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![]() | 【赤】 従業員 ルミ[ わたしが一緒にいたかったのは、 関わらない方が良いような子どもにも笑ってくれて 冷たい雨から連れ出してくれて たくさんのことを教えてくれたお兄さん。 優しいお兄さんが好きだった。 同時にひどく憎かったのだと思う。 あそこでわたしを放って大人になるのなら、 ずっとなんて無理だと突き放してくれたら。 ────今この場で言ってくれたなら。 このどろどろに煮詰まった貴方への愛を きっと正しく罪悪として扱えた。 これは手離したくない愛執で、 けれど手放さねばならない妄執なのに ] (*126) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 19:00:46 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミた、…たかが10年ちょっとって何よ! わたしには永遠に近い時間だったんだから! 死ぬまでとか、ずっととか、 そういう……そういうのっ いまさら信じろって!? [ まるで子犬が噛み付くように言葉を返し、 今度はこちらが彼をき、と睨んだ。 なんの気の迷いかは知らないが 少なくとも正気じゃないと叫びかけて、 ] (*127) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 19:01:09 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ─────────…………っ、 [ 自分で傷付けておいて、傷を勝手に食べて、 どうして今更そんなことを言うのだ。 なんとも傲慢な「俺の」という呟きに、 何故か力が抜けて暴れる気力も失った。 ──記憶の補完なんて。 都合のいいことばかり吹き込まれたらどうするのか。 ずっと、がいつか重荷になる日がくるのに、 唇を噛んで、錆びた鉄の味を感じながら わたしは大きく息を吐いた。 ] (*128) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 19:01:33 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ……………… ……………………どういう心変わりか知らないけど… 死ぬまでの間、ずっとずっと 他の女を好きになった分だけ腕切ってやるから。 わたしを捨てようとしたら死んでやるし、 その言葉を裏切ろうとしただけで気付くし…っ ────分かってるの? わたしにそうやって捕まったらもう二度と 普通の人生送れないんだよ。 (*129) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 19:02:06 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミお兄さんの痛みも、傷も、 人生ごと一緒にわたしが食べちゃうんだよ? [ これが最後通牒だ。 蜘蛛の毒で目を回していたとしても、 今ならまだ逃げられる。 逃げて欲しいのか、逃げて欲しくないのか 問われてもきっとすぐには答えられない。 わたしに残ったただひとつの明瞭は 今なお抱え続ける恋心だけ。** ] (*130) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 19:02:33 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ[ 自分の傷は自分にしか分からない。 なのに心の傷は自分だけでは癒せない。 ずっと消えない傷になりたかった。 そうすれば彼の中で、彼の人生の中で、 彼に恋していたわたしが生きてる。 ] ……自分の目でって、いわれても、こまる……。 そんな、 ………… [ なにが" 困る "? 願ってもない、自分にとって都合の良い話じゃないか。 通報もされず突き放されもせずに 一生かけて彼の傷を抉って生きて行けるなら。 そのずっとがもしも訪れなければ、 今度こそ本当に彼のせいだと罪を詰ることが出来るし そうする権利も得られるだろう。 ] (*136) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 22:22:36 |
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![]() | 【赤】 従業員 ルミ[ 目を逸らさず言葉を続ける彼になにも言えぬまま、 ただ呼吸だけを繰り返す。 何も変わっていない。──そうだろうか。 あの時無邪気に誓った貴方の痛みの食べ方が、 正しく優しくそうする方法が。 分からないままここにいるのに。 ] ……お兄さん、変わんないね……。 ………………。 ずっと一緒にいるなんて言われたこともないし、 未来の約束なんか、したこともなかったし できないことを言われたことも、ほんとは、ないよ… [ ライ。 周りの人が呼んでいるお兄さんの名前。 同じ呼び方で呼びたくないって嫌だった二文字。 でも今は、気付けばわたしが、一番最悪な意味を込めて お兄さんを嘘つきって呼んでる。 ] (*138) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 22:22:49 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミずっとルミって呼ぶって言ってくれたのも 痛いの食べてくれるって言ってくれたのも。 嘘になんか、なってない、のに ────……ごめんなさい、 お兄さん、 [ 何を謝っているのか、自分にも分からなかった。 理不尽な理由で傷付けたことなのか。 信じようともせず嘘つきと詰っていることなのか。 こんなことをしておいて、 見捨てられない自信がないから不安がっている。 愛されることも恋が叶うことも諦めたから、 不確かな糸が、まだ続いたことに怯えているだけ。 ] (*139) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 22:22:53 |
![]() | 【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩[ かくして。 日常と同じ色で作り上げられた蟻地獄で 肉食獣を食べ切れなかった蜘蛛がいっぴき。 ] (-47) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 22:23:05 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ[ 傷付け続ける許可を出すなんて普通じゃない。 自分がそうしてしまったのか、 或いは元からそうだったのか。 分からないなら、この先で知れるだろうか ──ほんとうにまだ道があるのなら。 ] ……わかった、自分の目で確かめる。 やっぱ無しとか聞かないから。 逃げても追い掛けて捕まえて、 ──────ッ ゎ、 [ もはやお得意になった脅しのような羅列を連ね ──ようとして、言葉が止まる。 突然彼の身体が起こされるのを止められず、 反動で後ろに倒れそうになったのを堪えると 見上げた先には貴方がいる。* ] (*140) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 22:26:44 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ[ 物語、は。 ハッピーエンドのその先がどうなっているのかを 仕事中にふと考えたことがある。 たとえば、いじわるな継母たちから離れて 王子様のもとに嫁いだシンデレラ。 あのまま彼女たちは不幸などひとつも知らず、至らず、 生きていくことが出来るだろうか。 " 恋愛の成就 "で大団円、終幕になるのなら その先がどうなっても読者に知るすべはないけれど。 結ばれて終わるのがおとぎ話の運命ならば。 ] (*145) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:30:56 |
![]() | 【秘】 従業員 ルミ → 会社員 雷恩[ 終わらせない現実がひとつくらいあってもいい。 運命で縛って、結んで 毒のない林檎の甘さに視界を霞ませて ────ほかの何も見えないように。 ] (-50) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:31:02 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ…………ぅん。 [ 忘れてたわけじゃない、と言うのはやめた。 飲み込んだ罪の味。 気付かないフリをしていたふたりの過去。 記憶の残り香が頬を撫でる。 匂い立つような昔の思い出が部屋に漂う。 変わったね、と貴方を詰ったこのなかで 変わらない、と優しいままの貴方を見つめた。 痛みも恨みも苦しみも煮詰めてしまったその後に それでも消えないふたりの今が残っている。 ] (*146) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:31:07 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミッいきなり起きると、危ない…… [ もうほとんど薬が抜けたらしい。 油断して転びそうになった背中を支えて貰いながら、 「ありがとう」と言おうとして。 呆けたわたしの顔が、貴方の水晶に映り込む。 ] ぇ、 [ 唇は赤い。 おとぎ話の白雪姫よりも真紅に濡れて りんごよりも苦くて錆びた味で満ちて。 ] (*147) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:31:12 |
![]() | 【赤】 従業員 ルミ──────…、 [ 言い終わると同時に奪われていく鉄の味。 睫毛を震わせ、瞳を瞬かせるのも忘れて瞠ると いよいよわたしの思考は現実に追いつかない。 こいびと。 なる。 だれの? ────わたしの。 だれが。 ────お兄さん? 言ったからには、嘘には、ならない。 ] (*148) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:31:26 |
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![]() | 【赤】 従業員 ルミお兄さん、わたしのもの? ……もう他の女のところに行かないんだよね? ────死ぬまでずっとずっとずっと わたしに縛られて生きててね、お兄さん。 [ 笑う。 痛みを誤魔化すためでもなく、 無邪気だったあの頃のにおいを連れ立って。** ] (*150) 鬼葉 2024/05/10(Fri) 23:35:38 |
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