162 【身内】奇矯の森【R18G】
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| 「分からないなんて」 大広間、まだここにいるクローディオに近づく。 「本当に、ユーが誰を庇ってるか……分からないなんて 言うのっ! 」 部屋に置いてある花瓶を掴む。さして大きくはないけれど、頑丈なそれ。 を、振りかぶって、クローディオの側頭部へ振り下ろした。 (0) 2022/07/20(Wed) 22:52:27 |
その言葉は、最初、誰に向けられたかすら分からなかった。
近付いてきたその姿に顔を向けて、そして。
「いっ……!?」
ガツ、と被っている骨と自分の頭蓋骨が鳴る。
ぐわん、と頭が揺れて、その外側にはヒビが入っただろう。
からん、からん、と。
被った骨の間から、宝石のような赤い結晶
が転がり落ちた。
| 「……が」 「クロがやったくせに!こうやったのっ?」 これまで出したことがないくらい、大きな声だ。 落ちた赤には目もくれないで。 リディの声に耳も貸さないで。 花瓶を落とさないように持ち直し、もう一回振り上げて勢いをつけて、振り下ろす。 止める人はいる? その 逆 は? (2) 2022/07/20(Wed) 23:15:59 |
そう、こうやったんだよ。僕は当然知ってる。
でもアベルの時よりは上手くできてる、かも?あんまり手が痺れない。
頭の骨がなかったらもっと短く終わらせられたかな。
……どうだろう。感情的に見えるかな。
ガンガンと音のような鈍痛を伴って揺れる頭に、もう一発。
避けることなんてできない、視界が悪いから。
なんで俺がやったと思うんだ、決めつけるんだ、って、弁明する時間すらない。
理由が知りたかった。多分もう知ることもないんだろう。
その場に膝をついて崩れ落ちる。
ぼろぼろと赤い結晶を落としながら。
落ちる結晶は止まらない。次第に、粒も大きくなっていく。
何も言わなかった。
どうせ信じてくれないだろ、この様子じゃ。
なんで?なんで?なんで?なんで?何で殴って?
だって、おかしい、ちがうよね、お話したじゃん。
一人ずつ、話していこうって。
俺達が疑われたら、話を聞いてもらえないかもしれないから。
少しだけ、黙っていようって。
そんな、なんで、おかしいよ。
なんで?なんで?殺すの?どうして?
大事な家族、大事な家族だよ。クロ、ノル、俺の大好きな人達。
やだ、やだよ、ノル、なんで、どうして。
まってよ、やめてよ、クロ、やだ、死なないで。
やだ、いや、お願いだよ。
俺の幸せ、きえないで。
| 「何か言ったら……、」 自分より低いところに落ちてきた頭にもう一回、をしようとしたところで、手にした花瓶はタンジーに渡るのだろう。 >>7>>9それが新たな傷を作るところも見る。見ている。 (10) 2022/07/21(Thu) 0:37:16 |
ーーー頭殴っておいて何か言えとか、無茶振りにも程があるよ。
言ったって、今火に油じゃん。
何言ったって、じゃあ、この傷は治るのか?こんな森の中、こんな体質持ちで、医者だっていないのに?
もう戻らないよ。何を言ったって。
三発目は別の方向、別の角度、別の高さから。
バコ、と大きな音が鳴って被っていた骨が割れきった。そのまま、膝ですら立っていられなくて、横に床に倒れた。
誰にも見せたことのなかった骨の下。
右目がなくて、血色の結晶が眼孔から突き出るように生えていた。
今まさに殴られていた箇所からも同じ結晶が育っていて、血飛沫の代わりにバラバラと飛び散った。
初めて見せる表情は、うっすらとした笑みだった。
苦しげに眉を寄せ、脂汗を掻き、自分を害する二人を見上げて。
疑われるような自分に対する自嘲と、寂しさを浮かべて笑っていた。
| 「だって答えて、 ……くれない ……から?」 クロ、初めて見た。顔を見て、きっと目が合った。 途端、開いた目から涙をぼたぼた零して。 >>12声が聞こえた。来てしまった。 来ないでほしかった気がして、振り返って「あ」、と声を上げ……ただけ。 (14) 2022/07/21(Thu) 1:40:08 |
僕は何を泣いてるんだろう?
馬鹿みたい。
やろうと思ってこうしたんだけど。 ?
| >>15返事は何にもしなかった。 その場に座って動かない様子なのを見て、目を背けて。 クローディオを見る。 君の怪我はちょっと分かりづらい。でもたぶん既に大怪我だ。 依然涙は溢れ続けていて、僕からかける言葉はもうない。 花瓶を拾う。みえない右手で軽く支えて。 瞬きもしないまま、額へ向けて、今度こそこれで終わるように。 花瓶の底を打ち付けた。 (17) 2022/07/21(Thu) 2:21:50 |
ーーーなんでそんな顔してるんだろなぁ。
俺だって思って、凶器を振るったんだろうに。
嫌いな、憎い、許せない俺がいなくなるんだから、喜べばいいじゃん。
思うんだ。思うけど、他人事みたいに声が出ない。
いくつか何か聞こえてきてたけど、見上げた先の二人が気になる、今は。
花瓶を振り上げた姿が、辛うじて見えた。
「ひ、とごろ、
しっ、
」
たった一言。全て通して、たった一言。
その一言を言うだけのために、喋る気力をとっておいたんじゃないかと思えるくらい。
でも、その声には誰を責める言葉も含まれちゃいなかった。
なんなら、やっぱり少し笑っていた。
きっといつも、悪戯されたりつまみ食いされたり、何か頼み事されたり、そんなときの「あー、もー」くらいの。
だって、だって、君たちはこの先も生きていかなきゃならないから、こんなことは許されたと思って、さっさと切り替えて忘れて
俺なんて捨て置いて。
そして。
ぐしゃ、と頭蓋が鳴いた。クローディオ本人の骨の音。
たくさんの真っ赤な結晶を撒き散らして、ーークローディオは動かなくなった。
| ぽい。 何にも聞こえないみたいに花瓶を投げ捨てた。 リディの声もクローディオの声も1つも余さず聞こえていたけど、確かにそうなっちゃったし。 そうだねって返すのもめんどうで。 なんだかブルーベリー食べたくなっちゃった。 「あっ」 踵を返し部屋を出て、主人の部屋へと走った。くれぐれも転ばないように。 逃げたようにも見えただろう。 (22) 2022/07/21(Thu) 2:58:25 |
ーーー気が付いたら、庭にいた。
いつもいた、畑の前にいた。
……サクッとあっさり逝けないくらい未練があったのか。笑えてしまう。
割れてしまったはずの骨の頭も戻っているから、表情なんて見えやしないけど。 どうせ誰も見ないだろうけど。
そんなに未練があったのに、抵抗もせず一言以外何も言わなかったのは。無意味としたのもあったけど。
「……アイツら、気に病んでないかなぁ……」
加害者二人が、先に害意を示してしまったから。
クローディオを殴ってしまったから。
何か言って、彼らがその場で間違いに気付いたら?
殴った事実も狂気も、消えやしないのに?
だから最後に間違いを指摘して咎めて、その中に俺は許すよって気持ちだけ込めて。
それだけが精一杯だった。
青々と、野菜が育っている。
葉が、茎が、風にそよいでいる。
でもそれに触れることもできない。
「なんにもなくなっちゃったな」
| (a28) 2022/07/21(Thu) 23:31:46 |
| ノルは、そこにあった死体を見て、触って、死んでしまっているのを確かめて。 (a29) 2022/07/21(Thu) 23:33:30 |
| (a30) 2022/07/21(Thu) 23:33:47 |
庭へ、出てくる。
頭の骨の割れて外れた、抜け殻になった身体を抱えて歩く。
引き摺るように歩くリーディエが先導。やがて彼女は、目に付いた大きなスコップを手にする。随分と、不似合いな。
二人だけの葬列。時を前後するか、見守る者がいるかは、知らない。
無意味な謝罪の音を垂れ流す。
だって、同行の彼女は許さない。
一番伝えたい相手には、伝わらない、筈、の。
畑のそばにずっといた。だから、庭から音がするのはすぐにわかった。
歩くのが少し難しい。ふわふわと浮いてしまいそうで。
そして向かった先、自分の死体と二人の姿を見る。
あぁ、そのスコップ、リディには大きいって。
指、痛めちゃうよ。折角綺麗な手なのに。
ユングだって、いいのに、俺重いだろ。
あぁでも、邪魔になるか、そんな身体でもきっと皮膚と肉は腐るものなぁ。
届かないと思っている。だから、思うだけ。離れた位置から二人を見て。
「……別に、いーのに」
君の発した謝罪の言葉に、思わずぽつりと声が出た。
「……………」
「死ぬってこんな感じなんですね〜」
*のんきでした。
フィラメントを殺し終わってから。
手を洗ってナイフを洗って、服もすぐ洗って別のに着替えて、太ももの怪我も隠すように手当てして、物置に来ている。
箱と箱の隙間に埋まるように座って、待ってる。この夜に話ができるのを。
自分のそれを見る前か後か。
分からないけど、随分呑気な声が聞こえて、勢いよくそっちを向いた。
「フィラー!?」
なんで。
……なんでって、そりゃ、答えは一つしかないんだろうが。
「………………?」
「……………………」
*電球の彼は、あなたを認めて。
「…………………」
「
死んでも幻覚って見えるものなんですね〜
」
*察しがとても悪いようでした。
〔▙ ▜▓▗
_ よくない……っ〕
思わず、聞こえた声に反論を。
それから、きょろきょろ、と周囲を見回して。
それから、腕の中の兄の抜け殻を見下ろす。
フィラメント
「………幻覚じゃないよ」
いや、じゃあなんだと言えば、幽霊とか言うしかなくなるが。
幽霊だよって自分で言うの、なんか違くない?
全然現実的じゃないし。
「なんでフィラーも死んでんの」
素っ気ない物言いは死んでも治らなかったらしい。
ユングフラウ
「…………ん?」
聴こえるとは思ってなかった。
こっちではなく死体の方を見るのは少しだけ寂しいが、気付くまでは教えないでおいてやろうと。
「いーんだよ。
……や、俺より怒ってるの、いるだろうけど」
改めて、謝罪はいらないと告げる。そして付け足した。
あんなに怒ってくれた、すぐそこにいるリーディエの思いを知っている。
だから少しだけ歯切れ悪く。
「あ〜……現実逃避してはみましたが、なるほど」
*何がなるほどなのでしょうか。
*うんうんと頷いてから、あなたに向き直ります。
「犯人に殺されちゃいました」
*こっちはこっちであっさりでした。
「………満足してなかったんだ」
殺す理由がわからないから、もしかしたら表現が違うかもしれない。
でも、主人を殺すだけじゃ済まなかった、ということなんだろう。
「誰、って聞いていいやつ?」
こっそりでもいいよ、と耳を差し向けてみた。
耳とはいっても骨に覆われているわけだが。
クロ
一瞬足を止めたリーディエ。だけど、一言口を動かして、それからまた歩み出す。
取り残されるように立ち尽くして。
おかしくなっちゃったのかな。
疑問符のついた声が、妙にリアリティを感じさせて可笑しくて。
〔▙ ▜▓▗
_ だからって……クロが責めない理由に、ならない……っ!〕
幻聴の君かもしれないけど、交わせるなら言いたいことが沢山あって、流れ出したら止まらない。
〔▙ ▜▓▗
_ 許さないでよ……痛かったハズの、君が……!悔しかった筈の、君が……
僕が、下手くそだったから……引鉄を、引いちゃったのは、僕でしょ……〕
〔⿻▫__ じゃあ、どうすれば良かったかなんて、わからないけど……〕
〔▙ ▜▓▗
_ 教えてよ、クロ兄…… 僕達、これからどうすればいいの……?〕
〔▙ ▜▓▗
_ ごめんなさい、ごめんなさい……〕
ユングフラウ
リーディエには聞こえないらしい。きっとそれが当たり前だ。
けれど、リーディエにだけは聞こえない方がいいだろう。きっともう一度辛い思いをさせる。
「そうだな」
一言。君の溢れる思いに、まず返したのはたった一言。
「死んだ人のために出来ることなんて何もないよ。
だから俺も、生きてるみんなのために動いたつもりだったよ」
少し長めに喋って、休む。長く沢山話すのは苦手だから。
「まぁ、そう。ユングのことはずるいなぁって思ったけど。
嘘はつくなよ、誰のためにもならないから。ワルゴがすごく怒ってたから、ちゃんと説明しろよ、手遅れになる前に」
君のためにも、家族のためにも。
生きていても死んでいても、あんまり変わらないかもしれない。だってほとんど動きも表情も分かりにくいクローディオだから。
「生きてる人のために、死んだ人ができることも、ないよ」
「でも、生きて。生きろ、ちゃんと前見て生きろ、俺が違うよってことだけユングには教えてあげるから」
はー、と息を吐く。こんなに喋ることなんてなかった。
死んでからの方が喋ることが多いとか、笑い話にもならない。そこでちょっと黙った。
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