【人】 XI『正義』 マドカ── 僕の知らない彼らについて ── [『正義』と『力』は 殺し合いの末、相討ちとなった。 『正義』にとって『力』とは、 尊敬に値する人物であり、 同時に最高の好敵手だった。 間違っても、敵ではなかった。 交わす刃が互いを切り裂き、 振り切った刃の先から鮮血が散る、 それまで何度も交わしてきた、 刃のない刀の記憶が、 互いに太刀筋を覚えさせた。 けれど刃の狭間に見えるのは…… 覚えのない、殺意。] (592) 2022/12/13(Tue) 20:08:26 |
【人】 XI『正義』 マドカ[彼らが最期、何を想ったのか。 それは経典のどこにも明言されていない。 それはそうだ、語る口は既に閉ざされていた。 綴られる言葉があったとして、 それら総ては赤の他人の憶測に過ぎぬ。 彼らの想いは、彼らの胸の内にのみあって、 彼らと共に終えたもの。 誰にだって、分かるはずが、ないのだ。 ────勿論、僕にだって。 ] (593) 2022/12/13(Tue) 20:08:44 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 7年前『力』 ── [売店がある、と僕に教えたのは、 多分『世界』だった。 もしかしたら違うかも。 そうだとしても、誰かから聞いた。 その頃僕はまだ、洋館に招かれたばかりだった。 例えば、僕が故郷を失う前だったなら、 例えば、もう少し時間が経っていたなら。 僕はあの時、 もう少し違う反応ができたのだろうか。 魂が覚えている感情というものを知っていたなら、 もう少し……もう少し。 自らの手で何かを買う、と言う発想が、 元々あまりない僕だったけれど、 教えられたからには一眼見ておこうと。 思ってしまったのが、 そもそもの間違いだったかもしれない。] (594) 2022/12/13(Tue) 20:09:28 |
【人】 XI『正義』 マドカ[えずきながら廊下にうずくまった僕の頭に、 氷よりも冷たい二音が突き刺さる。 心臓を、 鋭い刃が貫いたような痛みが走り抜けた。 何故だかその痛みに、安堵する。 ]か……は、 [息が止まりそうな錯覚を覚えて、 喉奥に溜まりかけた、 苦味を帯びた酸味を吐き出す。 頭がクラクラする。 通り過ぎて行く気配に身を強張らせ、 けれど何も言われないのに、ほっとして。 なのに彼は、その青年は、 何を思ったか、 踵を返して隣にしゃがみ込むものだから。] (595) 2022/12/13(Tue) 20:09:54 |
【人】 XI『正義』 マドカぁ……ぅ、 [ありがとうとか、なんとか言えんのかと。 自分で自分を殴りたい気分だ。 それでも僕の口からは、 ありがとう、も、 ごめん、も こぼれ落ちることなく。 言いたかった、伝えたかった。 なのにどうしても、言葉が喉から出てこない。 汚物は垂れ流すくせして、 本当に必要な言葉ひとつ、生み出せない。 僕は結局何も言わず、 ただ、示された扉を見やり、 ふらりと立ち上がった。] (596) 2022/12/13(Tue) 20:10:23 |
【人】 XI『正義』 マドカ[ちらりと振り返った先、 彼は僕の吐き出した汚物を片付けているようで、 初対面の相手に、後始末をさせることを、 ひどく申し訳なく思ったものだった。*] (597) 2022/12/13(Tue) 20:10:39 |
【人】 XI『正義』 マドカ── 面白くもない過去の話 ── [今世の僕は、大陸よりも東の海の上、 浮かぶ島の一つに生まれ落ちた。 幸か不幸か、会場に並ぶ島々の中でも さらに小さな島に生まれたものだから、 『証』を持って生まれた僕に対しても、 普通の『人間』の子供のように、 両親はもちろん、島民も接した。 そもそも、大陸で信じられている件の『宗教』 そのものに興味があまりなかったのかもしれない。 僕は、『証』を持っていたくせに、 『証』がない者のように扱われた。 それが非常に稀有なことであったと、 幼い頃僕は知らずに呑気に笑っていたのだ。] (598) 2022/12/13(Tue) 20:10:53 |
【人】 XI『正義』 マドカ[僕が平和な日常を過ごしていた時、 『証』を持つ誰かはその存在を否定され、 あるいは石を投げられて、 親にすらその生を否定され、 けれど殺すこともできない、 ……と腫物のように扱われ、 もしかしたら厄介払いされ。 書物でそのことを知った、8つの頃、 僕は両親に尋ねたことがある。 僕は、ここにいて良いの?と。 両親は驚き、それから悲しみ、僕を叱った。 たった一つの痣があったからと言って、 そんなものは、何の理由にもならない。 持って生まれた痣でなくとも、 生涯消えることのない印など、いくらでもあるのだと。 僕はその時………… 妙な心持がした。] (599) 2022/12/13(Tue) 20:11:09 |
【人】 XI『正義』 マドカ[両親の言葉は、世の中一般の親としてみれば、 どこまでも善良で、親として正しい反応だ。 けれど、僕の胸の内はざわめいた。 だってこれは、『平等』じゃない。 他の『証』を持つ子供たちが苦しんでいる傍らで、 僕だけが、そうじゃない。 不安が心を占めるのに、そう時間はかからなかった。 それでも時間だけは、平穏に過ぎていく。 僕の生まれた家は、これまた幸運なことに、 はっきり言って裕福な方で、生活上の心配は まるで存在しなかった。 衣食住に困ることはなかったし、 多分欲しいといえば大概のものは 手に入っただろう。 僕が両親に何かを強請ったのは、 幼い時分だけだったけど。] (600) 2022/12/13(Tue) 20:11:23 |
【人】 XI『正義』 マドカ[15の夜、目が覚めると、 辺りは紅蓮に包まれていた。 島ひとつを燃やし尽くした炎は、 僕以外の全ての命を奪った。 僕と違ってただの『人間』だった、 幼い弟の命をも、容赦無く奪い去った。 僕はきちんと教育を受けていたけれど、 自身が『人間』より丈夫なことを知らなかったから、 炎からさえ守れば、 自身より低い位置に庇った子供は 助かると思い込んでいた。 彼は僕より少しの煙を吸い込んで、 そのまま息を止めた。 血の繋がりのない子供達も、 親を含む親戚も、隣人も、 ずっと僕にもよくしてくれた使用人の彼らも、 小さな島だ、 顔を知らぬものなど一人もいなかった。 皆みんな、死んでしまった。] (601) 2022/12/13(Tue) 20:11:37 |
【人】 XI『正義』 マドカ[手の中からこぼれ落ちていったものを、 惜しんで泣いた。 それが僕に与えられた罰だと知って、 首を垂れた。 僕は悲しかった。 けれど、同時に安堵した。 嗚呼、これで漸く…… 漸く僕も、他の『証』持つ者たちと、 並ぶことができる。] (602) 2022/12/13(Tue) 20:11:49 |
【人】 III『女帝』 シャルレーヌ───回想:明日の約束>>559の続き いいの?なら、私も行きたいわ! [ さり気ないお誘いに目を輝かせて頷いた。 今までも出かけることはあったけれど、 タイミングが合わずにお留守番が多いから、 ついつい前のめりになってしまって、 驚かせてしまったかもしれない*] (604) 2022/12/13(Tue) 20:12:38 |
【人】 XI『正義』 マドカ── いつか、故郷の唄を ── [彼女が、僕の故郷の唄を歌えるらしいことに 気づいたのはいつだったろうか。 きっと、僕か彼女が口ずさんでいたのを、 どちらかが気づいたのに違いない。 年下の子供たちに、 子守唄を歌っていたのかもしれない。 僕の故郷の唄は、 どこか独特の節を持っていた。 もしかして、僕たちの故郷は近いのか、と、 期待したのも束の間。 僕の淡い期待が砕けるまで、 そう間は置かなかったろう。 僕は彼女に笑って問うた。] ねぇ。 君の故郷はどこ? 君はどこからきたの? 良かったら、教えてよ。** (605) 2022/12/13(Tue) 20:12:51 |
XI『正義』 マドカは、メモを貼った。 (a89) 2022/12/13(Tue) 20:15:05 |
III『女帝』 シャルレーヌは、メモを貼った。 (a90) 2022/12/13(Tue) 20:17:11 |
III『女帝』 シャルレーヌは、メモを貼った。 (a91) 2022/12/13(Tue) 20:24:40 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ―クロのむかし― 「ふん……厄介なモンを押し付けられちまった」 [「運命の輪」の証を持った赤子を押し付けられた老婆は悪態をついた。夫には先立たれ、嫁いびりをした為に一人息子にも出ていかれ、そのせいで余計に性格が荒れ、村人から距離を置かれて暮らしていた人物である。 それでも赤子を見捨てなかったのは、彼女も寂しさを感じていたのだろうか。子守歌を歌うような、甲斐甲斐しい世話をしたわけではなかったが、赤子は死なずに幼児まで育った。 「僕にはお父さんとお母さんはいないの?」と幼子が聞けば「捨てたんだよ、お前のことは」と面倒くさそうに答えてくれた。だからクロは、自分のことを捨て子だと思っていた。 質問すれば一応、気が向けば答えてくれるので、クロは自分が証持ちという存在であることを何となく理解はしていた。] (606) 2022/12/13(Tue) 20:31:10 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ「膝の痣、咎の証ではあるがそれは幸運をもたらすと言われているものさ」 「お前は村に幸運を運んでくる存在だからね、その通りにしないといけないよ」 「でなきゃ、今度は追い出される。このしけた村に、役立たずを養うほどの余裕はないさ……フン」 [そういった言葉を聞かされて育った幼子は、いつしか「村の皆に幸運を運ぶのが自分の役目だ」と思うようになった。 他の子供たちと遊ぶことは許されなくとも。 大人たちが自分を見たら避けるように通り過ぎても。 挨拶して、返ってくる声はなくとも。 自分より小さな、泣いている子供を撫でようとしたら、ひったくるように引き離され、急ぎ足で去られても。 それだけが自分の存在理由らしいから。 やがて幼児が少年と呼べる程にはなった頃、老婆が亡くなり、いないと思っていた両親の元へと引き取られた。だが、いきなり親と言われても実感がなかった。共に暮らしもしていなければそんなものだ。 今まで自分を無視してきた他の大人たち……いや、望まぬ子供を授かった分だけ、周囲よりも嫌悪感を持っているように思われた。] (607) 2022/12/13(Tue) 20:33:04 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ[父という肩書きの大人から、羊の世話を教えられる。必要最低限の会話はされる。少しでも労働力として使えるようにする為だ。死なないように、残り物の食事も与えられていた。 大声で注意されることはあったが、本気で殴られたりはしなかった。なるべく触りたくなかったらしい。それは他の村人も一緒で、直接的な暴力を振るわれたことは実はなかったのだ。] ひつじ♪ひつじ♪ [しかし、家に閉じこもりがちだった老婆との暮らしとは違う、ふわふわで穏やかな羊の世話は楽しく、牧羊犬とも友達になれた。四つ足の動物たちは抱きしめ返してはくれないけれど、自分を厭わない。 それが嬉しくて、野山を羊や犬と一緒に駆けるのは楽しくて。よく笑うようになった。一生懸命仕事をしつつ、「僕、村に幸運を運ぶからね!」と自分を避ける人間に笑顔で呼びかけたりした。] (608) 2022/12/13(Tue) 20:35:06 |
【人】 ]『運命の輪』 クロ[そんな無邪気な姿に、絆される一部の村人もいたようだ。 絶対に他人に見られないように気を付けながら、「余ったからやる」と食べ物を少し寄越されたり。 放牧していた羊が一匹見当たらなくて、困ってきょろきょろしていたら、「おい黒羊、向こうで羊見かけたぞ」と一言声をかけてくれたり。 「証さえなければ良い子なのに……」と 声はかけられずとも、同情のこもった瞳で見られたり。 表立たない所では、小さな親切を受けることも時々はあったのだ。だから人間を信じられた。両親は相変わらずだったけれど、笑顔でいられた。 ……事件が起きたのは、そんな頃だっただろうか。**] (609) 2022/12/13(Tue) 20:36:32 |
]『運命の輪』 クロは、メモを貼った。 (a92) 2022/12/13(Tue) 20:40:33 |
【人】 X『教皇』 カルクドラ── 回想:『月』に至る ── [ 今から三年前。 担当職員より、とある証持ちについての資料を渡された。 資料を渡された段階で察していた。 この証持ちを迎えに行け、ということだろう。 資料を捲ってみると、彼の境遇が細かく記されていた。 心が締め付けられるようなことも。 ]お邪魔します。 私は政府の使いであるクリフと申します。 御子息殿をお迎えに参りました。 エーリク殿、ご家族殿に面会をご希望いたします。 [ 交渉に必須の柔らかな笑顔に穏やかな語り口で、 単刀直入に用件を伝える。 不在ならば、笑顔のまま何時間でも待つことにしよう。] (610) 2022/12/13(Tue) 21:15:31 |
【人】 X『教皇』 カルクドラ[『月』の証持ち・エーリクは 『教皇』の魂を持つ男と対峙した際 どのような表情を浮かべただろうか。 男には、魂が潤うような懐かしさと 月光が降り注いだような、安らぎが降り注いだ。 ──君の居る場所はここでは無い、僕達の居る場所だ。 すぐに口を突いて溢れ出そうな言葉も 手を引き、連れ出したくなる感情も抑え取り繕う。 やがて、縋るように歩み寄って来た少年の手を握り 改めて感じたことは 今にも崩れ落ちそうな、硝子のような儚さと繊細さ。 ── この壊れそうな少年を、守らなければいけない。 かつては身なりも良かったであろう彼の家族と どのような会話を交わしただろうか。 我が子を頼むと泣かれたか、政府の犬と疎まれたか、 それとも食い扶持が減ると歓喜されたか。 どのような対応であれ、少年を今まで育ててくれたことに 感謝を告げ、「御子息は我々が守ります」と 真摯な表情で告げたことには変わらない。] (611) 2022/12/13(Tue) 21:16:27 |
【人】 X『教皇』 カルクドラ[ 陽が落ち始めた橙の空の下、共に洋館へと向かう最中。 同行の職員と別れ、二人きりになってから声を掛ける。] 改めまして宜しく、エーリク。 僕はカルクドラ。 君の味方で、仲間で、友人だ。 辛いこと、苦しいこと……たくさんあったと思う。 最初の間は慣れなくて戸惑うかもだけど、 何でも頼って欲しい。 君には幸せになって欲しいから。 [ 負の感情程、心に刻まれやすいとは言うが、 正の感情も、同等に刻まれて欲しいもの。 少しでも思いが届いてくれれば良いのだが。] (612) 2022/12/13(Tue) 21:16:45 |
【人】 X『教皇』 カルクドラ[ しかし、男の期待とは裏腹に 洋館で暮らし始めた彼は自室からあまり出て来ず、 出てきたとしても陰のある表情のことが多く 時には抜け出すこともあった>>220 戻って来れば、どこに行ってたのかと優しく問い掛け 楽しかったか、と様子を聞く。 肯定が返って来れば良かったと微笑み 微妙な返事があれば、残念だったねと相打ちを打つ。 抜け出した時にも、「良く戻ってきたね」と 咎めることは決してしなかった。] (613) 2022/12/13(Tue) 21:17:03 |
【人】 X『教皇』 カルクドラ[ 男自身も洋館に来た当初は、素行が悪く 何度も抜け出し、悪さもしていたので その行為を咎める資格すら無かった。 男の場合、その度にヴェルトに叱られていたのだが。 『世界』── 七年前、少年が洋館に来た際、リーダー格だった男。 普段から優しい態度を崩さないヴェルトは 少年が悪さをする度に優しくも厳しく叱り、 真摯に向き合っていた。 一方、少年はどこ吹く風で話を聞き流し 言葉ばかりの反省の言葉を誂えていた。] (614) 2022/12/13(Tue) 21:17:16 |
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了 / 最新