【人】 DOM サクライ ー 過去・メールに望みを託す ー [まるでおとぎ話のお姫様みたいだ、と自分で思う。 「いつか運命の人が、自分の前に現れる」なんて。 別に、これはセックスや恋愛だけの話じゃない。 「話せばわかる」 「きっといつかは理解し合える」 現実は、そんな甘くて脆い砂糖菓子みたいな理想を 易々と打ち砕きながら横たわっている。 ─────それが分かっていながらも 友達に紹介されたサイトを開きながら 俺は甘々な理想を追っていた。 巷によくある出会い系とかマッチングアプリじゃなく サイトの管理者手ずから希望の合う同士を 引き合わせてくれるらしい。] (45) 2021/03/15(Mon) 14:52:13 |
【人】 DOM サクライ[「マゾヒストのネコ」─────……なんて きっと俺が思っている以上に沢山いる。 唾吐かれて罵られたい奴、鞭打たれたい奴、 縛られたい奴に、ほっとかれたい奴。 出会った中にもいろんなやつがいたけれど。 けれど、ふた晩以上を共にしたのは極わずかだし もっと回数を重ねたのなんか、 五本の指にも収まる程度。 多分彼らが期待するようなものを 俺が提供できなかっただけかもしれない。 ……でも俺だって、サンドバッグが 欲しかった訳じゃないんだ。] (46) 2021/03/15(Mon) 14:57:25 |
【人】 DOM サクライ [簡素なメールの文面とは裏腹に 俺の気持ちは、気持ち悪いほどに、重い。 だって、返信なんか来るわけが無い。 二人目の運命の人なんか。 結局、メールを出してしまっても 即時返事が来る訳でもなし。 本当の本当に、サイトの管理者から連絡が来るまで 俺はメールを出したことすら すっかり忘れてしまっていた。] (47) 2021/03/15(Mon) 15:05:25 |
【人】 DOM サクライ ー 現在・ロビーにて ー [結局何度確認してもメールの文面は変わらない。 俺は重くため息をつくと、また足を組みなおす。 こういう場所に相応しい服を もう少し考えてくればよかった……なんて 周りを行き交う人間や、調度品を見て思う。 オシャレポイントがスマイリーって子どもか俺は。 ほら、あんなふうに─────…… 目の前を過ぎる男性>>40を視線で追う。 品の良いスーツを、嫌味もなく着こなす彼は 多分俺より一回りほどは年下だろうか。 まあ、絶対俺と同業ではないだろう。 俺と同じようにらサイトで マッチングした相手を探しているなら そのお上品なスーツの下に、 一体どんな欲望を秘めているのやら。] (48) 2021/03/15(Mon) 15:38:22 |
【人】 DOM サクライ[不躾に詮索するような視線を向けて 俺はひとり、この歳若いリーマンの欲望のたけを 心の中に思い描いてみる。 ……ついでに、形の良い腰周りに目を止めれば その下の素肌を思い浮かべてしまう。 そんなに貧弱な体じゃない。 身体に肉がついていた方がいい。 骨味の強いのは、責め立てている時に ぽっきり折れてしまいそうで好きじゃない。 視線が交われば、そんな下卑た妄想をしてるのは おくびにも出さず、にっこり会釈でも返そうか。]* (49) 2021/03/15(Mon) 15:45:31 |
【人】 DOM サクライカメラマンは足が命なもので…… 靴といえば、貴方のも素敵な靴だ。 [隣のソファーへ促しながら 彼の足元に目をやる。 艶やかなブラウンの革靴、なんて 俺の下駄箱の中には一足もない。 仕立ての良いスーツを着て 足元までパーフェクトにキメている彼に より興味を持って、俺は半歩 腰を彼の方にずらした。] 俺は、─────あー、 こういう場では名乗らない方がいいのかな? [名乗ろうとしてから此処が何処だか思い返し 俺は苦笑した。 参った、こういう場での立ち振る舞いに 俺は全然慣れてない。] (116) 2021/03/16(Tue) 2:52:33 |
【人】 DOM サクライ[もし彼が気にならなければ 「サクライと言います」と名乗ったろうし この欲望に満ちた集まりの中、 彼が互いの正体を秘めたいのならそれを尊重し その時は「カメラマン」で通すつもり。 話しながらも、俺はこの人の内側に 興味を持つのを止められない。 でも、ヘテロかもしれないから 靴よりその形のいいケツを褒めたい気持ちは ぐっと抑えておこうか。] えっと、今日は……あなたも、呼ばれたんですかね? [「願望を叶えに?」と聞きそうになって 俺は慌てて言葉を選んだ。 余計な詮索と、この場に適切な世間話との 区別を付けるのはなかなか容易ではない。 そうして結局遠回りな言葉を選んでしまった 俺自身が可笑しくて、訪ねておいてひとり 息を漏らすようにして笑った。]* (117) 2021/03/16(Tue) 3:05:09 |
DOM サクライは、メモを貼った。 (a9) 2021/03/16(Tue) 3:11:54 |
【人】 DOM サクライ被写体は、風景とかが多いですかね。 たまに頼まれて結婚式とか成人式の 前撮りなんかに駆り出されたりもしますけど。 移りゆくものの、最高に綺麗な瞬間を こう、フレームの中に切り取る、というか。 なかなか楽しい仕事ですよ。 [懐っこく隣にかけてきた彼に>>140 俺はまたつい相好を崩した。 ついつい、先日撮ったネモフィラの丘の話や 盛りを迎えた菜の花畑の写真のこと、 そこを通る鉄道を背景に撮影しようとしたら 野良の仔猫に懐かれて、頭に猫が載ったまま 撮影する羽目になった話をしただろう。 俺の汚い本性はまだ包み隠したまま。 けれどここに来た時よりも、 随分と心が安らいでいるのを感じていた。] (176) 2021/03/16(Tue) 19:47:57 |
【人】 DOM サクライ俺の靴を一日磨いたって、 そんなに綺麗になりはしませんよ。 普段から大事になさってるんですね。 [何となく、たなごころに収めたものを とても大事に握り締めている人に見えて 俺はそんなことを言った。 それと同時に「この人は何を求めているのかな」と その疑念は消せそうになくて。] (177) 2021/03/16(Tue) 19:48:19 |
【人】 DOM サクライ本当?よかった、俺も初めてなんです。 [榊、と名乗った彼の状況は びっくりするほど俺と同じ>>142>>144 そうなると、途端に心の緊張がふっと途切れて 俺はソファーに身を凭せた。 教えてもらった名前がまさかの本名と知れば ]一転、俺は驚いてしまうだろう。 知らない人間相手に首元を晒すような無防備。 悪いやつに騙されてしまいやしないかと。 ええ。理想の相手が見つかった、って。 正直、未だに半信半疑なんですよね。 あー、なんていうか、その…… 随分方々手を尽くしても ぴったり会う人なんて 見つからなかったもので……。 [煙草の無い唇に無意識に手をやりながら 俺は困ったような笑みを浮かべて 榊さんの顎の当たりを見る。 微笑みを向けられても、答えに窮してしまって 俺はまた誤魔化すように笑う。] (178) 2021/03/16(Tue) 19:50:12 |
【人】 DOM サクライ[「俺の相手が榊さんみたいな人ならいいんですが」 ……いやいや。 「俺なんかそんなんじゃないんですよ」 さて、俺は返答するべき言葉を探して 人差し指で唇の形をなぞる。 そうしてコンマふたつの沈黙の後、] ……俺とマッチングした相手も そう思ってくれるのを願うばかりです。 [くしゃり、と目元を歪めた。] (179) 2021/03/16(Tue) 19:50:56 |
【人】 DOM サクライ[─────ところで、サディストというと 平生から傍若無人に振舞ったり 自分の暴力性にだらしが無かったりする人間を 思い浮かべるやつも多いらしい。 初対面の開口一番「何でぶってくれないの?!」と 半ギレしてきた奴もいた……あれは笑った。 あくまで同意の上、二人きりの空間で 互いに欲望を満たしたいのであって 公共の空間でそれをやらかしたらただの犯罪者。 露出狂と変わらない。 相手にとって本気で嫌なことはしたくない。 それは他の人間と何ら変わりはない。] (180) 2021/03/16(Tue) 19:58:01 |
【人】 DOM サクライ……失礼、時間までに、一本吸ってきても? [一言そう断るくらいには、 理性的な生き物でいるつもりで。 もしチェックアウトの時や、 長い夜の合間に見掛けたなら 気安く声がかけられそうな相手ができた。 ……俺の認識はまだそこで止まっていて、 彼と俺とが、同じ部屋に案内されていると知れば この時もっと気の利いた言葉がかけられていた、はず。]* (181) 2021/03/16(Tue) 20:07:19 |
【人】 DOM サクライ[自分の矜持も、羞恥も、何もかも投げ出して どんな状況でも傍を離れないで居てくれるような。 夢見る少女みたいな、 自己中心的な願いだと、わかっている。 わかっているのに、捨てきれない。] (258) 2021/03/17(Wed) 3:02:23 |
【人】 DOM サクライ……ふは、それ、高いのか低いのか あんまり分からないですね。 [理想の恋人と会える確率を聞いて>>208 俺は眉を下げて噴き出した。 この高そうなスーツと靴とに身を包んだ榊さんが 恋占いを真面目に信じる少女みたいで なんだかとても可愛らしかった。 喫煙のために席を立つと、 近くに感じていた温もりが>>207 すう、と肌の上で冷めていく感覚。 温かい空間は名残惜しいが、 身体はどうにも毒を欲していた。] いえ、此方こそ、ありがとうございます。 お陰で穏やかな心持ちでいられそうで。 [彼が立ち上がろうとするのを固辞しつつ 俺も背を丸めて頭を下げる。 榊さんの立ち姿は、社会慣れといえばいいのか、 凛と立つ百合のようだと思った>>211 こんな場でもなかったら 話す機会すらなかったかもしれない。 運命とは、つくづく面白いものだ。] (259) 2021/03/17(Wed) 3:03:43 |
【人】 DOM サクライ榊さんも、願いが叶いますように。 [そう言って、俺は喫煙所を探しに旅に出た。 一服する頃には、ちょうど時間になるだろうから 指定の客室にでも足を運ぼうか。 そんな算段を組む頭の片隅で 俺は榊さんの願いについて考えてみる。 別に、ここは必ずしもセックスをする 場じゃ無いかもしれない。 でも、あの人は何らか他じゃ叶えられない 願いを持ってここに来たのだろう。 煙草を灰に取り込む間も多分 その考えは頭から離れない。 あのスーツの似合う、可愛らしい好青年は 一体どんな顔をして女を抱くのだろうか、と。]* (260) 2021/03/17(Wed) 3:04:37 |
【人】 DOM サクライ[得てして、運命の出会い、なんていうのは 出会った瞬間にはそうだと気が付かないものだろう。 何気なく結ばれた縁が、 自分の中で大事なものの形を作って…… そこで初めて、相手を愛おしいと思うのだ。] (261) 2021/03/17(Wed) 3:07:42 |
【人】 DOM サクライ ー むかしむかしのおとぎ話 ー [俺の家には、金があって、コネがあっても 自由なんかひとつもなかった。 厳しい、束縛体質の父親に嫌気がさしたのか 物心ついた時には母親の姿はどこにもなかった。 二つ上の優秀な兄と、厳格な父親との暮らし。 父親の会社を継ぐことが決まっていた兄がいても 俺が完全に自由になることはなくて。 櫻井の家に相応しいように 小学校を出てまもなく、全寮制の学校へ行き それが終われば国立の大学へ、 その後は良き兄の補佐となるように みっちりと敷かれたレールの上にいた。 生まれてから、本当にずっと。] (262) 2021/03/17(Wed) 3:09:37 |
【人】 DOM サクライ[そんな人生を変えてくれたのは 無理やりに入れられた学校で たまたま同じ寮の部屋を宛てがわれた、 榛原、という男だった。] 「なんかさぁ、ずっと部屋帰ってきても ずっと勉強してね?えいちゃん」 [寮に帰っても机に向かっている俺に向かって ルームメイトはベッドの上でカメラを弄りながら 何気なく問い掛けてきた。] ……うるさいな、関係ないだろ。 [教科書から顔もあげずに突き放した俺に 榛原は「だよねぇ」と間延びした返事を返して ごろりと壁に顔を向けたまま屁をひった。 俺よりも一回り小柄な榛原は、 自由奔放な性格で、いつもカメラを首にぶら下げ 彼の何かの琴線に触れたものの一瞬を 一心に、一枚の写真に収めていたのだ。] (263) 2021/03/17(Wed) 3:10:18 |
【人】 DOM サクライ[ある時は勉強している俺の横顔に おもむろにシャッターを切ったり、 ある時は授業中にカメラを取りだし 外の鳥を撮影しては先生に絞られたり。 榛原は、本当に自由なやつだった。 人の迷惑も、傍からの視線も まるで何にもないみたいに。 くりくりと自由な方を向く髪を揺らして 気が付けばどこかへ駆けていってしまう。 そんな同室の男が、俺は疎ましくて けれど反面、どうしようもないくらい、羨ましかった。] (264) 2021/03/17(Wed) 3:10:48 |
【人】 DOM サクライ[ある日、学校から寮へ帰ってみたら 二人で使っている部屋が、 まるで誕生日パーティーみたいに 壁や天井から下がった写真でデコレートされていた。] 「あっ、えいちゃん。それ触んないで。 今発表会に向けて作品作り中」 [胡乱な目を向けた俺に対して 榛原はあっけらかんと言い放つ。 どうやら風景写真を使って 巨大なモビールを作るつもりらしい。 仕方無しに、俺はモビールを壊さないよう 吊られた写真を潜りながら 自分の机に向かおうとする。 そして、ふとそのモビールに使われた写真に 目をとめたのだった。] (265) 2021/03/17(Wed) 3:11:26 |
【人】 DOM サクライ[それは、本当に何気ない風景だった。 学校の昇降口を、内から撮ったもの。 仄暗いトーンの下駄箱の列を、 磨りガラスの向こうから差し込む光が 柔らかく照らし出している。 いつも何気なく見ている光景なのに ]何故かその写真に切り取られた風景は 神聖な宗教画のようにも見えて。 ……なあ。なんで、これを被写体にしたの。 [俺が尋ねると、榛原は一瞬手元から 栗色の瞳を上げて、ふにゃりと笑った。] (266) 2021/03/17(Wed) 3:12:15 |
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