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人狼物語 三日月国


74 五月うさぎのカーテンコール

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[身体を離して、ゴムを結んで捨てると、床に落とした服の中から下着だけを履いて立ち上がる。
水を一杯飲んで、風呂の支度だけしたら、もう一度彼女の元に戻った。]


…………。


[シフトは夜からだと言っていたから。
もう少し眠っていても大丈夫なはずだ。
何も言わずに、ベッドに腰掛けて髪を梳く。
飽きることなく彼女を見詰めて。
目を覚ました時、最初に目に入るのが、俺だと良い。
そんなことを思いながら、身動ぎする嵐に、目を細めた。]

[彼女が目を覚ましたら今度こそ……]


おはよう。


[そう、微笑んで。]


立てる?
風呂を沸かしてあるから……
一緒に行こう?


[無理をさせた自覚はあるから。
共に入らないとしても、風呂までは腕を貸そう。
ふらつくようなら、共に入ろうと言うけれど。

床の上には、服や下着が投げ捨てられたまま。
請われれば拾って渡すけれど。
風呂に入れば脱ぐのに、何故着る必要があるんだろう?
そう思いつつ俺も、指示をされれば大人しく服を着た。]


 自分で着付けるとなると、慣れていないと結構大変なんです。
 出先で着崩れた時も、自分で直さないといけないし。

 着こなせる人は素敵ですよね。

[私だって一通り習いはしたけれど、普段着ていないと着付けの順番すら忘れてしまう。小物を手にする順番すら怪しい。
どちらにしろ冬までにお浚いすることは計画として頭の中に入れておく。

……もし、着物を脱ぐことになっても、着付けられるように。
と、そこまで考えてぶんぶんと首を振った。違う。そうじゃない。

ひとまずは目先の浴衣デートに浮かれておくことにしよう。]


 ……そうなんですか?


[絶妙と言われても。
褒められているのだろうと思うけど自覚はない。
寧ろ甘えてばかり居る気がするから、口に出たものなのに。

でも、肯定的だということは少なくとも嫌がられてはいないということで。
そのことに密やかに安堵の息を洩らしながら。
足元に掛かる彼の後頭部を見つめて、大人しく下駄に指を通した。
指先は手持ち無沙汰に髪の彼を弄んで。

離れ際に、キスを落とされたなら、]


 ……ひゃ、


[ぴくんと身体を揺らして、また頬が赤く染まった。]

―― 温泉街にて ――

[温泉街を手を繋いで歩く。
見慣れない土地で、普段見慣れない格好をして歩く街は新鮮だった。
慣れない下駄は歩幅をゆっくりとさせる。

隣を見上げて、「してみたかったんです、浴衣デート」と本音を隠しきれずににこにこと笑って告げたなら、笑われてしまっただろうか。

時刻はとうに昼下がり。話題は自然とお昼ご飯の話へと移る。]

 はい、いいですよ。
 麺類だったら……、私、お蕎麦が食べたいです。
 山菜そばとか、ありますかね?

[通りがかりの店舗で立ち止まり、サンプルが並んだガラスを覗く。
丼ものやうどんが並んだ一角に、山菜の水煮ととろろが添えられたお蕎麦を見つけて、指で指し示す。
そうして彼のお目当てが決まるのを待ってから、暖簾をくぐった。*]

[初詣ともなると、半年以上は先の話だ。
二人ともその時に一緒に居ることを信じて疑わず、当たり前のように共に行く前提で話せるのが嬉しい。
自分が「見たい」と言ったから、きっと彼女はそれまでに練習してくれる筈。

……途中で脱がしてももう一度自分で着られるように。]

[卯田としては勿論もっと甘えてくれても良いし、もっと色々してあげたい気持ちはあるけれど。
そのやりとりに罪悪感や負担が生じたら、関係が変わってしまいそうな恐れはある。
自分はつい行き過ぎてしまいがちだから、紫亜がストップをきちんと言える子なのをとてもありがたいと思っている。]

 ……感じた?

[真面目な話はまたする機会があるだろう。
今は、デートを前にして浮かれるばかり。

爪先のリップ音に上がる小さな声にクスリと笑って。]


――温泉街――

[流石の野菜好き。
山菜は春先に時々レコメンドに上るが、自分では特に買ったり食べたりはしない。
アク抜きが大変だからというのもある。

彼女とは違うものを注文しようかと、此方はシンプルにざるそばの大盛りにした。
セットでいかなごのくぎ煮と山椒の実が入った混ぜご飯がついてくるらしい。

いただきます、と手を合わせ、出て来た蕎麦をすすったら、思ったより強めに蕎麦の風味を感じて目を丸くした。
侮れない、温泉街。
この驚きを共有したくて、紫亜に視線を向ける。]

 美味いな、ココ。

[そば自体は彼女と同じものだから、「お裾分け」はご飯の方で。
とろろが入っていた器を少し拝借して一口分。]

[最後の蕎麦湯まで満喫したが、彼女の「別腹」具合はどうだろう。
ここでデザートを頼むも良いけれど]

 ちょっと行った先にりんご飴の屋台が出てたけど、そっちにするか?
 「浴衣デート」っぽいし。

[「してみたかった」と素直に言って来た彼女は本当に可愛かったから、浴衣デートっぽい行動は全制覇したい慾張りだ。*]

[下駄の鳴らす足音はからころと。
出かける前に落とされたキスの名残は今はない。

意地悪な質問には、応えられたなかった。
もう「くすぐったい」じゃ済まされないことが、きっと彼にはバレてしまっているだろうから。
その内、彼自身に確かめてほしいと思っている。]

[注文した山菜そばは温かそうな湯気を放っていた。
旅先で食べるお蕎麦はどうしてこんなにも美味しそうなのか。
お店特有の出汁の香りが食欲を誘う。

彼と合わせて、いただきます。と両手を合わせる。
ふぅ、と口先で湯気を飛ばして、口にしたら麺はつるつると滑るように喉元を通っていく。]

 はい、おいしいです。
 山菜食べてみます?

[卵黄と絡ませた山菜を少しだけ箸で摘んで、彼の口に運んだ。

代わりにもらった混ぜご飯を食べてみたら、山椒のピリリとした辛さに舌が刺激されてしまって、慌てて水で受け流した。
薬味にもだんだん耐性は着いてきたけれど、辛さばかりはまだ慣れない。]

[お蕎麦を食べ終えて余ったおつゆをれんげで掬い、仕上げの一口を堪能していれば、基依さんから屋台の話が上がる。

何よりさっき伝えたばかりの言葉を覚えてくれていたのが嬉しい。
両手を打って、眼を輝かせたなら、]

 はい。
 りんご飴、いいですね!

 お祭りじゃないと食べられないから、嬉しいです。
 いちごもあるかな、りんご……、どっちにしよう。

[取らぬ狸の皮算用。
まだ見ぬ飴の陳列に想像を膨らませて、席を立った。*]

[──なんだか、とてもいい夢を見てたような気がする。

髪を梳かれる心地よさに、ぼんやりと目を開け。
視界に映った裸の彼の姿に、二度目の覚醒は早かった。]

  ……ぇ。あ。
  おはようございま、す?

[夢じゃない。
夢中になりすぎて理性がなくなっても、
都合よく記憶までなくなるわけがなくて。

襲いかかる羞恥心に
今更のように布団を引っ張り丸くなって突っ伏しながら
風呂、の声に、ちらっと顔を上げた。
時計も確認すれば、まだ出勤を気にする時間でもなく
それほど長く眠ってたわけじゃないと安堵して。]


  う。一人で行けま……せんねこれ。

[試しに片足だけ降ろしてみようとして、断念する。
なんだかまだ体の中に蓮司さんがいるみたいだし、
上手く力が入らない。
転んで怪我したら迷惑かけるし仕事にも差し支えるので
大人しく手を借りようとして。]

  ちょ、ちょっと待って、服! 服!!
  せめて上だけでも着させてくださいっ。

[さすがに、浴室と寝室以外の場所を裸で歩くのは
既に窓の外は明るいのもあって、抵抗感がありすぎる。
ルームウェアの上だけでも拾ってもらって被れば、
だぼっとしてるそれでなんとか股下まで隠せそうだ。]

[女性は隠したい部分が多いんです、と話せば。
解せない、という顔の蓮司さんは一応下着を履いてるから
彼も風呂がまだなら、それ以上は強要しないけど。]

  ……なんか、目のやり場に困ります。

[改めて普段はきっちりとした服の下に隠された
腕や胸板や腹筋などなど、じっと見てしまいそうになって
視線がうろうろと彷徨った。
赤くなりながら、腕を借りて立ち上がり。]

  あ。
  すみません、この傷……私ですよね。

[彼の上腕の辺りに真新しいひっかき傷を見つけ、
更に頬が火照ったけど。
彼の体に私の跡がついてることに、ちょっと嬉しくて
顔が緩んでしまったりして。

途中で水をもらいつつ浴室に着けば、早速滑って転びかけ。
結局一緒に入ることになったとか。*]

[ん、と自然に口を開けて差し出された山菜を食べる。
卵黄のとろっとした食感の後に、山菜の繊維質がやってきて、噛んだら出汁がじゅわっとしみ出て来た。

こくこくと頷いて、「美味い」と伝えて、ふと。
「あーん」に対しお互いもう「事前に照れる」ことがなくなったなと思う。
本当に、ごく当たり前のように自分の「好き」を分け合える存在になったんだなとしみじみしていたら、紫亜の方は山椒にやられてしまったらしく、慌てて水を口に含んでいる。

悪かった、と謝る卯田は、まだ彼女を完全には把握できていない。
日々精進です。]

[りんごの方は、以前好物だと言っていたのを覚えていた。
いちじくとのバターソテー食べ比べを作ったのを思い出す。]

 まだ夏祭りには時期が早いけどさ、浴衣でぶらついてると屋台が欲しくなる需要があるからなんだろうな。

[店内も老若男女殆どの客が浴衣姿だ。]

 ベビーカステラもあったけど、あっちは腹に溜まりそうだしな〜。

[オーダー表を手に取る。
「奢り」「割り勘」で揉めるのが嫌だったので、少なくともこの旅行中は二人で同額を出し合って、そこから払おうと提案した。
頼んだものの値段が違っても、後で面倒な計算をしなくて済むし、個人的に欲しいものだけを個人の財布から払えば良い。]

[支払いを済ませて外に出る。
からころと下駄の音。
軽いキスでは痕もつかないが、浴衣の裾から見える足の甲に、印をつけておきたかった妄想は、今晩実行させて貰おう。]


 最近はりんご飴だけじゃないんだな。
 いちごもあるし……俺はこの「ぶどう飴」にしよ。

 「紫」が綺麗だし。


[意味深に言う言葉は、勿論店の人には通じない暗号のようなもの。
再び旅行用資金から代金を払って、甘いあまい「紫」にくちづけた。

吸って、舐めて、甘く噛んで飴をはがす。]

 あっま、

[粒はりんごよりも小さいから食べきれたが、飴が随分甘い。
複雑な顔で笑って、紫亜が食べきるのを待つ。
デザートには少ないかと思ったが、この甘さならこれ以上は食べられないかもしれない。*]

[おはよう。と、笑いかければ。
今更のように赤くなって、布団を被る嵐の姿。
くすりと笑いつつ自分は嬉しかったので、次の機会を待ちながら。
やはり一人では立てない嵐に腕を貸す。
共に風呂に行こうとしたら慌てる姿。
ルームウェアの上だけを着る姿も可愛い。

じっと見詰めて、不思議そうな顔をされたら。]


可愛いと思って。


[そう。素直に答えよう。
無駄な肉の薄い裸の姿も綺麗だけれど。
だぼだぼの服から覗く細く長い脚も、綺麗で可愛らしい。]

[自分は服を着るよう言われなかったので、下着一枚で。
目のやり場に困ると、視線を彷徨わせる姿に微笑む。
自分は『SASANKA』の人達のように、重い鍋をふるう訳でも無く、筋肉質な訳でも無い。
それでも彼女が赤くなるなら、悪い気はしない。]


気を付けて。


[立ち上がる彼女に腕を貸して。
上腕の傷に初めて気づけば。]


あ、ほんとだ……


[目を瞬いて。]



消えそうになったら、またつけてもらおう。


[思わず笑ってそう言ってしまって。
また睨まれたかもしれない。]

[湯船では足元の安定しない嵐と一緒に、入る事にして。
お湯をかけて、共に湯船に浸かったら。
背中から嵐を抱きすくめて座る。]


少しは、疲れが癒えると良いけど。


[お腹の前で組んだ腕。
悪戯したいのを必死で堪えてます。
魅惑的なお胸とか、触りたいけど怒られそうとか。
お湯の中で組んだ指が、所在無げにお腹の辺りを擽った。*]

[蓮司さんだから、困るのだ。
その腕がどんな風に私を抱きしめて、
重なる肌の温もりとか重みとか気持ちよさを知っているから。

これが店長や同僚なら、なんてまずあり得ないけど、まあ
風邪引きますよとあしらうのが精々だろう。

そんな私の心境なんて知らずに、
傷を見て嬉しそうに笑う彼を、思わず睨んで。

  ……またつけても、いいですけど。

[呟いて、ぷいっとそっぽ向いた。]

[浴室に着けば当然、再び脱ぐことになる。
明るい場所で改めて裸を見られる恥ずかしさはあるけど、
つい数十分前を思い返せば、今更すぎると腹を括って。

お互い汗やら何やらを軽く流してから、
湯船に浸かれば背後から伸びてくる腕に、背中を預けた。
二人で入っても足が伸ばせる浴槽の広さに、
他にもこういうことした人がいるのかな、なんて
改めて感じる5年の差や大人な部分が、ふと過ぎったり。

背中で蓮司さんが必死に耐えてることも知らないまま。]

  んー……さっきより大分いい感じかな。
  やっぱ湯船に浸かるだけで、疲れ取れる気がしますね。

[温かいお湯と腹部をくすぐるやさしい掌に、
体に残っていた怠さや違和感も融けていくようで。
背後から聞こえる声に、くすくすと笑いながら。]

[微睡みそうな心地いい時間に、ふと。
さっき言われたことを思い出して。

  そういえば……その、
  蓮司さんは服とか……身に着けるものに
  拘りってあります?

[ちょっとだけ勇気を出して聞いてみる。
大体、蓮司さんの基準がわからないのだ。
可愛いって言われても、色気も何もないルームウェアだし
睨んでるのに、嬉しそうに言われることもあるし。
そんなことする必要ないと言われてしまえば、
別の方法考えなきゃいけないし、なんて脳内で言い訳を。]

  えーと、つまり……
  仮にですけど、私がかわいい下着、とか
  ……つけてたら、どう思います…か?

[仮ですよ、仮の話。
まったく無駄な部分を強調しつつ、
落ち着かなさ気に足先を揺らし。
湯中りではなく火照ってくる顔を隠すように、俯いた。*]


 そのうち夏祭りにも行ってみたいですね。
 一緒に花火、見たいです。

[少し先の予定のお伺いを立ててみる。

夏には、一緒に夏祭りに行ってりんご飴を食べて。
秋には、インカのめざめの入ったビーフシチューを。
冬になったら、振り袖を着て初詣に。

この先の夏も、秋も冬も。彼と一緒に過ごせるように。
彼と一緒にしたいことは沢山あるから。]

 旅館の晩ごはんもありますしね。
 明日なら食べられるかも?

[くすくすと笑って応えながら、お店を後にする。
二人分の旅費は先に彼の財布に預けてあるから、支払いは彼に任せて店の外で待った。
重荷になるのがいやで「奢り」には抵抗があったから、彼からの提案には二つ返事で了承した。
共用で財布を使うことが、まるでずっと先の二人の未来を思わせるから嬉しかったのもある。]

そか。
俺も光かぁ。

[同じ、と言われたその意味を考える思考能力は蕩けてしまった。
 光。麦に見ているような清らかなものでなくとも、自分が兎の穴の中を照らす光であれたならと思う。]

カレー粉かぁ……クミンでいい?
ターメリックもあるよ。

[カレー粉としてまとまったそれはない。
 ホールのクミンと粉のターメリックをスパイスラックから取り出す。]

スパイス適当に買ってると増えるんだよなー。

[なんせ朝以外料理を週1でしかしない。
 スパイスの減るスピードはかなり遅かった。]

[少し先に進んだところにあったりんご飴の屋台には、色んな種類が並んでいた。
りんごが好きなことを、覚えていてくれたのかな。なんて思えば隣を見上げる表情が緩む。

ぶどう飴を手に取る彼の理由を耳にしたら、嬉しさと恥ずかしさが同様に押し寄せてきて妙にそわそわした。]

 ……、あ、私はこの小さいほうのりんご飴を。

[通常サイズではなく、ふたまわりぐらい小ぶりな方のりんごを選んで封を開けて口につける。

赤い艶のある飴に舌をつけながら、横目に見たら彼の口元が見えて。
彼の唇が「紫」の飴を溶かしていく。]

 




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