゃなくても、あなたがだいすき。


合わさる視線の先にはきっと己と似た表情が。
通じ合っているみたいでしあわせだった。

「……すっごくチョコミント。
 でも、うん、おいしい」

これまでに口にしたカクテルのどれよりも。
甘くて、おいしくて、忘れられそうにない。
……ううん、忘れたくないのだと思った、ずっと。

[1/2]
(-561) 2023/09/23(Sat) 9:29:36

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ


──そうやってもう少しの間、お酒を飲んだのち。

貴方の隣に出来上がっていたのは、どっぷり酔ったらしい弟の姿だった。

「……あはは、ねむた〜い……」

普段からそうお酒を嗜むことがない身体に、度数の高いお酒を入れ続けていたらまあこうもなる。
触るのが苦手、とはいっていたが、元々そうでなければくっついているのが好きなのだろう。
ずっともたれかかったままだ。むにい。

「ねていい〜?」

赤らんだ頬に、浮かべる笑みはへにゃへにゃと蕩けたもの。
そんな状態で貴方を見上げ、首を傾げてたぶんだめそうなことを尋ねた。

[2/2]
(-563) 2023/09/23(Sat) 9:30:31

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ

笑っている。
こわい。

愉しんでいる。
こわい。

声にはまだ優しさと暖かさが残っているようにも思えるから。
だからもっと、こわかった。

そうして、指先が。


「ほんとに、し、らな、」
「ん」


肯定の意は最後の一音まで紡がれずに。
ふれる、唇にやわらかな、

「……?、??」


まるでその刹那だけ痛みを忘れたみたいに。
大きな瞳を丸くさせて、呆けた表情で貴方を見つめ。
何をされたのか分からない、そんな目をして。

けれど。
すぐ、理解する。

──くちづけ、だ。


[1/2]
(-567) 2023/09/23(Sat) 10:01:08
ニーノは、家族以外に触れられることが、こわい。
(c26) 2023/09/23(Sat) 10:01:44

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ


「…………ぁ、」


理解したと同時に、青褪めてゆく。
ちいさなころ、なんども、なんども。

身体があついのに奥底がつめたい。
いやだった、きもちわるかった。

「ゃ……だ、ゃ……っ」


声は幼子が駄々を捏ねるそれとおなじだ。
引き剥がすために動かそうと、意識した手には未だペン先が突き刺さったまま。
あつい痛みを脳が再度知覚し始めればまた涙が溢れる。
だって、こんなのなおさら、わけがわからない。

「な、ん……で…………?」


──どうして今、
そんなこと
ができる?

わからない、貴方のことがなんにもわからない。
鼓動が煩いのが痛みのせいなのか、恐怖のせいなのか。
或いはそのどちらもか。
"
たすけて
"と、音も無く唇が動いた。

[2/2]
(-568) 2023/09/23(Sat) 10:04:26

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「なーにをナイショにすんだよ」

そんなもんあんのか、と肘で小突いた。
あったとしても責める気は無いし、聞き出す気も無いけど。
人に触れられたくない部分があるのは、
当たり前だと思っているから。

爽やかで、まったりとして、甘やかで。
たまにはこういう時間も悪くないと思った。

『幸せ』に後ろ指を指されている。
お前にそんな資格はないと。早く孤独を思い出せと。

今はその声を、無視することにした。


(-577) 2023/09/23(Sat) 10:36:08
 


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