246 幾星霜のメモワール
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| >>6 ダーレン 体格のいいダーレンより一つ頭上にあるアイサインが明滅する。よりよい場所に引き取られ、飴も本望だろうと思う。誰にも受け取ってもらえなければ、この祭りで知り合った少女の土産にでもしてやろうかと思っていたが。この男、案外甘いものが好きなのかもしれない。 「………そんなところだ」 「………酒精の席にて――」 「………名前が出たものでな」 「…………貴殿といい……あの男といい」 「………この木偶は、酒の肴にならぬだろう……」 黒眼鏡の男と"酒席"を嗜んでから時間が経っている。流石のあの男、広く、この祝祭の参加者に目星をつけているらしい。 エール片手に管を巻くダーレンに小さく電子音を零す。 「………神託の掲示」 「………既に見られたか、御仁」 名を連ねていた二人は、あの教会にも居た顔だ。顔を出したというが、或いはそれを身に来たのかと思い、尋ねた。 (7) 2024/02/05(Mon) 1:37:26 |
| シヴァは、「改めて乾杯でもしとく?」 祭りの始まる前夜、おどけた調子で笑っていたのだった。 (a1) 2024/02/05(Mon) 6:40:04 |
「 たからもの …… 」
反芻ののち、またくすりと笑う。
聖女本人も知らない、聖女の宝物。
ううん、それだけじゃなくって。
「 ――― まあ。
わたし 王冠に祝福したことなんて ないわ、
にせもの にせものよ これ !」
……正確には、聖女を祀る神殿が祝福を施した可能性はあるのだけれど。
そんなことまで思い至らないものだから、だまされちゃだめよ、なんてお姉さんきどり。
それでも。
「
…… お姉ちゃん …。
…… ふふっ、ええ !
今日は たくさん遊びましょうね!
ファリエお姉ちゃん!
」
今日の妹は、こちらの方。
ぱたぱたとはしゃいで、それでもあなたの傍を離れないまま。
ふたりで祭りの喧騒をあちら、こちら。
…… たからもの。
そんなものがもしあるのだとしたら。
聖女にはひとつだけ、浮かんだものがあったけれど。
やっぱり口にしないまま、ただただ無邪気に笑いかけていた。
だってそのたからものは、この手を離れてゆくかもしれない。
その方がしあわせなのかもしれない。
―――そう思えばこそ、口になんてできるはずもなかった。
| >>7 グノウ 誰かの口へ入ることになりそうで、飴もきっと喜んでいることでしょう。今は男の手に握られるばかりだが。 咥えた煙草に火を点けて、煙を一度吐き出したのち。 近くの屋台で新たにエールを買い直した。まだまだ飲むつもりでいるらしい。 「そんなことだろうと思った」 「俺はあんたのこと、全然知らねえけど。 見た目といい生き方といい、酒の肴になりそうな話は掘れそうだけどな」 木偶、なんて自虐する程でもないだろう。最も、この男が一見して得た印象に過ぎない。 実際のところ、シヴァからも自己紹介時点での情報しか聞いてはいないのだ。 「加護がどうとかってやつだろ」 「見た。……実際のとこ、どうなんだろうな。祝福なんて眉唾物だろ」 信心深いとはお世辞にも言い難い男。煙を吐き出しながら、そんなことを言ってみせるのだ。 (8) 2024/02/05(Mon) 18:29:53 |
「呪われてあれ」
最後の部屋の扉を開いた時に聞こえた声。
理解をするのに数秒を要した。
多分、これが呪いの品になった。
実際スキルを使って見てみれば、死の呪いが見えた。
遺跡の作者は嫉妬心やプライドの塊であったから、
死だなんて重い罰をくだすのならそれは、
本気で殺そうとしてのそれだと理解できた。
が、呪いは効果を持たなかった。どうしてか。
呪いの種類には覚えがあった。
魂の萎縮──ここでの魂はゲーム的に言えば、MPやMAGのこと。
それらの上限が減少していき、それに伴い精神的にも弱っていく。
最終的には恐怖に苛まれて死ぬ呪いだ。
そうであるはずだから、何も起こらないことには疑問しかなかった。
気付かない内に魔法が使いづらくなっていたり、
だなんてこともない。それくらいは感覚でわかる。
古い物だから効果を為さなかったということも考えづらい。
呪いは確かにそこにあると判断できるし、
この遺跡を作った彼の聡明さと周到さを見るに、
時が理由で効果をなくすようなものには思えなかった。
即死や封印ではないから、装備による無効でもないだろう。
ミューツバイに呪い無効のギフトでもあっただろうか?
神聖国家の一貴族だ、あってもおかしくはないが。
その場で答えが出ることはなく。
遺された研究物を一通り頂戴し、遺跡を後にする。
そうして数日は、持ち帰った記録に目を通して過ごした。
薄々そうでないかとは思っていたが、
あの遺跡を作ったのは隠し棚にあったあの本の著者で間違いなさそうだ。
ミューツバイではないが、あの地方の出身だったのかもしれない。
そうなると、あの国出身の人間には効かないとか、
そういうことがあってもおかしくはないのだろうか。
──なんて考えは、楽観視が過ぎた。
満月の夜、腕輪の藍海晶の手入れで光を浴びせる。
何度もやってきた、いつものこと。
腕輪を窓辺に置くのに外した時、背筋が凍る思いがした。
理由は全くわからないが、漠然とした恐怖感に襲われて。
パニックの内に腕輪を握り締めると、その感覚はスッと引いた。
つまりそういうことだった。
腕輪はすぐにつけ直して。
手入れをしないわけにもいかないから、窓辺に右手を置いて一晩を過ごした。
眠るだなんて、とてもできなかった。
即死か封印かならきっと封印だ。
そう言えばこの呪いが出てくるイベントの
おすすめパーティーメンバーは素で封印耐性持ちだった気がする。
レベルでゴリ押してのクリア後に
適当に流し見ただけだったものだからすっかり忘れていた。
死ぬんだ俺
、死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬ、死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬんだ死ぬんだ
死ぬんだ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ
死ぬんだ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ
死ぬ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃう、
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