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【人】 雅楽 雅──────… [頁を捲る手が止まる。 これはいつ取られたのだろうか。 森の中、初めて写真を撮られた時と同じように 空を見上げる私。 けれど、引き寄せられたその表情は、] ……酷い顔。 [悲しそうで寂しそうで。 泣いているみたいで。 心の奥、今までは誰も気づかなかった。 今までは誰も見ようともしなくて。 誰も、気付かない。 気付く筈がない瞬間が切り取られていた。] (551) 2020/08/05(Wed) 14:29:12 |
【人】 雅楽 雅ん?うん、定期健診は午後から。 [三か月置きの画像検査。 再発の有無を診るそれは、 けれど再発が見つかったからといって どうにかなるわけではなく。 一度芽吹いてしまえば、 手の施しようがないと言われている。] コミュのパンフさ、病院でも置いて 貰おうかなと思っていくつか持って来たんだ。 [紙袋の中の冊子を示す。 それは、私と同じように、頼る人のいない、 身寄りのない人同士が助け合うために作った コミュティで、ブランドの後押しもあり 会員数も伸びていた。] (552) 2020/08/05(Wed) 14:29:14 |
【人】 雅楽 雅こういうサポート事業、意外になくて、 当時私は凄く辛かったから。 高齢者向けのものはあるのだけれどさ。 [命を刻む秒針の音は普段は聞き逃していても、 本当に不意に、何でもないときに思い出すもので。 当然、定期健診の時などは否が応でも 現実を実感させられるのだけど。] …大丈夫。 ひとりで行けるから。 [いつ終わるとも知れない未来なら、何も持たずに。 そう考えていたことを、目の前のこのひとは 気付いていたのかもしれない。] その代わり、前に行ってた歌の話はなし。 [そう言って、席を立って店を出る。 慌てて付いてくる気配に思わず笑って、 空を見上げれば、 雲一つない蒼が広がっていた。] (553) 2020/08/05(Wed) 14:29:17 |
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