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【秘】 陽葉 シロマ → 不知 ミナイ「随分周りくどかったじゃないか。 いや、私も人のことは言えないか」 触れられた手を、そっと握る。 生者の温もりを感じ、なかった。 貴方に体温が無いというわけではなくて。 これは私が、……。 「そうだね、朝が来たらもう騙し続けるのは無理だろう。お天道様の下は、どうしても歩けなかったから」 陽光の温もりは、生者の特権。 死者がその温もりに包まれれば、たちまち焼けてしまう。 「私はね、自分が在りたくて格好付けてるんだよ。 ……しかし、まあ。 実を言うと、個人的にはもう満足してるんだ。 でも、可愛い生徒≠フお願いだから」 重なる掌は熱を持つ。まるで、この少女が焼かれているかのように。 ▽ (-187) wazakideath 2022/07/13(Wed) 11:25:39 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「……教師になるという夢を、諦めたくないのさ。 でも、生徒がいないと先生はできないだろう?」 生徒≠ヘ、一人いれば事足りる。 だから最初の一人だけでも構わないと思っていた。 けれど。 「そんな中できた初めての生徒に、皆一緒がいい≠ニ言われたら──叶えたくなってしまうというものだ」 彼は、『全員』を願った。 だから、今もこうして姿を表している。 (-188) wazakideath 2022/07/13(Wed) 11:26:41 |
シロマは、内緒話を始めた。 (a78) wazakideath 2022/07/13(Wed) 17:29:27 |
【秘】 陽葉 シロマ → 傷弓之鳥 マユミ「──だったら、マユちゃんはどうする?」 しん、と風の音が止んだ。 潜めた声は、確かに貴方の鼓膜を揺らす。 「私は、皆の意思を尊重したい。 犯人を明かして、罰を与えようと。 たとえ犯人を突き止めない選択をしようともだ」 まるで、その口振りは犯人を知っているかのようだった。 しかし今は言えない、と。 まだ庇うという姿勢にも捉えることができる。 「……その幽霊についていく意思を見せようとも、ね」 (-214) wazakideath 2022/07/13(Wed) 17:31:51 |
【秘】 陽葉 シロマ → 奔放 クリス帽子を見つけ、幾つか見回った後。 少女の姿は、屋根の上にあった。 遠くにある夜明けの気配を見つめ、ふう、と息を吐く。 数え切れない程の夜明けを見た。 しかし、これ程充実した夜は無かっただろう。 「…………どうだい、栗栖。 探し物は見つかったかな」 何処へともなく、語りかける。 (-215) wazakideath 2022/07/13(Wed) 18:02:46 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「終わりなんて無いさ。 寧ろこれから始まるんだ」 響く声に、何ら疑うことなく答える。 自身が死者として在るが故に、驚くべきことというものは数少ない。 「満たされたら、成仏?するのかなぁ……」 口振りはどこか他人事のようだった。 僅かに明るくなり始めた夜空のお陰で、少女の表情は良く見える。 しかし、その足元に影は伸びない。 「でも予想は幾つかあるんじゃない? それとも、死者の気持ちは想像も付かないかな」 東の空へ、血潮の無い手を透かした。 (-217) wazakideath 2022/07/13(Wed) 18:45:45 |
【独】 陽葉 シロマ嫌だッ俺は成仏しない 除霊ならされたい シロマの遺志関係なく存在を否定されたい 成仏は嫌だッッッッッ (-221) wazakideath 2022/07/13(Wed) 20:17:39 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「正解。 手段に関しては、模範解答だ」 手を翳しているというのに、少女の眼孔へ薄明かりが差し込む。 眩しそうに目を細めた。笑ったようにも、見える。 「私だって、生きて教師になりたかったさ。 勿論、平和な世界でね。 でも時代がそうはさせてくれなかった」 その言葉は、この亡者の生きた時代を示していた。 少女にとっての最良の結末は、時を巻き戻しても実現できない。 戦争という数え切れない程の因果を持つ歴史を変えることなど、不可能だ。 ───何かを憎むこともまた、難しい。 原因が多岐に渡る大きな歴史の渦を、渦中から観測するようなものである。 「……足りない調査は妄想で補おう。妄想で構わないのさ、筆者の気持ちなど。 他に尋ねたいことがあれば答えよう。 流石に答えを尋ねられたら誤魔化すけれどね」 (-222) wazakideath 2022/07/13(Wed) 20:41:39 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「……? まだ君は私の生徒じゃないと思うんだけど……なりたいなら、歓迎するよ」 握っていた手を離した。 どこからともなく、出席簿を取り出す。 そこには『鳥飼』『夢川』『司馬』、三名の生徒名が記入されている。 氏名が増えていないことを確認し、出席簿を閉じた。 「理想の先生は、こんなことしないさ。 でも、私はこうでもしないと約束を叶えられない。 夢の叶え方は誰しも同じじゃないだろう?」 折った細く短い枝を片手に持ち、ゆったりとした足取りで歩き始めた。 教師が教室を歩き回るように、静かな歩みで。 しかしその表情は、いつもより暗い。 ▽ (-226) wazakideath 2022/07/13(Wed) 21:24:58 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「矢張り、……生者と死者が理解し合うのは難しいんだね」 枝の先端を貴方に向けて、下げる。 その梢には、開くことの叶わなかった新芽が付いていた。 「悲しいな、嘘だなんて。 そんなこと言わないでおくれよ」 悪い事であることは否定しない。 理解した上での行いだ。 しかし──事実とはいえ。 虚構として扱われれば、誰だって虚しくなるというものだ。 それは、死者でさえも同じこと。 (-227) wazakideath 2022/07/13(Wed) 21:25:18 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「悪いね、変化は生者の特権だ。 これ以上にもこれ以下にもなれないのさ」 死とは、停滞だ。 朽ちるのは生者の記憶であり、死者は歩き出すことなどできない。 だからこそ往々にして、彼らは生者と対立し、否定され除かれてきた。 「ふむ、なんだい。 君が何かに憧れるなんて、あまり想像もしていなかったけれど」 屋根の棟に上り、そこに腰を下ろす。 立てた両膝に肘を付き、顎に両手を添えて。 雑談でも聞くような姿勢になった。 「形があるということは。きっと理想や夢物語ではなく、実在していたのだろう」 (-230) wazakideath 2022/07/13(Wed) 21:44:54 |
【秘】 陽葉 シロマ → 傷弓之鳥 マユミ「どこにも無いさ。私の意思は、もうどこにも」 ぽつり、音が溢れる。 「でも、感情はある。 だから罰するつもりが無いと聞いて安心したよ」 鍵盤へ手を伸ばす。ゆっくりと、主旋律だけを奏でる。 それ先程演奏されていた、失われた校歌だった。 「できれば深雪にも聞いてくれるかい、その話。もう聞いていたらすまないね」 軍歌のような拍子で音色を刻んでいく。 その旋律を聞く横顔は、どこか虚しさを孕んでいた。 時折音が欠けるのは予定調和で、ご愛嬌。 ……弾き終えれば、だらんと腕を下げる。 「強いて言うなら、それが私の意思だ」 ▽ (-235) wazakideath 2022/07/13(Wed) 22:19:15 |
【秘】 陽葉 シロマ → 傷弓之鳥 マユミ「将来の夢はあるかい」 少女は教師を志していた。 今となっては、諦めた夢だ。 「叶えたい願いはあるかい」 さて、願いなどという崇高なものは抱いていただろうか。 少なくとも、今は、見当たらない。 「それはこの少年時代を捨ててでも、掴みたいものかい」 モラトリアム。青年期にだけ与えられる、停滞の時間。 尤もそれは、誰に対しても与えられるものではない。 否応なく大人にならざるを得ない子供もまた、存在する。 「正直な所、君は生き辛そうに見えるから。 君が彼についていくのなら、私は止めないよ」 (-236) wazakideath 2022/07/13(Wed) 22:19:49 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ「おや。そういえば 最近の 先生は違うのだっけ。……うん、まずは前提が違う。そこを正そう」 すう、と息を吸った。 ように、見えた。 『何のこれしき、戦地を思え』 『足らぬ足らぬは、工夫が足りぬ』 『 ────欲しがりません、勝つまでは! 』凛とした声が貴方の耳に届く。 それはかつて、戦時中に広められたスローガンだった。 時が変わり、今は教科書でしか見られないけれど。 「……さて。きっと聞いたことがあると思う。 私はそんな世の中で生きた人間だ。 君たちとはね、今日が初対面だよ」 ぱき。持っていた枝を折り、捨てる。 その瞬間、思い出せるかもしれない。 ──白間家に、子供などいないことを。 子宝に恵まれず捨てられた一人の女が、ギャンブルに溺れていったという世間話を。 「私にとって、教師とは理想を押し付けるものだ。……自分に対してもね」 ▽ (-238) wazakideath 2022/07/13(Wed) 22:50:59 |
【秘】 陽炎 シロマ → 不知 ミナイ一緒に遊んだって、夜が明けたら帰ってしまうだろう。 大人になったら、遊んでくれなくなってしまうだろう。 永い時の中で、そんな子供は何人かいた。 その度に、生者を留める難しさを知って。 結局、この手段しか無いと考え至った。 「自分の意思を殺して、日の本を支える子供を育てる。 個より全。己のことは後回し。 先生って、そういう存在だった」 始めから明かすことはできなかった。 最初から、死んでいたのだから。 「寂しい?そんなこと先生が思うものか」 生きた時代が違えば、精神構造というものも変わってくる。 勿論、現代的な思想を持つ人間もいただろうが──白間コズヱは違った。 彼女が寂しさを感じていなかったかと言えば、やや違う。 どちらかといえば、虚しさの方が強かった。 日々朽ちる校舎。教室を吹き抜ける隙間風。 生徒で賑わっていたあの光景は、もう二度と訪れない。 「でもね、そう思ってくれたことはすごく嬉しい。 これは本当だよ。 その気持ちは今のものだと、思うから」 (-239) wazakideath 2022/07/13(Wed) 22:52:58 |
シロマは、負けたから、欲しがることにした。 (a80) wazakideath 2022/07/13(Wed) 22:54:58 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「無茶を言うなあ。君らしくはあるけど」 冗談めかして溜息を吐き、呆れて見せた。 生者からすれば、彼女の放課後はまだ続いていると言えるだろう。それを想像できないわけではない。 「私と君、ひょっとして在り方は近いのかもしれないね。 私が目指すべきものは、もう時代によって失われてしまった。 愚かだとは思っているが、それでも私はこうするしかなくて──手段だって、ひとつしか無かった。 でもね、君」 朝日が滲みだした、東の空。目の前に、貴方がいるかのような気軽さで。 手を伸ばし、頬の輪郭をなぞる。 そんな、仕草だけをした。 「成り下がっている、なんて言い方はよしてくれ。 民主主義じゃ人間は平等なんだろう? その標がどれだけ高嶺に在ったかは知らないが、現人神よりは近かったに違いない」 彼女なりに冗句を含みながらも、言外に。 卑下するな≠ニ、そう告げる。 命が紙屑のような時代でも、人の個が否定され、戦車の歯車として生きることを強いられた時代でも。 人々は、理想の影で泣き続けた。……それは、少女も同じ。 「人が変わったらさ、変わる前のその人はどこに行くんだろう。 私は、消えてしまうと思う。 私が変わらないのは、そういうことだ」 変化してしまえば、『教師を志す白間コズヱ』は消えてしまう。 それは成仏でも何でもなく、不可逆な変化として。 幻になる、ということだ。少なくとも少女は、そう考えている。 (-240) wazakideath 2022/07/13(Wed) 23:22:08 |
【秘】 陽葉 シロマ → 傷弓之鳥 マユミ蚊帳の外。 これは正しい指摘だと、少女は思う。 「生きたまま、ずっと楽しい時間が過ごせれば最高だ。 だけど現実はままならない。 もしかすると、常世も似たようなものかもしれないよ」 少年時代から抜け出してしまったかは、わからない。客観的に見れば、きっと自分は未熟な小娘のままだ。 貴方の問いに答えることなく、光の失せた瞳を向ける。 何故『彼』と呼んだのか、その説明もしないまま。 「ただ…… 常世は、これ以上悪くはならない 」現実は、これから更に良くなる可能性がある。 しかし同じくらい、悪化する可能性もある。 卒業、就職、結婚。 人生には、数多くの分岐点が控えている。 「きっと世間はさ、何があっても生きていくことを美談とするのだろうけれど……私は、そうは思わない」 病気、事件、 事故 。加えて──数多くの予定外が、そこら中で息を潜めて狙いを定めている。 困難を乗り越えられるかは運次第。 私達は努力が報われないことくらい、もう知っている年頃だろう? 「君の未来に、何か希望があるのなら。 生きるべきだね」 「無いのなら、死んでしまっても構わないだろうよ。それを咎める資格は、誰にも無いのだから」 (-251) wazakideath 2022/07/14(Thu) 10:46:02 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「言うじゃないか。 ああ、幻かどうかを決めるのは私達じゃない。世間様さ」 頬をなぞる仕草をした後。 貴方の顎を軽く持ち上げるように、人差し指を動かした。 少女は静かに喉を鳴らし、笑う。 「いてもいなくても同じ。背景にさえならない滲みのひとつ。 そんなものだろうよ。私も、君達も」 鴉がどこかで鳴いた。 鳥が目を覚まし、陽の下を飛ぶのはあと数刻後。 どこかの家では誰かが起きて、どこかの家では誰かが眠る。 「さて、栗栖。 君の話を聞くに、君は私に変わってほしいのだと捉えたわけだが」 世界は今日も、いつも通り回っている。 「生徒ではない君の願いは叶えられない」 「大事な生徒を置いて消え失せることなど、もっての外」 「しかし。 聞いて、知り、検討することはできるよ」 (-253) wazakideath 2022/07/14(Thu) 12:36:12 |
【秘】 陽炎 シロマ → 奔放 クリス「予定調和だって尊いものさ。 予想外の事は正直、もう勘弁してもらいたいものだけど」 警報が解除された直後に空襲に見舞われ、優勢と聞かされていた戦争は負け、校舎から生徒は消えた。 社会の荒波は常に少女に厳しく、また虚しさを与え続ける。それはいつの時代にも存在する、『よくある話』だ。 「しかし期待に応えてくれると言うなら、もう少し話を聞いてみよう。 私の欲しいものが、その先にあるかもしれない」 実のところ、その答えが何であっても構わない。 こうして、自分について考えさせることが目的であったから。 勿論、期待に応えられれば嬉しいけれど──高望みはしない。 そう告げて、亡霊は貴方の言葉を待った。 (-262) wazakideath 2022/07/14(Thu) 15:48:31 |
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