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【赤】 ルビーの花 アルレシャ/* オッス! オラ狼! エピローグを目前にした襲撃について、現状相談事がありますの。 というのもその原因のガンガン一端ではあるのですが、このタイミングで墓下に来るとエピローグの語りに困る人、或いは今の流れに突っ込むと様々な事情により身動きがとれずみんなでエピローグに参加するのが難しくなってしまう……などの人がいらっしゃると思うんですのよね。 今の状態でランダムに襲撃先を選ぶと芳しくないのでは? というのが要点です。 パスするか、それとも快諾してくれそうな方(キエとか)(失礼)にお願いするかにして、 ランダムで行う以外の方法を取れないかと模索しています。 いかがでしょうか? (*21) 2021/07/08(Thu) 23:15:31 |
【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ唇で確かめ、歯で千切り、舌で潰して、喉奥へと落としこむ。 「……、ぅ…………っ、……ッ!」 知りたくなかった。感じたくなかった。 その意思を嘲笑うかのように自分の身体は的確に感触を伝えてきて、脳は嫌でもその食材の輪郭を捉えていく。意識したくないと考えれば考えるほど、その存在感は主張し始める。 悲鳴を上げ始める心と裏腹に舌や鼻は甘美な味を伝えてきた。まるで麻酔のようだと思った。 眼前と口腔に広がる事実から逃げたくて、意識を逸らそうとして──目に入れてしまう。 最上のご馳走となった人間が並べられたその向こう。食卓を挟んだ先にいる、一人の生きた女。 ベビードールという頼りない布の下にある……あたたかいからだ。おそらく今口にしているものと同じものが入っているであろう器。 想像してしまう。 同じ人の形をした生き物が、丁寧に料理へと昇華されてしまう様を。 「──ッ、ぅ、っ……んぐ、……ゔ……!」 スプーンを持つ手と反対の手で口元を押さえる。 腹部、胸、喉奥から何かがせり上がる衝動。それに耐えれば耐えるほど、代わりに濁り切った深緑色の瞳の表面に水の膜が張られていく。 そうして体の中でせめぎ合う美食への快楽と事実への苦悶を味わい……女は、時間をかけて己の口内を空にした。 「…………ぅ、……あ、ア、グラトニー……これ……何…………?」 彼女の好みは、アミルスタン羊。 それが意味するものは、つまり。 (-107) 2021/07/08(Thu) 23:47:15 |
【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダルおいしいでしょう、と女は笑った。貴方が食事するさまを、演劇でも眺める様に目を細めていた。 一挙手一投足、瞼の震えから喉の上下に至るまで、何を思い器官を動かすのかをよく観察していた。 ほのかな高揚が目元をほんのりと赤く彩って、目尻に潤いを湛えている。 貴方が食事する様子を見て、興奮しているのだ。 「就業者である貴方と食事する機会なんて、なかなかなかったものね。 ……おかしなことを言うのね、『エンヴィー』。わかつてないなんて、顔してはいないわよ、貴方。 確証をほしがらなくても、それが何かなんてわかっているのでしょう?」 指先のひとすじに至るまで洗練された手が、白く塗られた爪が食器を手に取った。 曇りもなくよく磨かれた銀のフォークが、ちょうど人差し指に沿わせる様に手の中に収められる。 トントン、とフォークを持った一本指で、アルレシャは自身の側頭部をつつくマネをした。 「これで共犯ね」と、嬉しそうにころりと首を傾げて見せた。 おめでとう、貴方はもう知らなかったいつかには戻れない。 (-128) 2021/07/09(Fri) 9:01:29 |
【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ「、」 ぽろ、と瞳に留まり続けた涙が一粒頬を滑り落ちる。 再び胃の腑から込み上げてくる嘔吐感を握りつぶすように空いた手で己の胸元を掻きむしり、不規則な呼吸を数回繰り返す。 「……しりたく、なかった」 食べた部位の事?違う。それは自分から尋ねてしまった。 食べさせられたこの結末の事?違う。それはこの食卓が用意された時、或いは"暴食"の報酬の話の時点で薄々可能性を感じていた。 では、何を知りたくなかったのか。 「私と同じ人間が……っ、嫌でも美味しいと感じる味をしていたなんて、知りたくなかった……!」 人を食したその舌から言葉が飛び出したのを皮切りに、濁り切った瞳から続けて涙が溢れて止まらない。 これが席を立ちたくなるほど異臭を放つものであったなら。 これが嚥下できない程不味いものであったなら。 女の望みと裏腹に、自身さえも騙り続ける女の心とは反対に、彼女の味覚と嗅覚は用意された食事を正しく評価する。 「…………『グラトニー』。君、は……君は。 例えば、つい最近楽しく話をした隣人を食べることはできる?美味しそうという基準以外に、食べる人の条件はある? 人という生き物を……どう思っている?」 ぐすん、と鼻を鳴らしながら問いを投げる。責めるわけでも怒りを叩きつけるわけでもない。ただ純粋に湧き上がる疑問だった。 (-134) 2021/07/09(Fri) 11:16:35 |
【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダルゆうゆうと自分は料理の片割れを食べ進めていく。がっつくわけでも避けるわけでもなく、当たり前に。 時折薄琥珀色のリースリングを傾けると、口の中のコクをドライなテイストがすっきりと洗い流す。 そうするとまた、新鮮な味わいを舌に感じることができるのだ。 「これでも個人差があるのよ。動物と同じ。 去勢していない雄は固くて不味いし、食生活だって肉質には関係してくるわ。 それでも部位によっては若い雌ならば十分に口にするに値するときもある。 遠い東の国ではオランウータンの唇の蒸し物が美食の極の一つとして珍重されるのですって」 どこか答えになっているような、なっていないような、躱すような言葉を並べる。 そばに居る従業員は黙ったままだが、動揺は所作には見られない。 彼女もまた、この行為を平然と見下ろしているのだろうか? この二者と貴方との境界線はなんだろうか? 「ひとはひと。私は私。貴方と同じよ。特に変わった線引きなんてないわ。 貴方が人を妬む時に自らにとって対象が自然とめざましいものを持つ者であるように。 怠惰がコトを放棄するときに、自分ばかりがそれ以上の損害を得る様な打ち捨て方はしない様に。 色欲が自らを貶め美意識にそぐわないものを自然と選ばない様に。 憤怒が自らにとって少しばかり引っかかっても腑に落ちないことのないような指標を持つ様に。 強欲かいかに不要なものであっても、他者の目を一切引かないものは自然と選ばない様に。 傲慢なるものが進んで自らを顧みてしまう様な落とし穴には、望んで足を踏み入れることのないように。 べつに、本当は、なぁんにも特別なことではないのよ……」 苦悶すべきことはないのだ。咎められる一線すら、本当はあやふやに滲む境界なのだ。 私たちは同じもの出来ている。受け入れて仕舞えば、なんてことはないのだ。 明確な表裏などはなく、欲した悪徳は本性などといかめしく睨みつける様なものでもない。 それに人の心が耐えられぬから、悪徳だなどと名をつけるのだ。 (-151) 2021/07/09(Fri) 12:51:46 |
【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダルあ、と急に声をあげる。 普段通り、茶目っけを滲ませるような若々しい表情に顔をひたし、 飲み干したグラスに改めてワインを注がせた。 「乾杯をし忘れていたわね、いけないわ。サプライズに気がいってばかりいたわね」 すすいと女のグラスが前に進み出た。 白い湖面を通して、ルビーの瞳が貴方に笑いかける。 「乾杯、ようこそ。ディーラー・サダル」 夜は無常なほどに更けていき、悪徳から目を逸らすだろう。 (-152) 2021/07/09(Fri) 12:52:13 |
【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ「特別なことではない……」 自分の視界を狭める隔たりを取り払う。雁字搦めの価値観を解し、投げ捨てる。 自らが抱えているものは業であると、悪であると、そう名付けて自虐することを放棄する。 そうすれば自分は貴方のような強い人間になれるのだろうか? 貴方は己のことを強い人間だとは思っていないのかもしれない。ただ、人より境界線が薄れた器で、あらゆるものを受け止めているだけなのかもしれないけれど。 「…………むずかしいよ、アルレシャ」 女はまだ全てを受け入れ飲み干すことが出来ない。 幾ばくかの隔たりの向こう側で、女は困ったように首を振る。 ……ただし。 ▼ (-158) 2021/07/09(Fri) 15:40:53 |
【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ「……うん」 一口食べてしまった。 もう脳が味を覚えてしまった。 後戻りできない一歩を踏み出して、確かにその境界線は食べる前より薄れてしまった。 自分もまたグラスを掲げて貴方に応じようとする。 それからもまたどれだけ目に涙を溜めようがどれだけ嘔吐こうが、用意されたものを残さず食べようとするだろう。 だって、貴方が羨ましくて 「………………乾杯」 貴方が妬ましいから。 そうして、夜は過ぎてゆく──。 (-159) 2021/07/09(Fri) 15:41:43 |
【置】 ルビーの花 アルレシャ幕が下りる。酒と香水の匂いの中、あぶくのように拍手の音が爆ぜた。 天鵞絨の目隠しの前で、はだかの王は深々と頭を下げた。 豪奢な宝石、真っ赤なルージュ。役者が見窄らしくては務まらない。 ほとんど何にも隠されない乳房と男性器を備えた真っ白い象牙の身体は、きらきらと七色の照明を受けていた。 船旅の中でいつの間にか並び立つ同僚たちは壇上を降りてひまったが、女は隣に在るものがいるように横に手を伸ばして頭を下げた。 舞台劇の終わりに、演者達が揃って挨拶をするかのように、両手に虚空を握り締めて。 「本日はわれらのショウをご覧いただき、ありがとうございました。 もうすぐ海の上で揺られるのも終わり。地上に足をつけるのは名残惜しくなってしまったでしょうか? なんなら、もっと船にいらしたって構いませんよ!」 どっと笑い声が溢れた。迫力のあるショウが途切れて、客達の心も緩んできているのだろう。 短い口上に耳を傾けながら、どれほどそれを確かに聞いているのか。酒気に霞んで、本質は見えない。 「カッサンドラはみなみなさまの再度の乗船をお待ちしております。 耳を傾けられぬひそやかな予言が、皆様の娯楽となりますように。 笛吹き男の演奏が、皆様の大切な人を攫っていってしまいませんように。 またの機会に、われらの姿をご覧にあれ。 それでは、これで、本当にさらばでございます」 パラパラと降り注いだ拍手はやがて大嵐となり、すべての演者の頭に届くことだろう。 舞台に上げられたもの、舞台を知らぬもの、舞台を見つめるもの、舞台を探すもの。 けれど此度の演目は、これにて、きっかり、ほんとうに、お終い。 (L4) 2021/07/09(Fri) 19:59:08 公開: 2021/07/09(Fri) 20:00:00 |
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