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【人】 軍医 ルーク…… 莫迦、 あとで、覚えてろ。 [ 恨めし気に顔を上げ、じーっと睨んだ。 顔は真っ赤だし、 口元は綻びたいのかぎゅっと結びたいのか ひどく難しい表情になっているし、 まったく迫力なんてなかっただろうけれど。] (279) 2020/05/30(Sat) 19:31:53 |
【人】 軍医 ルーク[ それでもどうにかこうにか立ち直り、 状況を確認する頃には、大分落ち着いてきて、 ぺんぎんに義足の調達を頼む余裕も出てくる。 動けなくてごめんと謝る声に、首を横に振った。] 大丈夫。 君は、あの機獣から守ってくれた。 わたしだけじゃなく、皆のことも。 [ あのまま蛇型がここで暴れていたなら、 どれだけの被害が出ていたか想像もつかないほどだ。] だから、此処から先は任せて。 ……さっきも、今までも。 戦えなくて、君が危険な目に遭っているときに、 近くにいられないのが、怖かった。 だから、出来ることがあるのは嬉しい。 それに、彼らは君にとっても大事な連中だろう? [ 医者として、戻って来る者たちを治すという使命感は、 元よりあるけれど。 それだけではなくて、力になりたい、 出来ることがあるなら何でもしたいという望みでもある。 だから、此処からは自分の仕事。] (280) 2020/05/30(Sat) 19:32:47 |
【人】 軍医 ルーク[ いまはゆっくり休んでいてほしいと、 尻尾をそっと頭の下に差し入れて。 だいじょうぶだよ、おやすみ――と、そっと耳を撫でる。 その穏やかな表情に、あの頭痛は感じていないのだろうと、 安堵を深くした。 ずっと、不安だった。 手を繋いでいると、忘れさせたりなどしないと誓っていても、 いなくなってしまうかもしれないと、そう思うだけで、 心臓が握りつぶされるような恐怖を感じていた。 だから、水の中の夢の話を聞けば、 いまでもどきりと鼓動が悲鳴を上げる。 ――本当に、ほんとうに、 帰ってきてくれて、よかった。] ……どこまでだって、行くよ。 世界中のどこだって、水の中だって、 ううん、世界の外だって。 (281) 2020/05/30(Sat) 19:33:54 |
【人】 軍医 ルーク[ 温もりというには冷たいけれど、 この手の温度を、感じていてくれたこと。 彼の言葉のひとつひとつが、嬉しくて幸せで、 あたたかくて、どうしようもなくて。 “僕と、一緒に” その言葉の続きに耳をすましたのだけれど―― 続きの代わりに聞こえたのは、 すー、と穏やかな寝息だったものだから。] ……、 [ そこは! 最後まで言ってほしかった!!! 莫迦ー! と思わず声を出しそうになるのを、何とか噤み、 そっとその耳を撫で、おやすみ、と言った声は、 自分自身でも聞いたことがないほどに、 愛おしさを隠せずにいる、やわらかな声だった。] (282) 2020/05/30(Sat) 19:35:32 |
【人】 軍医 ルーク[ 最後の機獣が倒されたという一報が基地を駆け巡り、 前線の兵士たちが帰還し、 怪我人の搬送や戦闘後の機獣の処理が始まる。 第二研究所の爆発を受け、爆発物等の確認は 極めて入念に行われることになっている。 ぺんぎんが運んできてくれた旧式の義足を取りつけながら、 誰か手が空いたものに担架を持ってきてもらい、 彼を医務室に運ぼうとしたのだが。] ん? [ くいくい、と服の裾を引っ張られる。 そこには、ずらりと並んだぺんぎんたちが、 決意に満ちたきらきらした眼差しで此方を見上げていた。 じい、と医務室のぺんぎんに視線を送れば、 羽でしゅたっと彼を指す。 先ほどの蛇型から自分たちも守られたと理解しているのか、 それとも普段から仲の良いうさぎを運ぶお手伝いをしたい! というところか。>>0:39] (283) 2020/05/30(Sat) 19:36:21 |
【人】 軍医 ルーク多分、君たちには重いぞ? この義手とか。 人間が運ぶにしても何人かは要ると… ―― うわあ…? [ 思わず変な声が出たのは、そう言っている間に、 さらにわらわらっとぺんぎんが増えたからだ。 近くの建物で息を潜めていた連中だろう。 医務室の方角から担架を担いできた数羽が見えるに至り、 まあいいか……と諦めた。 この規模の戦闘なら、怪我人の搬送には鳥の手も借りたい。 そのようなわけで、帰還した第一攻撃部隊隊員は、 中庭で破壊され、停止した蛇型機獣の残骸を見て、 彼らの隊長が基地を守ったということを知るだろうし。 ―― タイミングによってはそれに加えて、 見慣れない白狐に先導されたぺんぎん達に運ばれて行く、 赤いうさぎを目撃してしまうことも、 もしかしたら、あったかもしれない。>>269] (284) 2020/05/30(Sat) 19:37:14 |
【人】 軍医 ルーク ―― 医務室 ――[ それから暫くの間、 医療班は負傷者の治療に総出で取り組むこととなる。 出来るならずっと付き添っていたかったのだけれど、 彼が目を覚ますまで、自分は自分のするべきことを――と、 職務に打ち込んだ。 それでも空き時間を見つけるたびに、 臨時の医務室に顔を出し、様子を見ることは忘れない。 人見知りのぺんぎんも、今回ばかりはと人前に出て、 “おてつだい”業務に大忙しだった。 自分が担当になった兵士は、 相変わらず顔を青くする者もいれば、 非常時にえり好みをしていられないと腹を括る者もあり。 あるいは、フードを取った姿を見て、 えっ…と固まっているようなのもいたが、 あれは何に驚いていたのかよく分からない。 逃げようとするやつには、 逃げたらその腕の捻挫治すついでに四本位に増やすぞ? と、 念入りに脅してやったものだ。] (285) 2020/05/30(Sat) 19:38:40 |
【人】 軍医 ルーク[ それで、だ。 目を覚ましたと聞いて駆けつければ、そこに見えたのは、 穴に潜り込んでも、どう見ても隠れ切れていない感じの、 ふわふわぷるぷると揺れている、赤い尻尾。>>275] …… [ ひとつ、ふたつ、瞬き。 どういう状況だこれ――? ぺんぎんと顔を見合わせて数秒後、なんとなく察する。 ( 自分もここしばらくの間仮眠をとるときなんかに、 あのときのことを、何度も思い出しては赤くなり、 尻尾がぱたぱたと動いてしまうことなんかが、 あったものだから。 ) それでも、あれから時間をおいている分、 自分の方は彼に比べて“心の準備”が出来ているのだろう。 ああ、そういえば、 “後で覚えてろ”と言ったっけかなあ――と思い出し、 寝台を指さし、うずうずしているぺんぎんに ゴーサインを出した。] (286) 2020/05/30(Sat) 19:40:45 |
【人】 軍医 ルーク [ ぺんぎんはきらきらした眼差しで嬉しそうに、 ててて、と寝台に飛び乗り、 足元からもぞり、布団に潜り込む、 以前義手を使った彼が運び込まれてきた時と同じように、 顔の近くまでもぞもぞと這ってゆき、ひしっとくっつく。] 起きたって、聞いたから。 身体の具合は? 薬を持って来たんだ。 残念ながら薬は苦いから、 また苦いものと苦いものの選択になるね。 抵抗したら、また全部混ぜて口に突っ込むよ? [ そう言いながら、布団に手をかけ、 それはもう情け容赦なく、一秒も待つことはせず、 べりべりと引っぺがそうとする。 自分の力では剥がせないかもしれないし、 案外剥がせてしまうかもしれないし、どうなるだろう。 いずれにしても、もしうさぎが穴から顔を出したなら、 微笑みを浮かべた紫の双眸が、 すぐ近く、目と鼻の先にあるだろう。 そうして、言ってやるのだ。] (287) 2020/05/30(Sat) 19:42:14 |
【人】 軍医 ルークおはよう、シュゼット。 “これからも、僕と一緒に”の、 続きを聞かせて? [ そう、つまり。 感情が戻ろうと、自覚しようと、 やっぱり意地悪はするのである。 ( ―― ほんとうに聞きたかったからだ。 とても ) でも、そう言いながら、やっぱり自分の頬も、 心の準備なんてどこに行ったとばかりに赤くなっているのは、 これはもう、仕方がない。 運んできた薬瓶が苦いのも、どうしようもないことだけれど、 それに加えてもう一つ、 後に飲めば苦みを消し去ってくれるような、 甘い苺味のジュースを作って持ってきていたのも、 まだ、言ってやらない。 手に持っているのは、あのタブレット。 自分が書いた返事を、まだ読んでもらっていない。 そちらはそっと枕元に置き、まずは返事を待つ。]* (288) 2020/05/30(Sat) 19:44:34 |
【人】 軍医 ルーク[ 右腕がまた動かない、のところで ぐっと表情を曇らせはするけれど、 義手を使って全く反動がないということはないだろうと 予測はしていた。 “いつもと同じ感じ”ならば近々動くはず――と 自分を納得させる。 赤くなってしどろもどろになっているところを見ると、 いつもの自分なら、さらに追撃――なんて、 考えてしまうかもしれないのだけれど。 間近に目を見れば此方の頬もかっと赤くなってしまうのは、 どうしても数日前のあのときのこと――、 触れあった感触を、克明に思い出してしまうので。 心の準備どこに行った。 それでも、“聞きたいこと”は聞きたいのだ。 続きを聞かせて、と問うときも、 仕切りの向こうの他の患者には聞こえないように そっと声を潜めていたりもする。] (332) 2020/05/31(Sun) 14:20:32 |
【人】 軍医 ルーク約束してくれて、ありがとう。 [ “あんな威力の義手砲は”撃たない―― 彼自身が失われる恐怖に怯え続けていた自分にとって、 それは何よりも嬉しい約束だ。 撃つこと自体はやめないと言ったのは、 これから何が起こるか分からない以上、 言えないことだったのだろう。 本当は、身体に負担がかかることはやめてほしいと、 そう思ってしまうのだけれど。 出来ないことを言わないのは、その言葉が“本当”だからだと、 分かってる。 それなら、自分も出来ることを探したい。 あのとき彼は、蛇型に襲われていた自分を、基地の者たちを 助けるためにその力を使った。 あのようなことが、二度と起こらないように。 義手砲を使わなければいけないことが、なくなるように。 ――そして、そうだ。] (333) 2020/05/31(Sun) 14:26:04 |
【人】 軍医 ルーク撃たなくても良くなることが、 何より一番だけれど。 どうしても使わなければいけないことがあったとしても、 体に影響が出ないように改良していく方法を、 見つけたいと思ってる。 わたしは技術者じゃないけれど、 専門外だなんて言ってられない。 これから探すし、考えるし、 絶対に見つけるんだ。 [ いま布団の中でもぞもぞ言っているぺんぎんの、 飛べない羽のこともある。 自分の持つ技術の幅を広げてゆくことは、遅くないはずだ。 もしかしたら、天の向こう、 この義手が作られたであろう場所なら、 そのヒントもあるのかもしれないと―― そのようなことも、薄っすらと考えながら。] (334) 2020/05/31(Sun) 14:27:20 |
【人】 軍医 ルーク[ やがて、名残惜しそうに身体を離し、 ベッドの横に椅子を持ってきて腰掛ける。 基地に流れる噂は、彼の耳にも入っていたようだ。 なお、ぺんぎんに纏わる噂の方は、 尾ひれがついて不思議なことになっているようだったが、 面白いからそのままにしておいた。>>297 医務室のぺんぎんは、患者に甘いものを差し入れされて、 頭の上にハテナを浮かべて不思議そうにしていたけれど。 食べきれない分を机の上に並べて困っていたから、 仕事の合間にポシェットを縫って肩から下げてやった。 というわけで、 いま布団の中に潜り込んでいるぺんぎんのポシェットには、 飴やキャラメルといった菓子が入っていて、 “おすそわけのおみまい”を渡すタイミングを、 いまかいまかと待っている。 そして、“地上との交渉”という噂。] ああ、本当らしい。 今は中央との折衝中だと聞いたけれど、 近いうちに決定が出るはずだ。 次の襲撃までは間があるだろうけれど、 それもいつまでかは分からないし、 早いに越したことがないから。 (335) 2020/05/31(Sun) 14:28:45 |
【人】 軍医 ルーク[ 彼が話そうとしている話の内容については、 タブレットの話を聞くなら、過るものはある。 こちらから口に出そうとはせずに、 タブレットを見てくれたかという問いには頷きを返した。] 総攻撃の前に、読んでた。 その場で返事も書いたよ。 いつ渡せるか分からないけれど、 なんだか、黙っていられなかったから。 どうしてもその場で書いてしまいたかったんだ。 壊れてないし、動作も確かめたから大丈夫。 東の外壁に置いておくいつもの方法だったら、 巻き込まれて壊れていたかもしれない。 ぺんぎんに渡してもらって良かった。 [ もしかしたら、あのときは。 “いつかはちゃんと届けられる”と信じたいがために、 願掛けをするように、返事を書いていたのかもしれない。 枕元に置いていたタブレットを取って、彼に手渡す。 書かれていた返事の後半は、地上に行く話。>>3:$14 自分は当たり前のように、 “一緒に行く”場面を想定して書いていた。 それは、口調の端々から伝わることだろうけれど、 そういえば『一緒に行く』と書いてはいなかったことに、 いま気付く。 一人で行かせるなんて想像もしていなかったことだから、 すっかりそこに自分もいる想定で描いていた。] (336) 2020/05/31(Sun) 14:30:59 |
【人】 軍医 ルークさて、と。 話をしながらでも、まずはこっちだ。 “パスワードをあけて”もらおうかな? もう何日も眠ってたんだから、体力を戻すのが先。 [ 当たり前のような顔をして、すーっと押し付けるのは、 件の苦い、苦い薬。 タブレットのパスワードだったAME015。 何はともあれ、薬瓶を空けながらだ。 自分も昼夜を問わず走り回っていたものだから、 以前の飲食睡眠を忘れていたような状態よりましとはいえ、 疲れはある。 以前飲んで効いたなこれ、と覚えていたから、 ポケットから自分の分も取り出して、 至極平気な顔でくいっと飲んでみたり。 話が先か、薬が先になるかは本人に任せるところだが、 布団の中のぺんぎんは、 がんばれ…! とエールを送っている。]* (337) 2020/05/31(Sun) 14:32:37 |
【人】 軍医 ルーク[ ぺんぎんがポシェットから取り出した苺飴に 目を輝かせている様子を見ていれば、 こんなささやかなことも、取り戻された平穏を感じさせて、 思わず口元が緩んだ。 地上に行く話のことは、自分でも色々と情報を仕入れていた。] 前に何度も襲撃があって、 残骸が回収されただろう? 第二研究所に運び込まれた残骸は もう残っていないけれど、 他の残骸は今も解析が進められていて、 その中には、記録媒体も残されていたみたいだ。 これまではそのほとんどが ブラックボックスだったのだけれど、 通信機を解析する際に技術班が解いた暗号と 同じ方式で解読できるデータがあって、 地下に諜報員を送り込む際の『帰り道』についても、 記載があったらしい。 それを、遺失技術が発掘された地域の 地殻調査のデータと照合して、 二、三か所、それらしい箇所に当たりがついた。 使用可能か調査も進んでる。 詳しい話はジルベールに聞けば、 多分、必要な情報の三倍くらいの分量を 話してくれると思うから、 おすすめ――はしない… (414) 2020/06/01(Mon) 0:31:27 |
【人】 軍医 ルーク[ 迂闊に詳細を尋ねてしまったところ、 患者の治療があるからと去ろうとしても医務室に着いてきて 最後まで喋り倒していたジルベールの早口を思い出し、 遠い目にもなる。 つまりは、この地下世界から地上に通じる抜け道が、 今も残されているということだ。 地上も把握している道であるから危険もあるが、 いま直ぐに見つかるルートは他にないだろう。 上下に物資を搬送する装置が備え付けられているのか、 はたまた長い長い階段や梯子が嫌がらせのように 据え付けられているかは、 蓋を開けてみなければ分からない。 後者の場合は、自分の脚について何か対策を――なんて、 あの日記を読んでいる自分は、もうすっかり “地上に行く”という思考で考えているのだ。] (415) 2020/06/01(Mon) 0:32:48 |
【人】 軍医 ルーク[ タブレットの場所を示し、いつもの栄養剤を差し出せば、 いつものように後ずさりするうさぎ。 自分も飲んでは見せたけれど、 苦みも味も感じないものだから、実は公平じゃない。 あの日記に、いつか自分は書いた。 情緒面と“感覚”に異常がある、と。 きっともう、彼も自分の味覚のことは気付いているのだろう。 ――失われたものが感情と味覚であったことの理由は、 いまは、自分でも分かってる。>>2:178 >>76 きっと最初から自分は、美味しい物や苦いもの、 いろいろなことに感情を見せる彼を見ていたのだろう。 それが最初は持っていなかったものとは知らずとも、 惹きつけられるように――ずっと見ていた。 なお、薬を飲みながら日記を読み進める彼が、 また涙目になってぷるぷるするのを見ている自分の顔は、 多分こんな感じだ(=x=)] (416) 2020/06/01(Mon) 0:34:27 |
【人】 軍医 ルーク[ けれど、ぺんぎんが取り出したジュースに ぱっと表情を明るくする彼の表情を見ていると、 自分もまた自然と口元が綻んで、 スツールの後ろに零れて床にまで届く長い尻尾が、 ゆらゆらと楽しそうに揺れる。] この間とは砂糖を変えてみたんだ。 ぺんぎんも、喜んで味見してた。 苦い薬――は、 飲む機会も、もうなくなればいいと思う。 [ 義手や強い栄養剤を使う機会がなくなるよう、 あったとしても極力少なくなるように。] ああ、でも、もし 風邪をひいたり何か体調不良があったら、 薬って言うのは大体不味いものだから、 そのときはまた、苦い目に遭うよ? [ 脅すように、わるいえがおをしてみせる。 そんな風に口うるさく言ってしまうのは、性分のようなもの。 ――けれど、] (417) 2020/06/01(Mon) 0:36:24 |
【人】 軍医 ルークけど―― 君が美味しそうに食べているのを見ていると、 食べるのは悪くない、って思えるから。 美味しそうにしている顔を見たいから。 だから、君が好きだと思うものを沢山覚えたい。 手先は割と器用だよ? ああ、ただ、塩と砂糖間違えても気付かないから、 そこは味見係の勤務状況に賭けてくれ。 [ 分量や手順通りに物を作るのも、得意とするところ。 以前は口に物を入れるたびに吐き出したくなって、 栄養剤ばかり口にしていたようなものだった。 けれど、通信機を取りに行った道すがら、 飴を貰ったときのこと。 自分は味一つ感じられなくとも、 彼やぺんぎんが嬉しそうにしているのを見て、 それが何より“嬉しかった”。 自分にとって、“食べる”は――いまは、そういうこと。] (418) 2020/06/01(Mon) 0:38:31 |
【人】 軍医 ルーク[ ベッドに起き上がった体勢で、 彼はタブレットを読んでゆく。 無理な体勢にならないように、 クッションを調達してきて背凭れにして、 そのあとはじっと、椅子に腰掛けて待っていた。 微笑みが返されたなら、笑い返す。 自分が書いたものは日記というよりはむしろ―― という自覚はあったものだから、 照れが隠せない、はにかむような笑顔になる。 タブレットに文字を綴ってゆく指先を、目を細めて眺め、 やがて打ち終え、画面を示されたなら、 横合いから覗き込んだ。 この日記を読むときは、いつもそうしていたように、 一語一句読み落とさないように、丁寧に、だいじに。 “断られた後のことなんて考えてない”―― 信じてくれると思ってる、と、 そう書いてくれたことが、とても嬉しくて。 大好きな人と記してくれたことが、何より嬉しくて。 じいっと目を見て、笑顔で頷く。 そっと耳元に唇を寄せて、囁いた。] (419) 2020/06/01(Mon) 0:39:46 |
【人】 軍医 ルーク君が傍にいない今も、未来も、考えてない。 ずっと傍にいる、傍にいて。 何があっても、わたしは君を守る。 わたしが君を信じていると、 分かってくれていて嬉しい。 ――… 幸せすぎて、怖いくらいだ。 これ以上嬉しいことなんてないって思っても、 こうして隣にいて、言葉を交わして、 笑ってくれるたびに、 幸せだと思うことが増えてく。 [ 同じものを見る、同じ場所に立つ、 一緒に時を過ごし、新しいことを知る。 何があっても、乗り越えられる。 それはきっと、“互いの中に色んなものを増やしていく” ――そういうこと。] (420) 2020/06/01(Mon) 0:40:49 |
【人】 軍医 ルーク……わたしにも、一つだけ、 君に言っていなかったことがある。 長い話になるから、そうだな、 君がもう少しちゃんと回復したときに。 …天の向こう、君と同じ場所から来た子がいた。 第二研究所にあった残骸が爆発した時に、 助けられなかった、 何もできずに死なせてしまった子のこと。 後悔が、ずっとずっと、消えない。 [ 互いに、失くしたことがある。 悔いもある。 この過去もまた、今の自分を形作る記憶だ。 過去は過去として受け止めて、前に進むには、 やはり自分はどうしても時間はかかるのだろうけれど―― 止まっていた時間は、もう動き出している。] (421) 2020/06/01(Mon) 0:41:49 |
【人】 軍医 ルーク でも、止まっているのはやめにする。 君はこれからも歩いて、 わたしはその隣にいるんだから。 いまも、これからも、ずっと。 一緒に、行こう。 君が書いた日記を読んでから、 わたしも、上に行くことについて考えてたんだ。 たとえば―― [ そう言って指さしたのは、彼の懐に収まっているぺんぎん。 よばれた! と両手を上げて、自分の存在をアピールする。 そのお腹の所には、いま菓子が入っていたポシェット。 荷物袋はそれでいいかと思ったら、 もう少し大きいのがいい、とでもいうように、 医務室の緊急持ち出し袋の所で強請られたから、 いま、新しいリュックを縫っているところ。] 一緒にいる。 この戦争を止めようと思う、君の力になる。 わたし自身も――そう望んでる。 それに、ね。 [ 窓の向こう、“天”に輝く灯りに、目を細めた。] (422) 2020/06/01(Mon) 0:43:26 |
【人】 軍医 ルーク ―― 地上のどこかで ――[ 土色のブーツが、地面に落ちた小枝をぱきりと踏む。 周辺の調査を一通り終えて、木陰に戻ろうと。 互いの目の届く範囲にいるから、 此方がどこにいるかなんて承知の上だろうけれど、 タブレットで作業をしているようだから、 しーっとぺんぎんに合図をして、 こっそり後ろに回り込んでみたり。 けれど、邪魔になることもしたくはなかったから、 樹の後ろからひょいと顔を出し、 “ただいま”と耳元でささやくにとどめた。 うん、本当に、耳が良い彼のことだから、 こんな悪戯にもならない悪戯は気付いていただろうけど。 地上の沢山の土地を回る。 新しい景色を見る。 子供の頃に本で読んだ、天の上の世界。 “星”、あめ”――…、 そして、あの日記で想いを馳せた、 白く凍った世界、硝子の絵が描かれたの瓦礫の建物。 生きているひとの、どこにもない世界。] (424) 2020/06/01(Mon) 0:46:27 |
【人】 軍医 ルーク[ 足を踏み出した当初は、そのあまりの広さと、 耳鳴りがするような静けさに圧倒されて、 何処までも広がる空に、雲に、 世界そのものに押しつぶされそうで、 このような場所をひとり、調査して歩いていたのかと、 そのことをどうしても、思い出した。 音を、空気を、世界を懸命に受け止めて 感じ取ろうとするかのように、 耳と尻尾がぴんと張りつめ、ふるりと震え、 なんとか呼吸を整えて、 手をつないでいて、と頼んだものだ。 そうして踏み出した最初の一歩を、 いまでも、よく覚えている。 あちこち旅をするうちに、 地上の人間が生きているシェルターを訪れる機会もあった。 耳も尻尾もない人間たちには、自分の形は珍しいようで、 子どもにぐるぐる囲まれて、目を回すこともあった。 (敵対的な人間については――そもそも地下でも 基本的に否定されていたので、 個人的にはさっぱり気にはならなかったのだが、 彼にそういう目が向けられたときは、むう、と睨んだり)] (425) 2020/06/01(Mon) 0:48:45 |
【人】 軍医 ルーク[ 何より安心したのは、義手を改良してくれる者たちが いたということ。 最初に彼らと接触した際に、義手の構造を知りたい、 出来るなら装着者の身体に影響が出ないように 改良の手段はないか――と頼み込み、 その時点でのデータを貰ってはいたのだが、 改良に成功したとの知らせを受けたときには、 飛び跳ねて喜んだものだ。 “わたしを調べる? それくらいなら全然かまわないけれど――” ぐるぐる回されようと細胞を取られようと まあいいか――と、頷こうとしたのだけれど、 彼が義手砲なんて向けようとしたものだから、 ばかー!! とぎゅうぎゅう抑え込んだ。 (そう言いながら、尻尾の方は、 心配してくれて嬉しいという気持も隠せずに、 慌てるやら嬉しそうにするやら、 忙しいことになっていたのだけれど)] (426) 2020/06/01(Mon) 0:50:30 |
【人】 軍医 ルーク[ とはいえ、そういう自分も、彼らが 『いやいや悪かった、 ……でも良かったら、ほんの少し、 地上と地下を行き来していた シュゼット君のことを調べて 過去のデータとの比較をさせてもらっても いいかなあ、とか――』 など言い出したときには、 地上人は耳の代わりにどこを結べばよいのかな? と、身を乗り出して、 ぺんぎんが止めなければいけない相手は 二人に増えた。] (427) 2020/06/01(Mon) 0:51:30 |
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