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【人】 雪花の魔女 マギサ[なんだったらパーティに入って欲しいと言う彼>>5の言葉に思い出した。] そう言えば、お前のところ引き抜かれたんだっけ [名前の知らない男が、別々のパーティからメンバーを引き抜き、一つのパーティを作ろうとしていたことは知っていた。 それの対象に彼のパーティメンバーが選ばれたことも、噂が流れていたから知っている。] ああいうのって、いつか身を滅ぼすと思うけどね 人を巻き込むか、一人で朽ちるか まー、僕には関係ないけどね [そうやって、身を滅ぼした奴は何度も見てきた。 一時的には成功するかもしれない、けれどその先に待ち受けるのは破滅だけ。] (2) 2023/12/12(Tue) 23:58:11 |
【人】 見習い ディアスポール やりますか! それじゃあ、ごろんしてくださいね〜 [なかなか乗り気なお返事>>2:33をいただけたので、 では早速…とその前に、誘導されるまま歩き、 先輩に目線を合わせるようにその場に座っては、 ブラシを充てる前にそっとひと撫で。 人の様相が嫌というわけではないけれど、 りっぱな毛というのは獣人としても誇らしいものだった。 きゅっとブラシを握ると、ブラシの毛先が粒子のようにきらめく。 体内と空気中の魔力に作用している…と、 聞いて入るが、これがどう効力を発揮しているかまではわからない。 ただ、一度あてがえば仄かな温かさがじんわり広がるだろう。 その熱にスッと毛玉が解れ、ミルキーシルバーのお御髪は艶を増していく。] (5) 2023/12/13(Wed) 23:26:05 |
【人】 見習い ディアスポール[先輩の「図らい」によって、 その時の少年に喧騒はさほど耳に入ることはなかった。 想像通り、聞こえたところで 余計な善意で巻き添えを食らって 転がってしまうのが関の山。 果たしてそれがこれから冒険者になるにあたって、 そこまで庇護にされていて良いものかと 誰かからは言われるかもしれないけれど。 今この時間だけは、甘えていてもいいだろうか。]* (6) 2023/12/13(Wed) 23:26:17 |
【人】 癒し手 イクリール[離れたら、その場に座り込んでしまう。 身体の痛みはあるし、大きな魔法を使った、疲れもある。 それに……思いのほか緊張していたようで、それが途切れたから、座り込んでしまったのかもしれない。 首に振れる。 癒しなど自分に使っていないから、ここには惨い痣が残っている。 あの痛さ、苦しさは忘れていないし、恐くもあった。 それなのに、やはり心配の方が大きくて、伝えたからと言って、 憂さ晴らしした後と言っても、また噛みつかれる可能性だってあった。 それを考えれば、緊張してない方がおかしいかと納得する。 ――緊張の糸が切れたせいだろうか。 首も身体も…全部が全部、痛い。 今まで平気な振りをしていた分のが襲ってきているようで、すぐには動けない。 追いかけないように時間を潰していたとすればよいかと、しばらく座り込んで、空を見上げているのであった。*] (9) 2023/12/14(Thu) 23:06:19 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム― むかしばなし ― [遠い遠い昔。 とある国のとある街に一人の少年がいた。 父親の顔も、母親の優しさもしらないその少年は 老人のように白い髪と雪のように白い肌、血のように紅いその瞳から 街の大人たちからは忌み子と呼ばれ、子供たちからは遠ざけられて、 いつも、ひとりだった あるとき、少年のいる街にとある一団がやってきた。 皆から『勇者』と呼ばれ慕われるその一行を率いているのは 眉目秀麗な一人の青年。 お日様のような金色の髪と、澄み渡った空の色の瞳は 少年にはとても、眩しく映って。 ―――…彼等に、手を差し伸べられたとき。 …あのときの気持ちは、今でも忘れられない。 ぽろぽろと零れる涙が、どうしようもなく温かくて、 胸の中が涙の温度をしたもので満たされていく。 きっと、あの気持ちを幸福感と人は呼ぶのだろう。 この世界に、自分のことを必要としてくれている人がいる。 そのことが、どうしようもなく、嬉しかった。] (10) 2023/12/15(Fri) 23:03:01 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[『勇者』がいうには。 この国には『魔王』と呼ばれる存在がいて、 彼がこの国に瘴気をばら撒き、災いを齎している。 いずれ魔王の齎す災いは、この国のみならず世界各地に波及していくことだろう。 それを阻止するために、自分たち勇者が魔王と討ち取らなければならない。 そのために、力を貸してほしい、と。 それから。 少年は、勇者たちのために懸命に自分の力を磨いた。 剣や弓の扱いを覚え、魔法について学び、 魔物たちの生態やダンジョンを踏破するための知識を学んだ。 何かを新しく覚えるたび、勇者は少年のことを褒めてくれて。 それがとても、嬉しかった。 誰かに自分を見て貰えることがこんなに嬉しいことなんだと 少年は、勇者たちと出逢ってはじめて知った。] (11) 2023/12/15(Fri) 23:03:47 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[それから。 勇者は何度か少年を精霊たちの隠れ里へと連れて行った。 里というよりは異界そのものといったほうが正しいのかもしれない。 この世界に幾つかあるらしい、精霊たちの暮らす異界への入り口。 今は殆ど残されていないけれど、あの頃はまだ、人の子も 隠れ里への入り口を見つけて、行き来することができた。 手のひらに乗るような下級精霊から、すらりと背が高い大人びた上級精霊まで。 四大精霊と呼ばれる彼等の王も、なんというか一癖も二癖もあったが どういうわけか、少年は精霊たちにとても良くしてもらっていた。 あの頃の少年は、子供だったから。 どうして、精霊の皆が優しくしてくれるのかも。 どうして、精霊の里を訪れるたび、勇者が複雑そうな顔をするのかも 僕には、よく、わからなかった。 ――あの頃はただ。 少年は、自分が頑張れば、皆が幸せでいられると、 笑ってくれると、思っていた。 精霊たちも、この国の人たちも、仲間たちも、―――…勇者も。] (12) 2023/12/15(Fri) 23:04:28 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[あるとき、精霊王たちと会ったとき、 彼等から一振りの剣を賜った。 「いつか、これがお前の役に立つときがきっとくる」と、 そういって渡された剣は、昼の光の中でもきらきらと輝いていて。 その贈り物が、少年はとても嬉しかった。 ――…精霊たちの里から戻った時、 宿屋の一室で勇者と仲間たちに囲まれた。 そうして「精霊の剣を勇者に渡せ」と、皆口々にそう告げる。 どうしてなのか、あの頃の少年にはわからなかったけれど。 勇者が望むのなら、と。 彼らに言われるがまま、精霊の剣を勇者に差し出した。 …「勇者がついに精霊の剣を手に入れた」と。 そんな話が王都に広まったのはそれから少し経った頃。 精霊の剣を手に入れたとされた勇者は、 以降、手にした精霊の剣と共に数々の武功を打ち立てた。 沼に棲む毒竜を倒し、魔王の下僕である黒い鬣の獅子を打倒し。王の一人娘とも心を通わせた。 それこそ、絵に描いたような英雄譚を彼は地で行くことになる。 少年は、それでも勇者のために戦う心積もりでいた。 初めて出会った日、差し出された手の温かさを少年はまだ覚えていたから。 そうして、勇者一行はついに魔王と戦うその時を迎えた。] (13) 2023/12/15(Fri) 23:07:57 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[戦況は、圧倒的に勇者たちのほうが有利であった。 既に魔王側の戦力になりうる魔物たちはあらかた討伐されており、 魔法使いの優秀なアシストにより、幾重にもデバフをかけられた魔王は 瞬く間に瀕死に陥った。 …いける、と勝利を確信したのだろう。 勇者と戦士が魔王へと駆け出す。 そうして先陣切って魔王の前に飛び出してきた勇者と戦士へ、 咆哮と共に巨大な竜へと姿を変えた魔王の尾の一振りが襲い。 二人諸共、魔王城の巨大な柱に叩きつけられた。 前衛の主要メンバーが脱落したことで、勇者たちのパーティに動揺が走った。 すぐさま僧侶による防御魔法と魔法使いの攻撃魔法が展開されたものの、 総合的な火力の不足から、残されたパーティはじりじりと追いつめられていく。 どうにか、しなければいけない。 せめて、数秒隙を作ることができれば、最大魔法の火力をお見舞いしてやるのに。 防御魔法によって張られた結界の中、そうぼやく魔法使いの言葉に、 ―――少年は知らず、駆け出していた。 今、できることをするために。 ほんの少しでも、魔竜の気を引いて、隙を作るために。] (14) 2023/12/15(Fri) 23:08:34 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[魔竜の許へ駆け寄り、近づいては遠ざかるを繰り返して どうにか此方へ気を引こうとする。 嘗て精霊たちに教わった力の使い方は役に立った。 吐き出される炎と毒は、水と炎の精霊たちから教わった魔法で相殺し 風の精霊に教わった魔法で、魔竜の鋭い爪や尾を避ける。 そうして地の精霊の力によって突如生えてきた大樹によって、 魔竜の巨体の動きを妨げて。 そのなかで放たれた魔法使いの一撃。 長い詠唱の終わりと共に彼女の杖から放たれる強力な光の束。 絶叫と共に深い傷を負った魔竜の許へと再び駆け寄る。 魔王を…勇者が倒せなかった怪物を、自分が倒せるとは思わなかった。 ただ、目の前で勇者が倒されたとき。 自分は、咄嗟に動くことができなくて…そんな自分が、ただただ腹立たしくて。 魔王の許へ駆け寄りながら、剣を握る手に力を込めて地面を蹴り上げ。 ――精霊たちよ。どうか、力を。 祈りと共に大きく剣を振りかぶった。 ――そうして、この国に大きな災いを齎した、その魔王は滅びた。] (15) 2023/12/15(Fri) 23:09:22 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[その後。 無事生存が確認された勇者と戦士と共に王都へと帰還した。 国王をはじめとして国民は皆勇者たちを褒め称え、 国中が大きな喜びに包まれた。 その日の夜。王によって開かれた宴のとき。 少年はこっそりと、宴を抜け出した。 …どこかで精霊たちが、悲しんでいる声が聞こえたから。 『どうして、あなたが魔王を倒してしまったのか』 そう嘆く精霊たちの声に困惑していると、精霊王の声が聞こえてきた。] (16) 2023/12/15(Fri) 23:10:10 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[――『魔王』とは。 異界の神がこの世界を侵略するために生み出した機構そのもの。 魔王を倒したものは、何れ心身を蝕まれ新たな魔王として作り替えらえる。 魔王を完全に滅ぼすことはできない。 我々精霊たちは、魔王を封印するために貴方に加護を与えた。 あの勇者が魔王を倒し、新たな魔王になったとき。 貴方に渡したあの剣で、魔王の命を奪い封印するつもりでいた。 ――なのに。 貴方は、自分自身の手で魔王を倒してしまった。 そう、精霊王たちが言い終わると同時に、悲鳴が上がった。 『魔王がまた現れた』と叫ぶ声と逃げ惑う人々。 驚いたのは、彼らが明らかに僕のほうを見て怯え逃げ惑っているということ。 思わず勇者たちのほうへと振り返ると。 戦士や魔法使い、僧侶が、各々の得物を構えて此方を睨んでいるのと。 姫を背に庇うようにしながら、困惑にも似た表情を浮かべる勇者の姿が見えた。] (17) 2023/12/15(Fri) 23:11:50 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[…『あいつがいない』と、言い出したのは誰だったか。 勇者パーティの誰かだったか、それともその場にいた貴族の誰かだったか。 『あの忌み子が裏切って魔王に加担したに違いない』 そんな戯言に同調し始めたのは誰だったか。 …今となってはどうでもいい。 あの後、どうやってかは覚えていないけれど、 なんとか無我夢中で逃げ出した先は、 つい先まで激戦を繰り広げていた魔王城。] (18) 2023/12/15(Fri) 23:12:45 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[――どうして、こんなことになったのだろうと思う。 ただ、勇者の役に立ちたかった。 大切な恩人の幸せそうな顔をずっと間近で見ていたかった。 戦士や魔法使い、僧侶。 子供の頃からずっとそばにいた仲間たち。 彼等の役に立って、王様や民に喜んでほしかった。 だけど、今、自分は独り。 魔王という機構そのものに変わり果ててしまった自分は 誰かに殺されない限り、ずっと魔王のまま。 老いることも、病で死ぬこともない。 だけど、ずっと永遠に独りでいることは、…死んでいるのと 何が違うというのだろう? 向けられた敵意と憎悪の視線の記憶も、僕を苦しめた。 どれだけ頑張っても、どんなに尽くしても、 彼等は僕のことなんて勇者の付属品でしかなかった。 そんなことは、わかっていたけど。それでも。 あのときのことを思う度、胸の内から湧きあがる どうしようもない負の感情に気が狂いそうだった。] (19) 2023/12/15(Fri) 23:14:48 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[ーーー…そんな、ある日。 僕が魔王と呼ばれるようになって少し経った頃。 魔王城に、勇者が一人やってきた。 …最初は、何かの間違いか、それとも罠かと疑ってしまった。 王の覚えめでたく、姫とは相思相愛の次期国王。 そんな彼が、僕を追って単身ここに乗り込んできた。 朽ち果てた大広間で、僕と勇者は対峙する。 僕自身は、何も変わったつもりはないのだけれど、 今、彼の目に僕はどう映っているのだろう? あの夜、皆が見たのと同じ、化け物なのだろうか。] (20) 2023/12/15(Fri) 23:15:40 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[勇者は、告げる。 魔王を倒す旅に出る少し前、故郷の託宣によって 自分は魔王を倒す勇者ではないということを知らされたこと。 それでも、英雄になる夢を諦めきれなかった勇者は、 同じく故郷の託宣によって知らされた『本物の勇者』と接触し、 それがまだ年端もいかない子供だと知るや、その子を傀儡とするために近づいたこと。 勇者を育て、彼を通して精霊と誼を結び、そして精霊の剣を手に入れてからは 自分が本当の勇者だと周囲に思わせた。 実際、精霊の剣は武器として申し分なく、それを用いた怪物退治のなかで 気が付けば次第に増長してしまっていたということ。 勇者は、告げる。 王都では恩人である勇者を裏切り 魔王に与したとされる少年を倒すべきという世論が多数であること。 そして、再び現れた魔王を退治するため、 今度は軍を派遣しようという王たちを説得して、ここまで一人できたということ。 本来は自分が成り果てるべきだった『魔王』という役割を 今度こそ果たさなければならないと。 そして、何もかもを終わりにしよう、と。] (21) 2023/12/15(Fri) 23:16:42 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[勇者の腰につけられた一振りの剣。 嘗て精霊王たちより賜ったその剣を、僕は引き抜くと。 あの日と同じくきらきらと輝くその刀身を自分の喉元に押し当てた。 『魔王』という機構を壊すため、精霊王たちが鍛え上げた剣。 それを用いて、自害すれば…自らを封じ込めさえすれば。 新たな魔王を生み出す連鎖を、断ち切れるのではないかと。 魔王になり、城に閉じこもる中でずっと考えていたのがそれだった。 喉に押し当てた刃を滑らせたとき。 驚くほど、そこに痛みはなかった。 ただ、自害の瞬間に、勇者の顔に浮かんだ絶望と後悔の表情は はじめて彼と出会った時と同じくらい、忘れられないもので。 …いつか、ごめんねと。 叶うならばそう、彼に謝りたい。] (23) 2023/12/15(Fri) 23:19:35 |
【人】 飼われ賢狼 アルブム[ーーー…そうして。 僕は長い長い時間、封印の中で眠りについた。 世界から消失し、地下迷宮と化した魔王城の中、 僕らの思い出が遠い日の御伽噺になるまでの時間。 あのときから、ずいぶんと長い時が流れて。 やってきた冒険者たちの賑やかな声と。 ―――とある戦士が幾度となく口にしていた言葉に惹かれて。 僕は、新しい時代を生きる世界へと連れ出されることになる]* (24) 2023/12/15(Fri) 23:21:54 |
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