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【赤】 従業員 ルミ[ 叶わない夢なら最初から星屑になって落ちてしまえ。 咲かない花なら最初から枯れて朽ちて消えてしまえ。 わたしのものにならないお兄さんなら、 いっそ過去に執着していた方が楽だった。 ────なのに結局今の貴方の傷を欲しがっている。 相反した感情と憎悪と愛情。 矛盾を抱えていることくらい分かっていて、 途方もない夢だけは見ないように自制して。 ] (*72) 2024/05/08(Wed) 22:48:50 |
【赤】 従業員 ルミ…………おかげさまで。 [ ここで可愛く愛想を撒けるような女の子だったら、 ここで、強がって突き放せるくらい強ければ。 なにかを探すように持ち上げられる腕を見やり、 そ、とすこしだけ頭を下げる。 ────撫でられたいなんて、思う資格はないけれど ふれられたいと、願ってしまって。* ] (*73) 2024/05/08(Wed) 22:52:34 |
【赤】 従業員 ルミ[ 女は彼と違って、経験してきた物事が少ない。 生きてきた世界とてそもそも狭いような生き物だ。 多くの人々と経験を知るよりも、 閉じ切った閉鎖的な世界で身を守ることを好んだ。 思い出のウェイトは過去に寄り過ぎた。 痛みも重みも麻痺するほどに時を重ねて、 昔を反芻し、飲み込み、追体験でこころを誤魔化す。 過去を今に当てはめて息をしているだけ。 そうするのが楽で、なにも傷付かずにいられるから。 ] (*80) 2024/05/09(Thu) 0:41:48 |
【赤】 従業員 ルミ…………なにそれ。 今更そんな、 体のいい言葉で騙されたりなんか…… [ ────死んでしまうのが一番楽だと考えたこともある。 こころを殺して生きていくより、 身体ごと死んでしまえばいいのかと。 けれど。 どうして苦しいばかりの世界で生きて来たのか。 死ぬことを別に恐ろしいとは思わなかったのに ──……それならば、なぜ。 ] …… [ 愛されようと色んな人に愛想を振り撒いて、愛を買った。 金を渡して夢を買った。 いくら繰り返しても満たされないまま大人になって、 ] (*81) 2024/05/09(Thu) 0:42:09 |
【赤】 従業員 ルミ[ 目的もなく生きていくのなら、それでも良かっただろう。 けれど傷を付けながら、 生きるために彼のアカウントを探って彼を見続けた。 それは間違っても感動する類の話ではない。 犯罪として背筋を凍らせることはあったとしても、だ。 ] ……べつに、最初から泣いてない。 [ 嘘だ。今更繕っても意味のないこと。 涙で罪を誤魔化すみたいで、それは── そんなことはしたくないだけ。 ちっぽけなプライドだ。 わたしが泣いて許されるのは簡単だけれど それを見せられる彼の気持ちはどこにいく? ] (*82) 2024/05/09(Thu) 0:42:32 |
【赤】 従業員 ルミ[ 彼の手が僅かだけ、体温も移らないほどかすかに触れる。 頭を少し下げただけでは届かなかったのか、 力の抜けた腕は、頭の代わりに醜いわたしの手首を撫ぜる。 長袖を着て見えないように誤魔化した過去の傷痕。 現在を生きるために過去で裂いた血肉の痕。 ────ひきつれた皮膚越しに感じた彼の指は おんぶして背負ってくれた時とは程遠い。 弱々しさだけが胸を打つ。 ] ────────……ッ [ なにをするのかと見ていれば、貴方は。 あの甘えとはまた違う懐古を連れてくる。 ] (*83) 2024/05/09(Thu) 0:42:48 |
【赤】 従業員 ルミ[ 噎せたように笑う姿が理解出来なくて、身体を引いた。 どうしてこの状況で今彼は笑えるのか。 なにも覚えていないくせに、 どうして二人のおまじないだけ鮮明に見せてくるのか。 ここで都合よく受け止めて幸せになれるような、 お気楽で軽くいられる性格はしていない。 ] ……なに、お兄さん、意味わかんないよ 今痛いのは、そっちの方でしょ……? 上手く腕も動かせないのに、 [ 自分の頬を殴ってしまっていたのを思い出して 恐る恐る、頬の怪我を確かめようと指を伸ばす。 触れられるのは、彼にとっては怖いことだろうか。 躊躇うように指先が空を彷徨って、 ] (*84) 2024/05/09(Thu) 0:43:59 |
【赤】 従業員 ルミ[ 迷子のような、悪さをした子どものような。 顔立ちばかりが大人に近付いた女のかんばせは、 どんな言葉も似合わないマーブルカラーだ。 背後から急激に匂い立つ過去に戸惑って、 責め立てるのではない彼の反応に怯えている。 ] ………………せっかく今日の為に お金も貯めて、お兄さんのことたくさん調べて チャンスをモノにしようと思ったのにな。 いいよ。もう。 ────なんにもしないし、抵抗しない。 警察でも何でも、連絡して良いよ。 [ やめてよ。 今更どうしてこっちを見ようとしてるの。 頭のおかしい犯罪者で、ストーカーなんだから、 昔と同じ仕草で、言葉で、やさしくしないで。 ] (*86) 2024/05/09(Thu) 0:50:40 |
【赤】 従業員 ルミ……わたしの十数年なんか 嘘でも食べちゃだめでしょ、お兄さん 痛くなっちゃうよ……ほんとにさ。 [ 呟き落とすように咎めて、目を伏せる。 相変わらず跨ったままの体勢だと 彼の顔が嫌でも良く見えた。 ] ………… ほっぺた、怪我は? [ 自分が気にしていいことではないかもしれない。 けれど、自分の仕込んだ薬の影響ともなれば 資格がないなんて理由で放置もしたくはなくて。 両腕を下ろしたまま、小さく尋ねる。 敵意がないと示す唯一の手段だった。** ] (*87) 2024/05/09(Thu) 0:56:57 |
【赤】 従業員 ルミ[ 幼い頃は子供騙しにもならないことばかりだった。 隠れきれず、丸わかりの状態でかくれんぼをしたり お花の指輪は、すぐ編めるくらい簡単だと偽ったり。 傷付けるための嘘には乏しかったはずだ。 ────気付けばすっかり嘘つきに育ってしまったが。 ] だから、……ッ、 [ 泣いてないと否定しようとして、言葉を呑む。 彼の声音に宿った確信を感じ、 言葉の投げ合いをするよりも引くことを選んだのだ。 多く語るほど、過去の傷が痛むから。 ] (*92) 2024/05/09(Thu) 21:28:04 |
【赤】 従業員 ルミ──────そ、れは [ すぐさま反論を紡げずに、掌を握り締める。 そうだ、自分は彼を傷付けたかった。 夢の中で一方的に会い続けることより 傷の先で思い出して貰うために。 この際、目的が完遂出来ないなら 頬の痛みでもなんでも良いはずではないのか。 ] ……ッは、 忘れてたのに……忘れてるのに わたしのままなんて、よく言えるね、お兄さん [ 視線が交わる。過去と今が交差する。 ] (*93) 2024/05/09(Thu) 21:28:19 |
【赤】 従業員 ルミ[ ぜえ、と肩で大きく息を吸った。 掴まれた腕を振り解こうと、──振り上げようと 動かしかけて、力を抜いて、また勢いに任せようとして ──繰り返すたびに喉を掻き毟って死にたくなる。 ここで首でも絞めてやれば。 彼には一生忘れられない記憶として残るだろうか。 ここで頬でも殴ってやれたなら。 みっともなく縋り続けていた過去を全部捨ててでも、 目的を成せる存在だったら。 ] ──────……、わから なぃ、 [ まるで破れたページを継ぎはぐように。 細切れで、強張った話し方だった。 妙に冷静な頭が、彼の問いかけの答えを探している ] (*94) 2024/05/09(Thu) 21:28:26 |
【赤】 従業員 ルミわたしには、これしか出来なかっただけ ……こうするしかないって、おもった、だけ お兄さんのこと探して、調べて 昔の断片を見つけて………… お兄さんはわたしがいなくたって楽しそうで わたしは、昔のお兄さんしか、いなくて。 思い知れば、傷付ける覚悟が出来るって思った、の ──────……そうすればもう、 [ あの公園に行かなくて済んだんだよ。 楽しかった過去を、本当は美しいだけの思い出を、 綺麗なまま封じ込めて死ねたんだ。 ] (*95) 2024/05/09(Thu) 21:28:41 |
【赤】 従業員 ルミ実るわけないこの馬鹿みたいな恋を 叶えたがってる自分を殺せると思ったから……… [ 執着なのか偏執なのか刷り込みなのか。 誰に何を説かれたって響かない。 わたしにとってはこれが、わたしの恋。 これが恋ではないなら愛なのだろう。 愛ではないなら、 そう思う人の方がおかしくって、恋を知らない。 ] (*96) 2024/05/09(Thu) 21:29:35 |
【赤】 従業員 ルミ…………べつに、あのまま続けてたとして お兄さんを子どもで縛ろうなんて気はなかったよ。 アフターピル……避妊薬持ってるから、それ飲んで。 明日から実家、帰るんでしょ。 さっきスマホのパスワードは盗み見ておいたから 実家にお兄さんのフリして、帰らないって連絡して。 長期休暇の間だけ、この家にいてもらう気だったの ──それで……何をしても、どうなっても、 わたしを忘れられないくらい傷付けてやろうとしただけ [ 犯罪だよね。そんなのも覚悟の上だよ。 言って、わたしは飾られたブランドバッグを見た。 もう連絡も絶えた昔の客からのプレゼント。 売れば高い値段がつくような代物。 可視化されたわたしの価値。 ] (*97) 2024/05/09(Thu) 21:30:10 |
【赤】 従業員 ルミ[ お兄さんの痛いのを食べてあげるね、と笑った子どもは 今や呑み込めないほどの傷を付けたがる化物だ。 ] そしたら、逮捕とかされるのかなって。 慰謝料とかの準備もしたし。 もしあれを見てお兄さんが利用価値を持ってくれたら、 それでもいいなって思ってた。 そういうのも含めて、いっぱい働いて ……頑張ったんだけど。 [ 現実は、想像のように上手くはいってくれないか。 自分で自分を殴った彼を見ただけで 怪我を心配してしまう甘さも弱さも抜けていない。 ────昔なら、 ] (*98) 2024/05/09(Thu) 21:30:30 |
【赤】 従業員 ルミ[ 息を吐く。 なりたかったものは、愚かにも見た夢は。 なれなかったものならよく知ってる。 昔の記憶に置き去りのままの幼いわたし。 痛みも食べてあげると息まいた世間知らず。 ] ……薬が抜ける間の時間稼ぎにはなったんじゃない? ほら、もう良いでしょ だまされてあげるから ……さっさと離してよ、お兄さん [ 今ならまだ、間に合うよ。 妙な同情心でも湧いちゃった? やっぱり嫌になったでしょう? それでも今なら許してあげるから。* ] (*99) 2024/05/09(Thu) 21:37:09 |
【赤】 従業員 ルミ[ 美化され続ける思い出と、 色褪せて消える思い出の違いはなんだろう。 失った過去は二度と手に入らないが故にうつくしく、 苦しい記憶を経てきたと思い難い防御本能故に ある程度の痛みならば無かったことになる。 狩人はどうして白雪姫を助けたのか。 見返りも求めずに? 憐憫のただひとつだけ? ────狩人に恋すれば白雪姫は死なずに済んだのに。 りんごは落ちない。 死ぬ" かもしれない "未来から助けたひとよりも 既に骸となった自分を救った王子を選んだ姫。 どうして死して尚、 狩人の救済の尊さを覚えなかったのか。 説明がつかないことを、恋と呼ぶ。 ] (*105) 2024/05/09(Thu) 23:03:04 |
【赤】 従業員 ルミ……終われそう、じゃないの 終わらせるの────お兄さんを好きな気持ちごと。 全部、この家で あの公園を見れる場所で、思い出すら消えるくらいに。 [ 随分と口も回るようになったらしい。 あの薬は効果こそ覿面だったけれど、 害さぬよう与えるとなれば時間はこんなものか。 ] ……幻滅できるなら、とっくにしてる。 [ 貴方が見知らぬ女を抱いた日に。 わたしを忘れて楽しく毎日を過ごす様子に。 所詮そんなものか、と手離せる愛ならそうしてる。 出来やしないから、心ごと殺すんだ。 ] (*106) 2024/05/09(Thu) 23:03:08 |
【赤】 従業員 ルミ[ ぱち、と目が瞬く。 ] …………ああ。そっか。 わたし、目的を達成した後の自分のこととか あんまり考えてなかったや。 心を殺せば、自分は死ぬのと同じだと思ってた。 お兄さんには、与えた傷と一緒に生きて貰う為に お金を渡すしかないと思って、慰謝料、用意したの どうせ生きてる意味もないなら いつ死んだって同じだし──── [ 新しい発見を得たというように頷いた。 言うことを聞かないなら死ぬと脅した時はただ、 善良な人間なら 目の前で人が死ぬのは嫌だろうと思ったのだ。 そこに期待がなかったといえば、嘘になるけれど ] (*107) 2024/05/09(Thu) 23:03:37 |
【赤】 従業員 ルミそっかぁ いつ死んでも同じなら、逮捕とか待たなくて良いよね。 ……でも、生きてれば お兄さんはずっとわたしに怯えてくれるかな? [ " 今の "彼を分析できるほど、彼を知らない。 とにかくこの恋を終わらせるために必死だった。 恋を終わらせて、傷の中で会い続ける。 わたしは貴方の傷になって生きていく。 ────新しい世界を知った子どものような声で、 独り言のように言葉を零して。 ] (*108) 2024/05/09(Thu) 23:05:13 |
【赤】 従業員 ルミ──────…… なんで、そんなこと聞くの? 答えたら叶えてくれるっていうの? ばぁか。 なりたいものなんか、……わたしの願いなんて お兄さんにとって、ずっと────…… (*109) 2024/05/09(Thu) 23:05:19 |
【赤】 従業員 ルミ…………ひどいね、お兄さんって 叶わないこと言わせてどうするの? それが仕返しのつもり? 好きって、あいしてるって言ったでしょう ……わたしがなりたかったのは、 (*112) 2024/05/09(Thu) 23:06:20 |
【赤】 従業員 ルミ………………これ以外の方法なんか、しらない わたしは、新しいふたりで始めたかったわけじゃない わたしと、お兄さんで、……そうなりたかった [ ほら。もうこれでいいでしょう。 叶わなかった夢を語るほど、苦しいこともないのに。 ひどいひと。 今も昔も、──わたしの柔いところを刺し続ける。 ] (*115) 2024/05/09(Thu) 23:12:20 |
【赤】 従業員 ルミ答えたんだから、今度こそ離してよ。 どうせもう動けるんでしょう。 ……いじわるだね、お兄さん。 [ そんなところもやっぱり嫌いになれなくて、 わたしは ぐ、と腕に力を込めた。* ] (*116) 2024/05/09(Thu) 23:13:47 |
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