[この、もう1人の自分が現れたのは、あの美術館の絵画の中。
あの時は、"あの人の隣に居て、恥ずかしくない私に代わってあげようか"と、この女が現れて。
けれどあの時は、絵画の中から実体を伴って出てくることまでは無かった。
私と同じジャージ姿だけれど、でも、あきらか違う、身体の線。
薄く華奢な肩。
控えめに、けれど明らかに隆起している胸の膨らみ。
二の腕も太腿も。女らしいたおやかな曲線が隠れているのが見てとれて。
背が同じでも、体型が異なればこうも変わるのかというくらい、目の前の自分は正しく"女"だった。
今の己より数段艶やかで軽やかな黒髪が、傾げた頬にさらりとかかる。]
貴女の気持ちを楽にしてあげる。
"私"が愛されれば、解決。でしょう?