22:45:14

人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:人

全て表示


【人】 軍医 ルーク


   ――… ット、


  “ ルークの声は、絶対に聞き逃さないから。”
 

   シュゼット!!!


[ 残されたすべての力を振り絞り、叫ぶように、
 ―― その名を、呼んだ。]**
(85) 2020/05/28(Thu) 1:57:37

【人】 軍医 ルーク

[ 蛇型が開いた口の中に、赤い光がぎらりと輝く。
 それは煮え立つように煌々と光を集め、放ち、
 その光は徐々に、赤色から白色に変わってゆく。
 ひどく異様な色をした光だ。
 その威力は分からずとも、本能的な恐怖が全身を貫き、
 瞬間が凍り付く。

 瓦礫に挟まれた足が動かない。
 もし今この足が抜け出せたとしても、
 あの砲撃から逃げ出すことは敵わないだろう。

 そのとき――…、
 聞こえてきた“
”に、目を見開いた。
 それは、一瞬のこと。
 触れれば直ぐに飛び去ってしまうほどの、ほんの刹那。

 ずっとずっと聞きたかったその声が呼んでくれた、
 自分のほんとうの名前。
 その音が心臓を強く揺さぶり、
 鼓動がひとつ、全身を貫くように強く脈打つ。
 身を起こし、その声の聞こえた方角を、真っ直ぐに見た。]
(128) 2020/05/28(Thu) 23:10:01

【人】 軍医 ルーク

[ 離れているはずの距離が、ひどく間近に感じられて、
 遠くにある赤い目が、直ぐ目の前にあるようで。
 
 いつかの医務室で、互いの鼓動が聞こえる距離で、
 その目を見つめていたときのことを、思い出した。]



[ 彼の義手の右腕が、
 機獣へと真っ直ぐに、突き出される。]
 その唇が、“ごめん”と紡ぐ。]



     [ その瞬間、理解した。
      だめ、と、青ざめた唇が震える ]
(129) 2020/05/28(Thu) 23:11:13

【人】 軍医 ルーク

[ 幾つもの記憶が過る。

 それは、この戦いが始まるとき、
 外壁にいる自分に向けて、ここに居ると教えてくれるように、
 大剣を掲げてくれた、姿だとか。>>31

 医務室で、通信機を探しに行く道行きで、
 幾度となく感じているようだった、
 記憶の予兆の頭痛。
 
 義手を使えば、どうなってしまうか分からない。
 それなのに、彼は最後まで、
 『使わない』と言おうとはしなかったんだ。]

   
     駄目…!!!!!


[ 喉を引き裂くほどに強く、強く叫ぶ。
 その叫びすらかき消すように、飲み込むように、
 義手へと収束した光が膨れ上がり、
 視界を白く染め上げてゆく。
 そして、開かれた機獣の顎から光が放たれる、その寸前、

 義手から放たれた一撃は、
 過たずそのコアを一閃に穿った。]
(130) 2020/05/28(Thu) 23:11:56

【人】 軍医 ルーク

[ ぺんぎんを抱え込み、身を伏せた背の上を、
 爆風が吹き抜けてゆく。
 目は白い光に眩み、何も見えない。

 爆風に吹き飛ばされた瓦礫が、
 先程の攻撃で崩れかけていた建物の外壁を打ち、
 がらがらと破片が崩れ落ちる音がする。
 けれど、それは耐えられない衝撃ではなくて、
 なにひとつ、自分の周囲に、落ちてくることはなかった。
 

 顔を上げる。
 眩んだ視界の中、影絵のように蠢く大蛇の姿がある。
 それはゆらり、と大きく左右に揺れて、
 コアを貫かれた機獣はのたうつことすらせずに、
 その鎌首を建物の一つに預けるようにして、傾いてゆく。

    
ン…、と、

 ひどく重いものが斃れる音が、聞こえた
 最早動くことのない残骸となったそれの行方を
 目で追うことすらせず、
 辺りを見回し、必死で赤い姿を探す。]
(131) 2020/05/28(Thu) 23:13:19

【人】 軍医 ルーク

 
   ――…!


[ 此処からは遠く離れた場所に、倒れ伏す赤い姿を見つける。
 ぴくりとも動く様子はない。
 どきり、と、また一つ鼓動が跳ねる。]


  嘘……、


[ 茫然と、音を吐き出して。
 這うように、両腕に思い切り力を籠める。
 一つだけ幸いしたのは、
 今の衝撃で足を挟んでいた瓦礫が再び動いたことだ。
 挟まれていた義足を引き抜けば、
 折れて捻じれたそれは足としての体を為さず、
 動かそうとしても、棒切れのように動かない。
 残った片足で歩こうとしても、
 直ぐに足を取られてぐしゃりと土に転んだ。

 この調子で歩いていくよりは――、と、
 両腕と片足で、這うように前に進む。
 基地の喧騒が遠くに聞こえる、
 まだ遠くに響く戦闘の破壊音も、何もかも。]
(133) 2020/05/28(Thu) 23:15:05

【人】 軍医 ルーク

[ 飛び散った硝子の破片が、砕けた瓦礫が、
 ずるずると這う両腕を裂いていくつもの傷をつけてゆく。
 痛みも、何一つ気にならなかった。
 この手足の歩みの遅さが、
 これほどまでに歯痒かったことはない。
 心臓を鷲掴みにされたような恐怖の底で、
 懸命に這って近づく。]



  シュゼット!!
 

[ 漸く近くに辿り着き、肩に手をかける。

 消された日記の内容を知ることはない。
 けれど、ひどく不吉な予感が黒雲のように心に広がる。]
(136) 2020/05/28(Thu) 23:17:21

【人】 軍医 ルーク


[ 彼は最初の襲撃で、義手を使って機獣を葬った。
 そのことは、話してくれた通りだ。
 そうだ、そして、
 “そのあと記憶を失った状態で発見された”。

 その後も義手を使った反動は、
 その都度大きなダメージとなっていたはずだ。
 過去の記憶を運んでくる頭痛は、今もその身を蝕んでいる。
 そのような状態で、あれほどの威力の一撃を放ったなら? 

 かたり、震える手。
 白く色を失った唇が、声を失う。
 言うことを聞かない全身が、崩れ落ちそうになる。]
(137) 2020/05/28(Thu) 23:17:34

【人】 軍医 ルーク


   嫌…、やだ、


[ いなくならないで。
 置いていかないで、お願いだから、
 泣き出して、縋りつきたくなる。

 恐怖は別離の姿をしている、
 それは、ひと一人の亡骸にしてはあまりにも小さく軽い
 遺体袋の傍にあった、一枚だけの家族写真のかたち。
 赤く染まった小さな手のかたち。
 赤く、赤く、広がってゆく血の沼の底に手足を絡めとられ、
 叫び出しそうになる。


 ――それでも、]
(138) 2020/05/28(Thu) 23:19:23

【人】 軍医 ルーク


  ――、
  君は、医務室から救急キットを持ってきて!
  前線に従軍する連中が持ってる奴だ、
  三番の棚にある!


[ ぺんぎんにそう頼み、全身の力で彼の身体を仰向けにして、
 口元に耳を寄せ、呼吸を確かめる。
 此処まで手当一つすらせず駆け抜けてきたのだろうか、
 全身が傷だらけで、血まみれで、>>103
 今は吹き飛ばされた衝撃で打ち付けた傷もあるだろう。

 呼吸は問題なし、
 続いて直ぐに止血が必要な傷の有無を見てゆく。
 ぺんぎんが戻ってくるまでは当座の応急処置で問題ないだろう
 ――体のほうは。
 フードを、ローブを脱ぎ捨て、引き裂き、
 手早く止血をしてゆく。]
(139) 2020/05/28(Thu) 23:19:32

【人】 軍医 ルーク

  ……、
  約束した、そのときは、手を握ってるって。
  起きて。


[ 震える手を励まして、動かない左手を取る。
 この両手で、包むように。
 ――… どうしようもない恐怖に、飲み込まれそうで。
 出来るなら、自分のすべてで、
 繋ぎ止めることが出来たならと、そう思うほどだ。

 ごめん、と、悲しそうに笑った笑顔が瞼に蘇る。
 これまでにくれた、幾つもの笑顔だとか、
 医務室で過去を告げてくれた日の泣き顔、
 手を握ってくれた、穏やかな笑顔、
 いつもの医務室で自分が脅かしたときの、
 何をされるのかと震える耳だとか――…
 通信機を探しに行ったあのとき、
 飴をくれたときのこと。

 そのような、ひとつひとつの瞬間まで。
 この身体を、伽藍洞だった心の中を、
 いつの間にかこんなにも、君が満たしていた。]
(140) 2020/05/28(Thu) 23:21:08

【人】 軍医 ルーク

[ その一つ一つの瞬間が、かけがえがなく、
 失うことなんてもうとっくに考えられなくなっていて――
 心にも命があるのなら、
 途切れて失いかけた心に灯されたそれはきっと、
 わたしの命だったことだろう。
 
 一緒にいたいと望んだ心に名前なんて付けられないと、
 いつかのわたしは日記に書いた。
 自分のすべてのように心を満たし、溢れ、
 あたたかく、時に失う恐怖に慄き血を流す感情に、
 名前なんて付けられずにいた。
 
 けれど。

 ――… その“名前”が何だったか、
 “気付いた”いま、
 もう遅かったなんて、絶対に絶対に、認めない。

 途切れた心が、糸を結ぶ。]
(142) 2020/05/28(Thu) 23:22:06

【人】 軍医 ルーク


  起きないと、苦いもの、飲ませるって言った。
  ぺんぎんの持ってきてくれる
  救急キットに入ってるかな。
  それか、甘いシロップの方がいいのだっけ?
  残念、いま、ここにはなくて。

  ……この感情に名前なんて付けられないって、
  わたしは言った。
  でも――… いまは、そうじゃない。


[ かみさま、という存在は知らない。
 祈りをささげるものはいない。
 けれど、いま、願うことはひとつだけ。
 眠る頬に、片手を当て、そっと屈みこむ。

 ――さあ、ほら、早く起きないと、
 酷いことをしてやる。]
(143) 2020/05/28(Thu) 23:22:53

【人】 軍医 ルーク

[ 義手を使ったのだ、今までのことを思うなら、
 身体もろくに動かないに違いない。
 頬に当てていた片手を今度は背に添えて、
 身体を支え、地面にそっと寝かせる。
 そうして、自分もすっと体を落とし、
 胸の上――心臓の辺りに、白い耳を寄せた。]


  ……よかった、本当に。


[ その鼓動の音ひとつ一つを、大切に、確かめるように。
 白い尻尾が嬉しそうにゆらり、と大きく揺れる。
 そうしているうちに――こう、

 
自分が何をやらかしたのか、不意に、実感が。
]
(198) 2020/05/29(Fri) 21:26:01

【人】 軍医 ルーク

[ あまりにも必死だったし、
 あまりにも、こう、
 好きでどうしようもないというのが溢れたというか。]


  ――… !
  顔、絶対、今見ちゃだめだ


[ 心臓が早鐘を打つようにどきどきと走り始めて、
 頬に血が上り、かっと赤くなる。
 顔を隠すように、その胸に顔をさっと埋めたけれど、
 尻尾は大きく忙しなく振れて、
 ぴたんぴたんと左右の地面を打っている。
 自身の鼓動の音も、
 これ外に聞こえてしまっているのでは――? 
 というありさまだから、
 自分がどんな状態であるかなんて、
 きっと、筒抜けだったことだろう。]
(199) 2020/05/29(Fri) 21:27:34

【人】 軍医 ルーク

[ 暫くぴたんぴたん言っていた尻尾がようやく落ち着いたころ、
 顔を上げ、辺りを見渡した。

 中庭まで侵入を果たした蛇型が撃退された今、
 防衛部隊は外壁の防衛に総員で当たっているようだった。
 前線の戦いもまだ、終わってはいないだろう。
 
 崩れかけた建物からわらわらと出てきたぺんぎんたちが、
 互いの無事を確認するように、
 駆けまわっては鳴き交わし、
 中の何羽かが、崩れた外壁の隙間から、
 鈴なりになってひょこっと外を覗く。
 やがて中に振り返り、ぐっ、と片方の羽根を上に突き出した。
 中にいたぺんぎんたちが、歓声を上げて跳ねる。]


  状況は、悪くないみたいだな。
  良かった。


[ 外にいた虫型がここまで入って来ることがあったなら、
 足が動かなかろうと、例え千切れようと、
 彼を引っ張って、
 一緒に安全な場所まで動こうと思っていたけれど。
 あの様子なら、その心配はなさそうだ。]
(200) 2020/05/29(Fri) 21:29:19

【人】 軍医 ルーク


  医務室まで運べればいいんだけど、
  わたしも足が動かないんだ。
  いま、ぺんぎんに
  救急キットを持ってきてもらってるから、
  それが届いたら、ちゃんと手当てする。


[ そうして、ぺんぎんの一羽を呼び寄せる。]


  頼まれてほしいことがあるんだ。
  倉庫の方に詳しいぺんぎんがいたら、
  直ぐに使えそうな義足を調達してもらえないかな?
  いまだけ使えればいい、どれだけ旧式でも、
  兎に角歩ければ。
 

[ 医務室でちゃんと彼の手当てをしたい。
 それに、戦闘が終わったなら、そこからが自分の仕事だ。
 これだけの規模の戦闘だ、
 被害を楽観するわけにはいかない。
 基地内の損害も相当なもののはず。]
(201) 2020/05/29(Fri) 21:31:24

【人】 軍医 ルーク

 
  前線の方もあの様子なら大丈夫そうだ。
  もし君の部下にケガなんかあったとしても、
  そのときは、治すから。
  まあ、葬儀屋に担当されたら
  悲鳴上げる奴も多いかもしれないけれど、
  この格好なら、誰かも分からないだろうな。


[ いつものローブは脱ぎ捨てて、耳と尻尾を露にして、
 長い豊かな、赤みがかった金の髪が
 背中にゆったり流れている。
 医務室の“葬儀屋”とは簡単には結びつかないだろう。]
(202) 2020/05/29(Fri) 21:33:00

【人】 軍医 ルーク


  ……覚えていてくれて、
  ほんとうに、良かった。
  信じてた。
 

[ 帰ってきてくれるのだと、そう信じていた。
 けれど、それでも、義手砲を使った彼の、
 ごめんと告げた表情は、動かなかったその姿は、
 凍り付くような、耐えられないほどの恐怖だった。]


  一緒にいられることが、
  わたしの幸せだから。
  
 
[ もし万一、彼の記憶が失われていたとしても、
 自分はきっと、変わらずにずっと傍にいて
 支えたいと願っただろう。
 それが、自分の心まで一緒に、
 砕けてしまうほどの悲しみだったとしても。
 
静かな水の底で、呼吸が出来ずとも、寄り添うように。

 いま失われずに傍にいてくれる幸福を、
 かみしめるようにつぶやく。]
(203) 2020/05/29(Fri) 21:35:00

【人】 軍医 ルーク


  でも、それだけじゃなくて。
  君がここで手に入れた大切な記憶を、
  無くさずに、持っていられたことが。
  良かった……
  もう、二度と寂しい思いなんて、
  してほしくなかったから。


[ ひとりきりで、人が死に絶えた世界を歩き、
 大切なひとたちを守っていた兎の写真を宝物にして、
 何処かに、生きているひとたちが暮らしている、
 そんな場所を夢見ながら、
 辿り着いたこの場所で、皆を守り続けた、そんな君が。
 その大切な思い出を、今もその両手に持っていることが。

 またひとりきりになってしまうことなく、
 なにひとつ手放すことなく帰ってきてくれたことが、
 泣きたくなるほどに、嬉しくてたまらない。]
(204) 2020/05/29(Fri) 21:35:53

【人】 軍医 ルーク

[ 医務室の、いつも一緒にいるぺんぎんが、
 救急キットを持って駆けてくる。
 飛べないぺんぎんは、いつも基地を走り回るうちに、
 いつの間にか足が随分強くなっていたらしい。
 瓦礫や尖った破片を器用に避けながら、
 ぴょんぴょん跳ねてこちらにやって来る。
 救急キットを受け取り、わしゃりと頭を撫でた。
 
 自分の傷は、不衛生にならないように
 血や埃をぬぐって止血を施して。
 手早く彼の手当てに取り掛かる。
 先程は当座の止血を施した傷を、ひとつひとつ、
 消毒してガーゼで覆って包帯を巻いて。
 そうして治療を終えたなら、ようやくほっと息をついた。]


  あとは、戦闘が終わるまで…


[ ここで待つしかない。
 外壁の向こうから聞こえてくる音は、
 徐々に戦況の変化を告げている。
 機獣の攻撃と思しき破壊音が、減っていた。]
(205) 2020/05/29(Fri) 21:37:14

【人】 軍医 ルーク

[ 基地に人が戻ってくるまで、
 自分の力で医務室まで運ぶのは無理だから、
 少しでも楽な態勢を――と、辺りに視線を落とす。
 普通の脚なら、枕にということも出来たのだろうけれど。
 生憎金属だし、片方は壊れているし。
 ローブもずたぼろに裂けて血と埃に塗れている。
 タブレットはローブの懐にあって、
 壊れてはいないはずだった。
  
 そこで、ふと。]


   ……


[ ゆらりと揺れる、自分の尻尾が視界に入る。
 互いの身体を動かし、彼の首から上を支えるように、
 よいしょ、と自分の白い尻尾の上に乗せた。
 抑々狐はよく尻尾枕をする生き物である。
 重くても、大丈夫。

 尻尾に触れられることに慣れていない頬は、
 微かに赤くなりはしたけれど。
 ふかふかでふわふわの尻尾は、
 地面でそのまま休むよりは、身体が楽になることだろう。
 兎に角それが一番の理由ではあったけれど、

   ――… 自分もそうしたかった、というのは、
        内緒だ。]*
(206) 2020/05/29(Fri) 21:39:10

【人】 軍医 ルーク


  ―― 
司令室
 ――


[ ――それから、いくらかあとのこと。
 最後の機獣を遂に破壊したとの一報を受け、
 司令室は沸き立った。

 蛇型が外壁を破壊し中庭に至ったときには、
 窓から見える建物の向こうに首を擡げる巨大な影に、
 これまでかと悲壮感を漂わせていた兵士たちも、
 互いに肩をたたき合いながら、歓声を上げている。

 彼らが存分に喜び合うのを暫くの間眺め、
 やがて、総司令はゆるりと口を開く。]

  
   諸君、我々の勝利だ。


[ その声に、再び大きな歓声が上がる。
 それを片手で制し、部屋に居る者たちを見渡す。]
(248) 2020/05/29(Fri) 23:59:27

【人】 軍医 ルーク


  さあて、もう一仕事頼むよ。
  これから前線の兵士たちが戻って来る。
  命令は一つだ、
  いま生きている者たちを一人も死なせるな。
  念のため、大穴の観測も継続して行い、
  破壊した機獣に爆発や再起動の兆候がないかは
  念入りに確認するように。


[ 沸き立っていた空気が、その言葉に再び引き締まる。
 三々五々に散ってゆく部下たちの後姿を眺めながら、
 彼は、机の中から一冊の書類を取り出す。
 ぼろぼろの紙束を、指の先でぺらりと捲った。
 その場にいた技術班長に、振り返らずに話しかける。]
(249) 2020/05/30(Sat) 0:00:12

【人】 軍医 ルーク

  これでようやく
  次の段階への“前提条件”が整った、
  ――と言っていいかな?
  これだけの攻撃を行った後だ、
  同規模の戦力の投入は暫くは可能性が薄い、
  合っているかい?


[ 口を開いて勢いよく喋り出すジルベールの表情に、
 その予測があっていることを確認し、
 紙束に視線を落とす。
 (つまり、長話は聞き流した)]
(250) 2020/05/30(Sat) 0:00:49

【人】 軍医 ルーク

『 我々はこの地下世界を開拓するために作られた。
  そして今、彼らは我々を滅ぼそうとしている。
  目的は、まあ、想像がつくところだ。
  しかし機獣の逐次投入とは随分と効率が悪い。
  より効率を求めるなら――

  “作った段階で殺す手段を組み込んでおくのが正しい”

  実際、そういった計画はあったようだと、
  この文書は類推している。 
  ナノマシン、というのだっけ?
  組み込んだ因子に反応するそれを散布すれば、
  労せずして彼らは、我々を皆殺しに出来た。

  散布自体はあったらしいと、
  第二研究所に収容された“訪問者”は語ったそうだ。
  けれど、それは効力を発揮しなかった。
  地下の住民が設計段階で時限爆弾が組み込まれることは
  なかった、ということだね。 』
(251) 2020/05/30(Sat) 0:02:37

【人】 軍医 ルーク

[ 爆風に罅割れた窓越しに、天の大穴を見上げる。
 そこには闇があり、その向こうは計り知れない。]


 『さて、岩盤の上の世界も一枚岩ではならしい。
  そうとなれば――
  総攻撃を凌いだ今、動きようによっては、
  “交渉”の余地がある者を探すことも、
  出来るのではないかな?
  そうなれば問題は、
  誰を送り込むか、ということだが』
 
 
[ 心当たりはあるかな? と揶揄えば、
 ジルベールは目を輝かせて両手をぶんぶんと上げる。
 余程天の向こうに興味があるようだ。
 君には此処で働いてもらわなければ困るよと苦笑して、
 書類に再び視線を戻し、背もたれに背を預ける。
 最初の襲撃の後、この拠点から発見された文書だ。
 まだ論文の体すら成していない装甲、走り書き。
 けれど、此処にいた調査員であり、
 研究者である男が残したものだった。

 候補や手段、あるいはこれからの道筋も、
 考えている方策は一つ二つではない。
 その中のどれを取るかは状況次第だ。

 先程蛇型が攻撃態勢に入った際、
 窓の外を染め上げた白い光。
 それを思い出すように、黒眼鏡の奥の目を細めた。>>-314]*
(252) 2020/05/30(Sat) 0:04:34

【人】 軍医 ルーク


  ――… 君がひどいやつなら、
  わたしだって、そうだ。>>266


[ 義手を使ってまともに動くことも出来ない様子を、
 いつもなら心配でたまらなくて、
 居てもたってもいられなくなるところ。
 今だって、直ぐにでも出来るだけの手当てをしたいとは
 思っているけど、
 それでも、いまこの胸を満たすのは、
 無事に戻ってきてくれたという喜び。
 彼が彼のまま、大切なものを失うことなく、
 傍にいてくれるということへの、どうしようもない幸せだ。

 それに、泣かせてしまっているというのなら。]


  泣いてるのは――嬉しいから。
  だから、いいんだ。
  それに、嬉しい、とか、悲しいとか、
  分からなくなっていたことだから。
  …わたし、こんな風に泣けたんだなって。  
(276) 2020/05/30(Sat) 19:29:17

【人】 軍医 ルーク

[ 断ち切れたまま戻ることはない、取り戻す必要もないと、
 置き去りにしていたことだった。
 それなのに、いつの間にか。
 結びあわされた糸が、手を伸ばして再び色彩を編むように、
 取り戻されていくのを感じていた。]


  笑ったり、泣いたり――
  幸せだと思ったり。
  君がくれたもの、
  君を大切だと思うわたしが、取り戻したもの。
  だから、嬉しいって思ってくれる方が、
  わたしは嬉しい。


[ 泣きながら、息を詰まらせながら、
 子供みたいな拙い精一杯の言葉で、そんな風に伝える。]
(277) 2020/05/30(Sat) 19:29:37

【人】 軍医 ルーク

[ 腕力はないが、患者の身体を動かすコツは心得ている。
 さすがに義手の重さはどうにもならないから、
 それ以外の部位を動かすことにはなったけれど。
 先ほどまでより落ち着いた呼吸を聞き、
 此方もほっと安堵の息をつき、胸に耳を当てて蹲る。

 ――で、今になって照れが来て、
 尻尾をぴたぴた言わせていたわけだが。]


  ひどい、とか、尻尾とか……!
  そういうことを、君は…!!


[ 聞こえてきたくすくす笑いに、益々顔が赤くなり、
 尻尾がぶわりと膨らんだ。
 絶対に顔を上げるものかと、服にしがみ付きながら
 聞こえてくる鼓動の音は早足で、
 それを意識すると、また頬にかっと血が上る。
 尻尾の揺れる動きはまた少し早くなったけれど、
 嬉しそうな尻尾、と言われたなら、
 その動きも止まって、ぴーんと張りつめ、
 ぎこちなく、そろり、地面へと降りてゆき。]
(278) 2020/05/30(Sat) 19:31:31