鳥葬 コルヴォは、メモを貼った。 (a1) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:28:41 |
【置】 鳥葬 コルヴォ「結局のところ、俺は一人で生きていけるほど強い人間ではなくて」 「死んでいく人間の全てなんて、到底受け止めきれるような人間でもなくて」 「一人でも、誰かとでも、生きていくっていうのは苦しみに変わるばかりで」 「一緒に死ぬにしたって、それは死ぬ以外に選択肢の無い奴だけでいい」 「何から何まで、ただ自分の為にしていることで」 「だから俺は一人で死ななきゃならなかったんです。」 「そう思っていたんですよ」 (L7) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:30:25 公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00 |
【置】 鳥葬 コルヴォ「けれど今更になって、それも違うと気付いてしまった。」 「だから俺は、」 「あんた達の運が良ければ、その内あんた達の思う通りになって」 「俺の運が良ければ、その内俺の思う通りになる」 「どちらも運が悪ければ、どちらにもならない。」 「それでいいって事にしようと思うんだ」 (L8) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:31:12 公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00 |
【置】 鳥葬 コルヴォ最後の夕暮れ、最後の夜の、その前の事。 そして、誰かと港の埠頭で再び会う少し前の話。 僻地の廃倉庫での、誰も知る事の無い、観客の無い幕間。 「俺にとって、明日が続いていく事は苦痛だった。 いつか終わりが来る事だけが希望だった。 ……続いた先に、一握りの希望さえ信じられなかった事を」 誰にも手を伸ばす事さえしなかった者は、 何を得る事も無い。誰も悲しませたくなかったからこそ、 遠ざける事しかできなくて。誰の言葉も真と信じていたのに、 そこに希望を信じる事ができなくて。結局は最後の最後まで、 誰の手も取る事ができなくて、「 ごめんな、許さないでくれ 」この血を吐くようなひとことが、誰にも届かなければ良いと思う。 無宗教者に、懺悔する先は無い。 あてのない言葉は、人知れず夕暮れ前の薄闇に溶けて消えた。 それでいい。祈りの真似事は終わり、立って行くべき先は決まっている。 そして黒衣が翻り、重苦しい靴音の後、廃倉庫は今日もまた静かになる。 次の夜も、その次の夜も。 もう二度と、この場所で、掃除屋から誰かへの弔辞が告げられる事は無い。 (L9) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:32:54 公開: 2022/08/25(Thu) 17:00:00 |
【置】 鳥葬 コルヴォそうして、生者達には今日も変わらない夜明けが来て。 名もなき烏はもう何処にも居ない。それが全てだった。 烏は亡骸を晒さない。 人の営みから遠い何処かの夜闇にて、 ぽとりと枝から地面に落ちて、それで終わり。 烏同士は目を啄かないが、 屍となれば共食いをする。 屍は同族に啄まれ、 後には何も残らない。 事実どのような結末に至ったのかは、今は定かではないこと。 確かな事と言えば、もう誰の死を弔う事も無いという事だけ。 (L10) unforg00 2022/08/25(Thu) 16:34:11 公開: 2022/08/25(Thu) 17:30:00 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー音も無く、幽鬼じみた影が一歩、また一歩と近付いて。 それが発する声は、やはり随分と生気の削げたように聞こえる。 柔くも鋭くもなく、ただどこかうつろに底冷えしたその音を 対話とその他のどちらともつかない距離で聞いて、息を吐く。 「烏は選り好みをしない。 仕事とあらば何だってやりましょうとも。けどね、 身内の死体をどうにかしてやろうってのは、結構なことですが」 見せたくない、ではなく、見せてやりたくない。 敢えてそのような言い回しを選ぶ事から、身内のものと推測した。 それを選ぶ人間は、世に居ないわけではないけれど。 「掃除屋に処分を頼むって事が、どういう事なのか。 あんたもわかってないわけじゃないだろうに……」 掃除屋に処分される。人によっては、それそのものが冒涜になる。 持ち込まれた遺体はバラバラに切り刻まれて、炉で焼かれる。 キリスト教圏では土葬が主流で、その理由を思えば、尚の事。 「……まあ、いいさ。 それがこっちに一つとして利の無い仕事だったとしても。 死んだ奴にだって、見るに堪えない姿を晒さない権利はある」 「お時間頂けりゃ結構。どうせ後は時間潰しだ」 どこか冷めた声色は、あなたのそれとはまた異なるもの。 何ら信の置けるでもない相手からの、大した益も無い仕事。 それでも理由はどうあれ了承を返して、何処へも足は向けない。 一度相手の言葉を待つ。用事のある者は何処に、と問うように。 (-29) unforg00 2022/08/25(Thu) 23:33:58 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー「せめて人知れず葬ってやるしかない事もある」 見切りをつけたような、或いはがっかりしたような。 或いは失望か諦めのような。その焼け残った灰のような冷たさは、 何れも向ける先はあなたではないものだけれど。 それはあなたの知った事ではないだろう。その逆も、また然り。 「わかるとは言わないが、わからないとも言えやしないな」 肯定はしないが、否定もしない。 共感と理解は必ずしも片一方を伴うものではない、別々のものだ。 何れも正しくそれを行う事ができるほど事情を知りもしない。 けれど空回る思考の末に選んだその選択が、 結局は何処までも生者の自己満足でしかない事は知っている。 今更道理や正しさを説いた所で、どうにもならない事なのだと。 ただどうしようもなく、その事だけを知っている。 だから他人事の男は、他人事ゆえに肯定も否定もしない。 客観的に見て、客観的な事実だけを認めて、ただそれだけを言う。 そもそもの話、あなたの話の何処までがはかりごとでないかなど あなたと死者の間柄を知らぬ者からすれば、 少なくともこの時点では、まったくわかったものではないのだ。 (-44) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:06:42 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーけれど何れにしたって、どうだって良い事でもあって。 何せどうにもならない事なのだから、なるようにしかならない。 心の底にはいつだってそんな諦めが広がっているものだから。 リスクを、最善を、想定はするけれど、何れも信じてはいない。 尽くを失って来た人間は、何にも手を伸ばそうとはしない。 だからあなたが先に背を向けたなら、喪服姿はその影のように。 人間二人、三人ほどの距離を開けて、粛々と後ろをついて歩く。 嗚呼成る程、たしかに半分だ。 そうして開かれた扉の先。 別れ花じみた花弁と、後部座席に横たえられた女の上半身。 そんな光景を一瞥して、他人事の思考はただそれだけを思う。 名もなき烏は生者の顔など逐一覚えてはいないし、 そうでなくたって、今ここで眠る女は知った顔でもなかった。 けれど未だ記憶に新しい報告が脳裏を過りはしただろう。 それを聞いた時、思う事が無かったわけでもない。けれど。 今ここで言う事なんて、なんにもありはしない。 弔いの言葉一つ言いはしない。それは自分の役目ではないから。 (-45) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:07:22 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー悪意に晒されて、酷い仕打ちを受けて、剰え既に朽ち始めていて。 今は善意によって、丁寧に整えられて、こうして庇護されている。 それでももうどうにもならないアンバランスな亡骸。 もはや何処にも行き場の無いそれを、せめても一思いに葬り去る。 いつだって、ただそれだけが自分のすべきこと。 あなたの痩せ我慢を気にする人なんて、今は何処にも居やしない。 「……このまま俺の仕事場まで送ってもらえます? 生憎と、今夜仕事があると思ってなかったもんで。 持ち歩くのに難儀する道具は一つも持って来てないんですよ」 「用向きのある奴をこれ以上待たせるのも酷な話だ。 何より今から取りに戻って、 それを待つなんてのはあんたも手間でしょう」 運転は任せます、免許持ってないんですよ。 思い出したようにそれだけを付け加えて、 仕事場である僻地の廃倉庫の場所は簡潔に伝えられる。 この男の根城たるその場所に赴くかは、あなた次第だけれど。 それをあなたが許容するなら、二人と一人の道中は何事も無く。 やろうと思えばやれる、なんてのはきっと互いに同じ事。 掃除屋が手を出す事は無い。あなたが何もしない限りは。 今この時に限り後部座席が死者の為の寝台であるならば。 乗り合わせるにしても、きっとそこは避けるべきなのだろうな。 (-47) unforg00 2022/08/26(Fri) 22:08:42 |
鳥葬 コルヴォ(匿名)は、メモを貼った。 unforg00 2022/08/27(Sat) 2:36:40 |
鳥葬 コルヴォ(匿名)は、メモを貼った。 unforg00 2022/08/27(Sat) 2:36:57 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーあなたの素性にも、その腹の底にも、大して興味は無かった。 仮令何者であったとしても、もう誰も懐に入れるつもりは無くて。 初めから、これは何処までもそんな薄情な人間の言葉なのだから。 そのようなものが、誰の心に留まるなど期待するはずもない。 何れにしても、確かな事といえば。 あなたが何者であっても、掃除屋にとっては重要な事ではなかった。 あなたは死者の前で無粋な真似をするような人間ではなかった。 今はただそれだけが判れば十分だった。 「だが、何も得るものは無かった。」 「あんたも、あんたが手を差し伸べてやろうとした相手も。 少なくとも、あんたの思ったようなものは、何一つとして。」 死者は黙して語らない。 少なくとも、凡そ大半の人間にとってはそうだ。 ともすれば、それ以外の何かは得ていたのかもしれない。 それでも、あなたがそうして描いた望みの通りにはならなかった。 だから生者にとっては、今ここにある事実だけが全てでしかなく。 日常の中、薄っすらと死の気配が漂う車内は、静かなものだった。 死者は何も語らず横たわり、及ばなかったあなたの思慮を物語る。 後には破綻した願望の跡と手遅れの悔悟ばかりが虚しく転がって。 心の軋むようなその独白を、慰めるようなものは何処にも居ない。 その疵に寄り添うようなやさしい答えなどありはせず、 けれど、物言わぬ屍体や壁と言うには幾許か聞く耳を持って。 それを聞き届けるものだけが、確かにそこにあった。 (-72) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:02:00 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー対話とも、一方通行の話ともつかない距離感の助手席で。 夕闇の中、目的地へと着くまでの、長くも短い道中の事。 取り繕わないあなたの言葉を聞いて、息吐くように笑った。 「俺があんたの仕出かした事を幾つか知っていた所で、 今更何にもなりやしませんよ。 起きた後に何をしたって、そこには何の意味もありはしない」 「後には何も残らない。たった一つ、俺達の、後悔を除いて。」 持ち込まれた遺体に何ら関わりが無いのは、言うまでも無い事。 あなたが何をしていたとて、何もしないのも本当の事。 無い仮定として、あなたが唯一の友人を殺めていたとしても この掃除屋はきっとここで何をしようともしなかっただろう。 「…そうは言っても、腹の底も知れない人間の前で、 ちっとも構えもしないなんてのは。 それはそれで、却って疑わしいもんでしょう?」 なんてのは、今のあなたの様子を鑑みれば 随分と皮肉の利いた言葉になってしまうのだろうけど。 たとえば付け入る隙があれば、誘い込むような怪しさがあれば。 魔が差す事は、或いは猜疑が首を擡げる事はあるだろう。 掃除屋は、相手が身内であっても、それ以外であっても。 何れにしても、同じだけの線を引いていた。 互いにそれをしない為の均衡は、必要なものだった。 事ここに至ってしまえば、それも不要なようだったけど。 (-73) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:02:31 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー「結局は。さっきも言ったように、後は時間潰しなんだ」 「俺はこの後どうなろうと構いやしない。 あんたも、そこの知り合いを連れて帰ったら…… その後は、どうなるんだかな。」 回りくどく取り繕う事を止めたあなたの言葉は、 もはや殆どそれなりの事をしていると白状したようなもの。 そこには幾らかの差こそあれど、それはこちらも同じ事で そして今している事も、互いに随分と勝手な事だろう。 いったい、自分勝手に行動を起こしたツケというものは。 果たして誰にとって、どれほどのものになるのだろうかな。 結局の所、掃除屋もあなたに答えを求めてはいない。 互いに何を語った所で、恐らく殆どは互いに殆ど関係の無い話でしかなく、 だから何れに答えが返って来ようと、或いは何も無かろうとも。 きっとじきに二人と一人を乗せた車は目的地へと着いて、 そうしてきっと、この夜もまた、一つの死が葬られる。 名もなき烏の仕事場たる僻地の廃倉庫。 広くがらんとした庫内には、あたかもそこがガレージであるように 花屋のものとは違う、一台の商用バンが乗り入れられている。 暗い夜に、内部全てを照らせるだけの灯りは随分と目立つものだから。 灯されるのは幾らかの作業灯だけ。 薄暗く、人の営みの気配の感じられないその場所は、 ともすれば、その倉庫そのものが、一つの棺のようだった。 (-74) unforg00 2022/08/27(Sat) 20:03:21 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー掃除屋というものは、依頼者を取り巻く諸般の事情に対して 如何なる理由があったとて、何を言うのも褒められた事ではない。 常ならば当たり障りのない相槌を返して、それで終わる事。 けれど今そうしなかったのは、どうしてだっただろう。 何を仕出かすかわからない、という後ろ向きな信用は続いている。 随分な言い方をしている自覚も。そうなる事も予想はしていた。 さりとて予想していて何になるでもなく。一度、鈍い音の後。 口の中で呟くように、遅れて広がる鈍痛に小さくぼやきを零した。 「……気は済みました? 他人に知ったような顔をされたくなかったのなら、 あんたはそれをもっと大事にしまい込んでおくべきだったよ」 「それともあんた、俺に何か期待してたんですか?」 その後にもう一度耳障りな言葉を吐いて、今はそれだけ。 何も死者の眠るすぐ傍で口論をしようってわけじゃない。 それは直接的な暴力も同じ事で、報復に手を出す事もなかった。 わかっている。それがもはや内に抱え切れず分水嶺を越え、 心の内から零れ落ちてしまった苦悩の表出でしかない事を。 摩耗しきった精神や思考に正論は何ら正の影響を及ぼさない。 そこに何を求めていたかなんて、あなたにさえ不明瞭な事だろう。 求めるものも、今よりもう少しましな道も、きっとわかりやしないこと。 それをわかっていて、態とその事を考えさせるような事を言う。 もはや正しさでは救われも納得もできやしないのだとしたら。 そんな思考の袋小路に行き着いた時、あなたは何を選ぶのだろう。 やがては自分と同じような考えに至るのだろうか。或いは、それとも。 (-114) unforg00 2022/08/28(Sun) 23:58:47 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー今は取り留めの無い思考に考えを巡らせる猶予も無く。 それから程なくして、配達車は目的地へと辿り着いてしまう。 助手席から降りて、男が腕の中に抱え上げたものを見遣る。 既に幾らかその中身を失ってしまった、華奢な女の上半身。 仮に今ここにあるのが全身であれば、話は違っただろうけれど。 けれど半分だけのそれは、解体するまでもないと判断した。 先に倉庫内に停められていた方の商用バン。 特別用向きもなしに連れて歩くには持て余す道具の最たるもの。 火葬車のバックドアを開け、炉内から火葬台を引き出し、 先に炉に火を入れて、男の抱えた遺体を火葬台に寝かせた。 そうして遺体を横たえた台は炉内へと収められ、 それきり火葬炉の扉は重く閉ざされて。 それが彼女の姿を見た最後の光景になる。 火葬に掛かる時間は焼かれるものの体格や体重に左右される。 女性の、それも上半身だけであれば、そう長い時間は掛からない。 たとえ既にその遺体が朽ち始めていたとしても、 火葬炉というのは、焼かれる臭いは殆どしないようにできている。 やがて、きっとまだ夜が深まり切らない内に扉は再び開かれる。 炉と焼け残った灰から幾らか熱が去った頃。 (-115) unforg00 2022/08/28(Sun) 23:59:26 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー灰と、幾らか残った骨は台の上から容れ物に移される。 骨壷なんて上等なものは無いから、何とも無骨な保存缶の中。 ただ淡々と納められて、あなたの方へ差し出された。 「どうぞ。連れて帰るくらいはするでしょう」 受け取らないなら、掃除屋の方で"処分"されるだけ。 少なくとも、それはあなたの望む事ではないだろう。 未だ目に見えて、あなたの手の内に戻るものだから。 「それで。先に用があった方は済んだわけですが。 あんたはどうしたいんでしたっけ?」 受け取るにしても、受け取らないにしても。 仕事は済んだとばかりにもう一つの用は切り出される。 あなたは最初に、自分より先に用事がある、と そう言って彼女の事をこの掃除屋に任せたものだった。 であれば結局、それだけが用向きの全てではないのだろうと。 (-116) unforg00 2022/08/29(Mon) 0:00:08 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニー相手の全てなど、語られざる事など、他者に判るはずもなく。 失ったものを数えても、それが掌の中に戻る事は無い。 そしておそらく、今はもう、それらを知った所で手遅れだった。 つまるところ、全てはきっと、何ら意味の無い事で。 けれどこうして何かを選ぶことに、 僅かばかりであったとしても、意味らしきものがあったなら。 そんな届かぬ祈りじみた考えがあったのかも、最早定かではなく。 今はただ、何も言わず、あなたに干渉もしない事だけが確かな事。 軈て亡骸が形を失っても、やはり烏にはあなたに問う罪なんて一つも無かった。 結局の所は、何もかも全ては自己満足であって。 あなたを罪に問うた所で、烏は到底自分が納得できるとは思えなかった。 ああ、そう。 そうして首を振った後の返答に、ただそれだけを返して。 開いたままのバックドアの内側、火葬炉の手前。 その僅かなスペースに遺灰の納められた容れ物を一度置いて。 がつ、ごつ、重たい足音は対照的に。 あなたが訥々と言葉を語る間にも、何歩か火葬車から離れて行く。 掃除屋の仕事着が重たい理由は、数多の死を吸ったから。 そんなフィクションのような理由でなんか、あるわけもなく。 (-126) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:46:02 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーその間にも、つたない問いがただ流れていく。 それを聞いていないわけじゃない。確かに聞いているからこそ。 結句気休めでしかなくとも、仕事の場からは離れる必要があった。 両親、仲間、友達、奪われたものを奪い返すべき相手。 その内の幾許かは、或いは、あなたの手によって。 名もなき烏はおおよそあなたと同じようなものを失って来た。 けれどそれが等価であるとは思わない。 その重みは人によって異なるような、似ているだけで違うもの。 何れにしても、手の届く限りの殆どのものを失ってしまった時。 後に残された者のやりきれなさというものは、 いったい何をどうすれば納得が、満足がいくものだろう。 「本当はもう、答えは出てるんだろう。 何も変わらない。あんたの空虚は、永遠に満たされる事は無い」 少なくとも、それを埋めてやれる人間は居なくなってしまった。 「あんたは、あんたが死ぬまでそのままだ」 生きている限り、この耐え難い苦しみは和らぐ事無く続く。 その言葉を否定できる人間も、今この場には居ない。 続いた先に、たった一握りさえも希望を信じられなかった人間が 生きていれば、いつかは、ひょっとしたら、なんて。 そんな何処までも無責任な希望を他者に語れるはずもない。 (-127) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:47:26 |
【秘】 鳥葬 コルヴォ → 天使の子供 ソニーだからただの一人の死にたがりからあなたに差し出すものは、 終わった先の安息の示唆と、それに行き着く手段だけ。 喪服の懐から音も無く拳銃が抜き出され、銃口をあなたへ向けて、 「楽になりたいなら、あんたは早く死ぬべきだったのさ」 「──Addio. ソニー・アモリーノ」 同じく自らに向けられたそれに構わず、引き金を引く。簡単な事。 殺すつもりはあったけれど、生きるつもりがあるでもなかった。 名もなき烏にも、或いはそれ以外の誰かにも ここであなたを殺さなければならない理由は無かった。 死にたい人間は、死ぬしかない人間は、死ぬべきだ。 そうでないなら、せいぜい生きていればいい。 このような行動に出た理由なんてのは、そんな思想だけで。 乾いた銃声が鳴り響いたなら、それは幾つだっただろう。 がらんどうの倉庫が誰かの棺となったなら、それは誰だっただろう。 誰に何処までの言葉が届いたかも定かではない。一つ確かな事と言えば、 夜が明ける頃には何れの姿もそこには無いという事。 願わくばどうか、殺すなら上手に殺してくれ。 もしもあんたがしくじった時は、俺もそうする事にしよう。 そんな思いがあったかは、やはり誰も知らぬこと。 何せそれを語る者は、結局は何処にも居やしないのだから。 (-128) unforg00 2022/08/29(Mon) 4:50:38 |
【秘】 紅烏 コルヴォ → 天使の子供 ソニー返る言葉を聞いて、最後の一瞬。 ただ息を吐くような、音のない笑いが、銃声に呑まれて消えた。 何もかも、諦めのついたような笑みだった。 斯くして血染めの烏は地に落ちた。 或いはあなたの影法師であって、 或いはいつかあなたの行き着く姿であったかもしれないもの。 それと向き合って、それを認めてしまったから。 それがすっかり姿を消したって、もうきっとあなたの道は変わらない。 ──曰く、ドッペルゲンガーを見る事は、死の前兆なのだと言う。 (-161) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:33:12 |
【墓】 紅烏 コルヴォ返す返すも、運の無い人生だった。 望んだ事は叶わない事ばかり。だからいつしか望む事さえ諦めた。 諦めた、つもりになっていただけだった。 奪われたものは、奪い返すべき相手からは得られなかった。 未来があって欲しいと願った人々は、やはりその大半を見送る事になって。 受けるべきであった、誰かを殺めた報いを受ける事も無く。 もしも果たされる時が来るなら、ずっと先の事であればいい。 そう思って口にした、他愛無い口約束を果たす事も無かった。 見届けるべき死の全ても、その目で見届けるに能わず。 それらの不誠実を、無力を、差し伸べられた手を取れなかった事を。 誰に謝る権利が自分にあっただろうか。 わかっていて、友人の全てを徒労にし続けた自分に。 (+0) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:33:45 |
【墓】 紅烏 コルヴォけれど、いつかの昔に奪われた終わりは取り戻された。 誰かの道は途絶えても、確かにその先を歩いて行く誰かが居る。 全ては叶いはしなかったけれど、全てが叶わなかったわけでもなく。 良くも、悪くも、結局自分は何もしなかったのだから。 そんなものか、とも思う。 望む事も、望まない事も選べなかった、半端者には相応しい結末だ。 だから、見届けて来た全ての死だけを連れて。 家族も、帰る場所も、行き着く先も求めない。 名もなき烏は、何処へ行く事も選ばない。 (+1) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:03 |
コルヴォは、もう誰の元にも戻らない。きっと子守歌を聞く事も無い。 (a9) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:09 |
コルヴォは、もう誰の死を葬る事もない。その必要がない。 (a10) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:19 |
【置】 紅烏 コルヴォそれでも、うっかりいつか、何処かで再び逢う事があったなら。 誰にも許しを請いはしないから、許さなくていいから。 その時は、ただ怒ってはくれないか。 家族の望み一つ拾い上げられなかった、このちっぽけな男の事を。 (L29) unforg00 2022/08/29(Mon) 20:34:43 公開: 2022/08/29(Mon) 20:50:00 |
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