124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】
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だれかー…… いませんかー……
[ゆっくり歩きながら振り絞った声はなかなかにかすれていた。
わたしはもう祈るしかできない気持ちでいた。
その時だ。
わたしの声が届いたというのか、
なにものかが駆け寄ってきたのだ。ぽてぽてと。
…………ぽてぽて?]
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[“わたしは冬至域で遭難しかけた時、
雪兎らしきいきものに道案内されてどうにか助かった”
こんな話、今でこそ笑い話にできるけど、
『慈雨』のお客さま方にする話じゃあないし、小満さまや蛍のお二方にもすることはなかった。
とはいえタイミングよくお店を訪れていれば知っていてもいい話だ。
いつだったか『慈雨』に訪れた冬至さまには、
その話をしたことを。
会合でその姿を見かけてから、もしかして、という予感がしていた。
その予感を口にするまでにはちょっと時間がかかったけれど]
……死にそうな人間には何か変わったものが見えるんだとか。
だから、あの時助けてくれた雪兎は幻かもしれない、
そう思ってたんです。
なにぶん、どこかの道を彷徨ってて、雪兎に会って、
気がついたらあたたかい部屋に寝かされていた、という有り様でしたし。
ですが……冬至さまに会って考えが変わりつつあります。
もしも冬至さまがかつてのわたしの恩人であるのでしたら。
ただ一言お礼を言わせて欲しいのです。“ありがとう”と。
[小満域に厳冬の影はない。
開いた窓からあたたかい陽光の降り注ぐ『慈雨』の窓辺の席で、
(わたしの一番お気に入りの席でもある)
わたしは冬至さまにぺこぺこと頭を下げた。
それから思い出す。わたしが命からがら辿り着いた村の人々も、
わたしに優しかったなあ、と。
助け合う、ということが身に深くしみついてるのかな、と、
彼らの動きを見て思ったんだった。
雪深く埋まっていた不思議は解けた。
これはつまりそういう話でもあった**]
―いつかのこと―
[やりたいようにやっただけ。
けれど、助けられる側にとっては動機は別に関係ないのだ。救われた、癒やされたという事実が全てなのだから。
……なんて、小満の言い分を知ったら立秋は言うだろうが、それすらもわかった上で好き放題と主張するんだろうな、という想像もすることであろう。]
うわーいいの!?ありがとう!
小満のお料理だ!
って、ボクがいい目にあってるだけじゃないかー!
[もー、何かしたいのに!と笑って。
けれど大変嬉しいお願いだ、断れるわけがない。
今度は良いお酒でも探してお土産にしてやろう、と企みながら、友人との食卓にお呼ばれしたのだった。**]
| ーーちょっと未来の話:お礼ーー [まさか側で脳内で文が作成されているとは思わない >>173。 確かに直接出向いてのお願いなんて滅多にしなかったかもしれないが、まさかそんなレア度高めに見られるとは思わないじゃない。] 詳しいのなら、是非お伺いしたいのだけれど。 ……ダメかしら? [当然、空気になろうとしていたことも知らないから、ごく普通に話を投げたの >>174。 ちょっと無茶ぶりだったかしら……とは思ったものの、しっかり案を出してくれた >>175。 林檎のタルトと葡萄のレアチーズケーキは、とても美味しそうな良案に聞こえたの。] (204) 2022/01/30(Sun) 14:44:04 |
|
あら、素敵。 ではその作り方を教えてくれる?
日持ちに関しては大丈夫。 1年後でも食べられるように保存できるから。
[私の能力がその系統なの。と伝えた。 ただし、一口食べた後の保存までは責任が持てないので悪しからず。
作り方は春分のお姉様に聞いてとのこと。 お菓子作りはもしかして、と思ったけれどそんなことはなかったみたい。 大人しく、春分のお姉様から教わることにしましょう。
案を出してくれたから、お礼は忘れずにしないとね。]
(205) 2022/01/30(Sun) 14:44:20 |
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[渾身の力作はどうだったかしら。 今度の会合で、感想を待ってるわ。*]
(206) 2022/01/30(Sun) 14:44:26 |
[いつからかほとんど姿の変わらないお姉ちゃんに
なんの疑問も抱いていなかった。
早くお姉ちゃんみたいに大きくなりたい、
大人になってお姉ちゃんを支えられるようになりたい。
そんなことばかり考えていた。
もしお姉ちゃんが、
この先もずっと変わらなくて
私だけが変わっていってしまったら?
私はお姉ちゃんより先に老いて、よぼよぼになって
お姉ちゃんより先に命のともしびが消えて……
それでもお姉ちゃんは、
私のお姉ちゃんで居てくれるのかな。]
[──師匠に初めて出逢ったのは
ある初夏の夕方のことだった。
雨上がりの芒種域の空には虹が掛かっていて
通い慣れたあぜ道はぬかるんで滑りやすくなっていた。
私は学校の帰り道で、とにかく早く帰りたくて
いつものように家に向かって走っていた。
調理実習で作ったロールケーキが上手に出来たから
お姉ちゃんにも早く食べて欲しかったんだ。
あともう数十メートルで家に着く、というところで
滅多に聴くことのない馬の嘶きが鼓膜を裂く。
どん、と身体に衝撃が走って
気付いたら青空に放り出されていた。]
[『あぶないからはしってはだめよ』と
あんなに何度も言い聞かせてくれていたのに。
お姉ちゃんの言いつけをちゃんと守っていれば、
ごめんなさい、お姉ちゃん。
ごめん、なさい…………、
…………
……]
[──次に目を醒ました時、私はベッドの上に居た。
男の人か女の人かわからないけれど
初めて見る綺麗な人が私の手を握って、
パパとママと一緒に私の顔を心配そうに覗き込んでいた。
身体はどこも痛くなかった。
私と一緒に飛ばされてぐちゃぐちゃに崩れてしまった
ロールケーキを見て事の次第を聞かされるまで、
自分の身に何が起きたのか思い出せないくらいに。
ただ、頭は靄がかかったみたいにぼんやりしていて
腕と足は上げるのも辛いほどに重たかった。
その綺麗な人曰く、私は馬車に轢かれて
その人の能力で一命を取り留めたらしい。
お忍びか、視察か、親睦を深める為にか
たまたま芒種域を訪れていたその人こそ先代立春。
それが、師匠との出逢いだった。
『綺麗な淡い、オレンジ色の灯りだね。
早春の陽だまりみたいだ。
僕の灯りの色に少し似ている。
……良かったら君、僕の弟子にならないかい?』
今にも消えてしまいそうな灯火に師匠の手が触れると
輝きを取り戻したように燃え上がって、すごく綺麗で
何故だか涙が零れ落ちたのを憶えている。]
[故郷から遠く離れた見知らぬ土地で
弟子として暮らすことを最初は多少躊躇った。
師匠がなぜ私を弟子に欲しがったのかも、
娘を心配してくれるパパとママを
師匠がどんな風に説得したのかも私は知らない。
大好きなお姉ちゃんや両親から
離れて暮らさねばならないことに抵抗はあったし、
実際移住して数年間は度々ホームシックに陥っていた。
けれど、師匠の弟子になれば、
蛍としてお仕事を学ばせてもらえれば。
何かお姉ちゃんの役にも立てる日が来るんじゃないか。
何より、喪うはずだった命を救われたから
誰かの為に役立てられるなら役立てたいと思ったんだ。
今は師匠の眠るこの土地から、離れることは出来ない。
私が灯守りの役目を務め果たすのが先か、
私の灯りが尽きるのが先かは私にもわからない。
どちらにしても、いつか私が
灯宮に還る日が来たときには──……
……お姉ちゃんに見送ってもらいたいな。
なんて、
いちばんのわがままはまだ言えずにいる。]
『 わたしも、世界が嫌いだわ 』
[ それが、彼女の答えだった。
私に、世界が好きかと問うということは、質問者は世界に対して何かを抱いているのではないか、と。
返ってきた答えは予想通り、と言えばそうなのだけど、驚いた気持ちを覚えたのも現実だった。
魂の管理者、人を守るために存在する“灯守り”。
私は、“灯守り”というものは、基本的には人間を慈しんでいるものであると思っていた。
しかし大寒の灯守りは、世界を嫌いだと言う。
私と同じ想い。世界を嫌いなまま、この地位に居る。
だからこそ、興味を持った。そして……共感も。 ]
[ ――灯守りになった当初、無気力な私に対し、職員は「灯守りを務めるつもりがないのならば、さっさと灯りを他に譲ればいい」という事を口にしていた。
私はそれに応じるどころか、返答をする事もしなかったのだけど、
そうすると、「先代はどうしてあれを後継に選んだのか」という話が聞こえてくるようになった。
彼は、立派な統治者であり、灯守りであった。それは未来永劫語られる事だろう。
……が、私の存在によって、彼の尊厳が危ぶまれている。それは、あってはならない事だと思った。
彼の願い、彼の尊厳、それを守るために、きちんと継がなくてはという思いはあった。
――けれど、私には出来なかった。
向いていないというのもあるけれど、どうしても、この世界を愛そうとすると吐き気を覚えてしまう心地がした。
それならば、他の人間に灯守りの位を譲るべきだった。
けれど、私はそれも出来なかった。
彼が私に託したものを、他の人に渡したくなかった。
彼が残してくれた想いを、中途半端に、自分に都合の良いように解釈しながら、私は今も、この地位にいる。
最初から、私はずっと彼のことばかりで、民の事など何も考えていなかった。
]
[ 『処暑の灯守り』が代々継ぐ能力『風星』。
先々代の処暑様は、人前での演説等以外では、一般市民の前に姿を見せる人ではなかった。
けれどその代わり、この能力で、人々を近いところで見守っていた、らしい。
先代の彼は、自らが人々の近い所へ行く人だったため、この能力は、先々代程は使ってはいなかったらしい。
とはいえ、彼の足が及ばないところや、目の届かないところまでも気遣うために、風を“目”としていたようだ。
……私はというと、灯守りになった当初は、領域の外へ出る事が出来なかった。
彼へと悪意を向けた世界。そんな悪意に私も殺されるのではないか、と怖かったからだ。
故に、人の手の入ったものも、長く口に出来なかった。
そのため『風星』で“外”を見て回るのが常だった訳だけれど。
彼の愛した処暑域。けれど、そんな彼を裏切った世界。
見れば見る程に、分からなくなってしまう。
この地は、この人間達は、守る価値があるのだろうか、と。
彼が命を賭してまで守るものであったのかと。
]
[ 降り募っていく不信感。
全他者に対しての嫌悪感。
故に私は、部下になった行政職員に対しても心を開くことが出来なかった。
それでも右も左も分からない状態であった頃は、職員の助けがなくてはならず、領域へ入る事は許可していた。
しかしあの事件――私の個人的な日記を勝手に持ち出されて以来、私は領域へも人を入れなくなった。
――やはり人間はどうしようもないのだと、私はその時点で心を閉ざしてしまったから。
蛍は当然置こうと思わなかった。
『処暑号の蛍』そのものを私は憎んでいて、到底受け入れられなかった。
だから私の領域へは、灯守り以外誰も入れないままに、
今日も私は世界との関わりを絶って、領域へと引きこもっている。 ]
| ーー雪見温泉ーー ええ、そうね。とても綺麗だわ。 [目を奪われている子を見てくすくすと笑う >>231。 蛍雪の功とはよく言ったもので、雪も仄かな明るさを纏っている。 空に浮かぶ月の明るさと、舞い散る雪の協奏はとても幻想的で。 風情のある光景にほう、と感嘆の息を漏らした。 後で冬至の君には感謝しておかないと。 お礼に手作り菓子を作ろうと奮闘するのは、もう少し先の話。 汚れを落としてから湯船に浸かれば、自然と息を吐く。 至情の極楽とはこのことかしら。] (262) 2022/01/30(Sun) 19:39:20 |
| [彼女が紡ぐ長い長い話には、目を瞑り、黙って耳を傾けていた >>232。 旅先で起こったこと、聞いたこと、見たこと。 楽しかったこと、悲しかったこと。感動したこと。 同じ景色を見ることはできないけれど、 目を瞑れば、同じ経験を感じることが出来る気がして。 唄が闇夜に融けるようなら、ゆっくりと目を開いて。 目を合わせる >>233。] …………。 ……私がね、今まで蛍を迎えなかったのは、 先代小雪のーー兄のことがあったから。 [視線を逸し、訥々と語り始めるのは自分のこと。] (263) 2022/01/30(Sun) 19:39:42 |
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兄は私に号を譲りたいと言っていたけれど、 私は兄に灯守りをやっていてほしかったの。 ……いいえ、違うわね。側にいてほしかった。 それまでずっと、兄のそばにいたから、 いきなり放り出されるのが怖かった。
[遥か遠い過去の自分を見つめて。]
だから、手紙1つで何処かに消えた兄が許せなかったの。 何処にも行かないでほしかった。 子供だったのね。いつか別れは必ず来るのに。 それを認めたくなくて、荒れていたのよ。
だから蛍を迎えなかった。 八つ当たりしてしまいそうというのもあるけれど、 何れ来る別れに、堪えられそうになかったから。
[今なら温泉が全てを溶かしてくれそうだから。 誰にも語ったことのない本音を落としていく。]
(264) 2022/01/30(Sun) 19:40:06 |
| それにやっと折り合いがついたのが最近で、 その時の蛍候補が貴方だった。 貴方なら、私の何かを。 遠くへ攫ってくれるのではないかと期待したのよ。 とても勝手な話だけどね。 でも、貴方に会って考えが変わったわ。 初めてあった時の貴方の質問、よく覚えているわ >>4:*41。 灯守りの仕事が好きかどうかなんて、考えたことなかった。 “やらなければならない”そう思っていたから。 だって、後継も蛍も誰もいない。 灯守りの変わりは誰もいないのだもの。 そういう状況を作り上げたのは私だけど、 放り出すことはできなかった。 その状況に、疑問を持っていなかったの。 好きか嫌いかで決める考えなんて、なかったのよ。 [兄がいなくなってしまったら、私がやらなければならないと。 それが普通なのだと、思っていた。] (265) 2022/01/30(Sun) 19:40:45 |
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だから、貴方の自分と決めるという考え方は、 とても目新しく見えてね。 だからこそ、止めてはいけないと、どこかで思ったの。
でも、貴方の去り方が兄と同じだったから。 私の方で覚悟を決めていなかったから、手紙を見た時は少し堪えたわ。 それからそう経たないうちに再会して、 “退屈だった”と言われたから。
かなりキツかったわ。
(266) 2022/01/30(Sun) 19:41:26 |
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でもそれが本心ではなかったのなら、安心した。 話が聞けて、よかったわ。
[ふわり、と慈しむような目で微笑む。]
小雪域は貴方の故郷。 帰ってきたければ、いつでも帰っていらっしゃい。 貴方のお土産話、待ってるわ。
[許されるなら、頭を撫でようか。]
(267) 2022/01/30(Sun) 19:41:49 |
| [言ったでしょう。 この子がいいと言うのなら、貴方の蛍でいいわよ。 今更、返せなんて言わないわ >>180。*] (268) 2022/01/30(Sun) 19:42:07 |
| ーー領域内ーー [さくり、さくりと枯葉を踏む。 コテージの周りにある山茶花の木々に近付き、 落ちて薄っすらと雪化粧を纏う山茶花を拾い上げた。]
おかえりなさい。……お疲れ様。
[雪を祓い落とし、両手でそっと捧げ持った後、 ふぅ、と息を吹きかける。 山茶花は花弁となり、北風と共に天高く舞い上がると、 同じ方向<灯宮>へと流れていく。] (276) 2022/01/30(Sun) 20:50:29 |
| “大寒” [海の波の花咲く季節は過ぎ] “立春” [東風が通り過ぎ] “雨水” [雪消の水が流れれば] “啓蟄” [菜虫は蝶となり] “春分” [雀は初めて巣を作る] (277) 2022/01/30(Sun) 20:50:54 |
| “清明” [山吹が咲き] “穀雨” [藤浪は風に揺れ] “立夏” [蝌蚪が泳ぎ] “小満” [麦秋は至れば] “芒種” [紫陽花は雨に濡れ] “夏至” [短夜へと移る] (278) 2022/01/30(Sun) 20:51:27 |
| “小暑” [蓮の花が初めて開けば] “大暑” [入道雲が空を飾り] “立秋” [送り火を焚けば] “処暑” [黄昏時に空を眺め] “白露” [軈て燕が去って] “秋分” [月影は濃くなり] “寒露” [夜長へと移る] (279) 2022/01/30(Sun) 20:52:18 |
| “霜降” [紅葉狩る季節となりて] “立冬” [山は眠る] “小雪” [雪虫舞いて] “大雪” [熊は穴に籠もり] “冬至” [短日を迎えれば] “小寒” [芹栄い] [款冬の花咲き、また春へーー] (280) 2022/01/30(Sun) 20:52:39 |
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