148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ
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[命もない、魔法も使えない一人の子供が、
目的を果たすためには、ここに居る他なかった。
あれから5年ほど経つ、時が経てば経つほど、
運命的な再会を果たす可能性は低くなる。
正直、焦っている。
でも僕はこの店に運よく相手が来ることを願い、
待ち続ける以外に出来ることはない。
会いたいだけなら、探しに行けばいい。
世界中を探すのは簡単な事ではないけれど、
ただここで待っているよりは、まだ希望がある。
でも厳密に言うと、会う事が目的ではない。
僕が本当に果たしたいのは―――――……。]
| [少々買いかぶりすぎでは……? >>206 いや少々どころではなくて、恐縮してしまう。 占い師のお姉さんに言ったことに、嘘偽りはない。 しかし、これを強さと言って良いのだろうか。 なまじ後ろめたさがあるだけに、 "誉め言葉"になってしまう言葉は、 自分には不相応だとしか思えない。] そんな立派なものではないですよ。 目的の為なら手段は選ばない ……と言うようなニュアンスで、 いつまでも子供ではいられないと 思っているだけですから。 (0) 2022/05/27(Fri) 3:13:37 |
| 現実って結構きついですから、 振り落とされてしまう事もありますよね。 色々なことが重なりすぎて、 目を開けていられなかったり。 自分を責めても辛くなるだけだから、 一時的に見ないふりをするのって、 そんなに悪い事じゃないと思います。 [あんな身の上話をした後だから、 現実のきつさについては説得力があると思う。] (1) 2022/05/27(Fri) 3:14:20 |
[僕だって気付いている。
一寸先は闇。未来はどう転ぶか分からない。
問題の先延ばしをしているだけかもしれない。
運命を変えたはいいが、より悲惨な末路を辿るかもしれない。
知ってしまったからこそ、悲劇が生まれるかもしれない。
占い自体は当たっているのに、
それを伝えることで未来の展開にずれが生じて、
占いが外れてしまったような形になるかもしれない。]
| [でも、だからこそ僕は思う。] 占いで未来を知ったとしても、そうでなかったとしても、 結局どうするか決断するのは自分です。 その先に待つ未来は、全て本人の責任ですよ。 もし何かに依存して、決断を放棄したなら、 それも決断を放棄した、本人の問題です。 自分の運命背負うだけでも、結構辛いものなのに、 他者の運命にまで責任を感じて、 一人で背負い込むことはないんじゃないですか? (2) 2022/05/27(Fri) 3:16:26 |
| 相手が大切な人だったりして、 自分も背負いたい!って 思う事もあるかもしれませんけど、 それで心が潰れてしまったら、 きっとその相手は申し訳ないと思うんじゃないですかね。 これでは、どちらにとっても辛すぎるでしょう。 二人で二人分背負うとかなら、ありかもしれませんね。 [生前の知り合いの殆どを失った僕だから、 自分のやりたいように生きても (死んでるけど)、 苦しむ人はいない筈。それだけが、身軽で心地良い。] (3) 2022/05/27(Fri) 3:18:03 |
| 客観的に見れば死は不幸な事ですけど、 僕にとっては唯一の救いの道でした。 いえいえ。 僕も、お話を聞けて良かったです。 [「気にしてない」と言ってくれたから、 >>2:207 頭を下げるのはそこでやめた。] (4) 2022/05/27(Fri) 3:18:29 |
| [お姉さんから助言を貰えば、僕は目を瞬かせる。 >>2:209 人の想いは、人智を超える。 ……それが、負の想いでも? 一瞬表情が陰ってしまった気がするが、振り払った。] なんだか、すみません。 僕のことを一緒に願って貰うなんて。 >>2:210 でも必ず叶えたいと思っているので、 きっと実現させますよ。 [引き留められることもなかったから、 僕はそのまま席を離れた。] (5) 2022/05/27(Fri) 3:19:15 |
| [流れ星に願い事をするおまじない。 確かにこれは西の方の文化だから、 東の方に住んでいるであろう お兄さんには馴染みがないかも知れない。] 僕もそこまで詳しくはないんですけど、 西の方の経典が起源だと聞きました。 [お兄さんが描いてくれて地図を見る。 頭の中にある地図との照合を始め、 場所の特定は出来た。] (6) 2022/05/27(Fri) 3:20:34 |
| 有難う御座います。 これで、問題ないかと。
僕はお酒の用意をしてきますね。
[お兄さんの方に何もなさそうなのを確認したら、 僕は厨房の方へと向かった。**] (7) 2022/05/27(Fri) 3:20:55 |
| [厨房に戻ってきて、お土産用のお酒作りを開始する。 と言ってもフルーツやスパイスを予め漬け込んであるから、 僕が手を加えることは、そんなにないのだけれど。 赤ワインのサングリアは、 苺、オレンジ、ラズベリー、 ブルーベリー、柘榴が漬け込まれている。 これに砂糖やシナモンなどの調味料も入っていて、 お酒が得意じゃない女性とかでも、 飲みやすいんじゃないかな。 預かった瓶に丁寧に、サングリアを注いでいく。 僕はここで スターフルーツ をスライスして、一切れ入れた。 指を組み、目を閉じる。] (33) 2022/05/27(Fri) 20:19:29 |
| [今日はとても霧が深いからね。 残念ながら星どころか周囲も見えないけれど、 ここから目的地は離れている。 帰り着くまでに、何度か夜を迎える筈だ。 僕は毎晩、ここで流れ星を探すよ。 見つけたら今度こそ、きちんと本物の星にお願いする。 事情は知っているみたいだし、 ウーヴェに言ったら一緒に探してくれるかな? 今日のこれは、予行練習。 願い事3回に所在地まで、 星が落ちる前に言い切るのは中々大変だからね。] (34) 2022/05/27(Fri) 20:21:03 |
| [用意が整えば、またターバンのお兄さんの席へと戻る。] お待たせしました。 お持ち帰り用の、赤ワインのサングリアです。 僕がサングリアを選んだ理由は、 生前ホットワインをよく飲んでいたからなんです。 あれは過熱してアルコールを飛ばしているので お酒ではないですが、 材料があまり変わらないので、 サングリアも味に馴染みがあるように思えて。 寒い北の海で、オーロラを眺めながら父と飲みました。 毛布にくるまって、二人身を寄せあって。 [どんな奇跡をもってしても取り戻せない、僕の 宝物 。] (35) 2022/05/27(Fri) 20:22:25 |
| 飲んでいたのは普通のホットワインです。 でもこの味は、僕にとって特別なもの。 今でも冬になると時々飲みます。この店で。 失ってしまった悲しみを呼び起こしても、 僕はこの味が恋しくなる。 一人だったら絶対に飲む気にならないと思います。 ここには少なくとも僕にとって、 " 大切な仲間"しかいないから……。 だからここで飲むホットワインは、 とても美味しいんですよ。 (36) 2022/05/27(Fri) 20:23:21 |
| さっき別の店員と、 そのお友達と飲んだらいいって話しているの、 >>2:194 一寸盗み聞きしてしまいました。すみません。 ゴーストになった後のご友人と一緒に飲んだことは、 今まで無かったみたいですね……。 ここで働いていると分かるのですが、 出会ったばかりの相手でも、一緒にお酒を飲むと、 一人で飲むよりもずっとお酒が美味しくなります。 皆で乾杯した後の一口は、 一味違ったりはしませんでしたか? >>2:200 (37) 2022/05/27(Fri) 20:23:47 |
| 魔法をかけるより確実に、特別な製法よりも強く、 誰かと一緒に飲むことは、 お酒を何倍も美味しくします。 それが、自分のことを深く 大切に想ってくれる友人だったら、 尚の事、味は変わってきますよね。 だからこのお酒を"特別"にするのは、出来るのは、 僕はお客様ご自身なんだと思いますよ。 (38) 2022/05/27(Fri) 20:24:23 |
| ……とは言っても、お約束通り、 僕は全力で祈りました。 お二人に、美味しく飲んでもらえるように。 想いがが通じること、心から願っています。 [希望を託すように、僕は瓶を手渡した。 これが、お客様の求める答えではないだろうことは、 僕も分かっている。 それでも僕は奇跡を起こす役割を果たすのは、 見ず知らずのゴーストではなく、 友達の為にここまで頑張れる、 お兄さんであってほしいと思う。 人の想いは時に人智を超える。 >>2:209 ついさっき僕は教えて貰ったばかりだからね。**] (39) 2022/05/27(Fri) 20:25:15 |
| ― 閉店後:MiraggiO ― [夜は明け、霧幻の宴は終わった。 お客様が帰り始める頃、 僕は食器やテーブルの片づけをしながら、 ペガサスナイトのお兄さんの席の会計だけは 横目でしっかりと見守った。 本当に全部お兄さんの奢りだったのか……。 それは会計を見届けた者のみぞ知る。 明け方にウーヴェが肉じゃがを 食べているのを見たけれど、 >>16 残ってしまった料理はきっとそれだけではなかった筈。 そんな料理を従業員たちで、互いを労いながら食したい。 「皆でお疲れ様会をしようよ!」なんて 提案してみたけれど、 参加してくれた人はいたかな?] (46) 2022/05/28(Sat) 7:19:20 |
| (47) 2022/05/28(Sat) 7:19:49 |
| [僕の願いが叶う様にと、純粋に応援してくれた。 >>2:210 そうと知らないと分かっていながら、 悪事の片棒を担がせてしまったようで心苦しい。 僕の会いたい人は、大切な人でも何でもない。 寧ろその逆、―――憎い 仇 だった。] (48) 2022/05/28(Sat) 7:20:31 |
―
回想:僕たちの船が沈んだ理由
―
[ウルティマ・トゥーレへと向かう途中に、
僕たちは救援信号を出している船を発見した。
近づいて双眼鏡を覗けば、
船の甲板にがりがりに瘦せ細って、
最早服とは言えないぼろぼろの布を纏った青年が、
膝を抱えているのが見えた。
勿論、僕たちは救助に向かった。
父さんをはじめとした乗組員たちが船を移り、
青年に気をとられている隙に、
僕たちの船に待機していた賊が侵入した。]
[初めに人質に取られたのは、僕より幼い乗客の少女。
そして少女を盾にして、人質は増えていった。
当然、僕もその中に含まれた。
「私たちはどうなってもいい。
どうか乗客の命だけは助けて欲しい」
最後まで懇願する父を無視して、
下卑た笑みを浮かべながら、父の首を撥ねる光景を、
僕の瞳はしっかりと映した。
それを皮切りに、大人の男性は乗組員・乗客を問わず、
一人残らず命を刈られた。
僕はもうこの時点で、
後生だからいっそ今すぐ僕も殺して欲しいと思ったよ。
けれど、地獄の宴は終わらなかった。]
[次に狙われたのは女性。
「クルーの皆さんが噂しているのを聞いたの。
貴方がとってもお料理上手だって。
プロのお料理も良いけれど、
貴方の作った料理も食べてみたいわ」
どこかで僕の境遇を知って、
優しく接してくれた乗客の奥さんが……。
「私は途中で下船して、恋人の元へ行くの。
二人暮らしが安定したら、結婚するわ。
ハネムーンで、再会できると良いわね」
幸せを約束されていた筈の、乗客のお姉さんが……。]
[他にも船に乗っていた花は一輪残らず、
海賊どもに踏み荒らされた。
奴らが何をしたのか、子供には分からない。
彼女たちが何をされたのか、子供には分からない。
でも、死んだ方がマシな事をされているだろうことは、
分かってしまった……。]
[こんな所に最高にイイ女など居ようものなら、
どんな酷い目に遭ったことか、子供の僕にも知れたこと。
既にこの世に存在しないものを盗むことは出来ない。
だから僕は心の底から、
母さんが生きていなくて良かったなどと、
罰当たりなこと思ったんだ。]
[希望と愛を乗せていた船から、
幸福は残らず奪われた。
最後に僕たちの船は油を撒かれて火をつけられ、
夕日みたいに沈んでいった。
僕たち女子供は、そのまま海賊のアジトへ拉致された。
最早暴れて抵抗する元気を持つ者も、
泣き叫ぶ元気のある者もいなかった。
アジトには他にも何処かで僕たちのように
拉致されてきたのであろう、
女性や子供たちが沢山いた。]
[そして今度は、僕たちを奴隷として売るために、
船で奴隷市場のある場所へと移動する。
不衛生な船室には、絶望に塗れた子供たちが、
ぎゅうぎゅうに犇めき合っていた。
一日に一度、魚に餌をやるように、
パンくずが僕たちの押し込められた
船室にばら撒かれる。
それをわれ先にと、奪い合いながら貪った。
最早、人としてまともに生きているとは、
到底言えない有様だった。]
[いつしか狭い船室内で、しきりに咳をする子供が出てきた。
人数はどんどん増えていき、死者も出始める。
海賊は子供がこと切れているのを確認すると、
面倒くさそうに船室の外へ運んでいった。
まともに葬ってくれるような連中じゃない。
船外へと子供たちの屍は投げ捨てられていたのだろう。
当然医者が診ることなどありえないから、
これは僕の推測だけれど、
あれは恐らく肺結核だったのだと思う。
生きているだけで満身創痍な子供たちに、
病は翼を開く様に軽やかに蔓延した。
当然僕も、同じ病気を患った。]
[高熱に、止まらない咳、血痰……。
最初はすし詰めだった船室内に、
ぽつりぽつりと穴が開いていく。
「助けて」と、声にならない叫びをあげた時、
僕の瞳が捉えたのは、幸せだったころの幻。
助けて欲しいのは、皆の方だったと思う。
僕は今の今まで、のうのうと生きてしまった。]
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