【人】 灯守り 立春[抑揚のない小難しい単語の羅列は 子守歌よりも強力に抗い難い眠気を誘う。 緊張が解ければ忘れていた食欲を思い出して、 お腹の虫がそこはかとなく元気になってくる。 大先輩方の前で新人が船を漕ぐわけにはいかない、 ましてやお腹を鳴らすわけにもいかない。 この場にあるお茶でなんとか堪えきらなければ。 起きなきゃ。そう、例えば指をペンで刺してでも。 ゆっくりと霞みだそうとする意識と闘いながら 円卓に着席する錚々たる面子を改めて順番に眺めてみた。 お隣の雨水さんはちゃんと卒なく会合に参加している。 流石巷で大物と噂される雨水さん、謎の貫禄が既にある。 啓蟄さんと蝶さんの才色兼備な御二方は安定したお仕事ぶりで 要点もわかりやすくて得るものが多かった。 春分さんと雀さんの可憐で華やかな御二方には、元々 カフェ『陽だまり』で度々お会いしていた。 春分さんは春の統治域全体のお姉さんのような存在で 灯守りとしてはもちろん個人的な相談までお世話になっていたし、 雀さんとも、歳が近そうということで 顔を合わせる度に会話を試みていたから こうして畏まった場で同席させていただくと 改めて凄い方々なのだと思い知る。] (97) 2022/01/22(Sat) 17:11:50 |